【完結】馬のパン屋さん

黄永るり

文字の大きさ
上 下
1 / 5

モリスとおじいちゃん

しおりを挟む
 大きな町の片すみに、小さなパン屋さんがありました。
 
 そのパン屋さんからは、毎日、風に乗って焼き立てパンの良い香り……
 とはあまり言えない酸っぱい香りが流れてくるからか、誰も店に入ろうとはしません。

 なぜなのでしょうか?

 そのパン屋さんは、町の人たちから『馬のパン屋さん』と呼ばれたりしていました。
 そうです。
 彼らが作っているのは、人が食べるパンではなく、馬が食べるパンだったのです。
 
 馬が食べるパンは、人が食べるパンとはだいぶ違います。
 白い小麦粉ではなく、小麦ふすまにライ麦粉を混ぜて、時にはもみ殻やパンくずまで入れて、平たく焼き上げたパンは黒ずんでいて、とてもかたくて人の歯では簡単にかじれないものなのでした。
 
 そのかたい馬のパンを焼いているのは、モリスという男の子とおじいちゃんの二人でした。

 モリスは、毎日おじいちゃんと一緒に馬に食べさせるパンを焼いては、たくさんの馬を持っているお金持ちの家や、旅人用の馬小屋のある町の宿屋にパンを持って行きます。あとは、七日に一度、隣の村から馬飼いの男の人が店にパンをたくさん買いにきてくれます。
 
 そして、これは内緒なのですが、時々パンの材料を少し変えて、人でも食べれるようにしたパンを、町の中でも特に貧しい人たちに安く売っていたりしました。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

ナミダルマン

ヒノモト テルヲ
児童書・童話
だれかの流したナミダが雪になって、それが雪ダルマになると、ナミダルマンになります。あなたに話しかけるために、どこかに立っているかもしれません。あれ、こんなところに雪ダルマがなんて、思いがけないところにあったりして。そんな雪ダルマにまつわる短いお話を集めてみました。  

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

ながれ星におりぼん

桐月砂夜
児童書・童話
童話になります。ふわふわ、のんびり。癒されるような、優しい気持ちになれるような、そんな物語を書きたいです。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

オオカミ少女と呼ばないで

柳律斗
児童書・童話
「大神くんの頭、オオカミみたいな耳、生えてる……?」 その一言が、私をオオカミ少女にした。 空気を読むことが少し苦手なさくら。人気者の男子、大神くんと接点を持つようになって以降、クラスの女子に目をつけられてしまう。そんな中、あるできごとをきっかけに「空気の色」が見えるように―― 表紙画像はノーコピーライトガール様よりお借りしました。ありがとうございます。

処理中です...