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その3。「予想外の出来事が起きたんですけど」
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俺は唐突に言われた「お前は私専属のパシリ」宣言に一瞬反応が遅れてしまう。
しかし何とか復活して言葉を絞り出す。
「そ、それで私は何をすれば良いのですか……?」
「なんで男なのにわたしっていうの? ふつうにしなさいよ、きもちわるい」
ふぅ……ふぅ……落ち着けセーヤ、お前は年上だろ。
こんなガキの言葉に一々キレてたらキリがないぞ。
俺はイライラを必死に抑えて笑顔を作る。
「そ、それでは次からは『僕』と呼ばせて頂きますね」
「そうしなさい」
…………。
「それではこんな外では何なので、中に入りましょうかっ!?」
俺が必死に怒りを堪えていると、セイドが少し慌てた口調で家へと招き入れた。
そしてセイドがシンシアに見えない位置で俺の方を向くと、「よく堪えました」とでも言う様にグッと親指を立てる。
…………悪役令嬢が帰ったら絶対にモンスター退治を了承させてやるぞ。
俺はそう心に誓って皆を追いかけた。
「ふーん、ここがセーヤの部屋なのね……けっこうキレイじゃない」
「見習いですが執事ですので。自分の部屋すら片付けられない奴が執事になれないと師匠に口煩く言われております」
「あっそ」
わざわざ丁寧に対応してやっているのに「あっそ」とはなんだ「あっそ」とは。
と言うか何でコイツが俺の部屋に居るんだよ……。
全ての原因は師匠であるセイドだ。
セイドがシンシアに俺の部屋に行く様に勧めた。
何故かは全く分からないが、流石に厄介払いとかじゃ無いよな?
……違うはず。
俺が心の中でセイドを忌々しく思っていると、シンシアが突然俺のベッドにダイブした。
「———シンシア様!?」
「あーつかれたわ……家ではママとパパが煩くてたいへんなのよね……。それにしても中々気持ちいいわねこのベッド」
……どうやらこの尊大な悪役令嬢も色々と苦労しているらしい。
まぁ次期王太子の婚約者なんだし当然だよな。
どうせ婚約破棄されるけど。
「———セーヤ! わたしをむしするとはいいどきょうねっ!」
「し、シンシア? す、すいません……少々考え事をしておりまして……なんでしょうか?」
「アンタはこのわたしと、きっちりとしたおしとやかな私、どちらがいいと思う?」
俺はそう訊かれて言葉が詰まる。
いや、まだ会って数十分も経ってないのになんて事訊いてくるんだよ。
と言うかそれを子供が訊くことか?
しかしシンシアは意外にも、先程の様な不敵な笑みを浮かべておらず、何処か影が差したような表情をしていた。
俺はため息を吐きそうになるのを頭をかくことで抑え、取り敢えず自分が思った事を言う。
まだ子供ってことで許してくれるかもしれん。
こんな事で裁いていたら当主の狭量を疑われるからな。
「……今のままでいいのでは? 僕からしてみれば、今からお淑やかになられれば逆に気味悪いですし」
言ってやった……言ってやったぞ……!
さて、どんな罵詈雑言が来るか。
俺が少し恐れてビクビクしながらも身構えていると、意外にも暴言は襲って来なかった。
俺が不思議に思い、ゆっくり顔を上げてみると……。
「………………え?」
ポカンと口を半開きにして、貴族の令嬢がしてはいけないような呆けた顔を晒していた。
……いや………………え?
俺もきっと同じ様な顔をしていたかもしれない。
しかし何とか復活して言葉を絞り出す。
「そ、それで私は何をすれば良いのですか……?」
「なんで男なのにわたしっていうの? ふつうにしなさいよ、きもちわるい」
ふぅ……ふぅ……落ち着けセーヤ、お前は年上だろ。
こんなガキの言葉に一々キレてたらキリがないぞ。
俺はイライラを必死に抑えて笑顔を作る。
「そ、それでは次からは『僕』と呼ばせて頂きますね」
「そうしなさい」
…………。
「それではこんな外では何なので、中に入りましょうかっ!?」
俺が必死に怒りを堪えていると、セイドが少し慌てた口調で家へと招き入れた。
そしてセイドがシンシアに見えない位置で俺の方を向くと、「よく堪えました」とでも言う様にグッと親指を立てる。
…………悪役令嬢が帰ったら絶対にモンスター退治を了承させてやるぞ。
俺はそう心に誓って皆を追いかけた。
「ふーん、ここがセーヤの部屋なのね……けっこうキレイじゃない」
「見習いですが執事ですので。自分の部屋すら片付けられない奴が執事になれないと師匠に口煩く言われております」
「あっそ」
わざわざ丁寧に対応してやっているのに「あっそ」とはなんだ「あっそ」とは。
と言うか何でコイツが俺の部屋に居るんだよ……。
全ての原因は師匠であるセイドだ。
セイドがシンシアに俺の部屋に行く様に勧めた。
何故かは全く分からないが、流石に厄介払いとかじゃ無いよな?
……違うはず。
俺が心の中でセイドを忌々しく思っていると、シンシアが突然俺のベッドにダイブした。
「———シンシア様!?」
「あーつかれたわ……家ではママとパパが煩くてたいへんなのよね……。それにしても中々気持ちいいわねこのベッド」
……どうやらこの尊大な悪役令嬢も色々と苦労しているらしい。
まぁ次期王太子の婚約者なんだし当然だよな。
どうせ婚約破棄されるけど。
「———セーヤ! わたしをむしするとはいいどきょうねっ!」
「し、シンシア? す、すいません……少々考え事をしておりまして……なんでしょうか?」
「アンタはこのわたしと、きっちりとしたおしとやかな私、どちらがいいと思う?」
俺はそう訊かれて言葉が詰まる。
いや、まだ会って数十分も経ってないのになんて事訊いてくるんだよ。
と言うかそれを子供が訊くことか?
しかしシンシアは意外にも、先程の様な不敵な笑みを浮かべておらず、何処か影が差したような表情をしていた。
俺はため息を吐きそうになるのを頭をかくことで抑え、取り敢えず自分が思った事を言う。
まだ子供ってことで許してくれるかもしれん。
こんな事で裁いていたら当主の狭量を疑われるからな。
「……今のままでいいのでは? 僕からしてみれば、今からお淑やかになられれば逆に気味悪いですし」
言ってやった……言ってやったぞ……!
さて、どんな罵詈雑言が来るか。
俺が少し恐れてビクビクしながらも身構えていると、意外にも暴言は襲って来なかった。
俺が不思議に思い、ゆっくり顔を上げてみると……。
「………………え?」
ポカンと口を半開きにして、貴族の令嬢がしてはいけないような呆けた顔を晒していた。
……いや………………え?
俺もきっと同じ様な顔をしていたかもしれない。
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