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色染師の歴史と学園
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ここ鎌倉市雪ノ下にある鎌倉彩明学園高等部には、未来の『色染師』を育成するというもう一つの顔があった。
それこそが若葉が魔法みたい! と飛びついたきっかけなのだが。
色染師とは、古代から色六天という魔物たちと戦っては封滅している異能者たちのことで、代々、京都の央色家とその一門が束ねている。
その昔、飛鳥時代の日本に色六天という六体の魔物が現れた。
その魔物は人々の色を喰らっては、自分の肉体の色としていた。
色を失った人間たちは透明人間となってそのまま、消えていくのであった。
当時、朝廷に仕えていた央色という一族がいた。
その一族は、後に陰陽師を輩出するほど霊的な能力を持った一族だった。
その能力を当時の朝廷に買われた央色一族は、色六天たちと死闘を繰り広げた結果、何とか都の飛鳥より離れた場所の大地に封じることができた。
しかし、滅ぼすことはできなかった。
そこで央色一族は、今の『色染師』に繋がる色六天とその手下である色魅に対抗する戦士たちを育てることに力を入れ始めた。
そして時は流れ、平安時代末期の源平争乱の最中にとうとう恐れていたことが起きてしまった。
色六天の一体『色矛天』が目覚めてしまったのだ。
央色一族と色染師たちとの戦いが始まった。
末席の色六天とはいえ、なかなか強敵だったが、ようやく封じるのではなく滅ぼすことができた。
しかし安堵したのも束の間、滅ぼされる直前に己の命と引き換えにその色矛天は、一つの呪いを日本列島の大地にかけた。
『この大地に大きな戦乱が起こり人々の血が流れるたびに、その血によって封じられている残りの色六天が順番に目覚めていく』
なぜか全員一気に目覚めさせるということはできなかったらしいが。
以来、日本で大規模な戦乱が起こるたびに、色六天たちが一体ずつ目覚めていくようになってしまった。
二体目は鎌倉末期の争乱で『色武天』が目覚め、三体目の『色夢天』は応仁の乱で目覚め、四体目の『色謀天』は関ケ原の戦いで目覚めていった。
その都度、なんとか撃退し滅ぼしていったのだが、四体目の色謀天を滅ぼした時にもさらなる呪いがかけられた。
今度は央色一族や色染師の候補者たちが生まれにくいようにしたのだ。
だから、その後の江戸時代ではわずかな小物の色魅の封滅にも苦しむことになってしまった。
そうして五体目『色霧天』が幕末の動乱で目覚めた。
色霧天との戦いは熾烈を極め、滅ぼすことはできなかったものの何とか鎌倉の地に封じることができた。
そして色六天最後にして最強の『色無天』が第二次世界大戦で目覚めてしまった。
こちらも何とか本家のある京都の地に封じ込めることに成功した。
この色霧天と色無天は封じられているだけなので、いずれ決着をつける時が来るだろうと央色家当主は話している。
その央色家では鎌倉幕府成立以降、代々当主に娘が生まれると、関東下向と称して鎌倉に遣わし、前当主の娘(伯母もしくは叔母)が育てる。そしてその娘が『鎌倉の御方』となって東日本の色染師たちを京都の当主に代わって束ねてきた。『鎌倉の御方』は巫女的要素が強いために生涯独身で過ごさなければならない。
西日本の色染師たちは京都の央色本家当主が束ねている。
そのように鎌倉と京都を拠点にして、日々、色六天配下の色魅たちと戦い、封滅していくのが色染師の役目なのだ。
鎌倉彩明学園高等部と京都彩明学院高等科は関東と関西でそれぞれ色染師を育成する学校なのである。
遠方からの入学者には全額無料の寮に入寮させている。
ただし、表向きは普通の高校なので、普通の授業もあるし部活動もある。
専門コースの中に色染師の特別授業がこっそり行われている。
色染師の能力者は、央色本家や一門の五大色家を除いて遺伝しないので、そのつど能力者の卵を鎌倉と京都それぞれの本部で選抜して、受験して翌年には入学させるように各家庭に対して学校側が根回しをするのだ。
入学したらしたで、全員それなりに練習すれば自分の能力に気付き目覚めさせることができてしまう。
なので普通の授業ならともかく、色染師の養成授業で留年するような生徒はいない。
若葉も橙子も今では高校生活と色染師活動が普通に馴染んでしまった。
色染師の見習いとしては、入学してから一か月半で若葉はかなり優秀なほうになってしまっている。
なんせ透明の不思議な存在を白色の札で退治? できるのだ。
陰陽師のような和風な魔法使いみたいで、見習いとはいえ色染師活動は若葉にとってめちゃくちゃ楽しいものだった。
「毎日毎日、朝早くからやって放課後も放課後で暗くなる寸前までやって、よく李先輩もつきあってくれるわね」
色染師の活動は基本的に明るい日中の間だけとされている。
夜は色魅の活動が活発になるので、見習いには色魅とはいえ厳しい戦いを強いられてしまいかねないから、校則で禁止されている。
「うん。あ、でも今日はさすがに勉強したいって言われた」
「でしょう? 基本一年生の見習いの間は、だいたい小物の封滅の仕事が理解できて、実践で先輩と協力してできたら良いだけなのに。若葉くらいじゃない? 入学早々からガンガン封滅に走り回ってるの」
「そ、そうだね」
「私のとこは神崎先輩が付属の大学に進学予定だけど、それでも内部推薦してもらうためにそこそこ勉強しなきゃいけないからって言われてるから、最低限の封滅数+少し程度しか今のところやってないよ」
「そうなんだ」
今まで蒼騎が黙って振り回されてくれていたのは、相当運が良かったのかもしれない。
若葉はそう思った。
それこそが若葉が魔法みたい! と飛びついたきっかけなのだが。
色染師とは、古代から色六天という魔物たちと戦っては封滅している異能者たちのことで、代々、京都の央色家とその一門が束ねている。
その昔、飛鳥時代の日本に色六天という六体の魔物が現れた。
その魔物は人々の色を喰らっては、自分の肉体の色としていた。
色を失った人間たちは透明人間となってそのまま、消えていくのであった。
当時、朝廷に仕えていた央色という一族がいた。
その一族は、後に陰陽師を輩出するほど霊的な能力を持った一族だった。
その能力を当時の朝廷に買われた央色一族は、色六天たちと死闘を繰り広げた結果、何とか都の飛鳥より離れた場所の大地に封じることができた。
しかし、滅ぼすことはできなかった。
そこで央色一族は、今の『色染師』に繋がる色六天とその手下である色魅に対抗する戦士たちを育てることに力を入れ始めた。
そして時は流れ、平安時代末期の源平争乱の最中にとうとう恐れていたことが起きてしまった。
色六天の一体『色矛天』が目覚めてしまったのだ。
央色一族と色染師たちとの戦いが始まった。
末席の色六天とはいえ、なかなか強敵だったが、ようやく封じるのではなく滅ぼすことができた。
しかし安堵したのも束の間、滅ぼされる直前に己の命と引き換えにその色矛天は、一つの呪いを日本列島の大地にかけた。
『この大地に大きな戦乱が起こり人々の血が流れるたびに、その血によって封じられている残りの色六天が順番に目覚めていく』
なぜか全員一気に目覚めさせるということはできなかったらしいが。
以来、日本で大規模な戦乱が起こるたびに、色六天たちが一体ずつ目覚めていくようになってしまった。
二体目は鎌倉末期の争乱で『色武天』が目覚め、三体目の『色夢天』は応仁の乱で目覚め、四体目の『色謀天』は関ケ原の戦いで目覚めていった。
その都度、なんとか撃退し滅ぼしていったのだが、四体目の色謀天を滅ぼした時にもさらなる呪いがかけられた。
今度は央色一族や色染師の候補者たちが生まれにくいようにしたのだ。
だから、その後の江戸時代ではわずかな小物の色魅の封滅にも苦しむことになってしまった。
そうして五体目『色霧天』が幕末の動乱で目覚めた。
色霧天との戦いは熾烈を極め、滅ぼすことはできなかったものの何とか鎌倉の地に封じることができた。
そして色六天最後にして最強の『色無天』が第二次世界大戦で目覚めてしまった。
こちらも何とか本家のある京都の地に封じ込めることに成功した。
この色霧天と色無天は封じられているだけなので、いずれ決着をつける時が来るだろうと央色家当主は話している。
その央色家では鎌倉幕府成立以降、代々当主に娘が生まれると、関東下向と称して鎌倉に遣わし、前当主の娘(伯母もしくは叔母)が育てる。そしてその娘が『鎌倉の御方』となって東日本の色染師たちを京都の当主に代わって束ねてきた。『鎌倉の御方』は巫女的要素が強いために生涯独身で過ごさなければならない。
西日本の色染師たちは京都の央色本家当主が束ねている。
そのように鎌倉と京都を拠点にして、日々、色六天配下の色魅たちと戦い、封滅していくのが色染師の役目なのだ。
鎌倉彩明学園高等部と京都彩明学院高等科は関東と関西でそれぞれ色染師を育成する学校なのである。
遠方からの入学者には全額無料の寮に入寮させている。
ただし、表向きは普通の高校なので、普通の授業もあるし部活動もある。
専門コースの中に色染師の特別授業がこっそり行われている。
色染師の能力者は、央色本家や一門の五大色家を除いて遺伝しないので、そのつど能力者の卵を鎌倉と京都それぞれの本部で選抜して、受験して翌年には入学させるように各家庭に対して学校側が根回しをするのだ。
入学したらしたで、全員それなりに練習すれば自分の能力に気付き目覚めさせることができてしまう。
なので普通の授業ならともかく、色染師の養成授業で留年するような生徒はいない。
若葉も橙子も今では高校生活と色染師活動が普通に馴染んでしまった。
色染師の見習いとしては、入学してから一か月半で若葉はかなり優秀なほうになってしまっている。
なんせ透明の不思議な存在を白色の札で退治? できるのだ。
陰陽師のような和風な魔法使いみたいで、見習いとはいえ色染師活動は若葉にとってめちゃくちゃ楽しいものだった。
「毎日毎日、朝早くからやって放課後も放課後で暗くなる寸前までやって、よく李先輩もつきあってくれるわね」
色染師の活動は基本的に明るい日中の間だけとされている。
夜は色魅の活動が活発になるので、見習いには色魅とはいえ厳しい戦いを強いられてしまいかねないから、校則で禁止されている。
「うん。あ、でも今日はさすがに勉強したいって言われた」
「でしょう? 基本一年生の見習いの間は、だいたい小物の封滅の仕事が理解できて、実践で先輩と協力してできたら良いだけなのに。若葉くらいじゃない? 入学早々からガンガン封滅に走り回ってるの」
「そ、そうだね」
「私のとこは神崎先輩が付属の大学に進学予定だけど、それでも内部推薦してもらうためにそこそこ勉強しなきゃいけないからって言われてるから、最低限の封滅数+少し程度しか今のところやってないよ」
「そうなんだ」
今まで蒼騎が黙って振り回されてくれていたのは、相当運が良かったのかもしれない。
若葉はそう思った。
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