11 / 40
第1章 落第勇者の帰還
第10話 落第勇者と異形の邂逅③
しおりを挟む
そこはショッピングモールの中でもほぼ人が居ない屋上駐車場の一角にそれはいた。
「ギャギャ! ギャギャギャッ!」
体長僅か1m程の子供くらいの大きさの人型モンスターで棍棒を持っている———ゴブリン。
異世界でもゲームなどと同じ様に比較的弱い部類に入ったが、普通の大人では背伸びしても勝てないくらいには強かった。
そして何より数で戦ってくるので面倒くさく、知能も高いのである程度の実力の冒険者でも殺されることが何度もあった程だ。
俺も初めの頃は何度もボコられて師匠やパトリシアさんに助けられていたもんだ。
毎回ゴブリン討伐を受けている師匠達を見て受付嬢は俺を「こんな大物になんて事させてんだ」みたいな目で睨みつけられたが。
「……何でそんな奴がこの世界に居るんだろうな」
俺は見つからない様に隠れてゴブリンの様子を観察しながらそう呟く。
感知ではコイツ以外に気配は感じられなかった。
ゴブリンなら必ず何体かで動いているはずなんだがな……。
俺は違和感を覚えるが、取り敢えずコイツをどうにかしなければならない。
今の俺は異世界の頃より確実に弱くなっている。
しかし俺には長年積んでいた異世界の知識がある。
それに相手は一体。
それくらいなら俺でも余裕だろう。
俺は小声で【身体強化】を発動する。
「【身体強化:Ⅰ】」
俺の体が強化される。
この何日間で体も鍛え直している為、何とか身体強化を扱える位には戻っていた。
俺は全力で疾走し、ゴブリンの後ろから飛び蹴りを繰り出す。
「取り敢えず吹っ飛べッ!」
「ギィギャッ!?」
俺の飛び蹴りを後頭部で喰らったゴブリンは思いっきり4mほど吹っ飛んで倒れる。
その後に立ちあがろうとしているが、脳震盪を起こして立ち上がれないままでいた。
当然そんなチャンスを逃す訳もなく、そのまま今度は頭頂部を狙って踵落としを喰らわせる。
「グギャッ!? ギュ——」
「その手は喰らわん。——そりゃ」
最後の足掻きで俺に棍棒をぶん回してくるが、異世界でこの行動を何百回も体験しているので棍棒を持っている方の腕を蹴り飛ばして棍棒を奪い取る。
今度こそなす術なしとなったゴブリンは跡形もなく消滅した。
「…………これはこの世界特有のモンスターなのか……?」
異世界ではモンスターは人間と同じく死んでも消滅しない。
モンスターも立派な生き物の一種だからな。
だがこのゴブリンはもしかしたら生き物では無いのかも知れない。
それか誰かが作ったのか——。
まぁそんな事は俺には関係ない。
「俺はもう戦うのは懲り懲りなんだよ……。もう2度と会わない事をお互いに祈ろうぜ」
俺はそう呟き、手を合わせる。
そして戻ろうとしたのだが……
「あっ———やっべ、早く戻んねぇと。宮園を待たしてたわ! 流石に申し訳ない」
俺はゴブリンの消えた場所を1度チラッと見た後駆け足で、待たせてしまっている宮園の所へと戻った。
近くで誰かが見ていたとは知らずに———
☆☆☆
「……やっぱり隼人君には秘密があったのね」
隼人を監視していたのは——清華であった。
清華は突然隼人が何処かに意識を向けたかと思うと、自分に少しトイレに行ってくると言い残して何処かへ行ってしまったのを不自然に思っていた。
なので元々「異能力を手に入れたのでは?」と疑っていたのと相まって余計に不自然さが目立っていたのだ。
そんな清華にとある電話が来る。
「もしもし。今回は何でしょうか?」
『———清華、仕事だ』
電話の先の声を聞いた途端、清華は隼人を追って走り出していた。
清華は異能力者であり、隠密系異能を所持している数少ない人間であったのだ。
だが探知系の異能は持っていない為、スマホに表示される位置まで急いで移動すると、丁度隼人がゴブリンに踵落としを喰らわせている所に遭遇してしまった。
その後に隼人が戻っていったのを確認すると、電話を今度はこちらから掛ける。
『……どうした? 討伐したのか?』
「…………はい。最近出る新種でした。強さはそれ程ではありませんでしたが」
『分かった。なら報酬はこちらで用意しておく。ご苦労だった』
「それでは失礼します」
清華はそう言って電話を切った。
だがその表情には迷いが浮かんでいる。
そして普段の強気な態度とは裏腹に、泣きそうな声で呟く。
「私が隼人君の事を言える訳ないじゃない……。だって私は———」
清華はそこまで言った後に表情を元に戻して何時もの強気な態度に戻る。
「よし、それじゃあまた再開することにしましょう。——隼人君との放課後デートを」
その表情は先程とは違ってご機嫌な表情であった。
「ギャギャ! ギャギャギャッ!」
体長僅か1m程の子供くらいの大きさの人型モンスターで棍棒を持っている———ゴブリン。
異世界でもゲームなどと同じ様に比較的弱い部類に入ったが、普通の大人では背伸びしても勝てないくらいには強かった。
そして何より数で戦ってくるので面倒くさく、知能も高いのである程度の実力の冒険者でも殺されることが何度もあった程だ。
俺も初めの頃は何度もボコられて師匠やパトリシアさんに助けられていたもんだ。
毎回ゴブリン討伐を受けている師匠達を見て受付嬢は俺を「こんな大物になんて事させてんだ」みたいな目で睨みつけられたが。
「……何でそんな奴がこの世界に居るんだろうな」
俺は見つからない様に隠れてゴブリンの様子を観察しながらそう呟く。
感知ではコイツ以外に気配は感じられなかった。
ゴブリンなら必ず何体かで動いているはずなんだがな……。
俺は違和感を覚えるが、取り敢えずコイツをどうにかしなければならない。
今の俺は異世界の頃より確実に弱くなっている。
しかし俺には長年積んでいた異世界の知識がある。
それに相手は一体。
それくらいなら俺でも余裕だろう。
俺は小声で【身体強化】を発動する。
「【身体強化:Ⅰ】」
俺の体が強化される。
この何日間で体も鍛え直している為、何とか身体強化を扱える位には戻っていた。
俺は全力で疾走し、ゴブリンの後ろから飛び蹴りを繰り出す。
「取り敢えず吹っ飛べッ!」
「ギィギャッ!?」
俺の飛び蹴りを後頭部で喰らったゴブリンは思いっきり4mほど吹っ飛んで倒れる。
その後に立ちあがろうとしているが、脳震盪を起こして立ち上がれないままでいた。
当然そんなチャンスを逃す訳もなく、そのまま今度は頭頂部を狙って踵落としを喰らわせる。
「グギャッ!? ギュ——」
「その手は喰らわん。——そりゃ」
最後の足掻きで俺に棍棒をぶん回してくるが、異世界でこの行動を何百回も体験しているので棍棒を持っている方の腕を蹴り飛ばして棍棒を奪い取る。
今度こそなす術なしとなったゴブリンは跡形もなく消滅した。
「…………これはこの世界特有のモンスターなのか……?」
異世界ではモンスターは人間と同じく死んでも消滅しない。
モンスターも立派な生き物の一種だからな。
だがこのゴブリンはもしかしたら生き物では無いのかも知れない。
それか誰かが作ったのか——。
まぁそんな事は俺には関係ない。
「俺はもう戦うのは懲り懲りなんだよ……。もう2度と会わない事をお互いに祈ろうぜ」
俺はそう呟き、手を合わせる。
そして戻ろうとしたのだが……
「あっ———やっべ、早く戻んねぇと。宮園を待たしてたわ! 流石に申し訳ない」
俺はゴブリンの消えた場所を1度チラッと見た後駆け足で、待たせてしまっている宮園の所へと戻った。
近くで誰かが見ていたとは知らずに———
☆☆☆
「……やっぱり隼人君には秘密があったのね」
隼人を監視していたのは——清華であった。
清華は突然隼人が何処かに意識を向けたかと思うと、自分に少しトイレに行ってくると言い残して何処かへ行ってしまったのを不自然に思っていた。
なので元々「異能力を手に入れたのでは?」と疑っていたのと相まって余計に不自然さが目立っていたのだ。
そんな清華にとある電話が来る。
「もしもし。今回は何でしょうか?」
『———清華、仕事だ』
電話の先の声を聞いた途端、清華は隼人を追って走り出していた。
清華は異能力者であり、隠密系異能を所持している数少ない人間であったのだ。
だが探知系の異能は持っていない為、スマホに表示される位置まで急いで移動すると、丁度隼人がゴブリンに踵落としを喰らわせている所に遭遇してしまった。
その後に隼人が戻っていったのを確認すると、電話を今度はこちらから掛ける。
『……どうした? 討伐したのか?』
「…………はい。最近出る新種でした。強さはそれ程ではありませんでしたが」
『分かった。なら報酬はこちらで用意しておく。ご苦労だった』
「それでは失礼します」
清華はそう言って電話を切った。
だがその表情には迷いが浮かんでいる。
そして普段の強気な態度とは裏腹に、泣きそうな声で呟く。
「私が隼人君の事を言える訳ないじゃない……。だって私は———」
清華はそこまで言った後に表情を元に戻して何時もの強気な態度に戻る。
「よし、それじゃあまた再開することにしましょう。——隼人君との放課後デートを」
その表情は先程とは違ってご機嫌な表情であった。
0
お気に入りに追加
490
あなたにおすすめの小説
最強パーティーのリーダーは一般人の僕
薄明
ファンタジー
ダンジョン配信者。
それは、世界に突如現れたダンジョンの中にいる凶悪なモンスターと戦う様子や攻略する様子などを生配信する探索者達のことだ。
死と隣り合わせで、危険が危ないダンジョンだが、モンスターを倒すことで手に入る品々は、難しいダンジョンに潜れば潜るほど珍しいものが手に入る。
そんな配信者に憧れを持った、三神《みかみ》詩音《しおん》は、幼なじみと共に、世界に名を轟かせることが夢だった。
だが、自分だけは戦闘能力において足でまとい……いや、そもそも探索者に向いていなかった。
はっきりと自分と幼なじみ達との実力差が現れていた。
「僕は向いてないみたいだから、ダンジョン配信は辞めて、個人で好きに演奏配信とかするよ。僕の代わりに頑張って……」
そうみんなに告げるが、みんなは笑った。
「シオンが弱いからって、なんで仲間はずれにしないといけないんだ?」
「そうですよ!私たちがシオンさんの分まで頑張ればいいだけじゃないですか!」
「シオンがいないと僕達も寂しいよ」
「しっかりしなさいシオン。みんなの夢なんだから、諦めるなんて言わないで」
「みんな………ありがとう!!」
泣きながら何度も感謝の言葉を伝える。
「よしっ、じゃあお前リーダーな」
「はっ?」
感動からつかの間、パーティーのリーダーになった詩音。
あれよあれよという間に、強すぎる幼なじみ達の手により、高校生にして世界トップクラスの探索者パーティーと呼ばれるようになったのだった。
初めまして。薄明です。
読み専でしたが、書くことに挑戦してみようと思いました。
よろしくお願いします🙏
世界がダンジョン化していく件について ~俺のユニークジョブ『回避術師』は不敗過ぎる~
十本スイ
ファンタジー
突如現代世界に現れたモンスターたちに世界は騒然となる。そして主人公の家がダンジョン化してしまい、そのコアを偶然にも破壊した主人公は、自分にゲームのようなステータスがあることに気づく。その中で最も気になったのは、自分のジョブ――『回避術師』であった。そこはせめて『回復術師』だろと思うものの、これはこれで極めれば凄いことになりそうだ。逃げて、隠れて、時には不意打ちをして、主人公は不敗過ぎるこの能力で改変された世界を生き抜いていく。
そんなにホイホイ転生させんじゃねえ!転生者達のチートスキルを奪う旅〜好き勝手する転生者に四苦八苦する私〜
Open
ファンタジー
就活浪人生に片足を突っ込みかけている大学生、本田望結のもとに怪しげなスカウトメールが届く。やけになっていた望結は指定された教会に行ってみると・・・
神様の世界でも異世界転生が流行っていて沢山問題が発生しているから解決するために異世界に行って転生者の体の一部を回収してこい?しかも給料も発生する?
月給30万円、昇給あり。衣食住、必要経費は全負担、残業代は別途支給。etc...etc...
新卒の私にとって魅力的な待遇に即決したけど・・・
とにかくやりたい放題の転生者。
何度も聞いた「俺なんかやっちゃいました?」
「俺は静かに暮らしたいのに・・・」
「まさか・・・手加減でもしているのか・・・?」
「これぐらい出来て普通じゃないのか・・・」
そんな転生者を担ぎ上げる異世界の住民達。
そして転生者に秒で惚れていく異世界の女性達によって形成されるハーレムの数々。
もういい加減にしてくれ!!!
小説家になろうでも掲載しております
異能力と妖と
彩茸
ファンタジー
妖、そして異能力と呼ばれるものが存在する世界。多くの妖は悪事を働き、異能力を持つ一部の人間・・・異能力者は妖を退治する。
そんな異能力者の集う学園に、一人の少年が入学した。少年の名は・・・山霧 静也。
※スマホの方は文字サイズ小の縦書き、PCの方は文字サイズ中の横書きでの閲覧をお勧め致します
魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”
どたぬき
ファンタジー
ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。
なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。
底辺男のミセカタ 〜ゴミスキルのせいで蔑まれていた俺はスキル『反射』を手に入れて憎い奴らに魅せつける〜
筋肉重太郎
ファンタジー
俺は……最底辺だ。
2040年、世界に突如として、スキル、と呼ばれる能力が発現する。
どんどん良くなっていく生活。
いくつもの世界問題の改善。
世界は更により良くなっていく………はずだった。
主人公 田中伸太はスキルを"一応"持っている一般人……いや、底辺男であった。
運動も勉学も平均以下、スキルすら弱過ぎるものであった。平均以上にできると言ったらゲームぐらいのものである。
だが、周りは違った。
周りから尊敬の眼差しを受け続ける幼馴染、その周りにいる"勝ち組"と言える奴ら。
なんで俺だけ強くなれない…………
なんで俺だけ頭が良くなれない…………
周りからは、無能力者なんて言う不名誉なあだ名もつけられ、昔から目立ちたがりだった伸太はどんどん卑屈になっていく。
友達も増えて、さらに強くなっていく幼馴染に強い劣等感も覚え、いじめまで出始めたその時、伸太の心に1つの感情が芽生える。
それは……
復讐心。
クラス転移で手に入れた『天性』がガチャだった件~落ちこぼれな俺がみんなまとめて最強にします~
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
阿久津雄介とそのクラスメイトは、最弱国家グルストンに勇者として召喚された。
──天性なる能力を授けられ、世界を支配するドラグネス皇国の考案した遊戯、勇者大戦なる競技の強化選手として抜擢されていく。
しかし雄介の手に入れた能力はガチャ。
他にも戦力とは程遠い能力を授かるものと共に補欠として扱われた。
日々成長していくレギュラー入りしたクラスメイト達。
置いていかれる環境に、自分達もなんとかしようと立ち上がる雄介達。何もできない、なんの役にも立たないと思われた力で雄介達はほんの僅かな手応えを感じていた。
それから少しづつ、自分たちの力を高める為に冒険者の真似事をしていくことに。
目指すはクラスメイトの背中。
ゆくゆくはレギュラー入りと思っていたが……
その矢先にドラグネス皇国からの手先が現れる。
ドラゴン。グルストン王国には生息してない最強の種族が群を率いてやってきた。
雄介達は王命により、ドラゴン達の足止め役を引き受けることになる。
「別に足止めじゃなく倒しちゃってもいいんですよね?」
「できるものならな(可哀想に、恐怖から幻想が見えているんだろうな)」
使えない天性、大人の一般平均値を下回る能力値を持つ補欠組は、世界の支配者であるドラグネス皇国の尖兵をうまく蹴散らすことができるのか?
┏━━━━━━━━━┓
┃書籍1〜3巻発売中 ┃
┗━━━━━━━━━┛
==========================================
【2021.09.05】
・本編完結(第一部完)
【2023.02.14追記】
・新しく第二部を準備中です。もう少しお待ちください。
(書籍三巻の続き〜)を予定しています。
【2023.02.15追記】
・SSはEXTRAからお引越し、書籍用のSS没案集です。
・追加で増えるかも?
・書籍用の登場人物表を追記しました。
【2023.02.16追記】
・書籍における雄介の能力変更をおまけに追記しました。
【2023.03.01〜】
・五章公開
【2023.04.01〜】
・WEB版の大雑把なあらすじ公開(書籍版とは異なります)
==========================================
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる