血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
上 下
522 / 1,268
第24話

(4)

しおりを挟む
「興奮したか?」
 煽るように囁くと、三田村の目の色は変わった。虎を背負った男らしく全身から猛々しい気を発し、威圧してくる。和彦は、三田村の変化に煽られ、興奮する。誠実で控えめで優しい男が、欲望に狂ったオトコになるのだ。全身で受け止めて、快楽で応えたくなる。
 開いた両足の間に、三田村がぐっと腰を割り込ませてくる。肌に触れた三田村の欲望は熱くなり、力を漲らせていた。これ以上なくわかりやすい反応に、自分から煽っておきながら和彦は羞恥を覚える。うろたえて顔を背けたが、すかさず三田村に耳朶に噛みつかれた。
「んっ……」
 誘われるように三田村を見上げると唇が重なってきて、深い口づけを交わす。舌を絡め合いながら、和彦は三田村の背に両腕を回し、刺青を撫で回す。それだけで虎はさらに猛り、肉を求めてきた。
 和彦の舌をきつく吸い上げ、歯を立てたあと、三田村が胸元に顔を伏せる。期待と興奮で硬く凝った胸の突起をベロリと舐め上げてから、露骨に濡れた音を立てて吸い始めた。
「あっ、はあっ――」
 肌に触れる三田村の荒い息遣いにすら感じてしまい、和彦は小刻みに身を震わせる。さらに三田村の片手が両足の間に入り込み、反応を示しつつある欲望を握り締められた。和彦は緩く腰を揺らし、吐息を洩らす。
 期待通り和彦の欲望は、三田村の熱い口腔に含まれた。
「うっ、うっ」
 いきなりきつく吸引され、たまらず和彦は大きく背を反らす。恥知らずなほど大きく開いた両足の間では、三田村がゆっくりと頭を上下に動かし始めていた。
 愛しげに欲望に舌が這わされ、丹念に舐められる。そのたびにゾクゾクするような快感が背筋へと駆け上がり、追い討ちをかけるように先端を吸われる。和彦は呻き声を洩らし、気が遠くなるような強烈な感覚を味わう。ひたむきで情熱的な三田村の愛撫に、あっという間に夢中になっていた。
「……三田、村……、三田村っ……」
 和彦の呼びかけに駆り立てられるように、三田村の愛撫が淫らさを増す。たっぷりの唾液を施しながら和彦のものを舐り、武骨な手つきで柔らかな膨らみを揉んでくる。弱みを探り当てられて執拗に弄られた挙げ句、口腔に含まれ、舌先で弄ばれる。同時に、内奥には指を含まされていた。
「あぁっ――、あっ、はっ、ふぅっ……ん」
 三田村の唇と舌、指によって下肢を溶かされると思った。和彦は無意識のうちに上体を捩り、濃厚な愛撫から逃れようとしたが、内奥に付け根まで収まった指を曲げられ、中から強い刺激を与えられる。痺れるような法悦が腰に広がり、簡単に体の動きを封じられていた。
 内奥から指を出し入れされ、ときおり舌を這わされる。男の愛撫に慣らされている場所は、すぐに媚びるように三田村の指を締め付け、物欲しげな蠕動を始める。その反応を待っていたように、三田村が再び両足の間に腰を割り込ませてきた。
 真上から、三田村が食い入るように見下ろしてくる。和彦は、すがりつくように見上げる。
 ひくつく内奥の入口に逞しいものが擦りつけられ、一気に太い部分を呑み込まされる。和彦は上擦った声を控えめに洩らしながら三田村の肩に手をかける。
「先生……」
 覆い被さってきた三田村が、耳元で囁いてくる。ハスキーな声の響きにすら感じてしまい、小さく身震いした和彦は反射的に、内奥に押し入ってくる三田村のものをきつく締め付ける。半ば強引に内奥深くまで押し入られ、さすがに苦痛を感じて身を強張らせたが、緩やかに腰を揺すられているうちに、呆気なく喘ぎ声をこぼすようになる。
「あっ、あっ、あっ……、んっ、んくっ――」
 甘えるように和彦は、三田村の背に再び両腕を回し、虎を撫でる。すると、内奥で慎重に動く三田村の欲望が力強く脈打つのだ。
 息を乱しながら三田村と唇を触れ合わせ、舌先を擦りつけてから、和彦は頭の中を空っぽにして律動に身を任せようとしたが、顔を横に向けた瞬間、あるものが視界に飛び込んできて息を詰める。和彦の異変に素早く気づいた三田村が、耳元に唇を押し当ててきた。
「先生?」
 我に返った和彦は、うろたえながら三田村を見上げる。察しのいい男は、和彦が何を目にしたのか気づいたようだった。
「……すまない。置き場所が悪かったな」
 壁際に置いた姿見を、和彦と三田村は同時に見つめる。鏡に映っているのは、ベッドの上で重なっている二人の姿だった。もっとも、映っているのは肩から上なのだが、それでも、快感に酔う締まりのない自分の顔は、あまり見たいものではない。ただ、鏡を通して見る三田村の姿は別だ。
「あんたに、食われているみたいだ……」
 和彦が子供じみた感想を洩らすと、鏡の中で三田村が柔らかな苦笑を浮かべる。
「そんなに俺が怖く見えるか?」

しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

どうやら俺は悪役令息らしい🤔

osero
BL
俺は第2王子のことが好きで、嫉妬から編入生をいじめている悪役令息らしい。 でもぶっちゃけ俺、第2王子のこと知らないんだよなー

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
────妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの高校一年生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の主人公への好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

貢がせて、ハニー!

わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。 隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。 社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。 ※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8) ■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました! ■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。 ■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

a pair of fate

みか
BL
『運命の番』そんなのおとぎ話の中にしか存在しないと思っていた。 ・オメガバース ・893若頭×高校生 ・特殊設定有

いつかコントローラーを投げ出して

せんぷう
BL
 オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。  世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。  バランサー。  アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。  これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。  裏社会のトップにして最強のアルファ攻め  ×  最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け ※オメガバース特殊設定、追加性別有り .

ヤクザと捨て子

幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子 ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。 ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。

処理中です...