1 / 10
弟とあたし
しおりを挟む
あたしの弟の明良《あきら》は美形だ。
嫌味かと思うほどカッコイイ。
茶色のさらっとしたやや長めの髪に、切れ長の目。すらりと通った鼻筋。長い睫毛。
官能的に笑みを刻む口元。その口から出る声は甘く腰に来る声で、何故か姉のあたしもドキドキさせられるほどだ。
細くもなく太くもない体型で背も高い。
お頭《つむ》の方も大変よろしく、学年一位の成績を外したのなんて見たことがない。
これまた運動神経も良くて、高校一年の時は毎日のように運動部の連中からスカウトされていた。
これで性格が悪かったらバランスが取れていたと密かに思うあたしだけど、ヤツは性格も良い。
こんな普通で平凡なキャラである姉のあたしも「姉さん」っていって懐いてくれてる。
夜に突然アイスが食べたくなったあたしが「コンビニに行ってアイス買って来て」って頼んだら二つ返事で行ってくれるくらいに出来た弟だ。
頭も顔も運動神経も、おまけに性格も良いなんて―――ここまでくると、もはやチートキャラ。
時々あまりに出来すぎて、人間かと疑ってしまうのはあたしが捻くれているのかもしれない。
そんな万能王子様の弟は―――当然モテる
非公式なファンクラブまであるらしいくらいにモテる。
対するあたしは―――明良と姉弟と思えないくらい平凡だ。
一応、容姿は中の上くらいだと思ってるんだけど、男の子にモテたためしはないから自己評価が高すぎるのかもしれない。
成績も中の上。
運動神経も中の上。
判で押したように『中の上』―――つまり普通に毛が生えた程度のものしか持ってない女。
それが藤崎葵《ふじさきあおい》―――あたしだ。
こうあまりに弟と差があると、もはや嫉妬心も浮かばない。
物語によくあるじゃない。優秀な兄弟に劣等感を持つっていうのが。
でもあまりに違いすぎると格がもはや別次元というか、同じ土俵じゃないというか。
とにかくそんな感じになると羨望の念はあっても嫉妬にまで行かないのだね、人間って。
おかげで姉弟の仲はすこぶる良好。
普通は年子だと喧嘩することが多いハズだけど、あたしたちに限って言えばめったに言い争うことはない。
言い争ってもたいてい明良が折れてくれるんだから、本当、姉に対しても性格良くてどうするんだろうと思う。
そんなんでこの世の中生き残っていけるのかとか。
悪い女にあっさり引っかかってしまうんじゃないかとか。
おねーちゃんとしてはすごく心配になるわけですよ。
自慢の弟だから変な女に引っかかって欲しくないのだ。
男の前ではやたらと良い子ぶってて、同性の前では本性丸出しの二面性を持つ女の子とか。
可愛い年下を篭絡しようとするお姉さま方とか。
そういうのはパス! まったくもってパス!
姉の権限を持って全力で阻止することを誓う!
明良には最高の彼女を作ってもらいたい。
頭が良くて顔が可愛くて、性格もよくて礼儀正しい子。
まぁ、実際そういう子が家に遊びにきちゃったら、それはそれで嫉妬しちゃうだろうけど……自分と比べて。
そう。
ここまで言えばお分かりだろう。
あたしは立派なブラコンだ。
だ、だって仕方なくない!?
顔良し、頭良し、器量良しの弟だよ?
甘やかしてくれる弟だよ?
――――これでブラコンにならない女はいないって! 絶対!
明良も明良で多少はシスコンの気があると思う。
だって友達と約束してても必ず私を優先にしてくれるし。
明良の親友の藤原礼司《ふじわられいじ》君――イケメン眼鏡君だ――だって、以前うちに遊びに来たとき『明良はシスコンですからね』などと言ってたし。
ちなみに藤原君の台詞は私がこっそりトイレに降りてきた彼を捕まえて『明良って好きな人いるの?』と聞いた時の返事。
明良が女の子の告白を断る時に『俺好きな人いるから』って言ってるらしいのを噂で聞いて気になったのだ。
そんなの明良本人に聞けばいいじゃないかと思われるが、好きな人がいてそれが誰かなんて、普通姉には言わないでしょう?
だから、手っ取り早くお友達に聞いたのである。
そこで知ったのが、明良もシスコンの気があると認知されているって事実だ。
あたしのブラコン、一方通行じゃないらしい。
ブラコンでシスコンなんて、ある意味両思いじゃない?
――なんて、明良に好きな人は居なさそうなのでホッとしつつのんきに思っていたあたし。
確かにブラコンでシスコンでお互い様かもしれない。
だけど。
だけどね、あたしと明良は姉弟。
依存はしているかもしれないけど、れっきとした姉弟愛。
恋愛感情ではない――――はずなんだけど。
あ、あたし、どうして今、明良にベッドに押し倒されているんでしょうか――――?
嫌味かと思うほどカッコイイ。
茶色のさらっとしたやや長めの髪に、切れ長の目。すらりと通った鼻筋。長い睫毛。
官能的に笑みを刻む口元。その口から出る声は甘く腰に来る声で、何故か姉のあたしもドキドキさせられるほどだ。
細くもなく太くもない体型で背も高い。
お頭《つむ》の方も大変よろしく、学年一位の成績を外したのなんて見たことがない。
これまた運動神経も良くて、高校一年の時は毎日のように運動部の連中からスカウトされていた。
これで性格が悪かったらバランスが取れていたと密かに思うあたしだけど、ヤツは性格も良い。
こんな普通で平凡なキャラである姉のあたしも「姉さん」っていって懐いてくれてる。
夜に突然アイスが食べたくなったあたしが「コンビニに行ってアイス買って来て」って頼んだら二つ返事で行ってくれるくらいに出来た弟だ。
頭も顔も運動神経も、おまけに性格も良いなんて―――ここまでくると、もはやチートキャラ。
時々あまりに出来すぎて、人間かと疑ってしまうのはあたしが捻くれているのかもしれない。
そんな万能王子様の弟は―――当然モテる
非公式なファンクラブまであるらしいくらいにモテる。
対するあたしは―――明良と姉弟と思えないくらい平凡だ。
一応、容姿は中の上くらいだと思ってるんだけど、男の子にモテたためしはないから自己評価が高すぎるのかもしれない。
成績も中の上。
運動神経も中の上。
判で押したように『中の上』―――つまり普通に毛が生えた程度のものしか持ってない女。
それが藤崎葵《ふじさきあおい》―――あたしだ。
こうあまりに弟と差があると、もはや嫉妬心も浮かばない。
物語によくあるじゃない。優秀な兄弟に劣等感を持つっていうのが。
でもあまりに違いすぎると格がもはや別次元というか、同じ土俵じゃないというか。
とにかくそんな感じになると羨望の念はあっても嫉妬にまで行かないのだね、人間って。
おかげで姉弟の仲はすこぶる良好。
普通は年子だと喧嘩することが多いハズだけど、あたしたちに限って言えばめったに言い争うことはない。
言い争ってもたいてい明良が折れてくれるんだから、本当、姉に対しても性格良くてどうするんだろうと思う。
そんなんでこの世の中生き残っていけるのかとか。
悪い女にあっさり引っかかってしまうんじゃないかとか。
おねーちゃんとしてはすごく心配になるわけですよ。
自慢の弟だから変な女に引っかかって欲しくないのだ。
男の前ではやたらと良い子ぶってて、同性の前では本性丸出しの二面性を持つ女の子とか。
可愛い年下を篭絡しようとするお姉さま方とか。
そういうのはパス! まったくもってパス!
姉の権限を持って全力で阻止することを誓う!
明良には最高の彼女を作ってもらいたい。
頭が良くて顔が可愛くて、性格もよくて礼儀正しい子。
まぁ、実際そういう子が家に遊びにきちゃったら、それはそれで嫉妬しちゃうだろうけど……自分と比べて。
そう。
ここまで言えばお分かりだろう。
あたしは立派なブラコンだ。
だ、だって仕方なくない!?
顔良し、頭良し、器量良しの弟だよ?
甘やかしてくれる弟だよ?
――――これでブラコンにならない女はいないって! 絶対!
明良も明良で多少はシスコンの気があると思う。
だって友達と約束してても必ず私を優先にしてくれるし。
明良の親友の藤原礼司《ふじわられいじ》君――イケメン眼鏡君だ――だって、以前うちに遊びに来たとき『明良はシスコンですからね』などと言ってたし。
ちなみに藤原君の台詞は私がこっそりトイレに降りてきた彼を捕まえて『明良って好きな人いるの?』と聞いた時の返事。
明良が女の子の告白を断る時に『俺好きな人いるから』って言ってるらしいのを噂で聞いて気になったのだ。
そんなの明良本人に聞けばいいじゃないかと思われるが、好きな人がいてそれが誰かなんて、普通姉には言わないでしょう?
だから、手っ取り早くお友達に聞いたのである。
そこで知ったのが、明良もシスコンの気があると認知されているって事実だ。
あたしのブラコン、一方通行じゃないらしい。
ブラコンでシスコンなんて、ある意味両思いじゃない?
――なんて、明良に好きな人は居なさそうなのでホッとしつつのんきに思っていたあたし。
確かにブラコンでシスコンでお互い様かもしれない。
だけど。
だけどね、あたしと明良は姉弟。
依存はしているかもしれないけど、れっきとした姉弟愛。
恋愛感情ではない――――はずなんだけど。
あ、あたし、どうして今、明良にベッドに押し倒されているんでしょうか――――?
20
お気に入りに追加
1,434
あなたにおすすめの小説
お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!
奏音 美都
恋愛
まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。
「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」
国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?
国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。
「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」
え……私、貴方の妹になるんですけど?
どこから突っ込んでいいのか分かんない。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
この誓いを違えぬと
豆狸
恋愛
「先ほどの誓いを取り消します。女神様に嘘はつけませんもの。私は愛せません。女神様に誓って、この命ある限りジェイク様を愛することはありません」
──私は、絶対にこの誓いを違えることはありません。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。
※7/18大公の過去を追加しました。長くて暗くて救いがありませんが、よろしければお読みください。
なろう様でも公開中です。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる