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33 レストランにて
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「……レオン、私に考える時間をくれる?」
親友からのプロポーズを受けて、私の頭は大混乱だ。ふと、ラウル様の悲しそうな顔が思い浮かんで、胸が痛む。
「もちろんだよ。僕の家においで。朝まで、ゆっくり話そう」
なぜ、そうなる。
未婚の男女が二人きりで夜通しお話しするなんて、絶対にダメだし、話すというより理詰めで説得されそうだから、御免被りたい。ここは「家に帰る」の一択しかないだろう。
「ああ、お父上から伝言だよ。落とし前をつけるまでは、家に帰ってくるな、だって」
「え」
敗者復活戦にまつわる騒動を収めなければ、私には帰る場所がないとは。そして、なぜレオンが嬉しそうに話すのだ。
お父様の怒りがそこまでだとは思っていなかったけれど、もしかしたら、過去の自分とラウル様を重ねて、彼に同情しているのかもしれない。
自宅がダメなら、おばあ様の所へ行こうか。少し距離があるが、辻馬車を拾えば大丈夫だろう。
「先に言っておくけど、道に人が溢れているから馬車は使えないよ。ドレスを着たまま、徒歩で行ける範囲の場所なんて限られている。僕の家においで」
「それは、ちょっと」
言葉を濁しながら他の選択肢を求めて、私の頭に街の地図が浮かぶ。ここから近くのところに、ホテルがあるはずだと検索結果が教えてくれた。そこを利用するとレオンに告げると、面白くなさそうな顔をして渋々承諾した。
「ふうん。まあ、いいか。僕も一緒に行くよ」
送ってくれるのだろうかと思いきや、彼も泊まる気らしい。諦めさせる気力もない私は、お化粧直しに席を立つ。
周りを見渡しながら歩くと、なるほど、確かにいろんな身分の方が料理を楽しんでいらっしゃるなあと、今更ながらに気付く。
本当に周りが見えていなかったのだ。
私のために、そんな大会があるなんて知らなかったし、レオンの気持ちにも全く気付かなかった。三年という月日は重く、生半可な気持ちで臨んだのではないのは分かる。
今の私は、事実を受け止めるだけで精一杯で、どう応えたらいいのか、皆目見当がつかない。心の整理をしながら彷徨っていると、不穏な話が聞こえた。
そちらを見ると、厳つい顔をした集団が、「あの店を襲うのはどうだ」「警備員が多くて、難しいぞ」「では、この宝石店にしようか」と、悪い顔して話している。
絵画を眺めているふりをして聞き耳を立てると、知っている店名が話題に上がって、反射的に言葉が飛び出した。
「そのお店……」
しまった。
男たちに気取られた。ラウル様の家が経営している店舗だったから、思わずつぶやいてしまったのがいけなかった。彼らは一気に警戒し、鋭い目つきで私を睨みつけてきた。何か言わなくては怪しまれるだろう。頭をフル回転させながら、ニコリと笑う。
「私も好きですわ。よく行かれるのですか?」
にこやかな令嬢モードで話しかけ、ついでに、背景には花も咲かせておく。すると、男たちの肩から力が抜けた。
「ああ。いい仕事をするからな」
「まあ。審美眼をお持ちなのですね」
訓練を重ねて習得した令嬢の微笑みで褒めると、男たちは、すっかり気を許した。お酒が入っているせいもあるだろう。
「お嬢ちゃん、話が分かるな。一緒に飲むか?」
「ごめんなさい。ご一緒したいのですけれど、未成年ですし連れがおりますの。三年後に誘ってくださいませ」
「ガハハ! 三年後かよ!」
男たちは大いに盛り上がってくれたので、適当に切り上げて、その場を離れる。令嬢モードは、こんな場面でも使えるようだ。勉強になったぞ。
「アリス! 大丈夫か? 何を話していたんだ」
心配して来てくれたレオンが説明を求めるが、私は別の方向を見て、石の柱と化す。
……ラウル様!
騎士の制服に身を包んだ婚約者が、美しい顔を歪めて、今にも泣きそうな顔をして歩いてくる。彼には、いつもの冷酷さはまるでなく、人の血が通った普通の若者に見えた。もともとは、こんな雰囲気の人だったのだろうか。
ごめんなさい。
あなたが何を考えているか分からなかった。
あの黒い気配が呪いと呼ばれるものならば、ラウル様の極端な態度にも説明がつくのかもしれない。私が何も知らされていなかったように、あなたにも、何らかの負荷や試練が課せられていたのだろう。
その時、ラウル様の目が一点を見つめ、足を止めた。
げ、まずい!
視線の先は、私の腰だ。間の悪いことに、レオンの手が触れた瞬間を見られた。浮気現場を目撃したと、勘違いされてもおかしくはない。
しかし、全力で弁解しても、さんざん彼から逃げていた私の言い分が通るとは思えない。めちゃくちゃ強いラウル様が本気で怒れば、私たちは瞬殺されてしまいだろう。出入口はラウル様の後ろにあるから、逃げることはできない。
ここが正念場だわ。
今こそ話し合いをして、お互いの溝を埋める時なのではないだろうか。思い違いや勘違いで、もつれにもつれた糸を解きほぐすべきだと、自分を叱咤激励する。
「アリス殿……」
「強盗ですっ!」
……思いっきり間違えた!
すっかり逃げ癖がついていて、名前を呼ばれた瞬間、口が誤作動を起こしてしまった。今までの積み重ねが、体に染み付いているのだろう。頭では「ごめんなさい」と命令したのに、口から出た言葉は、始めの一文字しか合っていない。
どうしよう。
「……は?」
何を言われたのか分からない様子のラウル様は、動きを止めた。そりゃ、そうなりますよね、同感です。レオンも「何を言っているんだ」と困惑しているし、私も次のセリフに迷うが、こうなってしまったら仕方ない。勢いに任せて言ってしまえ。
「あの席に座っている男たちが、ラウル様のお店を襲撃する計画を立てていました! 慣れた様子でしたから、余罪があると思われます!」
彼はキョトンとする。
申し訳なさが込み上げるが、もう後には引けない。
「今すぐ、お話を聞くべきです!」
「え? あ、ああ、そうだな」
私の必死さに押されたのか、フラフラとラウル様は歩いて行く。男たちに声をかけた瞬間、なぜか絡まれて、そのまま大乱闘に突入した。
「なんで!?」
騎士の制服を着ているせいか。
後ろ暗い人々は、自分たちを捕まえに来たのだと早合点し、ラウル様に襲いかかったのだろう。私の考えが浅はかだった。彼がケガをしたらどうしよう。
「わあ! あんな戦いにくいところで、キレイに倒したよ。さすがだね!」
レオンは心から楽しんでいて、清々しいほど、全く心配をしていない。もちろん、ラウル様が圧倒的に強いせいもあるし、尊敬している彼の勇姿を目の当たりにして、喜ぶのは分かるけれど……。
「レオン。敗者復活戦が始まったのは、どうして?」
そう、婚約者を交代したいとは言っていたけれど、私は申し立てなどしていない。一足飛びに敗者復活戦が始まったなんて、やはりおかしい。
「え? 言ってなかった? 君の手紙を証拠にして、僕が陛下に願い出たからだよ。今更、ラウル様がいいなんて言わないよね?」
そう言うと、ニッコリ笑った。
ああ、身から出た錆とは、このことだ。
私は、昨日に戻る魔法があるならば、いくらでもお金を出すのにと後悔しながら、レオンとレストランを出た。
ラウル様を置いて。
親友からのプロポーズを受けて、私の頭は大混乱だ。ふと、ラウル様の悲しそうな顔が思い浮かんで、胸が痛む。
「もちろんだよ。僕の家においで。朝まで、ゆっくり話そう」
なぜ、そうなる。
未婚の男女が二人きりで夜通しお話しするなんて、絶対にダメだし、話すというより理詰めで説得されそうだから、御免被りたい。ここは「家に帰る」の一択しかないだろう。
「ああ、お父上から伝言だよ。落とし前をつけるまでは、家に帰ってくるな、だって」
「え」
敗者復活戦にまつわる騒動を収めなければ、私には帰る場所がないとは。そして、なぜレオンが嬉しそうに話すのだ。
お父様の怒りがそこまでだとは思っていなかったけれど、もしかしたら、過去の自分とラウル様を重ねて、彼に同情しているのかもしれない。
自宅がダメなら、おばあ様の所へ行こうか。少し距離があるが、辻馬車を拾えば大丈夫だろう。
「先に言っておくけど、道に人が溢れているから馬車は使えないよ。ドレスを着たまま、徒歩で行ける範囲の場所なんて限られている。僕の家においで」
「それは、ちょっと」
言葉を濁しながら他の選択肢を求めて、私の頭に街の地図が浮かぶ。ここから近くのところに、ホテルがあるはずだと検索結果が教えてくれた。そこを利用するとレオンに告げると、面白くなさそうな顔をして渋々承諾した。
「ふうん。まあ、いいか。僕も一緒に行くよ」
送ってくれるのだろうかと思いきや、彼も泊まる気らしい。諦めさせる気力もない私は、お化粧直しに席を立つ。
周りを見渡しながら歩くと、なるほど、確かにいろんな身分の方が料理を楽しんでいらっしゃるなあと、今更ながらに気付く。
本当に周りが見えていなかったのだ。
私のために、そんな大会があるなんて知らなかったし、レオンの気持ちにも全く気付かなかった。三年という月日は重く、生半可な気持ちで臨んだのではないのは分かる。
今の私は、事実を受け止めるだけで精一杯で、どう応えたらいいのか、皆目見当がつかない。心の整理をしながら彷徨っていると、不穏な話が聞こえた。
そちらを見ると、厳つい顔をした集団が、「あの店を襲うのはどうだ」「警備員が多くて、難しいぞ」「では、この宝石店にしようか」と、悪い顔して話している。
絵画を眺めているふりをして聞き耳を立てると、知っている店名が話題に上がって、反射的に言葉が飛び出した。
「そのお店……」
しまった。
男たちに気取られた。ラウル様の家が経営している店舗だったから、思わずつぶやいてしまったのがいけなかった。彼らは一気に警戒し、鋭い目つきで私を睨みつけてきた。何か言わなくては怪しまれるだろう。頭をフル回転させながら、ニコリと笑う。
「私も好きですわ。よく行かれるのですか?」
にこやかな令嬢モードで話しかけ、ついでに、背景には花も咲かせておく。すると、男たちの肩から力が抜けた。
「ああ。いい仕事をするからな」
「まあ。審美眼をお持ちなのですね」
訓練を重ねて習得した令嬢の微笑みで褒めると、男たちは、すっかり気を許した。お酒が入っているせいもあるだろう。
「お嬢ちゃん、話が分かるな。一緒に飲むか?」
「ごめんなさい。ご一緒したいのですけれど、未成年ですし連れがおりますの。三年後に誘ってくださいませ」
「ガハハ! 三年後かよ!」
男たちは大いに盛り上がってくれたので、適当に切り上げて、その場を離れる。令嬢モードは、こんな場面でも使えるようだ。勉強になったぞ。
「アリス! 大丈夫か? 何を話していたんだ」
心配して来てくれたレオンが説明を求めるが、私は別の方向を見て、石の柱と化す。
……ラウル様!
騎士の制服に身を包んだ婚約者が、美しい顔を歪めて、今にも泣きそうな顔をして歩いてくる。彼には、いつもの冷酷さはまるでなく、人の血が通った普通の若者に見えた。もともとは、こんな雰囲気の人だったのだろうか。
ごめんなさい。
あなたが何を考えているか分からなかった。
あの黒い気配が呪いと呼ばれるものならば、ラウル様の極端な態度にも説明がつくのかもしれない。私が何も知らされていなかったように、あなたにも、何らかの負荷や試練が課せられていたのだろう。
その時、ラウル様の目が一点を見つめ、足を止めた。
げ、まずい!
視線の先は、私の腰だ。間の悪いことに、レオンの手が触れた瞬間を見られた。浮気現場を目撃したと、勘違いされてもおかしくはない。
しかし、全力で弁解しても、さんざん彼から逃げていた私の言い分が通るとは思えない。めちゃくちゃ強いラウル様が本気で怒れば、私たちは瞬殺されてしまいだろう。出入口はラウル様の後ろにあるから、逃げることはできない。
ここが正念場だわ。
今こそ話し合いをして、お互いの溝を埋める時なのではないだろうか。思い違いや勘違いで、もつれにもつれた糸を解きほぐすべきだと、自分を叱咤激励する。
「アリス殿……」
「強盗ですっ!」
……思いっきり間違えた!
すっかり逃げ癖がついていて、名前を呼ばれた瞬間、口が誤作動を起こしてしまった。今までの積み重ねが、体に染み付いているのだろう。頭では「ごめんなさい」と命令したのに、口から出た言葉は、始めの一文字しか合っていない。
どうしよう。
「……は?」
何を言われたのか分からない様子のラウル様は、動きを止めた。そりゃ、そうなりますよね、同感です。レオンも「何を言っているんだ」と困惑しているし、私も次のセリフに迷うが、こうなってしまったら仕方ない。勢いに任せて言ってしまえ。
「あの席に座っている男たちが、ラウル様のお店を襲撃する計画を立てていました! 慣れた様子でしたから、余罪があると思われます!」
彼はキョトンとする。
申し訳なさが込み上げるが、もう後には引けない。
「今すぐ、お話を聞くべきです!」
「え? あ、ああ、そうだな」
私の必死さに押されたのか、フラフラとラウル様は歩いて行く。男たちに声をかけた瞬間、なぜか絡まれて、そのまま大乱闘に突入した。
「なんで!?」
騎士の制服を着ているせいか。
後ろ暗い人々は、自分たちを捕まえに来たのだと早合点し、ラウル様に襲いかかったのだろう。私の考えが浅はかだった。彼がケガをしたらどうしよう。
「わあ! あんな戦いにくいところで、キレイに倒したよ。さすがだね!」
レオンは心から楽しんでいて、清々しいほど、全く心配をしていない。もちろん、ラウル様が圧倒的に強いせいもあるし、尊敬している彼の勇姿を目の当たりにして、喜ぶのは分かるけれど……。
「レオン。敗者復活戦が始まったのは、どうして?」
そう、婚約者を交代したいとは言っていたけれど、私は申し立てなどしていない。一足飛びに敗者復活戦が始まったなんて、やはりおかしい。
「え? 言ってなかった? 君の手紙を証拠にして、僕が陛下に願い出たからだよ。今更、ラウル様がいいなんて言わないよね?」
そう言うと、ニッコリ笑った。
ああ、身から出た錆とは、このことだ。
私は、昨日に戻る魔法があるならば、いくらでもお金を出すのにと後悔しながら、レオンとレストランを出た。
ラウル様を置いて。
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