【完結】月の行方

黄永るり

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鉱山へ

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 東の太守の城を発ってから丸二日後にルナたち一行は鉱山に到着した。
 短い休憩以外は馬車は進み続けたため、本来なら後一日はかかるところをわずか二日の所要時間で着くことができたのだ。
 道路も町も整備された東の城下を出てから、険しい山道を登っていく道ばかりでルナたちは落ち着いて眠ることもままならなかった。
「ここで私と共に寝起きしてもらう」
 ユノーに示された小屋を見た時は、正直ルナはほっとした。
 これで揺れない床で寝られると安堵した。
 小屋は粗末な作りのもので、大風が吹けば一瞬で吹き飛んでしまうくらいの建てられ方だ。
 鉱山ではあちこちに井戸のようなものと、この小屋と似たような作りの建てられていて、小さな集落を形成していた。
 ただルナたちが宿泊する小屋は、集落の中でもまだましなほうの小屋だった。
 集落の入り口周辺には多くの兵士たちが交代で見張り番をしている。
 大陸にも稀なる二色の色を有するバイカラートルマリンが産出したことのある鉱山を盗賊たちから守るためである。
 警備はかなり厳重に感じられた。
 これなら落ち着いてバイカラートルマリンが探せそうだ。
 ルナはもう一つの目的の達成を祈った。

 翌朝、三日ぶりに揺れないところで眠れたルナはユノーに起こされるまで起きることはなかった。
「ルナ、時間が惜しいだろう?」
 朝食中、ユノーがルナにそう尋ねてきた。
 朝食は太守の城とは違い簡素なものだった。
 乾パン、野菜の皮などを煮込んだ味の薄いスープ、そして太守から支給された山羊のミルク。これでも十分にルナのお腹は満たされた。
「はい」
 王都で行われる収穫祭に合わせるとなると、ここで一週間も過ごすわけにはいかない。
 せいぜい三日が限度のように思われる。
「では、これを持っていきなさい」
 ユノーに差し出されたのは布製の肩掛け袋だった。
 この村に入った時に何人かの鉱夫たちが身に着けていたものと同じものだ。
「これは?」
 すでに鉱夫たちが使っている道具は背負えるような袋に詰めてあるものを渡されていた。
 原石を採取する道具、縄、携帯型の小さな素焼きの手燭、火種、火打石など。
「坑道は深い。毎日出入りしていたらなかなか終わらないだろう?」
「そうですね」
「とりあえず二日分の食料として、乾パンと水筒を準備した。この袋ごと持ってきなさい。簡単な着替えも入っている。三日目以降の食料と着替えは、私かレムリアのどちらかで入り口まで持っていこう」
「ユノー様、ありがとうございます」
「気をつけて行ってきなさい。戻ってきたらここで試験です」
「はい。よろしくお願いいたします」
 ルナはユノーから袋を受け取ると、小屋の外に出た。
 外には道案内の鉱夫たちが待っていた。
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