テロリストと兵士

神崎

文字の大きさ
上 下
98 / 283

#97#

しおりを挟む
 藍に抱かれるとこんな感じなのかもしれない。大きな手が銘の胸先を摘み、わずかに刺激が加わると思わず声を上げそうになる。
「どうした。もう余裕がないのか。」
 乱暴に摘んで引っ張り上げられた夕べとは違う。傷ができているらしくてわずかに痛みを感じていたが、悦がそこに舌を這わせてくると銘は思わず声を上げた。
「んっ……。」
 こんなにねちっこく愛撫をされたことがあるだろうか。鼠になり、こういうことにも慣らしていたのは累だけじゃない。自分だってそうだ。だがそれは乱暴なセックスでしかあり得ない。
 こんなに大事なモノを扱うように愛撫されたことはない。だから累が羨ましかった。
 彩とのセックスは乱暴で、自分のことしか考えない行為だっただろう。だが藍と出会って変わった。藍はきっとこんな風に彼女を抱くのだから。
「綺麗な色だな。慣らされてるように見えたが、あまり舐められたこともなかったのか。」
「あまり……こんな風にされたことはないの……。」
「え?」
「バイブ使われたり、ローターで責められたり、乳首は洗濯バサミで挟まれたこともある。」
 その言葉に彼は少しうつむいた。夕べ、彼がしたことばかりだ。それでも彼女が喘いでいた。だから慣れた淫乱な女なのだろうと思っていたのに。
「……銘。」
「気にしないで。先にイった方が負けなんでしょう?」
 悦の周りもそんな女ばかりだったのは、彼も花街の出で藍ほどではないが貧しかった。
 程なく彼も男娼を始めた。精通したときから客を取らなければ、飢えて死ぬ。叩いて、縛って、それでも彼を求めるような女ばかり相手にしていた。だが彼女は違う。
 指で少し乳首をぎゅっと握るだけで高く喘ぎ、とろけるような目で自分を見る。愛されていると勘違いしそうだった。この死んだ女に似ている女を重ねてしまう。
「ここ、もうすごい濡れてる。夕べのヤツも出てきてるみたいだ。」
「あっ……ダメ。クリ……まだ触らないで。」
「どうして?気持ちいいんだろう?」
「あたしが責めてないのに、あたしが先にイってあなたが勝つのはいやよ。」
「勝負にこだわるヤツだ。だったらすぐ入れていいのか。」
 彼は自分のそそり立ったそれを、彼女の性器にすり付ける。ぬるっとしてすぐに入りそうだった。
「すぐにイかせてヤるわ。」
 強気な言葉を口にしなければ、心が折れる。本気で好きになってしまう。
「ん……すごい熱い。お前の中、すごい熱いな。」
 ぐっと彼のモノが入ってきた感覚がする。太い彼のモノは、彼女を喘がせるには十分だった。
「あっ……。あっ……。太い……奥まで……んあっ……ダメ。ああっ……。」
 演技かと思った。だが彼女を抱き上げて、その下から打ち込むと彼女はぎゅっと彼の体に手を伸ばしてくる。
「あっ……。」
「銘。お前のここ、締まってきたな。」
「あなたのも……固くなってる。大きいわ……。ああっ……。」
「すごい濡れてる。ぐちゃぐちゃだ。銘。顔をこっちに向けろ。そう……。」
 彼はそういうと彼女のその赤い唇にキスをした。舌で十分に愛撫するように舐め上げる。少し傷のような感覚があり、そこを舐めると彼女は感じながらも痛みも同時に感じたようだ。
「だらしない口元だ。」
「あなたもこんなに頬が赤いわ。耐えてるの?いいのよ。イって。」
「お前こそイきそうなんだろう?ほら。ここを突くと良いところに当たるんだろう?」
 腰を打ち付けるとまた喘ぐ。そしてまた絞まってくるし、ぐちゃぐじゃと音を立てる。やがて彼女は細かく震えてきた。
「ああっ……。」
「銘。んっ。ああっ!」
「ああああ!ダメ。もうダメっ!悦。悦。」
「銘。イく?いくっ!俺もイく!」
 吐息が激しくなり、銘はぎゅっと悦を抱きしめ、そして悦は銘の中に注ぎ込んだ。
「はっ……はっ……。」
 しばらく二人で抱きしめあい、ゆっくりと離すと目を合わせた。そしてどちらともなく唇を重ねた。
「どっちが先にイったの?」
「どっちもだろう?すごい中に出たな。夕べと比べものにならない。」
「本当、元気だわ。」
「お前もだろう。ほら。こんなにまだ震えてる。」
 まだ彼女の中に入ったまま、彼は彼女を抱きしめたままその背中に触れる。
「同時って事?」
「そんなことどうでも良いくらい良かった。仕事を忘れかけたな。」
「……累もこんな気持ちなのかしら。」
 藍にあって、累は変わった。どんどん人間らしくなる。人を殺すときに躊躇い無くなっていた。それは自分の感情を隠すためだと今なら思える。
「紅花様も……そう思っていたのか。」
「悦。」
「……何だ。」
「どちらも同じなら……どちらも話さない。どっちも話す。どちらかしら。」
「どっちだろうな。ただ一つ言えるのは、もう一度するということか。このままな。」
「抜かないまま?」
「抜いても良い。その時は入れないままイかせてヤる。」
「夕べさんざんしておいて、まだするの?」
「そういうお前もまだ腰が動いてる。欲しいのか。本当に第四兵団に投げ込んでやろうか。淫乱な女。」
「あなたは精力馬鹿ね。」
 そういって二人で笑いあう。そしてまた唇を重ねた。そして彼が彼女の中から出て行くと、ドロッとした精液と彼女の愛液がシーツを濡らした。
 それをみて彼女はその性器に口を付ける。

「恋人にするように……ねぇ。」
 紫練はそういいながらそのドアをそっと閉めた。きっと悦の心が揺れて銘に倒れ込んでしまった。それならそれでかまわない。だがいずれ銘は殺さないといけないだろう。
 累のことが表に出るわけにはいかないし、それによって自分がしていることが表に出るのも避けたい。
 累はすべてを知っている。知らないのは藍のことだけだ。
「紫練様。」
 向こうから帯がやってくる。彼をみて紫練は口元だけで微笑む。
「帯。紅花殿へ指令を。」
「何をですか。」
「捕らえた女は自ら鼠であることを自白した。よって第四兵隊の慰み者にした後、処刑するように。」
「……紫練様。殺すのであれば、それだけで十分では?」
「……表向きには鼠はテロリスト。王家に逆らえばそうなるというさらし者にするの。」
 彼女はそういってヒールを鳴らしながら教会へ向かった。その足音は軽やかで、すっきりしている。それだけ彼女が非情なのだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

[R18] 18禁ゲームの世界に御招待! 王子とヤらなきゃゲームが進まない。そんなのお断りします。

ピエール
恋愛
R18 がっつりエロです。ご注意下さい えーー!! 転生したら、いきなり推しと リアルセッ○スの真っ最中!!! ここって、もしかしたら??? 18禁PCゲーム ラブキャッスル[愛と欲望の宮廷]の世界 私って悪役令嬢のカトリーヌに転生しちゃってるの??? カトリーヌって•••、あの、淫乱の••• マズイ、非常にマズイ、貞操の危機だ!!! 私、確か、彼氏とドライブ中に事故に遭い•••• 異世界転生って事は、絶対彼氏も転生しているはず! だって[ラノベ]ではそれがお約束! 彼を探して、一緒に こんな世界から逃げ出してやる! カトリーヌの身体に、男達のイヤラシイ魔の手が伸びる。 果たして、主人公は、数々のエロイベントを乗り切る事が出来るのか? ゲームはエンディングを迎える事が出来るのか? そして、彼氏の行方は••• 攻略対象別 オムニバスエロです。 完結しておりますので最後までお楽しみいただけます。 (攻略対象に変態もいます。ご注意下さい)   

処理中です...