30 / 35
復活
しおりを挟む
蒼騎に本部から連絡があったのは二週間後だった。
銭洗弁財天宇賀福神社に、若葉とは違うが別の緑系の色命札をかつて奪った色魅がいるという。
大物に捧げることもせずに、すっかり色を自分の肉体と馴染ませてしまっているらしい。
いつもよりワンランク上の相手だが、サポートする先輩色染師も派遣するから、封滅ではなく捕縛してほしいとのことだった。
捕縛すれば、特殊な術でその色を取り出して新たな若葉の色命札にすることができるという。
それで何とかなるということは、若葉はまだ生きているということだ。
蒼騎は早速、学校所有の自転車を借りると神社まで急いだ。
緑が濃い切通しの間を通り抜けて、隧道のような自然のトンネルを抜けると境内にたどりつく。
時間より早く神社に着いたらしい。
サポート予定の先輩はまだ来ていない。
でも誰もいない境内の真ん中にすでに件の色魅はいた。
何となく空気が揺らいでその向こうの建物が陽炎のようにも揺らめいているからすぐわかる。
蒼騎は、そのまま一人で結界をはると注意深く色魅に近づいていく。
色名刀を構えてゆっくり近づいていく。
そのまま先輩の到着を待てば良かったのだが、若葉のことで責任を感じていた蒼騎はそのまま自分一人で何とかしなければと焦っていた。
それと同時に、ここまで技術を磨いた色導師もいないだろうというくらいの封滅数にも自信もあった。
「よし!」
一瞬の隙をついて刀で色魅を地面に縫い付けた。
目だけは暴れる色魅を見ながら、蒼はベストの内ポケットから素早く白い札を取り出す。
しかし、札ははらりと滑っていき、なぜか目の前の色魅にはくっつかなかった。
「え?」
それよりも、色魅のほうが蒼色の色名刀の色を徐々に吸い取りだした。
「嘘だろ?」
脳裏に肌が透けていく若葉の姿が浮かぶ。
「わ! 蒼騎お前何やってんだよ!」
背後から息をきらせた作業着姿の青年が石段を勢いよく駆け下りてくる。
「千川先輩!」
「だから俺たちの到着を待てって。お前、本部からのメッセージ華麗に既読スルーしやがったな!」
言いながら蒼騎よりも大柄な体に似合わず、紅太は素早く紅色の色名刀を取り出すとそのまま思いっきり上段から切りつけた。
「先輩?」
「お前の色を吸いにかかった段階で捕縛は不可能。封滅に移行した。ほれお前の色名札」
刀から戻った蒼色の札を蒼騎に渡す。
「そんな。じゃあ俺、また……」
「残念ながら勇み足だ。俺たちを待ってろっていう本部の指示を無視したつけだ」
愕然としている蒼騎を紅太は無理やり立ち上がらせた。
「ぼさっとするな。次、行くぞ。緑系の色を喰らう色魅はまだここに他にもいるらしいからな」
蒼騎の結界を利用したまま、紅太は訪れた人々が銭を洗う奥の湧き水に向かう。
蒼騎も慌てて後をついていく。
そこには水に溶けている色魅がいた。
水の動きが一か所だけおかしい部分があった。
「よし。今度はちゃんとしろよ」
合図を受けた蒼騎は、再び蒼色の刀で色魅の端を今度は水に縫い留めようとした。
しかし、水に溶けている色魅は自由自在に自分と水の溶けあう範囲を変えては、蒼を翻弄する。
「さすがちょっとした実力者は違うな」
なぜかニヤニヤしながら、紅太は一切手だしせずにその色魅を見つめている。
「くっ!」
何度も逃げられるので、だんだん蒼騎の焦りが高まっていく。
水の中で刀がまた空振りした瞬間、水が壁のようにせりあがり、蒼騎を飲みこもうと襲ってきた。
「ぐわ~!」
「今だ!」
紅太が誰かに明らかに蒼騎ではない誰かに合図を送った。
「はい!」
さっとかがんだ紅太の肩をつかって飛び上がった人影が、上段から水の壁を真っ二つに切りさいた。
「ぎゃ~!」
断末魔の声を上げながら、水の中の色魅が消えていった。
「え? 先輩! 封滅はダメじゃなかったんですか? 何で封滅したんですか!」
全身水を浴びながら、我に返った蒼騎が紅太に向かって珍しくくってかかった。
「で、どうだった? 若葉ちゃん」
蒼騎の言葉を無視して紅太が問いかけると、二人の間には若葉がいた。
「新堂?」
若葉は振り返って蒼騎に頭を下げた。
透けかけていた体は元通りになっているし、新しいベストが支給されたのか校章が綺麗に縫い付けられている。
「李先輩、すみませんでした!」
「若葉ちゃんは謝らなくていいから。むしろ蒼騎は若葉ちゃんにちゃんと謝れ。今までのことから含めて」
「どうして?」
呆然としている蒼騎。全身びしょ濡れも気にならないくらいだ。
「御方様と姫様に助けて頂いて」
「姫様が?」
「はい」
若葉は手短に本邸で蒼騎と別れてからのことを話した。
実は、若葉の色命札に関しては、あらかじめ精巧な偽物を渡していたこと。
あまりに精巧すぎて色名刀にできることももちろんだが、本人が透けるところまで再現できるくらいだったこと。
そして本邸で改めて卯花から若葉の色命札を渡されたこと。
「卯花の話によると、たまに高校在学中に色命札を取られる生徒がいるんだと。で、それを卯花が予見できてしまった場合は、あらかじめ入学時に偽札を渡しておくんだと」
「本物は鎌倉の本邸で保管しておくということですか?」
「そうだ」
「そうか。良かった」
ほっとした蒼騎は思わずその場に座り込んでしまった。
「蒼、卯花から伝言だ。怖がらせてしまってすまない。でも、これくらいしないと新堂さんのことも色染師の仕事のことも、本気で向き合おうとはしなかったでしょ? だそうだ」
それに対して蒼騎は、もう何も言えなかった。
「李先輩、大丈夫ですか?」
「ああ」
ゆっくりと立ち上がる。
「これで若葉ちゃんもガッツリ戦えるようになったな。色名刀の使い方もばっちりだったぞ」
「千川先輩、このたびはご指導いただき、ありがとうございました」
「この一週間、こっそり本邸で稽古してたからな。どうだ蒼? もう若葉ちゃんはお前の足手まといにもならないし、結界や封印の補助系以外にもちゃんと色名刀を使って封滅できるようになったぞ」
「ありがとうございます。千川先輩」
恩を思いっきり着せてくる紅太に素直に謝意を伝える。
後で言葉の上だけでなく、ちゃんと礼をさせられるのだろう。
紅太の魂胆を蒼騎はよく知っている。
紅太の守銭奴ぶりというか、がめつさはよくわかっていた。
なんせ関東本部の幹部連中をたった一人で平気で脅せるような男なのだ。
「新堂、今まですまなかった。本当に悪かった」
若葉に向かって頭を下げる。
「李先輩、もういいですよ。わかりましたから」
「いや。本当の意味で色導師の仕事をしていなかった俺も悪かったと思う」
ただ封滅の仕方や結界のはり方など実践だけを教えれば良いというわけではなかった。メンタルな部分や色染師の決まり事や約束事など、話しておくべきことは山ほどあった。蒼騎はその色々を紅太に戦いながら教わってきていた。
しかし、それは同性ペアの場合は有効なのかもしれない。
でも異性ペアの場合は考えないといけないのかもしれない。
そのあたりの配慮が自分には欠けていた。
素直に蒼騎は思った。
豪放磊落だけど守銭奴でお金にがめつい紅太にも実は繊細に自分はフォローされていたんだなあと改めて二年前を思い返した。
「今度からは新堂の意見も聞いて話し合って色染師としてもやっていく。約束する。それに俺が教えなきゃいけないこともまだ全部教えられてなかったと思うし」
「ありがとうございます」
「よし、じゃあ仲良しの握手だ」
無理やり紅太が二人を握手させる。
「えっ!」
ギョッとした二人の表情がシンクロする。
「なんだ二人とも、そのカエルをひいたような声は。もっと喜べよ!」
二人とも何とも言えないまま顔をそむける。
その二人の頭を乱暴に紅太ががしがしと撫でた。
「蒼もやっと『女子の扱い方』ってもんがわかってきたな。俺は先輩として嬉しいぞ」
ほくほく顔の紅太に蒼騎が盛大に嫌そうな顔をする。
そんな蒼騎の反応を見た若葉は、思わず吹き出してしまった。
「ふふふ。あははっ」
「新堂! 何がおかしい!」
「李先輩が苦手としてる人っていたんだなあって」
いつも寡黙でクールで若葉に接していたから勝手に無敵だと思っていたが、やはり蒼も人間だったらしい。
「当たり前だ。俺を何だと思ってんだ」
そう言って蒼騎はそっぽを向く。
「若葉ちゃん、俺にも苦手な奴はいるんだぞ」
「千川先輩こそ無敵じゃないんですか?」
「いや、俺にも弱点はある」
気持ち良いくらいきっぱり言い切った笑顔の紅太と若葉は、その場で大笑いした。
銭洗弁財天宇賀福神社に、若葉とは違うが別の緑系の色命札をかつて奪った色魅がいるという。
大物に捧げることもせずに、すっかり色を自分の肉体と馴染ませてしまっているらしい。
いつもよりワンランク上の相手だが、サポートする先輩色染師も派遣するから、封滅ではなく捕縛してほしいとのことだった。
捕縛すれば、特殊な術でその色を取り出して新たな若葉の色命札にすることができるという。
それで何とかなるということは、若葉はまだ生きているということだ。
蒼騎は早速、学校所有の自転車を借りると神社まで急いだ。
緑が濃い切通しの間を通り抜けて、隧道のような自然のトンネルを抜けると境内にたどりつく。
時間より早く神社に着いたらしい。
サポート予定の先輩はまだ来ていない。
でも誰もいない境内の真ん中にすでに件の色魅はいた。
何となく空気が揺らいでその向こうの建物が陽炎のようにも揺らめいているからすぐわかる。
蒼騎は、そのまま一人で結界をはると注意深く色魅に近づいていく。
色名刀を構えてゆっくり近づいていく。
そのまま先輩の到着を待てば良かったのだが、若葉のことで責任を感じていた蒼騎はそのまま自分一人で何とかしなければと焦っていた。
それと同時に、ここまで技術を磨いた色導師もいないだろうというくらいの封滅数にも自信もあった。
「よし!」
一瞬の隙をついて刀で色魅を地面に縫い付けた。
目だけは暴れる色魅を見ながら、蒼はベストの内ポケットから素早く白い札を取り出す。
しかし、札ははらりと滑っていき、なぜか目の前の色魅にはくっつかなかった。
「え?」
それよりも、色魅のほうが蒼色の色名刀の色を徐々に吸い取りだした。
「嘘だろ?」
脳裏に肌が透けていく若葉の姿が浮かぶ。
「わ! 蒼騎お前何やってんだよ!」
背後から息をきらせた作業着姿の青年が石段を勢いよく駆け下りてくる。
「千川先輩!」
「だから俺たちの到着を待てって。お前、本部からのメッセージ華麗に既読スルーしやがったな!」
言いながら蒼騎よりも大柄な体に似合わず、紅太は素早く紅色の色名刀を取り出すとそのまま思いっきり上段から切りつけた。
「先輩?」
「お前の色を吸いにかかった段階で捕縛は不可能。封滅に移行した。ほれお前の色名札」
刀から戻った蒼色の札を蒼騎に渡す。
「そんな。じゃあ俺、また……」
「残念ながら勇み足だ。俺たちを待ってろっていう本部の指示を無視したつけだ」
愕然としている蒼騎を紅太は無理やり立ち上がらせた。
「ぼさっとするな。次、行くぞ。緑系の色を喰らう色魅はまだここに他にもいるらしいからな」
蒼騎の結界を利用したまま、紅太は訪れた人々が銭を洗う奥の湧き水に向かう。
蒼騎も慌てて後をついていく。
そこには水に溶けている色魅がいた。
水の動きが一か所だけおかしい部分があった。
「よし。今度はちゃんとしろよ」
合図を受けた蒼騎は、再び蒼色の刀で色魅の端を今度は水に縫い留めようとした。
しかし、水に溶けている色魅は自由自在に自分と水の溶けあう範囲を変えては、蒼を翻弄する。
「さすがちょっとした実力者は違うな」
なぜかニヤニヤしながら、紅太は一切手だしせずにその色魅を見つめている。
「くっ!」
何度も逃げられるので、だんだん蒼騎の焦りが高まっていく。
水の中で刀がまた空振りした瞬間、水が壁のようにせりあがり、蒼騎を飲みこもうと襲ってきた。
「ぐわ~!」
「今だ!」
紅太が誰かに明らかに蒼騎ではない誰かに合図を送った。
「はい!」
さっとかがんだ紅太の肩をつかって飛び上がった人影が、上段から水の壁を真っ二つに切りさいた。
「ぎゃ~!」
断末魔の声を上げながら、水の中の色魅が消えていった。
「え? 先輩! 封滅はダメじゃなかったんですか? 何で封滅したんですか!」
全身水を浴びながら、我に返った蒼騎が紅太に向かって珍しくくってかかった。
「で、どうだった? 若葉ちゃん」
蒼騎の言葉を無視して紅太が問いかけると、二人の間には若葉がいた。
「新堂?」
若葉は振り返って蒼騎に頭を下げた。
透けかけていた体は元通りになっているし、新しいベストが支給されたのか校章が綺麗に縫い付けられている。
「李先輩、すみませんでした!」
「若葉ちゃんは謝らなくていいから。むしろ蒼騎は若葉ちゃんにちゃんと謝れ。今までのことから含めて」
「どうして?」
呆然としている蒼騎。全身びしょ濡れも気にならないくらいだ。
「御方様と姫様に助けて頂いて」
「姫様が?」
「はい」
若葉は手短に本邸で蒼騎と別れてからのことを話した。
実は、若葉の色命札に関しては、あらかじめ精巧な偽物を渡していたこと。
あまりに精巧すぎて色名刀にできることももちろんだが、本人が透けるところまで再現できるくらいだったこと。
そして本邸で改めて卯花から若葉の色命札を渡されたこと。
「卯花の話によると、たまに高校在学中に色命札を取られる生徒がいるんだと。で、それを卯花が予見できてしまった場合は、あらかじめ入学時に偽札を渡しておくんだと」
「本物は鎌倉の本邸で保管しておくということですか?」
「そうだ」
「そうか。良かった」
ほっとした蒼騎は思わずその場に座り込んでしまった。
「蒼、卯花から伝言だ。怖がらせてしまってすまない。でも、これくらいしないと新堂さんのことも色染師の仕事のことも、本気で向き合おうとはしなかったでしょ? だそうだ」
それに対して蒼騎は、もう何も言えなかった。
「李先輩、大丈夫ですか?」
「ああ」
ゆっくりと立ち上がる。
「これで若葉ちゃんもガッツリ戦えるようになったな。色名刀の使い方もばっちりだったぞ」
「千川先輩、このたびはご指導いただき、ありがとうございました」
「この一週間、こっそり本邸で稽古してたからな。どうだ蒼? もう若葉ちゃんはお前の足手まといにもならないし、結界や封印の補助系以外にもちゃんと色名刀を使って封滅できるようになったぞ」
「ありがとうございます。千川先輩」
恩を思いっきり着せてくる紅太に素直に謝意を伝える。
後で言葉の上だけでなく、ちゃんと礼をさせられるのだろう。
紅太の魂胆を蒼騎はよく知っている。
紅太の守銭奴ぶりというか、がめつさはよくわかっていた。
なんせ関東本部の幹部連中をたった一人で平気で脅せるような男なのだ。
「新堂、今まですまなかった。本当に悪かった」
若葉に向かって頭を下げる。
「李先輩、もういいですよ。わかりましたから」
「いや。本当の意味で色導師の仕事をしていなかった俺も悪かったと思う」
ただ封滅の仕方や結界のはり方など実践だけを教えれば良いというわけではなかった。メンタルな部分や色染師の決まり事や約束事など、話しておくべきことは山ほどあった。蒼騎はその色々を紅太に戦いながら教わってきていた。
しかし、それは同性ペアの場合は有効なのかもしれない。
でも異性ペアの場合は考えないといけないのかもしれない。
そのあたりの配慮が自分には欠けていた。
素直に蒼騎は思った。
豪放磊落だけど守銭奴でお金にがめつい紅太にも実は繊細に自分はフォローされていたんだなあと改めて二年前を思い返した。
「今度からは新堂の意見も聞いて話し合って色染師としてもやっていく。約束する。それに俺が教えなきゃいけないこともまだ全部教えられてなかったと思うし」
「ありがとうございます」
「よし、じゃあ仲良しの握手だ」
無理やり紅太が二人を握手させる。
「えっ!」
ギョッとした二人の表情がシンクロする。
「なんだ二人とも、そのカエルをひいたような声は。もっと喜べよ!」
二人とも何とも言えないまま顔をそむける。
その二人の頭を乱暴に紅太ががしがしと撫でた。
「蒼もやっと『女子の扱い方』ってもんがわかってきたな。俺は先輩として嬉しいぞ」
ほくほく顔の紅太に蒼騎が盛大に嫌そうな顔をする。
そんな蒼騎の反応を見た若葉は、思わず吹き出してしまった。
「ふふふ。あははっ」
「新堂! 何がおかしい!」
「李先輩が苦手としてる人っていたんだなあって」
いつも寡黙でクールで若葉に接していたから勝手に無敵だと思っていたが、やはり蒼も人間だったらしい。
「当たり前だ。俺を何だと思ってんだ」
そう言って蒼騎はそっぽを向く。
「若葉ちゃん、俺にも苦手な奴はいるんだぞ」
「千川先輩こそ無敵じゃないんですか?」
「いや、俺にも弱点はある」
気持ち良いくらいきっぱり言い切った笑顔の紅太と若葉は、その場で大笑いした。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
怪盗&
まめ
キャラ文芸
共にいながらも、どこかすれ違う彼らが「真の相棒になる」物語。
怪盗&(アンド)は成人男性の姿でありながら、精神の幼いアンドロイドである。彼は世界平和のために、兵器の記憶(データ)を盗む。
相棒のフィクサーは人を信頼できない傲岸不遜な技術者だ。世界平和に興味のない彼は目的を語らない。
歪んだ孤独な技術者が幸せを願うまで。
無垢な怪盗アンドロイドが運命に抗うまで。
NYを舞台にした情報化社会のヒーローと相方の技術者の活躍劇(現代×SF×バディ)
表紙イラスト:Ryo
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる