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15話
しおりを挟む翌朝目覚めるとエマが幸せそうな顔で眠っていた。
俺はエマを起こさないようにベッドから出ると、今日は当番の日なので軽くシャワーを浴び身支度を整える。
初めてなのに理性が効かず昨日はエマに無理をさせてしまったので、俺はエマを起こさず店に降りて開店準備をしだした。
準備をしだすとアルバイトの女子大生斎藤さんが出勤してきて、その後直ぐに配送の高橋君が出勤してきた。彼らも成れた者で斎藤さんは開店準備、高橋君は休日配送の準備を始める。
「社長、今日は配送少ないですね」
「ホントは休日配送止めたいけど、レストランとか飲食店は土曜日に予定より多く売れて在庫が不安が有ると商売に影響有るからね」
「でも、今日3件しかないですよ」
「まっ配送終わったら店番しててよ、高橋君なら地下のワインセラーも説明できるでしょ」
「ワインはまだ詳しく無いけど資料が有るので大丈夫です」
「別にソムリエに成れって言わないから大丈夫だよ」
うちの店はワイン2万本以上日本酒6千種以上の在庫が有るから日曜日は遠くから結構通のお客様が来る。
日本酒の取り扱い種類はかなり自信はあるが、全国で2万種以上あるからもっと種類を増やしたいが、地酒と言われる物は美味しく飲める期間が短い、店では半年以内に売るようにしているがそれでも売れ残る。
売れ残りをどうするかと言えば利益は減るが珍しい地酒を売りにしている居酒屋が何件か有るので仕入れてもらっている、ほんと持ちつ持たれつの関係だ。
まっ日曜日の午前中なんて殆んどお客なんて来ないんだけどね、たまに朝駆け込んで来るのは建築関係の営業マンが地鎮祭だ上棟式だでお酒が必要なのに用意してなくて慌てて買いに来る人はいるけどね。
安売りの店でも買えるしのしも付けてくれるけど、そお言う店はプリンターだったりするので見栄えがしない、それにうちはのしにも拘ってるし筆でちゃんと書くしね、出来る営業はよくうちで買ってくれている、けど出来る営業は当日には買いに来ないんだけどね。
一段落ついたので店を任せエマの件を叔父さんにお願いする為に電話を掛けた。
「啓介叔父さん、お休みのところ悪いんだけど今大丈夫?」
「おお右京か大丈夫だぞ、なんか問題か?」
この人松本啓介は無くなった母の弟で有りうちの社外役員でも有り顧問弁護士でも有る人物だ。
困った事が有ればとりあえず頼めばほとんど問題無い、とってもべん・・有能な人物だ。
「ちょおっとお願いしたい事が有って」
「ついに人でも殺しちゃったか?」
「殺さねーよ」
「じゃ女か?」
「なんでそお思うんだよ」
「お前の考えなんか丸分かりだ」
「確かに女性の事で間違いないんだけど、別になにか悪い事した訳じゃないし」
「じゃあなんだ、結婚でもするのか?」
「まあゆくゆくは」
「本当か!」
「ゆくゆくはだけどな、それにちょっと問題が有るんだ、実は戸籍も国籍も無いんだ」
「無戸籍者か」
「できれば直接会って話したいんだけど、いつなら都合つく?」
「今日の午後行ってやるから、相手の女性にも会えるのか?」
「大丈夫だ」
「分かった」
俺は店を任せエマに叔父さんが来ることを伝える為に2階に上がる。
「エマ起きたか」
「ごめんなさい」
「別に謝らなくて良いよ、午後叔父さんが来るからシャワー浴びて着替えて」
「はい、急ぎます」
「別に急がなくて良いよ、それより無理させてごめんな」
「だだ大丈夫です」
「ごめんな、昨日は無理させちゃって」
そんな事を言ったら真っ赤な顔で風呂場へと向かいドアのところで振り返り。
「右京さんと一つに成れて嬉しかった」
なんちゅー可愛い生き物なのか俺もあっけに取られた、しかしそんな事に浸ってる余裕は無い、シーツを洗濯しなきゃいけないし、午後は店の事お願いしないといけないしやる事いっぱいだ。
そして啓介叔父さんが訪ねて来た。エマとの挨拶を交わし雑談を交えた後本題を切り出した。
「それでエマさんはどこの国の人なの?」
「叔父さん、それについては俺が答えます、エマはこの地球上の国の人間では在りません」
「右京、なに言ってんだ」
「エマ、偽装解いて」
エマが右手のブレスレットを外すと、人間とは思えないほど透き通る肌と特徴有る耳に変わった。
「エルフ?」
「叔父さんエルフなんって知ってるの?」
「知ってるよ」
「マジか、俺なんか最初スタートレックのミスタースポックかと思った」
「お前平成生まれの癖に古臭な、まぁ俺もしてたのは美鈴の影響だけどな」
「美鈴ちゃんの影響?」
「あいつ最近異世界物のアニメとかに嵌っててな」
「間違っても美鈴には教えないでくれよ」
「言わねーよ、こっちだって守秘義務は守るよ、ところでエマさんはどおして日本に?」
それからこれまでの経緯を話し、今後ゲートを繋ぎ向こうの世界に塩を送りながら日本で生活して生きたい事を話した。
「それで右京は結婚するつもりなのか?」
「ああ、出会った時間は短いがそのつもりだ」
「エマさんも結婚したいと思ってる?右京に無理やり言わされて無い?」
「ふざけんなよ」
「そんな事ないです、右京さんと結婚して子供たくさん欲しいです」
「そこまで聞いて無いけど、分かった」
「啓介叔父さん任せても良いのか?」
「任せろ」
「あ、ありがとうございます」
「ただし条件が有る、エマさんは松本家の養子に成る事」
「養子?」
「なんで養子なんだよ、結婚するのに」
「法律はそんな簡単な物じゃ無い、エマさんは日本語も堪能だし日本での生活は問題無いだろうけど、身元保証人は必要だそれにお前の養子に成ってから結婚するんじゃ後々面倒な事に成る」
「そおなのか?」
「プロに任せろ、エマさんも良いかな?」
「はい、お任せします」
「最低でも半年は掛かる、もしかしたらもっと掛かるかもしれない知り合いにもお願いしてできるだけ早くするから」
「分かった、よろしく頼む」
「ただし、エルフだって事は誰にもばらしちゃいけないよ」
「はい」
とりあえずエマの戸籍についてはお任せするしかない。
これからが本当の意味でのエマとの生活が始まって。
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