上 下
9 / 40
第1章 落第勇者の帰還

第8話 落第勇者と異形の邂逅①

しおりを挟む
「皆、速いと思うかもしれないが、これから何の事について話すと思う?」

 高校復帰2日目の朝、1時限目のLHRでクラス委員長の光輝が教卓の前にたち、皆に問いかける。
 その言葉に皆はソワソワし出したのが確認できる。

 何故かって? 
 それは俺がクラス副委員長だからだけど?

 俺は光輝の推薦とクラスの多数決満場一致で副委員長になってしまったのだ。
 まぁ大体は光輝に任せていればいいので楽と言えば楽なんだけどな。
 
 しかしそれにしても物凄い盛り上がり……まぁそれもしょうが無いことだろう。
 なぜなら……

「はいっ! 文化祭ですっ!」

 光輝の幼馴染の紗奈が元気良く答える。

「そう——僕達にとっては早く感じるけどこれから文化祭があります!」
「「「「「「おおおおおおお!!」」」」」」
「「「「「「きゃああああ!!」」」」」」

 クラスの至る所で喜びの歓声が聞こえる。
 たかが文化祭1つでこれ程の事に成るだろうか? と疑問に思うかもしれないがとんでもない。
 この学校の文化祭は兎に角すごいのだ。

 まず規模が違う。
 この文化祭はこの街の1つの大きなお祭りと言ってもいい。
 それにクラスごとに配られる資金は何と驚異の50万円。
 何でも市や町内会がお金を持ってきてくれるらしく、学校の負担は殆どないらしい。

 そして50万もあれば大抵の事ができる。
 だから毎年文化祭シーズンは盛り上がるのだ。
 かく言う俺も文化祭のためにこの学校に入ったと言っても過言ではないのだが。

「静かに! これから文化祭の出し物を決めよう。何かいい案はあるかい?」

 光輝がそう言った瞬間にクラスの7割位が手を挙げる。
 コイツら授業中は1ミリも挙げようとしない癖に現金な奴らだな。
 まぁ俺もその中の1人なのだがね。

 だって文化祭だぞ?
 それに俺にとっては10年振りなんだ。
 テンション上がっちゃってもいいじゃない。

「俺はジムがいい!」
「……それはやめておこうね?」
「なら何でだよ光輝!? なぁ隼人、お前もジムでいいよな!?」
「絶対イヤ」
「のおおおおおおお!!」

 将吾がそんなバカな事を言ったため、俺と光輝は速攻で却下する。
 気を取り直して他の意見を聞く。

「俺メイド喫茶!」
「俺もそれがいい!」
「「「「「俺も!」」」」」
「何たってこのクラス学年一の美少女が2人も居るんだからな!」
「それにこのクラスは美少女が多い!!」
「「「「「「「「おおおおおお!!」」」」」」」

 男子は女子のメイド姿を想像して盛り上がり、

「私は執事喫茶!」
「私も!!」
「このクラスには光輝君とちょっと残念だけど顔はいい隼人君がいるからね!」
「後筋肉フェチの人には将吾君がいるもん」
「絶対繁盛するよね」
「「「「「「「ねー」」」」」」

 女子はそれに加えて店の売り上げまで考えていた。
 それは大変いい事なのだが、ただ1つ言わせてもらいたい事がある。

 ……おい、今俺のこと残念と言った奴出てこい。
 俺の必殺——音だけ五月蝿い痛く無い鉄拳を喰らわせてやるから。
 そんな事を思案しながら軽く拳を握っていると光輝が小声で「やめときなよ」と言ってきたので諦めるとしよう。

 その後も色々な案が出たが、やはり1番人気は定番のコスプレ喫茶だった。
 男子は女子の、女子は男子のコスプレが見たいんだと。

 やはり今時の高校生には人気なのだろうか?
 俺は精神的には大人なのでそこまで嬉しいとかは……思うな。
 大人でもメイド喫茶に行く人は普通にいるだろうし。

 だが俺は見るのはいいがやりたくは無い。
 此処は全力で女子のコスプレにしようと思う。
 クラス委員にもちゃんと意見を言う権利はあるので全面的に男子を支援する。
 
「えっと俺は———」
「どちらもやればいいんじゃ無いのかしら?」
「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 クラスのほぼ全員が声を上げた人に頭を向ける。
 そこにいたのは先程俺を大いに困らせた宮園だった。

「(げっ……宮園……)」

 俺は自分の顔が引き攣るのを感じていた。
 何故なら……

「(ふふっ……貴方も道連れよ)」

 したり顔をしながら口パクでふざけた事を抜かしてきたからだ。
 それにこの言葉を否定する者など———

「なら今回はメイド・執事喫茶にしようか」

 光輝の一声で失せてしまうからだ。
 どうやら俺は27にもなってコスプレをしなければならなくなった様だ。

 俺はせめてもの反抗として案を出した宮園を睨んでみたが、涼しい顔で流された。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チートスキルで無自覚無双 ~ゴミスキルばかり入手したと思ってましたが実は最強でした~

Tamaki Yoshigae
ファンタジー
北野悠人は世界に突如現れたスキルガチャを引いたが、外れスキルしか手に入らなかった……と思っていた。 が、実は彼が引いていたのは世界最強のスキルばかりだった。 災厄級魔物の討伐、その素材を用いてチートアイテムを作る錬金術、アイテムを更に規格外なものに昇華させる付与術。 何でも全て自分でできてしまう彼は、自分でも気づかないうちに圧倒的存在に成り上がってしまう。 ※小説家になろうでも連載してます(最高ジャンル別1位)

[完結:1話 1分読書]幼馴染を勇者に寝取られた不遇職の躍進

無責任
ファンタジー
<毎日更新 1分読書> 愛する幼馴染を失った不遇職の少年の物語 ユキムラは神託により不遇職となってしまう。 愛するエリスは、聖女となり、勇者のもとに行く事に・・・。 引き裂かれた関係をもがき苦しむ少年、少女の物語である。 アルファポリス版は、各ページに人物紹介などはありません。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 この物語の世界は、15歳が成年となる世界観の為、現実の日本社会とは異なる部分もあります。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

俺を追い出した元パーティメンバーが速攻で全滅したんですけど、これは魔王の仕業ですか?

ほーとどっぐ
ファンタジー
王国最強のS級冒険者パーティに所属していたユウマ・カザキリ。しかし、弓使いの彼は他のパーティメンバーのような強力な攻撃スキルは持っていなかった。罠の解除といったアイテムで代用可能な地味スキルばかりの彼は、ついに戦力外通告を受けて追い出されてしまう。 が、彼を追い出したせいでパーティはたった1日で全滅してしまったのだった。 元とはいえパーティメンバーの強さをよく知っているユウマは、迷宮内で魔王が復活したのではと勘違いしてしまう。幸か不幸か。なんと封印された魔王も時を同じくして復活してしまい、話はどんどんと拗れていく。 「やはり、魔王の仕業だったのか!」 「いや、身に覚えがないんだが?」

魔力吸収体質が厄介すぎて追放されたけど、創造スキルに進化したので、もふもふライフを送ることにしました

うみ
ファンタジー
魔力吸収能力を持つリヒトは、魔力が枯渇して「魔法が使えなくなる」という理由で街はずれでひっそりと暮らしていた。 そんな折、どす黒い魔力である魔素溢れる魔境が拡大してきていたため、領主から魔境へ向かえと追い出されてしまう。 魔境の入り口に差し掛かった時、全ての魔素が主人公に向けて流れ込み、魔力吸収能力がオーバーフローし覚醒する。 その結果、リヒトは有り余る魔力を使って妄想を形にする力「創造スキル」を手に入れたのだった。 魔素の無くなった魔境は元の大自然に戻り、街に戻れない彼はここでノンビリ生きていく決意をする。 手に入れた力で高さ333メートルもある建物を作りご満悦の彼の元へ、邪神と名乗る白猫にのった小動物や、獣人の少女が訪れ、更には豊富な食糧を嗅ぎつけたゴブリンの大軍が迫って来て……。 いつしかリヒトは魔物たちから魔王と呼ばるようになる。それに伴い、333メートルの建物は魔王城として畏怖されるようになっていく。

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

処理中です...