血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
上 下
682 / 1,262
第29話

(27)

しおりを挟む
 和彦は無意識のうちに強い刺激から逃れようとするが、賢吾の逞しい腕にしっかりと腰を抱え込まれ、もっと奔放に乱れてみせろと追い立てるように、荒々しい愛撫を与えられる。
「ひっ……、待、て……。賢吾さん、そこ、乱暴には……」
「違うだろ。そういう呼び方じゃなかったはずだ」
 賢吾の声が楽しげな響きを帯びる。弱みを指先で弄られて、和彦は半ば脅されるように声を上げていた。
「賢吾っ」
 この瞬間、気も遠くなるような法悦が和彦の中で生まれる。残酷なほど優しく丁寧な手つきで柔らかな膨らみを揉み込まれ、腰から下に力が入らなくなる。意識しないまま自ら足を大きく開き、賢吾の淫らな愛撫をねだっていた。
「あっ、あっ、んあっ、あっ――……」
「これ以上仕込んだら厄介だとわかっちゃいるんだが、気持ちよさそうに声を上げるお前の反応を見ると、可愛がってやらずには、いられねーんだ」
 痛みとは紙一重の、絶妙の力加減で柔らかな膨らみをまさぐられ、和彦は甲高い声を上げて身悶える。欲望の先端から透明なしずくが滴り落ち、和彦が味わっている愉悦を雄弁に賢吾に知らせる。
「ここ、いいか?」
 わずかに声を掠れさせて、賢吾が問いかけてくる。余裕たっぷりのバリトンとはまた違った色気に、和彦はヒクリと背をしならせる。声に、感じてしまったのだ。賢吾は当然、和彦の反応に気づいていた。
「……感じやすいオンナだ」
 さきほどの愛撫の礼だと言わんばかりに、今度は賢吾が、和彦の背に唇と舌を這わせてくる。尻の肉を鷲掴まれ、腰を突き出した姿勢を取らされていた。賢吾が何をしようとしているか、次の言葉で知ることになる。
「まだ触ってもないのに、もう赤く色づいて、ひくついてるな。南郷にたっぷり弄ってもらったんだろう。感じさせてくれるなら、誰でも甘やかすからな。お前のここは――」
 嫌でも意識させられた内奥の入り口に、柔らかく湿った感触がまとわりつく。それが賢吾の舌だとわかったとき、和彦は呻き声を洩らして、シーツに精を飛び散らしていた。しかし、賢吾は許してくれない。〈オンナ〉の不貞を、淫らな愛撫を与えることによって責め立ててくる。
「ひぃっ……ん、んっ、んんっ、くぅっ……」
 舌先で舐られ、和彦の内奥の入り口が簡単に綻ぶ。賢吾に手を取られ、自分の指先でその感触を確かめさせられたとき、さすがに和彦は激しい羞恥でうろたえるが、賢吾の指で内奥を犯されるようになると、その羞恥すら甘い媚薬となっていた。
「南郷の指を突っ込まれたときも、こうやって物欲しそうに締め付けたのか? 男の唾液で中を濡らして、いやらしい襞をざわつかせて、もっと擦ってくれと腰を振ってみせたか? 普段は取り澄ました顔をしているからこそ、お前の見せる媚態は強烈だ。俺ですら、頭がクラクラするぐらいだ」
 内奥を掻き回すように大胆に指が動かされる。肉を解され、襞と粘膜を擦り上げられると、異物感や鈍い痛みすら、強引に快感へと変えられてしまう。
 和彦は荒い呼吸を繰り返しながら、必死にシーツを握り締める。内奥から指が引き抜かれ、もう一度舌が這わされる。それから、熱く張り詰めた欲望を押し当てられた。
「うああっ――」
 内奥の入り口をこじ開けられ、太い部分を一息に呑み込まされる。繋がった部分を指先でなぞられると、それだけで上擦った声が出る。背後から緩く突き上げられて、腰から痺れが這い上がり、吐息を洩らす。さらにもう一度突き上げられて、悦びの声を上げていた。
 賢吾と深く繋がっていきながら、引き絞るように内奥を締める。欲しかった、と言葉ではなく、体で訴える。和彦の訴えを、賢吾は受け止めてくれた。
「……しっかりと、俺を欲しがっているな。本当に、可愛いオンナだ……」
 腰を掴まれて、ぐうっと奥深くまで欲望を捩じ込まれる。和彦は声も出せずに、ビクッ、ビクッと腰を震わせていた。賢吾が笑いを含んだ声で言った。
「尻で、イったな」
 巧みに官能を刺激されて、頭の芯まで快感に浸される。賢吾の欲望に内奥深くを突かれるたびに、堪えきれず嬌声を上げていたが、おそらくその声は、部屋の外にも響いているだろう。和彦の理性ではもう声を抑えることができず、賢吾にしても、あえて〈誰か〉に聞かせるように、和彦の快感を煽ってくる。
「あっ、い、ぃ――……。賢吾、奥、いい……」
「どこもかしこも、いいところだらけだな。――和彦」
 内奥深くを重々しく突き上げられ、一瞬息が詰まる。全身に快美さが響き渡り、小刻みに体が震える。賢吾は、和彦のそんな反応をいとおしむように、背後からきつく抱き締めてくれた。
「一度抜いていいか?」
 快感に恍惚としている和彦の耳に、賢吾の言葉が届く。和彦は子供のように必死に首を横に振っていた。
「嫌だっ。まだ……、このままがいい」
「俺もそうしたいが、それ以上に、お前のいい顔を見ながら、尻を可愛がってやりてーんだ」
 ズルリと内奥から熱い欲望が引き抜かれ、和彦は短い悲鳴を上げる。このとき、自分の体に何が起こったのかを、和彦の体を仰向けにした賢吾に指摘された。
「お前が、突っ込まれる瞬間に弱いのは知ってたが、抜かれる瞬間もよくなってきたか?」
 賢吾に、精を放ったばかりの欲望を掴まれ、緩く扱かれる。和彦は熱くなった体をさらに熱くして、顔を背けるが、意地の悪い男はそんなことを許してくれない。
「おい、しっかり俺を見ろ。お前をオンナにした、男の顔を」
 脅され、唆されて、和彦はおずおずと賢吾を見上げる。そして堪らず、逞しい体に両腕を回してしがみつく。片足を抱え上げられて、熱い欲望を再び内奥深くまで捩じ込まれていた。
「あっ、あぁっ――」
 賢吾の背の大蛇に爪を立て、和彦は、賢吾という男の〈肉〉を堪能する。力強く丹念に最奥を突かれ、そのたびに和彦は抑えきれない悦びの声を溢れさせる。
 深くしっかりと繋がったまま、荒い息遣いで互いの唇を求める。余裕なく吸い合い、差し出した舌を絡め合う。その合間に賢吾が、和彦のこめかみを伝い落ちる汗を舐め取り、和彦も、賢吾の首筋の汗を舐め上げる。そこに、二人の唾液が混じり合う。
 自分は、この男の唾液や汗だけではなく、精の味すら知っている――。そう思った途端、和彦は陶然とした感覚に陥っていた。心が満たされるだけではなく、妙な話だが、誰かに誇りたいような。
「――……ようやく、穏やかな顔になったな」
 ふいに賢吾に囁かれ、和彦は目を丸くする。すかさず目元に唇が押し当てられ、反射的に甘ったるい呻き声を洩らしてしまう。
「俺とのセックスだけに集中している、いい顔だ」
 ヌケヌケとよくこんなことが言えるなと思ったが、和彦は賢吾に微笑みかけると、熱い体にすがりつく。
 ようやく〈ここ〉に戻ってこられたのだと、強く実感しながら。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

ニューハーフ極道ZERO

フロイライン
BL
イケイケの若手ヤクザ松山亮輔は、ヘタを打ってニューハーフにされてしまう。 激変する環境の中、苦労しながらも再び極道としてのし上がっていこうとするのだが‥

人権終了少年性奴隷 媚薬処女姦通

オロテンH太郎
BL
息子への劣情を抑えきれなくなった父親は、金にものを言わせて幼い少年を性奴隷にするのだった。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

処理中です...