1,088 / 1,262
第42話
(25)
しおりを挟む
いつもであれば、とっくに内奥を解すため、指を挿入されるところだが、今夜の賢吾はただ入り口をくすぐってくるだけだ。もどかしくて腰を揺すると、和彦の求めがわかったように賢吾が顔を上げ、意地の悪い表情を浮かべる。
「もう時間が時間だからな。今夜は、〈こっち〉はなしだ。だから――煩悶して苦しめ」
和彦は、賢吾の髪を鷲掴んではみたものの、引っ張るなどという命知らずなまねはできない。涙目で睨みつけると、賢吾は悠然と再び欲望を口腔に含んだ。柔らかな膨らみを巧みにてのひらで揉みしだかれ、張る意地もなくなった和彦は嬌声を上げる。
あっという間に上り詰め、賢吾の口腔に精を放っていた。
畳の上で体を投げ出して息を乱していると、賢吾が傍らにやってきた気配がする。何事かと、緩慢に顔を向けたところで、すぐに賢吾の意図を察した。
「……それも、仕置きの一つか」
「嫌か?」
胡坐をかいている賢吾は、己の欲望を露わにしている。和彦はのろのろと起き上がると、乱れた浴衣を直す。賢吾から揶揄するように言われた。
「几帳面だな」
和彦は答えず、賢吾の両足の間に顔を伏せる。後頭部に手がかかり、髪を撫でられて腰が疼いた。
すでに十分な大きさと硬さを誇る欲望を、和彦はまずそっと舐め上げた。括れに唇を押し当て、逞しい根本へと滑らせる。舌を絡ませ、ときには吸い付き、指の輪で優しく扱いているうちに、圧倒されるような力強さを漲らせていく。
はあっ、と深く息を吐き出した和彦は、先端に唇で触れると、軽く吸い上げる。それからゆっくりと口腔深くに呑み込んでいくと、後頭部にかかった賢吾の手にぐっと力が入った。
口腔の粘膜でしっとりと包み込む。すぐには動かず、ただ口腔に含んで熱と脈動を感じていると、賢吾の手にあごの下をくすぐられ、その感触に喉を鳴らす。頭上で、賢吾が笑う気配がした。
「なかなかいいもんだな。和室にクリスマスツリーってのも」
今言うことかと、上目遣いで睨みつけようとして、さらに喉元を撫でられて息が詰まる。同時に、賢吾の欲望を締め付けていた。
口淫を続ける和彦に対して、さりげなく賢吾が切り出してきた。
「お前が今いるマンションも知られているだろうし、今度はそっちに誰が押し掛けてくるかわかったもんじゃねーから、引っ越すか?」
欲望を含んだままの和彦は答えることができない。それを承知のうえで、賢吾は続ける。
「新しい部屋を借りてやってもいいし、なんなら、ここに移ってきてもいい。荷物が入りきらないと言うなら、隣の部屋も使え。お前が暮らしやすいようにしてやる」
喉元を撫でていた手がじわじわと移動し、胸元をまさぐり始める。和彦は鼻にかかった声を洩らすと、頭を上下させて淫靡な湿った音を立てながら、口腔から欲望を出し入れする。賢吾の息遣いが荒くなった。
「……できることなら、誰も知らない場所にお前を閉じ込めちまえば、いいんだろうがな。誰にも会わせず、どこにも行かせず。そういう想像をするのは、楽しいもんだ」
賢吾の手が深く差し込まれ、興奮に凝った胸の突起を指先で弄られる。その刺激のせいだけではなく、賢吾の言葉に和彦は感じていた。
「どうだ、本気で考えてみるか。そんな生活を。俺はかまわないが、さて、お前を大事にしている他の男たちが納得しないだろうな」
あごが疲れ、唾液が滴り落ちる。限界がきて頭を上げようとした和彦だが、すかさず賢吾に押さえ付けられた。これ以上なく充溢した欲望がドクンと脈打ち、精が迸り出る。和彦は舌を添えて受け止めると、賢吾に言われるまでもなくすべて嚥下する。
まだ硬さを失っていないものに舌を這わせ、丁寧に先端を吸ってから、賢吾の腹部に顔を寄せる。まるで幼子にするように、賢吾は優しく頭を撫でてくれた。
「年が明けてから、よさそうな物件を探させる。どこがいいかは、お前が実際に見て決めたらいい」
口元を浴衣の端で拭ってもらい、呼吸を整えてから和彦は応じる。
「……ぼくは、どこだっていい。あんたが選んでくれたところなら……」
あまり可愛いことを言うなと、賢吾が低く笑い声を洩らす。なんとなく、和彦もひっそりと笑みをこぼしていた。
「もう時間が時間だからな。今夜は、〈こっち〉はなしだ。だから――煩悶して苦しめ」
和彦は、賢吾の髪を鷲掴んではみたものの、引っ張るなどという命知らずなまねはできない。涙目で睨みつけると、賢吾は悠然と再び欲望を口腔に含んだ。柔らかな膨らみを巧みにてのひらで揉みしだかれ、張る意地もなくなった和彦は嬌声を上げる。
あっという間に上り詰め、賢吾の口腔に精を放っていた。
畳の上で体を投げ出して息を乱していると、賢吾が傍らにやってきた気配がする。何事かと、緩慢に顔を向けたところで、すぐに賢吾の意図を察した。
「……それも、仕置きの一つか」
「嫌か?」
胡坐をかいている賢吾は、己の欲望を露わにしている。和彦はのろのろと起き上がると、乱れた浴衣を直す。賢吾から揶揄するように言われた。
「几帳面だな」
和彦は答えず、賢吾の両足の間に顔を伏せる。後頭部に手がかかり、髪を撫でられて腰が疼いた。
すでに十分な大きさと硬さを誇る欲望を、和彦はまずそっと舐め上げた。括れに唇を押し当て、逞しい根本へと滑らせる。舌を絡ませ、ときには吸い付き、指の輪で優しく扱いているうちに、圧倒されるような力強さを漲らせていく。
はあっ、と深く息を吐き出した和彦は、先端に唇で触れると、軽く吸い上げる。それからゆっくりと口腔深くに呑み込んでいくと、後頭部にかかった賢吾の手にぐっと力が入った。
口腔の粘膜でしっとりと包み込む。すぐには動かず、ただ口腔に含んで熱と脈動を感じていると、賢吾の手にあごの下をくすぐられ、その感触に喉を鳴らす。頭上で、賢吾が笑う気配がした。
「なかなかいいもんだな。和室にクリスマスツリーってのも」
今言うことかと、上目遣いで睨みつけようとして、さらに喉元を撫でられて息が詰まる。同時に、賢吾の欲望を締め付けていた。
口淫を続ける和彦に対して、さりげなく賢吾が切り出してきた。
「お前が今いるマンションも知られているだろうし、今度はそっちに誰が押し掛けてくるかわかったもんじゃねーから、引っ越すか?」
欲望を含んだままの和彦は答えることができない。それを承知のうえで、賢吾は続ける。
「新しい部屋を借りてやってもいいし、なんなら、ここに移ってきてもいい。荷物が入りきらないと言うなら、隣の部屋も使え。お前が暮らしやすいようにしてやる」
喉元を撫でていた手がじわじわと移動し、胸元をまさぐり始める。和彦は鼻にかかった声を洩らすと、頭を上下させて淫靡な湿った音を立てながら、口腔から欲望を出し入れする。賢吾の息遣いが荒くなった。
「……できることなら、誰も知らない場所にお前を閉じ込めちまえば、いいんだろうがな。誰にも会わせず、どこにも行かせず。そういう想像をするのは、楽しいもんだ」
賢吾の手が深く差し込まれ、興奮に凝った胸の突起を指先で弄られる。その刺激のせいだけではなく、賢吾の言葉に和彦は感じていた。
「どうだ、本気で考えてみるか。そんな生活を。俺はかまわないが、さて、お前を大事にしている他の男たちが納得しないだろうな」
あごが疲れ、唾液が滴り落ちる。限界がきて頭を上げようとした和彦だが、すかさず賢吾に押さえ付けられた。これ以上なく充溢した欲望がドクンと脈打ち、精が迸り出る。和彦は舌を添えて受け止めると、賢吾に言われるまでもなくすべて嚥下する。
まだ硬さを失っていないものに舌を這わせ、丁寧に先端を吸ってから、賢吾の腹部に顔を寄せる。まるで幼子にするように、賢吾は優しく頭を撫でてくれた。
「年が明けてから、よさそうな物件を探させる。どこがいいかは、お前が実際に見て決めたらいい」
口元を浴衣の端で拭ってもらい、呼吸を整えてから和彦は応じる。
「……ぼくは、どこだっていい。あんたが選んでくれたところなら……」
あまり可愛いことを言うなと、賢吾が低く笑い声を洩らす。なんとなく、和彦もひっそりと笑みをこぼしていた。
35
お気に入りに追加
1,335
あなたにおすすめの小説
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる