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第24話 鎖の封印って絶対に解いたらダメなやつみたいだ
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◇◇
翌朝――。
「おっはよー! ピート! あさごはん! あさごはんっ!!」
ピピのキンキンした声で目を覚ます。
大きなベッドの上。周りを見回すと目の前に置かれた椅子にもたれかかるようにしてサンが寝息を立てている。
ということはここは彼女の部屋か。ピピの声でも起きないくらいだから、きっと夜明けまで俺のことを見ていてくれたのだろう。
「ありがとな。サン」
起こさないようにそっとサンをベッドに寝かせてから、俺は部屋を出たのだった。
◇◇
「さて。朝ごはんも食ったし。ピピに色々と教えてほしいことがあるんだ」
「うん! いいよー!! ピート、ごはんくれるし、なんでもこたえるよー!!」
目を輝かせながら満面の笑みを浮かべるピピ。
ご飯だけであっさり警戒を解くとは……。
悪いヤツに騙されないか、心配になっちゃうぞ。
『食料調達シナリオの発動条件を満たしました』
そうそう、昨晩のうちに新しいシナリオをセットしておいたのをすっかり忘れてた。
発動条件は『もし食糧庫が空になったら』で、発動条件は『食糧庫を満杯にするまでモンスターを狩る』だ。
「……いってくる」
「あはは! じゃあ、がんばってくるねー!!」
探索や戦闘の好きなカーリーとエアリスが弾むような足取りで出ていく。
ちなみに今日はルナを使役して、第54層から石や岩を運んでもらっている。
水をためておく入れ物、風呂、キッチン、これらは木ではなく石を使った方がいいだろうしな。もちろんその他にも石は使い道があるだろう。集められるだけ集めておいても損はない。
あ、それからサンはオートテイムにしたから、好きなだけ寝てもらってるよ。
これまでもずっと俺の面倒を見てくれていたんだ。
こんな時くらい休ませてあげなくちゃ可哀想だもんな。
さて、話を元に戻そう。
「じゃあ、ピピ。まずは『鎖の封印』ってなんなのか、教えてくれるかな?」
「うん! えーっとね。うーんっとね――」
この後のくだりはかなり長かったので割愛する。
要約すれば『モンスターが階層をまたいで移動することができないようにするための封印』なんだそうだ。
確かにそんな封印を解かれでもしたら大問題だ。
ピピのいた洞窟を抜けると、分かれ道があって、一方は第55層へ続く階段があり、残った方は封印の宝玉が置かれた祭壇があるらしい。
というか、第51層以降はとんでもないものの目白押しだな。
51層に封印された魔王がいて、53層は魔王を封印した祭壇があって、54層にモンスターの移動を制限する封印があるなんて……。
そりゃあ、第51層以降に進む時は事前にギルドの許可が必要なのもうなずける。
そして反対したとはいえ、元仲間が大事な封印のうちの1つを解いてしまったのだから、多少の罪悪感を感じるな、やっぱり。
「鎖の封印だけは絶対に守らないとな」
「うん! だからあたしがふーいんのまえにいたんだよー! って、あれ? なんであたしこんなところにいるんだっけ!?」
おいおい、今さら事の重大さに気づくとか、いくらお子様でも許されんだろ。
「ピピ、慌てるな。第54層へ行くには、必ずここを通らなくちゃいけないからな。昨日から誰も通っていないから問題は起きないはずだ」
「そ、そーね! うん、だったら今日のゆーはんも……ダメ?」
やっぱり彼女にとっては封印より飯の方が大事みたいだ。
いや、そうじゃないよな。きっと。
ピピは再び洞窟の中でひとりぼっちになるのが嫌なんだと思う。
「分かったよ。好きなだけここにいていいから」
「わーい! ピート、だぁいすき!!」
抱きついてきたピピを受け止めながら、どうしたものかと考える。
だがあの暗がりに一人で幼女を放置するほど、俺は鬼畜ではない。
まるで深夜の墓場みたいに不気味なところだったもんな。
あんなところで一晩いただけで気がおかしくなる自信がある。
かと言って、大事な封印の守護者は絶対に必要だよな。
うむ……。どうしようか……。
……むっ。
そう言えば――。
「ピピ。ちょっと留守番をお願いできるか?」
「うん! おりこうにしてるから、おひるごはんふんぱつしてねっ!」
「ああ、うまくいったら食いたい放題食わせてやるよ」
「わーい!!」
ブンブンと手を振るピピに見送られながら、俺はモンスターハウスに向かった。
翌朝――。
「おっはよー! ピート! あさごはん! あさごはんっ!!」
ピピのキンキンした声で目を覚ます。
大きなベッドの上。周りを見回すと目の前に置かれた椅子にもたれかかるようにしてサンが寝息を立てている。
ということはここは彼女の部屋か。ピピの声でも起きないくらいだから、きっと夜明けまで俺のことを見ていてくれたのだろう。
「ありがとな。サン」
起こさないようにそっとサンをベッドに寝かせてから、俺は部屋を出たのだった。
◇◇
「さて。朝ごはんも食ったし。ピピに色々と教えてほしいことがあるんだ」
「うん! いいよー!! ピート、ごはんくれるし、なんでもこたえるよー!!」
目を輝かせながら満面の笑みを浮かべるピピ。
ご飯だけであっさり警戒を解くとは……。
悪いヤツに騙されないか、心配になっちゃうぞ。
『食料調達シナリオの発動条件を満たしました』
そうそう、昨晩のうちに新しいシナリオをセットしておいたのをすっかり忘れてた。
発動条件は『もし食糧庫が空になったら』で、発動条件は『食糧庫を満杯にするまでモンスターを狩る』だ。
「……いってくる」
「あはは! じゃあ、がんばってくるねー!!」
探索や戦闘の好きなカーリーとエアリスが弾むような足取りで出ていく。
ちなみに今日はルナを使役して、第54層から石や岩を運んでもらっている。
水をためておく入れ物、風呂、キッチン、これらは木ではなく石を使った方がいいだろうしな。もちろんその他にも石は使い道があるだろう。集められるだけ集めておいても損はない。
あ、それからサンはオートテイムにしたから、好きなだけ寝てもらってるよ。
これまでもずっと俺の面倒を見てくれていたんだ。
こんな時くらい休ませてあげなくちゃ可哀想だもんな。
さて、話を元に戻そう。
「じゃあ、ピピ。まずは『鎖の封印』ってなんなのか、教えてくれるかな?」
「うん! えーっとね。うーんっとね――」
この後のくだりはかなり長かったので割愛する。
要約すれば『モンスターが階層をまたいで移動することができないようにするための封印』なんだそうだ。
確かにそんな封印を解かれでもしたら大問題だ。
ピピのいた洞窟を抜けると、分かれ道があって、一方は第55層へ続く階段があり、残った方は封印の宝玉が置かれた祭壇があるらしい。
というか、第51層以降はとんでもないものの目白押しだな。
51層に封印された魔王がいて、53層は魔王を封印した祭壇があって、54層にモンスターの移動を制限する封印があるなんて……。
そりゃあ、第51層以降に進む時は事前にギルドの許可が必要なのもうなずける。
そして反対したとはいえ、元仲間が大事な封印のうちの1つを解いてしまったのだから、多少の罪悪感を感じるな、やっぱり。
「鎖の封印だけは絶対に守らないとな」
「うん! だからあたしがふーいんのまえにいたんだよー! って、あれ? なんであたしこんなところにいるんだっけ!?」
おいおい、今さら事の重大さに気づくとか、いくらお子様でも許されんだろ。
「ピピ、慌てるな。第54層へ行くには、必ずここを通らなくちゃいけないからな。昨日から誰も通っていないから問題は起きないはずだ」
「そ、そーね! うん、だったら今日のゆーはんも……ダメ?」
やっぱり彼女にとっては封印より飯の方が大事みたいだ。
いや、そうじゃないよな。きっと。
ピピは再び洞窟の中でひとりぼっちになるのが嫌なんだと思う。
「分かったよ。好きなだけここにいていいから」
「わーい! ピート、だぁいすき!!」
抱きついてきたピピを受け止めながら、どうしたものかと考える。
だがあの暗がりに一人で幼女を放置するほど、俺は鬼畜ではない。
まるで深夜の墓場みたいに不気味なところだったもんな。
あんなところで一晩いただけで気がおかしくなる自信がある。
かと言って、大事な封印の守護者は絶対に必要だよな。
うむ……。どうしようか……。
……むっ。
そう言えば――。
「ピピ。ちょっと留守番をお願いできるか?」
「うん! おりこうにしてるから、おひるごはんふんぱつしてねっ!」
「ああ、うまくいったら食いたい放題食わせてやるよ」
「わーい!!」
ブンブンと手を振るピピに見送られながら、俺はモンスターハウスに向かった。
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