血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
上 下
250 / 1,268
第13話

(13)

しおりを挟む
 がっしりとした片腕で抱き締められながら、耳朶を甘噛みされて囁かれる。のろのろと和彦が振り返ると、優しく唇を吸われた。間近で賢吾の顔を見つめる。賢吾も、愉悦に目を細めながら、和彦を見ていた。
「さっき、誰のことを『獣』と言ったんだ?」
 からかうように賢吾に問われ、思わず和彦は睨みつける。
「……寝ている人間に、朝から襲いかかる男のこと、だっ……」
「それは、紳士的じゃねーな」
 悪びれた様子もなく、澄ました顔で賢吾が応じる。この言動に腹が立つし悔しくもあるのだが、一方で、おかしくもある。
「あんた、ぼくと千尋の寝顔を、わざわざ見に来たのか?」
「どっちも、意味は違うが、俺にとっては可愛い存在だからな」
「えっ……」
 突然、ぐいっと抱き寄せられた和彦は、繋がったまま、あぐらをかいた賢吾の両足の間に座らされた。内奥を下から強く突き上げられ、ビクビクと腰が震える。
「――ここをじっくり可愛がってやる」
 和彦の肩に唇を押し当てながら、賢吾の片手が両足の間に差し込まれる。すでに反り返り、先端から悦びのしずくを垂らしているものを軽く扱いたあと、賢吾の手はさらに深くへと入り込んできた。
「んうぅっ」
 柔らかな膨らみをいきなりきつく揉みしだかれ、和彦は腰を浮かせて逃れようとしたが、太い杭を内奥深くに打ち込まれているような状態だ。実際は、賢吾の片腕の中で身悶えただけだった。
「やっ……、そこ、嫌だっ……」
「嫌か? 最近はここでよく感じるようになっただろ。それに尻が、引き絞るように締まってるぞ。遠慮するな、先生。腰が抜けるぐらい、感じさせてやる。いい寝顔を見せてくれたからな」
 理屈はなんでもいいのだ。賢吾はこうやって、和彦をいたぶる――淫らに攻めるのが楽しいのだ。
 巧みに指が蠢き、ゾクゾクするような感覚が込み上げてくる。弱みを弄られる怖さと、快感の塊を愛される悦びが混ざり合い、和彦を惑乱させる。
「んんっ、あっ、あっ、はああっ」
 強い快感に身を捩るたびに、内奥でふてぶてしく息づく大蛇の分身を意識させられる。唆されるままにぎこちなく腰を揺らすと、褒美とばかりに、柔らかな膨らみを手荒く揉み込まれた。
「くっ……ん、いっ、いぃ……」
 快感を知らせるように、何度も背をしならせる。すると、熱く濡れた舌に背を舐め上げられた。和彦は甲高い声を上げ、自分でもわかるほどきつく、賢吾のものを締め付ける。この瞬間、精を迸らせていた。
 和彦は体を震わせて息を喘がせる。本当はこのまま倒れ込んでしまいたいが、賢吾が許してくれなかった。
 呼吸が落ち着くまで唇と舌を吸われたあと、再び敷布団の上に這わされ、内奥を果敢に突き上げられる。
「イかせたばかりだっていうのに、もう尻が締まり始めたな……」
 そう言って賢吾の手が、両足の間をまさぐってくる。執拗に柔らかな膨らみを攻め立てられ、和彦は嗚咽をこぼす。突き出した腰がガクガクと震えていた。しかし賢吾は容赦なく、内奥で力強い律動を繰り返すのだ。
「あうっ、ううっ、賢吾さっ……、んあっ、あっ」
 放埓に声を上げながら和彦は、敷布団の端を握り締める。快感がつらいのに、それでも自ら大きく両足を開き、賢吾を求めてしまう。そんな和彦に賢吾は、ゾクリとするような残酷で淫らな言葉をかけてきた。
「感じすぎて――漏らすまで、攻めてやる」
 このとき和彦が感じたのは恐怖ではなく、快感に対する純粋な期待だった。その証拠に、内奥を犯し続ける大蛇のように太い欲望を、和彦は柔らかな肉で締め付け、襞で舐め上げる。
「……高ぶったか、先生?」
 愉悦を含んだ声で問いかけてきた賢吾に、精を放ったばかりのものを掴まれ、きつく扱かれる。
「うあっ……、あっ、あっ、い、ぃ――」
「ああ、俺もいい。最高だ」
 さすがの賢吾も限界が近いのか、腰を掴まれて乱暴に前後に揺さぶられる。容赦なく内奥深くを掻き回すように抉られ、突き上げられ、和彦は何度となく悲鳴を上げる。その悲鳴が、凶暴な大蛇を高ぶらせた。
 腰を抱え込まれ、深く繋がる。和彦は、柔らかな膨らみを弄ばれながら、賢吾の精を叩きつけるようにして内奥に注ぎ込まれた。
「ひぁっ、あっ、はっ……ん」
 腰を震わせながら、内奥で脈打っている賢吾のものを引き絞るように締め付ける。和彦の意思ではなく、体が勝手に反応しているのだ。
 休む間もなく賢吾が再び動き始めたとき、和彦の唇からこぼれ出たのは哀願の言葉ではなく、歓喜の声だった。

しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

どうやら俺は悪役令息らしい🤔

osero
BL
俺は第2王子のことが好きで、嫉妬から編入生をいじめている悪役令息らしい。 でもぶっちゃけ俺、第2王子のこと知らないんだよなー

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
────妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの高校一年生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の主人公への好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

貢がせて、ハニー!

わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。 隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。 社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。 ※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8) ■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました! ■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。 ■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

a pair of fate

みか
BL
『運命の番』そんなのおとぎ話の中にしか存在しないと思っていた。 ・オメガバース ・893若頭×高校生 ・特殊設定有

いつかコントローラーを投げ出して

せんぷう
BL
 オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。  世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。  バランサー。  アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。  これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。  裏社会のトップにして最強のアルファ攻め  ×  最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け ※オメガバース特殊設定、追加性別有り .

ヤクザと捨て子

幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子 ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。 ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。

処理中です...