【完結】月の行方

黄永るり

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四人の異母兄弟①

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 ルナはあえてトルマリンとだけ伝えて、本当は一つの原石に二色の色を有するというトルマリンの稀少種を探しているとは意図的に伝えなかった。
 リファンカールでタンザナイトと一、二を争うくらいの珍しい貴石が二色のトルマリンなのだ。
 ルナが若さまとさらっていた川から産出するトルマリンの量と、リファンカールのトルマリンの産出量は桁違いだ。そしてその分、二色のトルマリンも確率的にはこちらのほうが見つけやすい。
「まあせいぜい頑張るがよい」
 宰相はレムリアの時とは違って、かなり適当に手を振った。
「では私の甥御たちを紹介しよう。向かって左から第二王子のロナウス」
 玉座に一番近いところに立っていた二十代後半と思しき青年が無表情に目礼した。
 漆黒の冷たい瞳にルナの背筋が粟立った。
 本能的に相対した人物の恐怖の感情を湧き上がらせるような人物のようだ。
「順に第三王子のトゥナルーン、第四王子のダグナル、第五王子のバスナーだ」
 二十代半ばの第三王子トゥナルーンは叔父である王弟に似て物静かな文治派。二十代前半の第四王子ダグナルは第二王子のロナウスと似て武断派だがロナウスのように恐怖は感じさせないものの、どこか暗い雰囲気を漂わせている。末っ子の第五王子バスナーも武断派だが三人の異母兄たちよりも美しい顔立ちをしている。また四人の異母兄弟うちで一番好戦的な瞳を持っている。
 先王は、正妻との間に第一王子をもうけたのだが、その王子が十年前に病で亡くなってしまったのだ。後宮には正室以外の妃を持たない先王であったが、中立国でもあるカルトパン魔法公国にある別荘地には、現地の女人を寵愛し、数人の女性から御子が生まれていた。王妃が先王と第一王子亡き後、カルトパンに生まれた側室の子らを実母と共に呼び寄せようとした。その矢先、別荘地が火災で燃えてしまった。
 先王が寵愛した女人とその子供たちのうち何人かは生き残った。そして、王妃の命によりリファンカール王国にやってきた。
 その後、王妃の苛烈な試験により四人の御子が残った。
 それが『王子』の称号を得た四人の異母兄弟たちである。
 年齢順に第二王子、第三王子、第四王子、第五王子と呼び名されたが、王位継承順位は年齢順ではなく同列扱いとされていた。
 正妻であった先王の王妃は、四人の王子に先王の跡継ぎ候補が絞られた直後、全てを王弟に託し、実家である隣国のノーファート王国に戻ってしまった。
 独身で実子のいない王弟は、兄である先王の遺言を忠実に守った。
 先王の遺言は『別荘地で生まれた自分の子供たちの中から、優秀な者に国土を分割統治させてその中でも最も優れた者に玉座に座らせるように』と。
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