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第22話
(18)
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「気持ちいいか、先生? 尻が締まりっぱなしだ」
和彦は何も考えられず、夢中で頷く。賢吾の指が、繋がってひくつく部分を擦り上げてくる。それだけで、鳥肌が立ちそうなほど感じていた。
「いい顔だ。先生みたいな色男を、尻で感じさせているのが自分かと思ったら、限界まで奮い立っても仕方ねーよな。俺だけじゃない。先生を抱いている他の男も同じだろう」
一度内奥から引き抜かれた欲望が、すぐにまた奥深くまで押し入ってくる。和彦は思いきり仰け反って、頭の中で閃光が走るような感覚を味わう。
「また、イッたのか。こんなにすぐイクなら、こいつはもう、縛ったままでいいか?」
賢吾が怖い声で囁きながら、和彦の欲望に手をかけてくる。きつく縛められているせいで、少し感覚が鈍くなってきている。それでも、精を放ちたいという衝動だけは強くなっていた。
「い、や……。イ、きたい……。賢吾さん、早く――」
内奥に収まっている欲望は凶暴に育っているというのに、和彦の顔を覗き込んでくる賢吾の表情は冴え冴えとしていた。
「――お前は、俺のなんだ?」
突然の質問に、和彦は目を見開く。思わず口ごもると、欲望に食い込む皮紐を指でなぞられる。その感触に背を押されるように、和彦は震える声で答えた。
「あんたの、オンナだ……」
「俺は、誰だ?」
「……長嶺組、組長」
よく言えた、ということか、唇に賢吾のキスが落とされる。
「お前は、長嶺組組長のオンナだ。これは、何があっても変わらない。変えるつもりもない」
皮紐の縛めが解かれると同時に、内奥深くを抉るように突かれる。和彦は声も出せないまま絶頂に達し、賢吾が見ている前でたっぷりの精を迸らせた。
「――……お前は、大蛇の大事で可愛いオンナだ。しっかりと、この淫奔な体に刻み付けておけよ。どれだけの男と寝ようが、忘れられないぐらいしっかりと」
大蛇の執着は怖くて淫らだ。そんなことを頭の片隅で考えながら和彦は、賢吾にしがみついて何度も頷いた。
ビールを呷っていた賢吾が低く笑い声を洩らし、それが振動となって背に伝わってくる。つられるように和彦も小さく笑い声を洩らしてから、まだ汗に濡れている賢吾の背に唇を押し当てる。
激しい情交の最中、喉が渇きすぎて和彦の声が出なくなり、賢吾が部屋にビールと水を運ばせてきた。一度は体を離したもののすぐに賢吾の熱さが恋しくなり、和彦は喉の渇きを潤してすぐに、賢吾の背にしなだれかかっていた。
そして、ここぞとばかりに大蛇の刺青を愛撫する。
汗を舐め取り、大蛇の鱗に丹念に唇を押し当て、巨体の輪郭に舌先を這わせる。柔らかく肌を吸っていると、賢吾に片手を取られ、まだ高ぶっている欲望を握らされた。
「大蛇だけじゃなく、こいつも可愛がってやってくれ。嫉妬して暴発しそうだ」
「……さっき、さんざん――」
言いかけた言葉は、口中で消える。口にするにはあまりに露骨すぎる言葉だと気づいたからだ。
大蛇の刺青を唇と舌で愛撫しながら、賢吾の欲望を緩やかに片手で扱く。
「いやらしいな、先生」
笑いを含んだ声で賢吾が言い、和彦はぼそぼそと応じる。
「どっちがだ」
体の奥がまだ疼いていた。声も出なくなるほど嬌声を上げ、よがり狂い、賢吾と獣のように絡み合ったというのに、情欲の火は燻ったままだ。体のほうは、いつもならとっくに限界を迎えているはずだが、手の中で脈打つ欲望を受け入れたくてたまらなかった。
賢吾の見せた強い執着心によって、和彦の中で歯止めが壊れたのかもしれない。
大蛇の刺青に対する愛撫が熱を帯びる。和彦は、大蛇が巨体を巻きつけている剣をじっくりと舐め上げ、その感触に呼応するように、手の中で賢吾の欲望が震える。
今なら、とんでもなく淫らな〈オンナ〉になれそうだった。恥知らずな言葉で賢吾を求め、腰を突き出す姿勢すら、嬉々として取るだろう。
しかしここで、情欲を一気に冷ますようなことを賢吾が言った。
「――パンは美味かったか、先生?」
和彦はすぐには、賢吾の言葉の意味が理解できなかった。
「えっ……」
動きを止めた和彦が戸惑っていると、賢吾が肩越しにちらりと振り返る。口元には薄い笑みが浮かんでいた。
「オヤジとの旅行に出かける前の話だ。秦と中嶋との夜遊びを楽しんだあと、わざわざ遠回りして買いに行ったパン屋があるんだろ。先生は、周りが世話を焼いてやらなきゃ、自分から美味いものを食おうとしないのに、その先生が自分で足を運んだぐらいだ。うちの者から話を聞いて、珍しいこともあるもんだと、気になっていたんだ」
和彦は何も考えられず、夢中で頷く。賢吾の指が、繋がってひくつく部分を擦り上げてくる。それだけで、鳥肌が立ちそうなほど感じていた。
「いい顔だ。先生みたいな色男を、尻で感じさせているのが自分かと思ったら、限界まで奮い立っても仕方ねーよな。俺だけじゃない。先生を抱いている他の男も同じだろう」
一度内奥から引き抜かれた欲望が、すぐにまた奥深くまで押し入ってくる。和彦は思いきり仰け反って、頭の中で閃光が走るような感覚を味わう。
「また、イッたのか。こんなにすぐイクなら、こいつはもう、縛ったままでいいか?」
賢吾が怖い声で囁きながら、和彦の欲望に手をかけてくる。きつく縛められているせいで、少し感覚が鈍くなってきている。それでも、精を放ちたいという衝動だけは強くなっていた。
「い、や……。イ、きたい……。賢吾さん、早く――」
内奥に収まっている欲望は凶暴に育っているというのに、和彦の顔を覗き込んでくる賢吾の表情は冴え冴えとしていた。
「――お前は、俺のなんだ?」
突然の質問に、和彦は目を見開く。思わず口ごもると、欲望に食い込む皮紐を指でなぞられる。その感触に背を押されるように、和彦は震える声で答えた。
「あんたの、オンナだ……」
「俺は、誰だ?」
「……長嶺組、組長」
よく言えた、ということか、唇に賢吾のキスが落とされる。
「お前は、長嶺組組長のオンナだ。これは、何があっても変わらない。変えるつもりもない」
皮紐の縛めが解かれると同時に、内奥深くを抉るように突かれる。和彦は声も出せないまま絶頂に達し、賢吾が見ている前でたっぷりの精を迸らせた。
「――……お前は、大蛇の大事で可愛いオンナだ。しっかりと、この淫奔な体に刻み付けておけよ。どれだけの男と寝ようが、忘れられないぐらいしっかりと」
大蛇の執着は怖くて淫らだ。そんなことを頭の片隅で考えながら和彦は、賢吾にしがみついて何度も頷いた。
ビールを呷っていた賢吾が低く笑い声を洩らし、それが振動となって背に伝わってくる。つられるように和彦も小さく笑い声を洩らしてから、まだ汗に濡れている賢吾の背に唇を押し当てる。
激しい情交の最中、喉が渇きすぎて和彦の声が出なくなり、賢吾が部屋にビールと水を運ばせてきた。一度は体を離したもののすぐに賢吾の熱さが恋しくなり、和彦は喉の渇きを潤してすぐに、賢吾の背にしなだれかかっていた。
そして、ここぞとばかりに大蛇の刺青を愛撫する。
汗を舐め取り、大蛇の鱗に丹念に唇を押し当て、巨体の輪郭に舌先を這わせる。柔らかく肌を吸っていると、賢吾に片手を取られ、まだ高ぶっている欲望を握らされた。
「大蛇だけじゃなく、こいつも可愛がってやってくれ。嫉妬して暴発しそうだ」
「……さっき、さんざん――」
言いかけた言葉は、口中で消える。口にするにはあまりに露骨すぎる言葉だと気づいたからだ。
大蛇の刺青を唇と舌で愛撫しながら、賢吾の欲望を緩やかに片手で扱く。
「いやらしいな、先生」
笑いを含んだ声で賢吾が言い、和彦はぼそぼそと応じる。
「どっちがだ」
体の奥がまだ疼いていた。声も出なくなるほど嬌声を上げ、よがり狂い、賢吾と獣のように絡み合ったというのに、情欲の火は燻ったままだ。体のほうは、いつもならとっくに限界を迎えているはずだが、手の中で脈打つ欲望を受け入れたくてたまらなかった。
賢吾の見せた強い執着心によって、和彦の中で歯止めが壊れたのかもしれない。
大蛇の刺青に対する愛撫が熱を帯びる。和彦は、大蛇が巨体を巻きつけている剣をじっくりと舐め上げ、その感触に呼応するように、手の中で賢吾の欲望が震える。
今なら、とんでもなく淫らな〈オンナ〉になれそうだった。恥知らずな言葉で賢吾を求め、腰を突き出す姿勢すら、嬉々として取るだろう。
しかしここで、情欲を一気に冷ますようなことを賢吾が言った。
「――パンは美味かったか、先生?」
和彦はすぐには、賢吾の言葉の意味が理解できなかった。
「えっ……」
動きを止めた和彦が戸惑っていると、賢吾が肩越しにちらりと振り返る。口元には薄い笑みが浮かんでいた。
「オヤジとの旅行に出かける前の話だ。秦と中嶋との夜遊びを楽しんだあと、わざわざ遠回りして買いに行ったパン屋があるんだろ。先生は、周りが世話を焼いてやらなきゃ、自分から美味いものを食おうとしないのに、その先生が自分で足を運んだぐらいだ。うちの者から話を聞いて、珍しいこともあるもんだと、気になっていたんだ」
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