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第14話
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「――リボンを解いて、俺にほったらかしにされるほうがいいか、このまま、先生の好きなものを咥えさせてもらうほうがいいか。どっちだ?」
「誰の、好きなものだ。自惚れるな……」
「どっちだ、先生?」
聞かれるまでもなく、答えは決まっていた。和彦がシーツを握り締めると、賢吾はゆっくりと腰を進め、内奥を肉の凶器で押し開いてくる。狂おしいほどの愉悦が生まれ、和彦は堪えきれない声を上げる。
「ああっ……、あっ、あっ、あんっ――」
「尻だけでイきそうな感じ方だな、先生。俺のものが食い千切られそうなほど、締まってるぞ。そんなにいいか?」
和彦は押し寄せてくる快感に抗うように、必死に深呼吸を繰り返す。このままでは、快感の奔流に呑み込まれそうだった。
それぐらい、賢吾との交わりに感じている。
逞しいものをしっかりと根元まで埋め込んできた賢吾が、緩慢に腰を動かす。動きは緩やかだが、感じやすい襞と粘膜は簡単に蹂躙され、熱い蜜のような快感を滴らせる。
「ひっ……ぁ、はあっ、あっ、んくうぅっ」
ふいに、内奥深くを重々しく突き上げられ、和彦はビクビクと体を震わせる。全身に快美さが響き渡り、普段であれば、精を迸らせているところだ。だが、しっかりと根元を縛められているため、それができない。
悶える和彦にさらに責め苦を与えるように、賢吾が震える和彦のものを根元から擦り上げてくる。愛撫のようだが、実はリボンの縛めがしっかり食い込んでいるのか、確かめたのだ。
「はあっ、あっ、い、や……、賢吾さんっ」
内奥を擦り上げられるたびに和彦は悦びの声を上げ、絞り上げるように賢吾のものをきつく締め付ける。
感嘆したように声を洩らした賢吾が腰を使う。和彦は夢中で両腕を伸ばし、覆い被さってきた賢吾の背にしがみつく。汗で濡れた大蛇が、内奥深くで蠢く欲望のように、熱かった。
大蛇に激しく求められ、愛されているのだと実感できる瞬間だった。
「リボンを解いてやろうか?」
律動の合間に囁かれ、賢吾の引き締まった下腹部で、反り返ったものをわざと刺激される。呻き声を洩らした和彦は、小さく首を横に振った。
「こ、のまま……。これ、いい――」
「このほうが、俺が悦ぶからか?」
「……あんたの性癖は、問題があるからな」
顔を綻ばせた賢吾に唇を塞がれ、舌を絡め合う。その間も、賢吾は内奥を丹念に擦り上げ、掻き回してくれる。
快感の波が次第に大きくなってくるようで、厚みのある体の下でのたうちながら和彦は、切羽詰った声を上げる。そんな和彦を見下ろしながら、賢吾は満足そうだった。
「いやらしいオンナだ。こんなに愛してやってるのに、まだ俺が欲しいか? さすがの俺も、そのうち力加減を忘れて、抱き殺しちまいそうだな。俺の、大事で可愛いオンナを」
物騒な言葉を囁かれた瞬間、和彦の体を、いままでにない強烈な感覚が駆け抜けた。それが、深い快感のせいだとわかったときには、意識が飛んでいた。
レアのステーキを淡々と口に運ぶ賢吾を見ているだけで、和彦は胸焼けを起こしそうだった。
今日はやけに重く感じるフォークで、ミディアムに焼いてもらったステーキを突く。手どころか、口を動かすことすら億劫で、フォークを置こうとしたが、目敏く気づいた賢吾にすかさず言われた。
「しっかり食えよ、先生。塞ぎ込んでいる間に落とした体重を、きちんと元に戻せ」
「……だからといって、何も今晩、ステーキを食べなくていいだろ」
「今日はもう、〈肉〉は腹いっぱいか?」
長嶺組組長という凄みのある肩書きを持っている男が、そう言ってニヤニヤと笑う。芝居がかった品のない笑い方に、和彦は顔を熱くする。賢吾が暗に言おうとしていることを、すぐに理解してしまったのだ。
「こんな場所で、下品なことを言うなっ」
声を潜めて窘めてはみたのだが、ますます賢吾をおもしろがらせただけらしい。今度は澄ました顔で言い返された。
「なんのことだ? 俺は、ステーキの話をしているんだが――」
「……あんまりぼくをからかうと、あんたが何者か、この場で叫ぶぞ」
「それは怖いな」
大げさに肩をすくめた賢吾が、美味そうにステーキを一切れ食べる。自分が子供扱いされていることを嫌というほど実感し、無駄な抗議を早々に諦めた和彦は、仕方なく自分のステーキを切り分ける。
一切れの肉を苦労して口に押し込む間に、賢吾はグラスの生ビールをあっという間に飲み干して、お代わりを頼んでいる。
和彦はふうっと息を吐き出すと、カウンター席に目を向ける。こちらに背を向けてはいるが、二人が座っているテーブル席の一番近くに陣取っているのが、賢吾の護衛の組員たちだ。
「誰の、好きなものだ。自惚れるな……」
「どっちだ、先生?」
聞かれるまでもなく、答えは決まっていた。和彦がシーツを握り締めると、賢吾はゆっくりと腰を進め、内奥を肉の凶器で押し開いてくる。狂おしいほどの愉悦が生まれ、和彦は堪えきれない声を上げる。
「ああっ……、あっ、あっ、あんっ――」
「尻だけでイきそうな感じ方だな、先生。俺のものが食い千切られそうなほど、締まってるぞ。そんなにいいか?」
和彦は押し寄せてくる快感に抗うように、必死に深呼吸を繰り返す。このままでは、快感の奔流に呑み込まれそうだった。
それぐらい、賢吾との交わりに感じている。
逞しいものをしっかりと根元まで埋め込んできた賢吾が、緩慢に腰を動かす。動きは緩やかだが、感じやすい襞と粘膜は簡単に蹂躙され、熱い蜜のような快感を滴らせる。
「ひっ……ぁ、はあっ、あっ、んくうぅっ」
ふいに、内奥深くを重々しく突き上げられ、和彦はビクビクと体を震わせる。全身に快美さが響き渡り、普段であれば、精を迸らせているところだ。だが、しっかりと根元を縛められているため、それができない。
悶える和彦にさらに責め苦を与えるように、賢吾が震える和彦のものを根元から擦り上げてくる。愛撫のようだが、実はリボンの縛めがしっかり食い込んでいるのか、確かめたのだ。
「はあっ、あっ、い、や……、賢吾さんっ」
内奥を擦り上げられるたびに和彦は悦びの声を上げ、絞り上げるように賢吾のものをきつく締め付ける。
感嘆したように声を洩らした賢吾が腰を使う。和彦は夢中で両腕を伸ばし、覆い被さってきた賢吾の背にしがみつく。汗で濡れた大蛇が、内奥深くで蠢く欲望のように、熱かった。
大蛇に激しく求められ、愛されているのだと実感できる瞬間だった。
「リボンを解いてやろうか?」
律動の合間に囁かれ、賢吾の引き締まった下腹部で、反り返ったものをわざと刺激される。呻き声を洩らした和彦は、小さく首を横に振った。
「こ、のまま……。これ、いい――」
「このほうが、俺が悦ぶからか?」
「……あんたの性癖は、問題があるからな」
顔を綻ばせた賢吾に唇を塞がれ、舌を絡め合う。その間も、賢吾は内奥を丹念に擦り上げ、掻き回してくれる。
快感の波が次第に大きくなってくるようで、厚みのある体の下でのたうちながら和彦は、切羽詰った声を上げる。そんな和彦を見下ろしながら、賢吾は満足そうだった。
「いやらしいオンナだ。こんなに愛してやってるのに、まだ俺が欲しいか? さすがの俺も、そのうち力加減を忘れて、抱き殺しちまいそうだな。俺の、大事で可愛いオンナを」
物騒な言葉を囁かれた瞬間、和彦の体を、いままでにない強烈な感覚が駆け抜けた。それが、深い快感のせいだとわかったときには、意識が飛んでいた。
レアのステーキを淡々と口に運ぶ賢吾を見ているだけで、和彦は胸焼けを起こしそうだった。
今日はやけに重く感じるフォークで、ミディアムに焼いてもらったステーキを突く。手どころか、口を動かすことすら億劫で、フォークを置こうとしたが、目敏く気づいた賢吾にすかさず言われた。
「しっかり食えよ、先生。塞ぎ込んでいる間に落とした体重を、きちんと元に戻せ」
「……だからといって、何も今晩、ステーキを食べなくていいだろ」
「今日はもう、〈肉〉は腹いっぱいか?」
長嶺組組長という凄みのある肩書きを持っている男が、そう言ってニヤニヤと笑う。芝居がかった品のない笑い方に、和彦は顔を熱くする。賢吾が暗に言おうとしていることを、すぐに理解してしまったのだ。
「こんな場所で、下品なことを言うなっ」
声を潜めて窘めてはみたのだが、ますます賢吾をおもしろがらせただけらしい。今度は澄ました顔で言い返された。
「なんのことだ? 俺は、ステーキの話をしているんだが――」
「……あんまりぼくをからかうと、あんたが何者か、この場で叫ぶぞ」
「それは怖いな」
大げさに肩をすくめた賢吾が、美味そうにステーキを一切れ食べる。自分が子供扱いされていることを嫌というほど実感し、無駄な抗議を早々に諦めた和彦は、仕方なく自分のステーキを切り分ける。
一切れの肉を苦労して口に押し込む間に、賢吾はグラスの生ビールをあっという間に飲み干して、お代わりを頼んでいる。
和彦はふうっと息を吐き出すと、カウンター席に目を向ける。こちらに背を向けてはいるが、二人が座っているテーブル席の一番近くに陣取っているのが、賢吾の護衛の組員たちだ。
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