血と束縛と

北川とも

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第38話

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 守光の残酷な戯れなのだ。総和会は、清道会会長の祝い事の席に出席した人間たちを監視しており、そのことは南郷が認めていた。御堂と伊勢崎龍造の関係を知っていれば、〈高校生〉の正体も容易に突き止められるはずた。何しろ和彦と玲は、同じ家で宿泊していた。それらを踏まえたうえで、守光はあえてこんな発言をしている。
 指の本数を増やされ、内奥を一層広げられる。ひくつく部分を無遠慮に眺められながら、はしたない音を立てて掻き回される。
「いやらしい色になった。真っ赤に充血して、花の蕾が綻んだように――」
 激しいともいえる愛撫が前触れもなく止まる。内奥から指が引き抜かれて、蕩けた入口を焦らすように指先で擦られ、和彦は上擦った声を上げる。
「うあっ、あっ、あっ……」
「さあ先生、さっきのわしの質問に答えてくれ」
 和彦は小さく首を横に振り、答える意思はないと示す。たとえ虚勢だとしても、自分のせいで玲や御堂、ひいては清道会や伊勢崎組に迷惑はかけられなかった。
 守光は機嫌を損ねるどころか、和彦の答えを予期していたように満足そうに頷く。その反応の意味を、すぐに和彦は知ることになった。
「容易に男に体を開きながら、その男たちに対して、あんたは義理堅い。そこが可愛くもあり、ひどく被虐的なものを刺激される。本当に、わし好みのオンナだ」
 内奥から指を引き抜いた守光に手を掴まれ、促されるまま和彦は体を起こす。途端に、内奥から潤滑剤が溢れ出して思わず眉をひそめるが、守光に背を抱き寄せられて唇を塞がれ、それどころではなくなった。
 優しく唇と舌を吸われながら、掴まれたままの手をある場所へと導かれる。守光が何を求めているかわかって一瞬戦いたが、逆らえなかった。
 行為の最中であっても、相変わらず端然とした佇まいを崩さない守光だが、浴衣の下から引き出した欲望は確かに高ぶりを示している。和彦は頭を伏せると、両足の中心に顔を埋めていた。
 口腔にゆっくりと欲望を呑み込んでいく。後頭部に守光の手がかかり、あくまで優しく髪を撫でられる。舌を添えながら、唇で締め付けるようにして口腔から出し入れすると、守光の欲望が次第に形を変えていく。
 前回、守光に口淫で奉仕したとき、その場には南郷もおり、和彦は内奥を道具で嬲られるという屈辱と羞恥に満ちた行為を強いられた。あれは、〈番犬〉である鷹津の不始末に対する、和彦への仕置きだった。
 今のこの状況もあまり変わらないのかもしれない。和彦はそんなことを思いながら、守光の欲望を一度口腔から出して、舐め上げる。すると、何も言わない守光に軽く後頭部を押さえつけられ、再び口腔に含んだ。喉に突くほど深く呑み込み、口腔の粘膜をまとわりつかせるようにして吸いつく。
 守光は、時間をかけて和彦の口淫を堪能した。愛撫そのものよりも、和彦の従順さを愛でていたようだ。上目遣いにちらりと見上げたとき、守光は口元に静かな笑みを湛えており、その表情を目にした和彦はゾッとするものを感じた。
 ようやく顔を上げることを許され、労わるように守光に抱き締められる。耳に唇が押し当てられ、次に何をするべきか囁かれた。
 布団の上に仰臥した守光の腰の上に跨った和彦は、向けられる強い視線を意識しながら、さきほどまで自分の口腔にあったものを片手で支えて内奥の入り口に押し当てる。
「うっ……」
 潤滑剤で潤い、指で解されたとはいえ、やはり苦しい。和彦は内奥を押し広げられる感触に呻き声を洩らしながら、慎重に腰を下ろし、欲望の太い部分を呑み込んでいく。その最中に守光と目が合った。
 冷静に自分を見上げてくる様子に激しい羞恥に襲われるが、動きを止めることはできない。
「あんたは堂々と、わしに隠し事をしようとしている。それを押し通したいというなら、こちらの頼みを聞いてもらおう。――あんたにとって喜ばしいことになるか、苦々しいことになるかは、わしには判断できんがな」
 守光の口ぶりに不穏なものを感じ、和彦は動きを止める。すると守光が集中しろと言わんばかりに、力を失いかけた和彦の欲望を握り締めてきた。
 声を洩らしながら少しずつ腰を下ろしていき、ある程度まで内奥に欲望を受け入れたところで、堪らず前のめりとなって両手を布団に突く。横になったままの守光との距離が近くなり、向けられる眼差しの威力も増したように感じる。目を逸らしたくてもできないのは姿勢のせいだと自分に言い聞かせ、和彦は自分の役割を果たす。
「あっ、あっ、あうぅっ――」
 和彦は腰を擦りつけるように動かしながら、繋がりを深くしていく。

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