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第13話
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しおりを挟む軽く咳き込んだ和彦は、モゾリと身じろいで寝返りを打つ。うつ伏せとなって、布団から手を出してみると、肌に触れる空気はふんわりと温かい。
誰かが気を利かせて、客間のエアコンを入れてくれたようだ。おかげで、朝の身震いするような寒さは感じなくて済むが、その代わり、ひどく空気が乾燥している。
もう一度咳き込んだ和彦は、ようやく薄く目を開く。障子を通して、朝の柔らかな陽射しが室内に満ちていた。
緩慢にまばたきを繰り返しながら、どうして今朝は、体が心地いい充足感に満たされているのだろうかと考えてすぐに、小さく声を洩らす。布団に包まった体の体温が、わずかに上がったようだ。
昨夜は、千尋と体を重ねたあと、しばらく布団の中で睦み合っていたのだが、そのうち眠ってしまった。よほど眠りが深かったのか、千尋が布団を出たことすら気づかなかった。
千尋の寝顔を見ておきたかったなと心の中で呟いた和彦は、すでにいない青年の姿を思い返しながら、敷布団の上にてのひらを這わせる。
このとき、なんの前触れもなく布団を剥ぎ取られた。寝起きということもあり、反応が鈍くなっている和彦は、数秒の間、何が起こったのかわからなかった。そもそも、部屋に人がいることすら気づいていなかったのだ。
「えっ……」
ようやく声を洩らしたとき、和彦は力強い腕によって腰を抱え上げられ、浴衣をたくし上げられた。下着は――つけていない。千尋との行為のあと、しどけなく絡み合っているうちに眠ったため、無防備な状態のままだった。
「や、め――」
わけがわからないまま声を上げたときには、千尋を受け入れた余韻がまだ残っている内奥に、指らしきものが挿入されてきた。
「あううっ」
本能的に体を強張らせて拒絶しようとしたが、柔らかく解れ、湿りを帯びた内奥は、異物をすんなりと呑み込んでしまう。
何かを確認したかっただけらしい。すぐに指は引き抜かれ、代わって押し当てられたのは、熱く硬い感触だった。和彦の内奥が、十分に欲望を受け入れられると判断したのだ。
混乱しながらも、なんとか前に逃れようと片手を伸ばしたが、内奥の入り口に擦りつけるようにして、逞しいものが押し込まれてきた。
「うあっ……」
和彦は声を上げると、畳に爪を立てる。
もう、わかっていた。この場所で、こんなにも自分勝手で強引な行為ができる男を、和彦は一人しか知らない。そして和彦は、その男の〈オンナ〉なのだ。
「……あんたは、獣かっ」
唸るように和彦が言葉を投げつけると、腰を抱え直され、突然の乱暴な行為に喘ぐ内奥を、容赦なく熱い欲望で押し広げられる。昨夜、千尋のもので強く愛されたばかりの襞と粘膜は、和彦自身の意識よりも早く、覚醒していた。
「んあぁっ」
痺れるような肉の疼きが生まれ、一気に腰に広がり、背筋を這い上がってくる。寝起きには強烈すぎる感覚に、自分は夢を見ているのではないかとすら思った和彦だが、内奥への侵入が深くなるに伴い、再び疼きを認識した。
「ひっ……、あっ、んんっ」
双丘を痛いほど割り開かれ、腰を突き上げられる。深く繋がっていく過程を見つめられているのだと思うと、苦しさよりも羞恥が上回る。しかし羞恥は和彦にとって、官能を刺激する媚薬だ。傲慢な腰使いに、すがるように和彦も動きを合わせてしまう。
「――目が覚めたか、先生」
背後からかけられたバリトンの響きに、腰が疼いた。和彦は無意識に首を小さく横に振ったが、声を聞かせろと言わんばかりに一際大きく腰を突き上げられ、悲鳴を上げる。
これ以上なくしっかりと、賢吾と繋がった瞬間だった。
体の内から焼かれそうなほど熱い欲望の逞しさと力強さに、和彦はあっという間に従わされる。抵抗することはもう許されない。多淫な体は、大蛇にがっちりと押さえ込まれ、あとは肉の悦びを引きずり出されるだけだった。
簡単に結んでいた帯を解かれ、浴衣を脱がされる。このときになって、客間を温めてくれたのは賢吾だとわかった。和彦が寒さで体を強張らせることを、大蛇の化身のような男は望まなかったのだ。
「俺が、むさ苦しい連中が揃ったじいさんのところから戻ってきたら、俺の息子と、俺のオンナが、温かな布団の中でヌクヌクと寝ているんだ。しかも、二人揃って無邪気な顔してな。……どうだ。少しは俺を労わってやろうって気になっただろ?」
笑いを含んだ声でそんなことを言いながら、賢吾の両手が体をまさぐってくる。促されるまま和彦は、敷布団に両手を突いて上体を起こした姿勢で、緩やかに内奥を突き上げられる。
「あっ……、あっ、あっ、んあっ」
「先生、俺を見ろ」
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