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二年目
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しばらくして茅さんは携帯に呼び出されて、帰って行った。柊さんは貰ったレコードを、トートバックにしまっている。そして私はそのカップを片づけた。
そして再び部屋に戻ってくると、彼はベッドに座って私を呼ぶ。隣に座れってことなのかな。私はその隣に座ろうとすると彼は首を横に振る。
「どこに座るの?」
「ここ。」
そういって彼が指さしたのは、彼の足の間だった。ちょっと。これ恥ずかしくない?でもまぁ今更恥ずかしいがるようなことじゃないか。
私は彼の足の間にはまるように座ると、彼は私を抱きしめた。
「どさくさに紛れた。」
「何が?」
「もっとちゃんと言うつもりだったのに。」
「でも前に籍入れたいって言ってたわ。」
「あぁ。でも式のことは言ってなかった。」
「そうね。だから最近忙しそうだったのね。」
「……あぁ。」
少し言葉に詰まった気がする。でもここからじゃ彼の顔が見れない。どんな表情をしているのかわからないけれど、照れていると思う。そう思いたい。
「それに……一度、外の世界を見てみたいとも思う。」
「外の世界?」
「正直、茅が羨ましくてな。あんな風に海外を渡っている姿を見ると、自分の世界が狭く感じる。お前はそう思わないか?」
そうかもしれない。あんな人が身近にいると、この町の中での世界しか知らないのは、損をしている気分になるだろう。
「私は柊がいればいい。」
「桜。」
「見るもの、触るもの、あなたと一緒に感じていたい。それが外の世界だろうと、この町だろうと、他の町だろうと、どこでもいい。」
彼が抱きしめている腕の力が強くなった。
「可愛い奴だな。今日は疲れているだろうから、何もしないと思ってたのに。」
「何もしてくれないの?」
すると彼は私に携帯電話をとるように言った。そしてその画面を見て、ため息を付いた。
「あまり時間がないな。茅が来たお陰で、時間が無くなった。くそ。それだけは空気の読めない奴だ。」
狙っていた。とも言える。でも彼の気持ちには決して答えられない。やっぱり私が好きなのは柊さんなのだから。
「柊。」
私は体を彼の方に向けた。そして膝を立てると、彼の唇にキスをした。そして彼の口内に舌を差し込む。
「んっ……。」
いつもと違う。上から彼を見下ろすように、キスをした。そして首もとに唇を寄せる。
「やめろ。抑えが効かなくなる。」
「私にさせて。」
「俺だけ気持ちよくなっても……んっ。桜。どこでそんなことを覚えたんだ……。またあの友達か?」
「うん。」
「いい友達を持ってるな。お前は。」
彼は頬を赤くさせて、私の頭を撫でた。
ごめんなさい。柊さん。これをしているのは、私のためでもあるのだから。
きっと今日あなたとセックスをしたら、きっと茅さんを重ねてしまう。茅さんとの関係はきっとあなたは疑っていない。
でも私はあなたのことが好き。愛してる。一緒になりたいっていわれて嬉しい。
だけどあなたのことを少しでも疑う気持ちがあって、それにつけ込んだ人がいるってことを忘れないで。
少し頭が痛いかも。私はそう思いながら、柊さんとアパートを出た。そして駐輪場へ向かう。ヘルメットをかぶる前、彼は唇を合わせてきた。
「ゆっくりする時間が無くて悪かったな。」
「いいの。私もこれから忙しくなるから。」
「そうか。試験があるのか。」
「うん。それに……バリスタライセンスをとらないといけないから。」
「頑張れよ。あぁ。それから、それを習いたいからといって、葵と二人っきりにはなるな。」
「そうね。別の勉強を勧められそうだわ。」
「そうなれば、助けに行く。何を置いてでもな。」
「……えぇ。ありがとう。」
「じゃあ、また。」
バイクの輪留めをとり、エンジンをかけると行ってしまった。
私はそのテールランプを見て、自分のアパートに戻ろうとした。本格的に頭が痛い。頭痛薬でも飲んでおこうか。少しは紛れるかもしれない。
階段を上り、自分の家の玄関のドアの鍵を開けた。そして自分の分の食事を用意した。そのとき、バッグの中の私の携帯電話が鳴る。取り出してその相手を見た。
「……。」
茅さんだった。自然に通話ボタンを押す。
「もしもし。」
「帰ってるか?」
「えぇ。何かあった?」
「そっか。俺、まだ残業しててさ。」
「寄り道してるからでしょう?」
「ふん。結果的には会社のための行動だった。あいつがそんなことを言うとは思ってなかったからな。」
「遊びでつきあってるとでも思ってたの?」
「あぁ。思ってたね。それか、百合を忘れるためにつきあってると思ってた。」
「……結果は違ったってわけね。悪いけど。」
ごそっと言う音がした。そしてばたんという音。ドアを閉めた音だった。
「でもまだわからない。お前だってわからないだろう?子供のことだって、百合のことだって、切れているかわからない。それが不安なんだろう?」
そうだ。不安といえば不安だ。その気持ちを持ったまま一緒になっていいはずはない。でも……。
「疑い出したらきりはないわ。」
「お前さ……。」
「茅さん。もう「二度」はない。わかったでしょう?」
「やだね。」
かちっという音がした。きっとライターをつけた音だ。
「俺はお前に惚れている。葵でも柊でもない。きっとお前が幸せになれるのは、俺と一緒にいるときだけだ。それに……きっとお前も俺を忘れられないはずだ。今日、したのか?」
「下世話な質問。」
「してねぇな。」
「時間がなかったのよ。」
「今夜、俺が今度お前の所に行ってやるよ。」
「来ないで。」
「ツレねぇな。」
「体調悪い女に突っ込むようなまねをするのが、あなたの優しさなの?」
その言葉にはさすがに言葉に詰まったらしい。
「ふん。だったらいつがいい?」
「もう無い。」
「しつこい女。まぁいいや。いつでもチャンスはあるからな。」
電話を切り、ため息を付いた。そして食事の用意をして、テレビの横にある引き出しの救急箱を取り出し、鎮痛剤を取り出す。
うーん。鎮痛剤じゃなくて風邪薬かもしれないな。
そして再び部屋に戻ってくると、彼はベッドに座って私を呼ぶ。隣に座れってことなのかな。私はその隣に座ろうとすると彼は首を横に振る。
「どこに座るの?」
「ここ。」
そういって彼が指さしたのは、彼の足の間だった。ちょっと。これ恥ずかしくない?でもまぁ今更恥ずかしいがるようなことじゃないか。
私は彼の足の間にはまるように座ると、彼は私を抱きしめた。
「どさくさに紛れた。」
「何が?」
「もっとちゃんと言うつもりだったのに。」
「でも前に籍入れたいって言ってたわ。」
「あぁ。でも式のことは言ってなかった。」
「そうね。だから最近忙しそうだったのね。」
「……あぁ。」
少し言葉に詰まった気がする。でもここからじゃ彼の顔が見れない。どんな表情をしているのかわからないけれど、照れていると思う。そう思いたい。
「それに……一度、外の世界を見てみたいとも思う。」
「外の世界?」
「正直、茅が羨ましくてな。あんな風に海外を渡っている姿を見ると、自分の世界が狭く感じる。お前はそう思わないか?」
そうかもしれない。あんな人が身近にいると、この町の中での世界しか知らないのは、損をしている気分になるだろう。
「私は柊がいればいい。」
「桜。」
「見るもの、触るもの、あなたと一緒に感じていたい。それが外の世界だろうと、この町だろうと、他の町だろうと、どこでもいい。」
彼が抱きしめている腕の力が強くなった。
「可愛い奴だな。今日は疲れているだろうから、何もしないと思ってたのに。」
「何もしてくれないの?」
すると彼は私に携帯電話をとるように言った。そしてその画面を見て、ため息を付いた。
「あまり時間がないな。茅が来たお陰で、時間が無くなった。くそ。それだけは空気の読めない奴だ。」
狙っていた。とも言える。でも彼の気持ちには決して答えられない。やっぱり私が好きなのは柊さんなのだから。
「柊。」
私は体を彼の方に向けた。そして膝を立てると、彼の唇にキスをした。そして彼の口内に舌を差し込む。
「んっ……。」
いつもと違う。上から彼を見下ろすように、キスをした。そして首もとに唇を寄せる。
「やめろ。抑えが効かなくなる。」
「私にさせて。」
「俺だけ気持ちよくなっても……んっ。桜。どこでそんなことを覚えたんだ……。またあの友達か?」
「うん。」
「いい友達を持ってるな。お前は。」
彼は頬を赤くさせて、私の頭を撫でた。
ごめんなさい。柊さん。これをしているのは、私のためでもあるのだから。
きっと今日あなたとセックスをしたら、きっと茅さんを重ねてしまう。茅さんとの関係はきっとあなたは疑っていない。
でも私はあなたのことが好き。愛してる。一緒になりたいっていわれて嬉しい。
だけどあなたのことを少しでも疑う気持ちがあって、それにつけ込んだ人がいるってことを忘れないで。
少し頭が痛いかも。私はそう思いながら、柊さんとアパートを出た。そして駐輪場へ向かう。ヘルメットをかぶる前、彼は唇を合わせてきた。
「ゆっくりする時間が無くて悪かったな。」
「いいの。私もこれから忙しくなるから。」
「そうか。試験があるのか。」
「うん。それに……バリスタライセンスをとらないといけないから。」
「頑張れよ。あぁ。それから、それを習いたいからといって、葵と二人っきりにはなるな。」
「そうね。別の勉強を勧められそうだわ。」
「そうなれば、助けに行く。何を置いてでもな。」
「……えぇ。ありがとう。」
「じゃあ、また。」
バイクの輪留めをとり、エンジンをかけると行ってしまった。
私はそのテールランプを見て、自分のアパートに戻ろうとした。本格的に頭が痛い。頭痛薬でも飲んでおこうか。少しは紛れるかもしれない。
階段を上り、自分の家の玄関のドアの鍵を開けた。そして自分の分の食事を用意した。そのとき、バッグの中の私の携帯電話が鳴る。取り出してその相手を見た。
「……。」
茅さんだった。自然に通話ボタンを押す。
「もしもし。」
「帰ってるか?」
「えぇ。何かあった?」
「そっか。俺、まだ残業しててさ。」
「寄り道してるからでしょう?」
「ふん。結果的には会社のための行動だった。あいつがそんなことを言うとは思ってなかったからな。」
「遊びでつきあってるとでも思ってたの?」
「あぁ。思ってたね。それか、百合を忘れるためにつきあってると思ってた。」
「……結果は違ったってわけね。悪いけど。」
ごそっと言う音がした。そしてばたんという音。ドアを閉めた音だった。
「でもまだわからない。お前だってわからないだろう?子供のことだって、百合のことだって、切れているかわからない。それが不安なんだろう?」
そうだ。不安といえば不安だ。その気持ちを持ったまま一緒になっていいはずはない。でも……。
「疑い出したらきりはないわ。」
「お前さ……。」
「茅さん。もう「二度」はない。わかったでしょう?」
「やだね。」
かちっという音がした。きっとライターをつけた音だ。
「俺はお前に惚れている。葵でも柊でもない。きっとお前が幸せになれるのは、俺と一緒にいるときだけだ。それに……きっとお前も俺を忘れられないはずだ。今日、したのか?」
「下世話な質問。」
「してねぇな。」
「時間がなかったのよ。」
「今夜、俺が今度お前の所に行ってやるよ。」
「来ないで。」
「ツレねぇな。」
「体調悪い女に突っ込むようなまねをするのが、あなたの優しさなの?」
その言葉にはさすがに言葉に詰まったらしい。
「ふん。だったらいつがいい?」
「もう無い。」
「しつこい女。まぁいいや。いつでもチャンスはあるからな。」
電話を切り、ため息を付いた。そして食事の用意をして、テレビの横にある引き出しの救急箱を取り出し、鎮痛剤を取り出す。
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