【完結】馬のパン屋さん

黄永るり

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モリスとおじいちゃん

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 大きな町の片すみに、小さなパン屋さんがありました。
 
 そのパン屋さんからは、毎日、風に乗って焼き立てパンの良い香り……
 とはあまり言えない酸っぱい香りが流れてくるからか、誰も店に入ろうとはしません。

 なぜなのでしょうか?

 そのパン屋さんは、町の人たちから『馬のパン屋さん』と呼ばれたりしていました。
 そうです。
 彼らが作っているのは、人が食べるパンではなく、馬が食べるパンだったのです。
 
 馬が食べるパンは、人が食べるパンとはだいぶ違います。
 白い小麦粉ではなく、小麦ふすまにライ麦粉を混ぜて、時にはもみ殻やパンくずまで入れて、平たく焼き上げたパンは黒ずんでいて、とてもかたくて人の歯では簡単にかじれないものなのでした。
 
 そのかたい馬のパンを焼いているのは、モリスという男の子とおじいちゃんの二人でした。

 モリスは、毎日おじいちゃんと一緒に馬に食べさせるパンを焼いては、たくさんの馬を持っているお金持ちの家や、旅人用の馬小屋のある町の宿屋にパンを持って行きます。あとは、七日に一度、隣の村から馬飼いの男の人が店にパンをたくさん買いにきてくれます。
 
 そして、これは内緒なのですが、時々パンの材料を少し変えて、人でも食べれるようにしたパンを、町の中でも特に貧しい人たちに安く売っていたりしました。


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