彷徨いたどり着いた先

神崎

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ブレスレット

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 二時間か。功太郎は食事を終えると食器を洗い、お茶を淹れたカップを手にしてテーブルに置いた。
「お前、ココアがいいんだっけ。」
 テレビが終わってチャンネルを変えていた香は、功太郎の方を見ると首を横に振った。
「去年だっけ。ココアが好きって。」
「あぁ。」
「最近、飽きちゃったのかな。甘くてあまり飲めないんだよね。」
「そう。お茶で良いか。」
 味覚も大人になりつつあるのだ。ジュースよりもお茶だし、ココアよりもコーヒーになってくる。
「新しい兄ちゃんってどんなんだよ。」
 すると香は口をとがらせて言う。
「隣に座っててさ。莉子さんが言ったからかな。どっちか年上なのかわからないって。それからずっとなんかすごい文句言ってくる。」
「文句?」
「体は大人なのに子供っぽいとか。」
「そのまんまだな。」
 お茶を口に入れると、香の方をみる。ありふれたAVのように体を求めてこないだけましか。功太郎はそう思いながら、カップを置く。
「功君。」
「ん?」
「兄さんになる人がさ、あたしはもう処女じゃないはずだって言ってたの。処女って何?」
 すると功太郎は少し笑った。そんなことを言うのは何となく、子供っぽいと思ったのだ。
「んー……。まぁつまりだ。セックスの経験があるとかないとか。」
「お母さんがしてたやつ?あれ別に悪いことじゃないって、同級生も言っててさ。仲がいい子が居るの。その子、この間のクリスマスの時にしたって。」
「は?早すぎねぇか?」
 小学校で経験があるということがちょっと異常だと思った。だが元々香はそうやって育ってきたのだ。その善し悪しも分からないのかもしれない。
「誰と?」
「兄さんの友達って言ってた。」
「ふーん……。ロリコンかな。」
「ロリコン?」
「お前みたいなのを相手にする奴。本当はもっと大人になってすることじゃん。」
「いつになった大人になるの?」
「自分で自分の責任がとれるようになったら。」
 すると香は少し首を傾げた。
「わかんねぇか?」
「うーん……。」
「保健体育とかで知っただろ?セックスすると子供が出来るんだ。そりゃ、避妊具なんてものもあるけど百パー子供が出来ないとは限らないんだ。もし今香に子供が出来たらどうする?」
「困る。お姉ちゃんもお父さんも悲しむから。」
「子供ってのは祝福されて、よく産まれてきたねって言われながら産むもんだ。産まれて困るようなら作らない方が良い。」
「そっか……。」
 香はそう言って少し笑う。だが頭の中では友達の言葉が響いていた。
「何か痛かったの。でもどんどん気持ちよくなるし、声を出すほど喜んでくれるし。じゃなくても自然と声が出るんだ。するとめっちゃ幸せな気持ちになれるよ。」
 そう言った同級生は大人びて見えた。香よりも背が低く、大人っぽく見えないのに妙に自信があるような気がした。
 セックスをすれば自分もそうなれるのだろうか。そしてその相手は功太郎じゃないと意味が無い気がする。
「功君。」
「何だよ。」
 功太郎はリモコンを手にして、ニュースに切り替えようとした。するとその手に香が手を重ねてくる。
「見たいのがあるのか?」
「ううん。あのね……。」
 香はその手を重ねたまま、功太郎に近づいていく。だが功太郎は後ろに下がっていった。
「何だよ。」
「……キスしたい。」
 顔から火が出そうだ。そんなことを香の口から言うこと自体が、恥ずかしい。
「あのな……香。」
「わかってる。功君が大人だもん。あたしまだ十二だもん。咽喉って言われて辞書でひいたから、意味もわかるよ。でも……押さえきれない。大人になるまで我慢しないといけない?大人っていつ?あたし……。」
 過呼吸になりそうなくらい一気に話している。ここまで功太郎は思われたことはなかった。さっき女が今の彼氏と別れたら、次に付き合わない?と言われたように、女なんて男を消費するものくらいにしか思っていなかったのに。
 こんなに一生懸命自分の想っていることを告げる香が、可愛いと思えてきた。
 功太郎はその手を引き寄せると、香を抱きしめる。しっかり大人の感触がした。柔らかくて、でも運動をしているからか少し堅い。
「香。」
 すると功太郎の背中に香の手が伸びてきた。
「功君。」
「功太郎って呼べよ。」
「功太郎。」
 少し笑うと、抱きしめたまま頭を撫でる。そして少し香を離すと、香の顔は涙でぐじょぐじょになっていた。
「ひどい顔だな。」
「ひどい。功太郎。」
 どんと胸を拳で叩かれる。だがそんなに強くない。少し功太郎も笑い、その顔を拭った。頬を撫でると、お互いに顔を近づけ合う。
 軽く唇が触れ香を離すと、香は顔を赤くさせて功太郎を見上げている。
「今……した?」
「うん。」
 功太郎の中では、これくらいはセーフだと思っていた。これくらいなら外国では挨拶だろうと思ったから。まだ臆病な自分が顔をのぞかせる。
 すると香が功太郎の膝に手をおいて、体を近づけてくる。
「ちょ……。」
 焦って避けようとした。だが香はまた功太郎に近づいてくる。そしてまた唇を重ねた。だがその中までは入ってこない。そこまではわからないのだろう。
「へへっ。」
「お前なぁ……。」
「ん?」
「そんなこと、誰にもさせるんじゃないぞ。」
「え?駄目なの?」
「誰かにさせてんのかよ。」
「この間、俊君としたよ。」
 その言葉に功太郎は思わずテレビのリモコンを落としかけた。俊とキスをしたというのだろうか。あんなに香には興味がなさそうだったのに。
「あ、ねぇ。これ可愛い。頂戴。」
 もう香の興味は違うところにある。カラーボックスの上に置いておいたガラスか何かが入っているブレスレットを手にした。それはこの間、純達と飲みにいったときに露天商が売っていたものだった。
 流れで買ったは良いが、持て余していたものだった。そもそも装飾品は苦手で、肌に合わないこともある。
「あぁ。良いよ。」
 初めてのキスは、自分ではなかった。その事実に功太郎は気もそぞろだった。
「香。」
 きらきらしているブレスレットを眺めている香に声をかける。そして功太郎は香の腕をぐっと引き寄せると、無理矢理のように唇を重ねる。
「ん……ん!んー?」
 唇を舌で割り、その中を舐めあげる。抵抗していたようだが、香も徐々にそれに答えているようだった。
「……功太郎……。」
「今みたいなのは俺しか駄目だから。」
「……うん……。」
 床に落ちているブレスレットを拾い、香は少しうつむいていた。
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