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電車に乗って、香が住んでいる町の方へ向かう。そこはマンションやアパートもある住宅街で、少し行けば団地がある。その一角に、香や弥生、そして二人の父親が住んでいる部屋があるのだ。
功太郎はそこへ何度か行ったことがある。弥生がカレーを作っただの、シチューを作っただの、要は大量に作って余裕があれば功太郎を呼んでいたのだ。
それに功太郎は悪い気はしていない。それに弥生の食事は美味しい。施設で食べたような感じの味がする。響子が作ったものも美味しいが、大量に作った方が美味しい料理というものもある。
今日はおでんらしい。寒い季節にはぴったりだった。
団地の中に足を踏み入れ、その三階にたどり着く。チャイムを鳴らすと、香の声が聞こえた。
「はーい。あ、功君。」
「おでんだって?」
「うん。今日のおでん超美味しいよ。温まるし。俊君なんか卵二つも食べたんだから。」
俊もいるのか。心の中で少し舌打ちをして、部屋に入る。するとリビングに俊の姿がある。どうやらソファに腰掛けて、ローテーブルにテキストを広げている。どうやらテストがあるらしく、そのやり方を俊が教えていたらしい。
「あ、功太郎さん。」
「お疲れ。お前も試験があるのに、香に付き合ってていいのか?」
「そうは思うんですけどね。」
するとキッチンにいた香が文句があるように言う。
「だってぇ。明日のテスト自信ないよ。あいつ、走るの早いのに頭はバカだとか言われたくないもん。」
「その通りじゃん。」
「もー!功君ったら。」
その会話に俊は苦笑いをする。だが香は頭が悪い方ではない。経済的に余裕があれば、おそらく私立の中学へ行けるほどだろう。
「俊は進学組にいるんだっけ?」
「はい。まぁ……文系の大学へ行きたいと思ってるんですけどね。」
「文系ねぇ。」
少しでもあの女性に近づきたい。その一心だった。文系の大学を出れば出版社とかに行ける気がするが、叔母である絵里子を見ているとその気は徐々に失せる。朝も昼も夜もなく作家に付き添い、スランプだと言えば書いて貰うためにどうすればいいか一緒に考え、機嫌をとり、たまには酒を飲むこともある。
絵里子はその本意ではないことばかりをしていて、そのストレス発散にたまにどんと有休を取って海外へ行くこともあった。それは最近、俊の父親の兄である絵里子の夫も一緒について行くらしい。場所によっては夫婦であることを歓迎されることもあるのだ。
「本は好きだけどなぁ。買う金なんか無かったし。立ち読みか図書館ばっかだったな。」
「どんなジャンルが好きですか?」
俊はそう言って食いついてきた。するとご飯を受け取った功太郎は、最近読んだ本を思い浮かべる。
「ミステリー買いている女がいるじゃん。犯人がとんでもない奴でさ。何て言ったっけ……あぁ「白夜」って本を書いてる女の本。」
「本当ですか?俺もあの作家なら「白夜」が一番好きで。あと……。」
きらきらした目で語っている。よっぽどその作家が好きなのだろうか。
だがすぐに俊は自分のポケットに入っている携帯電話を手にした。そこにある名前を確認すると、ため息をついた。
「俺、ちょっと出てきます。」
「どうしたんだ。こんな夜に外に出ると、補導されるぞ。」
「アパートの前ですから。父の部下が来てるらしいので。じゃあ、香。あとは良いだろ?」
「うん。あとは自分で何とかするよ。ありがとう。俊君。」
そう言って俊は部屋を出ていく。
そのあと部屋の中に残っているのは香と功太郎だけだ。功太郎はこんにゃくを食べながら、香に聞く。
「弥生さんは?」
「今日、お休みだから瑞希さんのところに行くって。」
この場合の瑞希のところというのは、「flipper」のことだろう。ドラムだったかベースだったかをしているはずだ。
「父親は?」
父親にも会ったことがある。育ての父とは全くタイプの違う人で、よく今まで生きてこられたなと言うくらいお人好しだった。だからこそ、営業が出来ているのだろう。
「もうちょっとで帰ってくるのかなぁ。結構出張だったり、接待とか忙しいから。」
「なるほどな。」
この部屋にさっきまで俊と二人だったのだ。そして今は功太郎と二人でいる。香がいくら大人びて見えるとはいえ歳も離れているし、功太郎の良心を信じて弥生は瑞希の元へ行ったのだ。
だから裏切りたくない。なのに香は無防備だった。この冷えているのに、平気でミニスカートを履いていたりして、ソファに座っているとその太股が目の毒だ。
それに春頃に比べると背も高くなったし、胸も大きくなった感じがする。大人になりかけている体なのに、頭の中は相変わらず小学生のままだった。
「ねー功君。聞きてくれる?」
おでんの厚揚げを皿に入れた功太郎の向かいに香が座る。
「俺、勉強はわかんねぇよ。勉強は苦手だったし。」
「そうじゃないよ。あのね。男子たちがいつも言ってるの。あたしのおっぱいがちょっと太めの男の子のおっぱいくらいあるねって。そのこのおっぱい揉んで、あたしの名前言うの。何かムカつかない?」
「……アホだろ。その男たち。」
小学生とはそんなものなのだろうか。性的に興味を持つ年頃ではあるが、それを表立って言うのはバカだと思う。中学生くらいになれば、その理性はきくのであまりそういうことを言わないのだろうに。
「でもさ。おっぱいって男の人が揉んでそんな気持ちいい?」
「男にゃねぇからな。」
「自分で触っても気持ち良くないよ?」
「そうなのか?」
一度響子のベッドで、響子の胸を揉んだことがある。あの柔らかさを最近忘れていた気がする。そして響子が好きだと言うことも、少し忘れていたのかもしれない。
「功君。おでん食べてからで良いからさ。ちょっと揉んでくれない?」
お茶を噴きそうになった。思いっきりせき込んで、功太郎は香の方を見る。
「だめだ。だめだめ。」
「なんで?けち。」
「けちとかそんな問題じゃないんだよ。そういうのは好きな男にして貰うものなんだよ。」
「でもさぁ。」
「駄目だって。」
おでんの汁をご飯にかけて口に入れる。これが好きだった。だがその味気が一気になくなった感じがする。箸を置くと、器をキッチンに戻す。
「ご馳走さん。あぁ、香。これみんなで食って。」
そういって功太郎はいつもここで何かご馳走になると、いつもお土産をおいて帰る。今日はプリンを三つもってきた。
「わーい。あとで食べよう。」
香もそういってキッチンに入ると、そのプリンを手にして冷蔵庫に入れる。さっきのことは忘れたのかもしれない。そう思いながら、もう帰ろうと思い、床に置いているバッグを手にしようとしゃがみ込んだときだった。背中に温かくて柔らかいものがのしかかってくる。それは香の体だった。
「やめろよ。」
思わずふりほどいた。そして香を見る。
「やなの?あたし、功君が好きなんだよ。」
「駄目だって。俺……は駄目。ほら俊とか、同級生とか居るだろ?そんなことをいうヤツは、お前に気があるんだよ。そういうヤツと付き合えばいいじゃん。」
「やだ。功君じゃないと駄目なの。」
自分と重なって見えた。響子に言い寄っている自分。響子もこんな気分だったのだろうか。
そのとき香の手が功太郎の手をつかむ。そして自分の胸に持ってきた。そこは小降りながらもしっかり柔らかく、大人の体があった。
「……香。駄目だから。」
手を引こうと思った。だがその柔らかさに、手が放せない。成長途中の胸は柔らかさの中に少し堅さがあるようだった。
「……んっ……。自分で触るのと違う……。」
徐々に香の顔が赤くなる。駄目だ。これ以上してはいけない。
そのとき玄関のドアが開く音がした。その音に、あわてて功太郎は手をふりほどく。そしてバッグを持った。リビングのドアを開けて入ってきたのは、香の父親だった。
「ただいま。おや。君は……。」
「飯をご馳走になってました。ご馳走さんです。」
「あぁ。どうしても香一人だとね。ちょっとこの都会だし、不安になったから呼んだんだろうね。弥生も。変わったことはなかったか?」
ネクタイを緩めて、父親は香の頭をなでる。すると香はさっきまでの行為を忘れたように少し笑って答えた。
功太郎はそこへ何度か行ったことがある。弥生がカレーを作っただの、シチューを作っただの、要は大量に作って余裕があれば功太郎を呼んでいたのだ。
それに功太郎は悪い気はしていない。それに弥生の食事は美味しい。施設で食べたような感じの味がする。響子が作ったものも美味しいが、大量に作った方が美味しい料理というものもある。
今日はおでんらしい。寒い季節にはぴったりだった。
団地の中に足を踏み入れ、その三階にたどり着く。チャイムを鳴らすと、香の声が聞こえた。
「はーい。あ、功君。」
「おでんだって?」
「うん。今日のおでん超美味しいよ。温まるし。俊君なんか卵二つも食べたんだから。」
俊もいるのか。心の中で少し舌打ちをして、部屋に入る。するとリビングに俊の姿がある。どうやらソファに腰掛けて、ローテーブルにテキストを広げている。どうやらテストがあるらしく、そのやり方を俊が教えていたらしい。
「あ、功太郎さん。」
「お疲れ。お前も試験があるのに、香に付き合ってていいのか?」
「そうは思うんですけどね。」
するとキッチンにいた香が文句があるように言う。
「だってぇ。明日のテスト自信ないよ。あいつ、走るの早いのに頭はバカだとか言われたくないもん。」
「その通りじゃん。」
「もー!功君ったら。」
その会話に俊は苦笑いをする。だが香は頭が悪い方ではない。経済的に余裕があれば、おそらく私立の中学へ行けるほどだろう。
「俊は進学組にいるんだっけ?」
「はい。まぁ……文系の大学へ行きたいと思ってるんですけどね。」
「文系ねぇ。」
少しでもあの女性に近づきたい。その一心だった。文系の大学を出れば出版社とかに行ける気がするが、叔母である絵里子を見ているとその気は徐々に失せる。朝も昼も夜もなく作家に付き添い、スランプだと言えば書いて貰うためにどうすればいいか一緒に考え、機嫌をとり、たまには酒を飲むこともある。
絵里子はその本意ではないことばかりをしていて、そのストレス発散にたまにどんと有休を取って海外へ行くこともあった。それは最近、俊の父親の兄である絵里子の夫も一緒について行くらしい。場所によっては夫婦であることを歓迎されることもあるのだ。
「本は好きだけどなぁ。買う金なんか無かったし。立ち読みか図書館ばっかだったな。」
「どんなジャンルが好きですか?」
俊はそう言って食いついてきた。するとご飯を受け取った功太郎は、最近読んだ本を思い浮かべる。
「ミステリー買いている女がいるじゃん。犯人がとんでもない奴でさ。何て言ったっけ……あぁ「白夜」って本を書いてる女の本。」
「本当ですか?俺もあの作家なら「白夜」が一番好きで。あと……。」
きらきらした目で語っている。よっぽどその作家が好きなのだろうか。
だがすぐに俊は自分のポケットに入っている携帯電話を手にした。そこにある名前を確認すると、ため息をついた。
「俺、ちょっと出てきます。」
「どうしたんだ。こんな夜に外に出ると、補導されるぞ。」
「アパートの前ですから。父の部下が来てるらしいので。じゃあ、香。あとは良いだろ?」
「うん。あとは自分で何とかするよ。ありがとう。俊君。」
そう言って俊は部屋を出ていく。
そのあと部屋の中に残っているのは香と功太郎だけだ。功太郎はこんにゃくを食べながら、香に聞く。
「弥生さんは?」
「今日、お休みだから瑞希さんのところに行くって。」
この場合の瑞希のところというのは、「flipper」のことだろう。ドラムだったかベースだったかをしているはずだ。
「父親は?」
父親にも会ったことがある。育ての父とは全くタイプの違う人で、よく今まで生きてこられたなと言うくらいお人好しだった。だからこそ、営業が出来ているのだろう。
「もうちょっとで帰ってくるのかなぁ。結構出張だったり、接待とか忙しいから。」
「なるほどな。」
この部屋にさっきまで俊と二人だったのだ。そして今は功太郎と二人でいる。香がいくら大人びて見えるとはいえ歳も離れているし、功太郎の良心を信じて弥生は瑞希の元へ行ったのだ。
だから裏切りたくない。なのに香は無防備だった。この冷えているのに、平気でミニスカートを履いていたりして、ソファに座っているとその太股が目の毒だ。
それに春頃に比べると背も高くなったし、胸も大きくなった感じがする。大人になりかけている体なのに、頭の中は相変わらず小学生のままだった。
「ねー功君。聞きてくれる?」
おでんの厚揚げを皿に入れた功太郎の向かいに香が座る。
「俺、勉強はわかんねぇよ。勉強は苦手だったし。」
「そうじゃないよ。あのね。男子たちがいつも言ってるの。あたしのおっぱいがちょっと太めの男の子のおっぱいくらいあるねって。そのこのおっぱい揉んで、あたしの名前言うの。何かムカつかない?」
「……アホだろ。その男たち。」
小学生とはそんなものなのだろうか。性的に興味を持つ年頃ではあるが、それを表立って言うのはバカだと思う。中学生くらいになれば、その理性はきくのであまりそういうことを言わないのだろうに。
「でもさ。おっぱいって男の人が揉んでそんな気持ちいい?」
「男にゃねぇからな。」
「自分で触っても気持ち良くないよ?」
「そうなのか?」
一度響子のベッドで、響子の胸を揉んだことがある。あの柔らかさを最近忘れていた気がする。そして響子が好きだと言うことも、少し忘れていたのかもしれない。
「功君。おでん食べてからで良いからさ。ちょっと揉んでくれない?」
お茶を噴きそうになった。思いっきりせき込んで、功太郎は香の方を見る。
「だめだ。だめだめ。」
「なんで?けち。」
「けちとかそんな問題じゃないんだよ。そういうのは好きな男にして貰うものなんだよ。」
「でもさぁ。」
「駄目だって。」
おでんの汁をご飯にかけて口に入れる。これが好きだった。だがその味気が一気になくなった感じがする。箸を置くと、器をキッチンに戻す。
「ご馳走さん。あぁ、香。これみんなで食って。」
そういって功太郎はいつもここで何かご馳走になると、いつもお土産をおいて帰る。今日はプリンを三つもってきた。
「わーい。あとで食べよう。」
香もそういってキッチンに入ると、そのプリンを手にして冷蔵庫に入れる。さっきのことは忘れたのかもしれない。そう思いながら、もう帰ろうと思い、床に置いているバッグを手にしようとしゃがみ込んだときだった。背中に温かくて柔らかいものがのしかかってくる。それは香の体だった。
「やめろよ。」
思わずふりほどいた。そして香を見る。
「やなの?あたし、功君が好きなんだよ。」
「駄目だって。俺……は駄目。ほら俊とか、同級生とか居るだろ?そんなことをいうヤツは、お前に気があるんだよ。そういうヤツと付き合えばいいじゃん。」
「やだ。功君じゃないと駄目なの。」
自分と重なって見えた。響子に言い寄っている自分。響子もこんな気分だったのだろうか。
そのとき香の手が功太郎の手をつかむ。そして自分の胸に持ってきた。そこは小降りながらもしっかり柔らかく、大人の体があった。
「……香。駄目だから。」
手を引こうと思った。だがその柔らかさに、手が放せない。成長途中の胸は柔らかさの中に少し堅さがあるようだった。
「……んっ……。自分で触るのと違う……。」
徐々に香の顔が赤くなる。駄目だ。これ以上してはいけない。
そのとき玄関のドアが開く音がした。その音に、あわてて功太郎は手をふりほどく。そしてバッグを持った。リビングのドアを開けて入ってきたのは、香の父親だった。
「ただいま。おや。君は……。」
「飯をご馳走になってました。ご馳走さんです。」
「あぁ。どうしても香一人だとね。ちょっとこの都会だし、不安になったから呼んだんだろうね。弥生も。変わったことはなかったか?」
ネクタイを緩めて、父親は香の頭をなでる。すると香はさっきまでの行為を忘れたように少し笑って答えた。
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