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第2章 元勇者の秘密
プロローグ 過去の出来事と……
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ある公園で2人の男の子と女の子が遊んでいた。
2人はこうしてよく公園に来てはブランコで遊んだり、公園にいる他の子供と一緒に鬼ごっこをしたりして遊んでいる。
しかしその日はこの2人以外に子供はおらず、2人は仲良く砂場で遊んでいた。
「ねぇねぇ見て見て清ちゃん! 俺のこの大きなお城、凄いでしょ!」
男の子は自慢げに砂場で作ったお城と見えないこともない山のようなものを、清ちゃんと呼ばれた女の子に見せる。
清ちゃん――幼い清華はその砂で出来たお城を見て大笑い。
「きゃははははっ!! 隼くんのお城じゃないよぅ! お山だよ!」
「むうぅぅぅ~~絶対お城!」
「お城っていうのはこういうのだよっ!」
清華は自分の体で隠していた砂のお城を隼くん――幼き頃の隼人に見せる。
そこには隼人とは比べ物にならないほどの仕上がりのお城が立っていた。
あまりの凄さに隼人は目を輝かせて興奮気味に飛び跳ねる。
「うわぁ……すごいすごいっ!! どうやってこんなに綺麗なお城作ったの!?」
「それはね―――」
「―――清華ちゃん、もう帰る時間だよ」
突然清華を呼ぶ男の人の声がして、清華の話が中断する。
清華はいつも帰りに迎えが来るため今日もそうかなと思い振り向くが……
「なあにぱぱ―――……おじさんだあれ?」
「僕は君のお父さんに迎えを頼まれたおじちゃんだよ~」
そこにはいつも迎えに来てくれる清華の父親ではなく、全く知らない柔和な笑みを浮かべた男が立っていた。
服はスーツなどではなく何処にでもいそうな私服を着ている。
「おじさん誰? 清ちゃんのパパは絶対自分で迎えに行くって約束してるもん!」
隼人は清華の前に立ち、男を睨む。
すると男は笑みを消して真顔になると先程とは比べ物にならないほど冷たい声で言う。
「小僧、お前はどけな。俺が用があるのはそこの嬢ちゃんだけなんだ」
「い、いやだ……! ふしんしゃにはついていったらいけないって学校で先生が言ってた! だから離れないっ!! おじさんがどっかいけ!」
隼人はそう言うと男に殴りかかる。
男は隼人を無視して近付こうとするが、金玉を思いっきり殴られて思わず足を止めてしまう。
その表情は怒りに染まっており、目線を隼人に向けると、
「調子に乗るなよ小僧がッッ!!」
いきなり隼人の首根っこを掴み遠くに投げ捨てる。
投げ捨てられた隼人は、地面に叩きつけられて蛙が潰れたような声が出る。
「――ぐえっ。…………い、い”だい”……い”だい”よぉぉぉぉ……うわああああああッッ!!」
「隼くんっ!! だ、大丈夫!?」
「おっと……お前は行かせねぇぞ」
「は、離して!! 悪いおじさん!! 隼くんが怪我してるのっ!」
「だめだ。お前の異能は俺達の組織に絶対に必要なもんだからな」
隼人の元に駆け寄ろうとした清華だったが、男に捕まってしまった。
清華は男の言った異能について父親が言っていたことを思い出す。
『清華……この異能は物凄く危険なものだ。絶対に使うんじゃないぞ』
『どうして?』
『それはな―――』
「―――何をしている!? お嬢様を離せ!!」
清華が父親との会話を思い出していると、隼人の泣き声を聞きつけた何人もの清華のボディガードが現れて男を囲む。
「チッ……俺がボコした奴らだけじゃなかったのか……ああクソッ!」
男はそう悪態をつきボディガードに向けて清華を投げると、清華に気を取られたボディガード達の包囲をあっさりと脱出して逃げて行ってしまった。
清華は男が逃げたことなど気にせず、ボディガードの腕から降りると一目散に隼人の下へ駆け寄る。
すると隼人はいつの間にか泣き止んでおり、清華に向けて心配そうにしている。
「大丈夫だった清ちゃん? あのね、清ちゃんのパパに「何かあったら泣け!」って言われたから泣いたの。そしたらあの悪いおじさん逃げてったね!」
「ごめんね隼くん……私のせいで……」
隼人は何でもない風にしているが、全身擦り傷まみれで沢山血も出ており、今にも泣きそうな顔になっている。
その姿を見た清華はふとこんな事を思ってしまった。
「……こんないのう、消えちゃえばいいのに……」
すると突然【????】が発動し、清華から発せられる光が辺り一面を覆うと―――
☆☆☆
「―――はぁっ! ……はぁ……はぁ……またこの夢ね……」
清華は自室のベッドで飛び起きる。
そして辺りを見渡し、そこが自分の家であることを確認すると、ホッと息を吐く。
「ほんと嫌な夢ね……」
清華は時折この夢を見ており、その度にこうして飛び起きていた。
この夢は清華が7歳のときに実際にあった出来事で、それ以降定期的に見ているのだが、毎回同じ夢を見ているはずなのに必ず同じ箇所に欠落があった。
「……私はあの時……一体何を…………隼くん……」
布団を被り、此処にはいない自身の想い人の名前を呼ぶも、その声はただ部屋に響くだけだった。
☆☆☆
――日本某所――
「そろそろ頃合いか……」
「そうっすね。久し振りに異能も感知したらしいし」
一人の男が椅子から立ち上がり、跪いている数百人もの仲間に号令を出す。
「これより派手に動く。我らの計画をスタートさせるぞ!!」
「「「「「「「「「「「「「「「「おう!!」」」」」」」」」」」」」」」
後に日本を揺るがす大事件を引き起こす者たちが動き出した。
――――――――――――――――――――――――
新作を投稿しました。
ぜひ見てみて下さい。
『勇者の俺は、クラス転移された先で問答無用に殺されかけたので、魔王の部下になることにした』
2人はこうしてよく公園に来てはブランコで遊んだり、公園にいる他の子供と一緒に鬼ごっこをしたりして遊んでいる。
しかしその日はこの2人以外に子供はおらず、2人は仲良く砂場で遊んでいた。
「ねぇねぇ見て見て清ちゃん! 俺のこの大きなお城、凄いでしょ!」
男の子は自慢げに砂場で作ったお城と見えないこともない山のようなものを、清ちゃんと呼ばれた女の子に見せる。
清ちゃん――幼い清華はその砂で出来たお城を見て大笑い。
「きゃははははっ!! 隼くんのお城じゃないよぅ! お山だよ!」
「むうぅぅぅ~~絶対お城!」
「お城っていうのはこういうのだよっ!」
清華は自分の体で隠していた砂のお城を隼くん――幼き頃の隼人に見せる。
そこには隼人とは比べ物にならないほどの仕上がりのお城が立っていた。
あまりの凄さに隼人は目を輝かせて興奮気味に飛び跳ねる。
「うわぁ……すごいすごいっ!! どうやってこんなに綺麗なお城作ったの!?」
「それはね―――」
「―――清華ちゃん、もう帰る時間だよ」
突然清華を呼ぶ男の人の声がして、清華の話が中断する。
清華はいつも帰りに迎えが来るため今日もそうかなと思い振り向くが……
「なあにぱぱ―――……おじさんだあれ?」
「僕は君のお父さんに迎えを頼まれたおじちゃんだよ~」
そこにはいつも迎えに来てくれる清華の父親ではなく、全く知らない柔和な笑みを浮かべた男が立っていた。
服はスーツなどではなく何処にでもいそうな私服を着ている。
「おじさん誰? 清ちゃんのパパは絶対自分で迎えに行くって約束してるもん!」
隼人は清華の前に立ち、男を睨む。
すると男は笑みを消して真顔になると先程とは比べ物にならないほど冷たい声で言う。
「小僧、お前はどけな。俺が用があるのはそこの嬢ちゃんだけなんだ」
「い、いやだ……! ふしんしゃにはついていったらいけないって学校で先生が言ってた! だから離れないっ!! おじさんがどっかいけ!」
隼人はそう言うと男に殴りかかる。
男は隼人を無視して近付こうとするが、金玉を思いっきり殴られて思わず足を止めてしまう。
その表情は怒りに染まっており、目線を隼人に向けると、
「調子に乗るなよ小僧がッッ!!」
いきなり隼人の首根っこを掴み遠くに投げ捨てる。
投げ捨てられた隼人は、地面に叩きつけられて蛙が潰れたような声が出る。
「――ぐえっ。…………い、い”だい”……い”だい”よぉぉぉぉ……うわああああああッッ!!」
「隼くんっ!! だ、大丈夫!?」
「おっと……お前は行かせねぇぞ」
「は、離して!! 悪いおじさん!! 隼くんが怪我してるのっ!」
「だめだ。お前の異能は俺達の組織に絶対に必要なもんだからな」
隼人の元に駆け寄ろうとした清華だったが、男に捕まってしまった。
清華は男の言った異能について父親が言っていたことを思い出す。
『清華……この異能は物凄く危険なものだ。絶対に使うんじゃないぞ』
『どうして?』
『それはな―――』
「―――何をしている!? お嬢様を離せ!!」
清華が父親との会話を思い出していると、隼人の泣き声を聞きつけた何人もの清華のボディガードが現れて男を囲む。
「チッ……俺がボコした奴らだけじゃなかったのか……ああクソッ!」
男はそう悪態をつきボディガードに向けて清華を投げると、清華に気を取られたボディガード達の包囲をあっさりと脱出して逃げて行ってしまった。
清華は男が逃げたことなど気にせず、ボディガードの腕から降りると一目散に隼人の下へ駆け寄る。
すると隼人はいつの間にか泣き止んでおり、清華に向けて心配そうにしている。
「大丈夫だった清ちゃん? あのね、清ちゃんのパパに「何かあったら泣け!」って言われたから泣いたの。そしたらあの悪いおじさん逃げてったね!」
「ごめんね隼くん……私のせいで……」
隼人は何でもない風にしているが、全身擦り傷まみれで沢山血も出ており、今にも泣きそうな顔になっている。
その姿を見た清華はふとこんな事を思ってしまった。
「……こんないのう、消えちゃえばいいのに……」
すると突然【????】が発動し、清華から発せられる光が辺り一面を覆うと―――
☆☆☆
「―――はぁっ! ……はぁ……はぁ……またこの夢ね……」
清華は自室のベッドで飛び起きる。
そして辺りを見渡し、そこが自分の家であることを確認すると、ホッと息を吐く。
「ほんと嫌な夢ね……」
清華は時折この夢を見ており、その度にこうして飛び起きていた。
この夢は清華が7歳のときに実際にあった出来事で、それ以降定期的に見ているのだが、毎回同じ夢を見ているはずなのに必ず同じ箇所に欠落があった。
「……私はあの時……一体何を…………隼くん……」
布団を被り、此処にはいない自身の想い人の名前を呼ぶも、その声はただ部屋に響くだけだった。
☆☆☆
――日本某所――
「そろそろ頃合いか……」
「そうっすね。久し振りに異能も感知したらしいし」
一人の男が椅子から立ち上がり、跪いている数百人もの仲間に号令を出す。
「これより派手に動く。我らの計画をスタートさせるぞ!!」
「「「「「「「「「「「「「「「「おう!!」」」」」」」」」」」」」」」
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『勇者の俺は、クラス転移された先で問答無用に殺されかけたので、魔王の部下になることにした』
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