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第17話
(26)
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抱え上げた和彦の膝に唇を押し当ててから、ふと思い出したように賢吾が問いかけてくる。
「ところで、佐伯家の人間は、先生の性癖を把握しているのか?」
「……性癖?」
「こうして男と寝ているってことだ」
和彦は眉をひそめてから、ふいっと顔を背ける。
「わからない。知っていたとしても、面と向かって指摘されたことはない。――ぼくが誰と寝ようが、少なくとも父は、それを言う資格はない」
「興味をそそられる言い方だな」
内奥から指が引き抜かれ、衣擦れの音がする。少しの間を置いてから、熱く凶暴な形が内奥の入り口に押し当てられた。
「あっ……」
狭い場所をゆっくりと押し広げられ、太いものを呑み込まされていく。和彦は間欠的に声を上げながら上体を捩り、下肢を支配される苦しさと、うねるように押し寄せてくる熱い感覚に煩悶する。
「男と寝ているという事実を知っていたとしても、先生のこんな姿は想像もつかないだろうな。肌を上気させて、誘うように腰を揺らして、真っ赤に色づいた粘膜を捲り上げながら、男のものを懸命に受け入れている――」
繋がった部分を指で擦られて、和彦は上擦った声を上げる。両足をしっかりと抱えられて腰を突き上げられると、内奥深くで重い衝撃が生まれる。一瞬あとにじわじわと広がるのは、狂おしい肉の愉悦だ。
「あっ、あっ、ああっ」
「お高くとまった官僚一家に、今みたいな色っぽい姿を撮った映像を送りつけたら、一発で縁が切れるかもしれないぞ」
乱暴に数回突き上げられて、賢吾とこれ以上なくしっかりと繋がっていた。ふてぶてしく息づく欲望は力強く脈打ち、内から和彦の官能を刺激してくる。
「……面倒事を隠すのは、得意なんだ、ぼくの家族は。……それに、刺激したところで、あんたの得になるとは思えない」
「佐伯家と縁を切らして、憔悴する先生を見なくて済むなら、それだけでも俺にとっては得だと思うが?」
本気で言っているのかと、じっと賢吾を見上げた和彦は、すぐに笑みをこぼす。
「大蛇の化身みたいな男が、ずいぶん優しいことを言うんだな」
「先生に骨抜きだからな、俺は」
賢吾の手が、両足の間で反り返り、透明なしずくを滴らせている和彦のものにかかる。きつく扱き上げられて、ビクビクと体を震わせていた。同時に、激しく内奥を収縮させ、賢吾の欲望の逞しさを強く意識する。
喘ぐ和彦を、賢吾は真上から見下ろしていた。いつもなら両腕を伸ばして賢吾にしがみつき、背の大蛇を思うさま撫でるところだが、今日はそれは叶わない。賢吾はパンツの前を寛げただけで、セーターを脱いですらいないのだ。
どうして、と思ったとき、前触れもなく内奥から賢吾のものが引き抜かれる。手を掴まれて引っ張り起こされた和彦は、わけもわからないまま畳に両手を突き、腰を突き出した羞恥に満ちた姿勢を取らされる。そして今度は、背後から貫かれた。
「あっ――……」
強く内奥を擦り上げられ、その衝撃で畳の上に精を迸らせてしまう。前のめりに崩れ込みそうになったが、賢吾の腕に引き止められ、乱暴に腰を突き上げられた。
「うっ、あっ、待って……くれ。少し、待って……」
和彦は前に逃れようとしたが、両腕で抱き寄せられた挙げ句、胡坐をかいた賢吾の両足の間に、繋がったまま座らされていた。和彦は背を弓形に反らし、下から突き上げられる苦しさに呻き声を洩らす。しかしその呻き声は次第に、甘さと妖しさを帯びたものへと変化していた。
緩やかに腰を揺らしながら賢吾の両手が、和彦の胸の突起と、精を放ちながらもまだ力を失っていない欲望を愛撫してくる。
「わかるか、先生? 先生の尻が、絞り上げるように締まっている。……口ではわがままは言わないくせに、こっちのほうは、とんでもなくわがままだな。与えても、与えても、いくらでも欲しがる。今まで、誰かに言われたことはないか?」
笑いを含んだ声で賢吾に淫らな言葉を囁かれ、和彦としては振り返って睨みつけたいところだが、些細な動きで快感を逃してしまいそうで、それができない。
「あんた以外に、誰がそんな恥ずかしいことを、言うんだっ……」
「このほうが、先生も興奮するだろ。――ああ、それと、もっと先生が興奮する演出を用意してある」
賢吾が何を言っているのか、快感に霞んだ頭では理解できなかった。意味を問おうと唇を動かしかけたとき、賢吾が〈誰か〉に向かって言葉を発した。
「――入っていいぞ」
和彦は体の正面を、客間の障子のほうに向けていた。つまり、誰かが障子を開ければ、何もかも見られてしまう。だが、客間に近づく人間はいない。そう思っていたのだが――。
「ところで、佐伯家の人間は、先生の性癖を把握しているのか?」
「……性癖?」
「こうして男と寝ているってことだ」
和彦は眉をひそめてから、ふいっと顔を背ける。
「わからない。知っていたとしても、面と向かって指摘されたことはない。――ぼくが誰と寝ようが、少なくとも父は、それを言う資格はない」
「興味をそそられる言い方だな」
内奥から指が引き抜かれ、衣擦れの音がする。少しの間を置いてから、熱く凶暴な形が内奥の入り口に押し当てられた。
「あっ……」
狭い場所をゆっくりと押し広げられ、太いものを呑み込まされていく。和彦は間欠的に声を上げながら上体を捩り、下肢を支配される苦しさと、うねるように押し寄せてくる熱い感覚に煩悶する。
「男と寝ているという事実を知っていたとしても、先生のこんな姿は想像もつかないだろうな。肌を上気させて、誘うように腰を揺らして、真っ赤に色づいた粘膜を捲り上げながら、男のものを懸命に受け入れている――」
繋がった部分を指で擦られて、和彦は上擦った声を上げる。両足をしっかりと抱えられて腰を突き上げられると、内奥深くで重い衝撃が生まれる。一瞬あとにじわじわと広がるのは、狂おしい肉の愉悦だ。
「あっ、あっ、ああっ」
「お高くとまった官僚一家に、今みたいな色っぽい姿を撮った映像を送りつけたら、一発で縁が切れるかもしれないぞ」
乱暴に数回突き上げられて、賢吾とこれ以上なくしっかりと繋がっていた。ふてぶてしく息づく欲望は力強く脈打ち、内から和彦の官能を刺激してくる。
「……面倒事を隠すのは、得意なんだ、ぼくの家族は。……それに、刺激したところで、あんたの得になるとは思えない」
「佐伯家と縁を切らして、憔悴する先生を見なくて済むなら、それだけでも俺にとっては得だと思うが?」
本気で言っているのかと、じっと賢吾を見上げた和彦は、すぐに笑みをこぼす。
「大蛇の化身みたいな男が、ずいぶん優しいことを言うんだな」
「先生に骨抜きだからな、俺は」
賢吾の手が、両足の間で反り返り、透明なしずくを滴らせている和彦のものにかかる。きつく扱き上げられて、ビクビクと体を震わせていた。同時に、激しく内奥を収縮させ、賢吾の欲望の逞しさを強く意識する。
喘ぐ和彦を、賢吾は真上から見下ろしていた。いつもなら両腕を伸ばして賢吾にしがみつき、背の大蛇を思うさま撫でるところだが、今日はそれは叶わない。賢吾はパンツの前を寛げただけで、セーターを脱いですらいないのだ。
どうして、と思ったとき、前触れもなく内奥から賢吾のものが引き抜かれる。手を掴まれて引っ張り起こされた和彦は、わけもわからないまま畳に両手を突き、腰を突き出した羞恥に満ちた姿勢を取らされる。そして今度は、背後から貫かれた。
「あっ――……」
強く内奥を擦り上げられ、その衝撃で畳の上に精を迸らせてしまう。前のめりに崩れ込みそうになったが、賢吾の腕に引き止められ、乱暴に腰を突き上げられた。
「うっ、あっ、待って……くれ。少し、待って……」
和彦は前に逃れようとしたが、両腕で抱き寄せられた挙げ句、胡坐をかいた賢吾の両足の間に、繋がったまま座らされていた。和彦は背を弓形に反らし、下から突き上げられる苦しさに呻き声を洩らす。しかしその呻き声は次第に、甘さと妖しさを帯びたものへと変化していた。
緩やかに腰を揺らしながら賢吾の両手が、和彦の胸の突起と、精を放ちながらもまだ力を失っていない欲望を愛撫してくる。
「わかるか、先生? 先生の尻が、絞り上げるように締まっている。……口ではわがままは言わないくせに、こっちのほうは、とんでもなくわがままだな。与えても、与えても、いくらでも欲しがる。今まで、誰かに言われたことはないか?」
笑いを含んだ声で賢吾に淫らな言葉を囁かれ、和彦としては振り返って睨みつけたいところだが、些細な動きで快感を逃してしまいそうで、それができない。
「あんた以外に、誰がそんな恥ずかしいことを、言うんだっ……」
「このほうが、先生も興奮するだろ。――ああ、それと、もっと先生が興奮する演出を用意してある」
賢吾が何を言っているのか、快感に霞んだ頭では理解できなかった。意味を問おうと唇を動かしかけたとき、賢吾が〈誰か〉に向かって言葉を発した。
「――入っていいぞ」
和彦は体の正面を、客間の障子のほうに向けていた。つまり、誰かが障子を開ければ、何もかも見られてしまう。だが、客間に近づく人間はいない。そう思っていたのだが――。
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