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第11話
(18)
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逞しい欲望を再び内奥に受け入れながら、和彦は細い声で鳴く。三田村に見下ろされながら、反り返らせた欲望から精を迸らせていた。この瞬間、内奥はきつく締まり、三田村が唇を引き結ぶ。
和彦は濡れたシーツの上でしどけなく身悶えながら、三田村に向けて片手を伸ばす。意図を察した三田村に抱き締められると、ほっと吐息を洩らした和彦は、すがりつくように両腕を背に回した。
内奥が蠕動し、多淫な襞と粘膜が、大事な〈オトコ〉を愛し始める。和彦の率直な気持ちの表れだ。
「はっ……、あっ、いっ……、い、ぃ――。気持ちいい、三田村」
奥深くに到達した三田村のものが、感触を堪能するようにゆっくりと何度も突き上げてくれる。湧き上がる快感に和彦は陶酔し、悦びを言葉にする。
「……奥、好きなんだ。あんたに、そんなふうにされると、ゾクゾクする」
「ああ、よくわかる。先生の体は素直だから、俺みたいな不器用な男でも、先生を感じさせてやれる。それが俺は、嬉しい」
虎の刺青を撫でた和彦は息を弾ませながら、そっと三田村の唇に噛みつく。
「ぼくより料理ができるくせに、どこが不器用なんだ……」
欲情のため余裕のない表情をしていた三田村だが、このときだけはふっと優しい笑みを浮かべた。
「先生と比べて、というのは、基準として喜んでいいのかな」
「失礼な、男だ……」
本気で言ったわけではないが、三田村は機嫌を取るように和彦の唇を啄ばんでくれる。微かに声を洩らして笑った和彦は、三田村のあごの傷跡に舌先を這わせてから囁いた。
「――でも、ぼくの大事なオトコだ」
三田村の逞しい腰に両腕を回し、わずかに力を込めて促す。緩やかに律動が繰り返され、和彦は伸びやかな悦びの声を上げ、送り込まれる快感に陶然としていた。そんな和彦を追い上げるように三田村は、緩やかに、しかし大きく腰を突き上げてくる。
内奥深くの襞と粘膜が強く擦り上げられていた。三田村は、和彦が感じる部分を容易に探り出し、愛してくれる。和彦の体は、甘く溶かされる。
「はあっ……、んっ、んうっ、あっ……、んくっ」
一際大きく突き上げられて、息を詰める。低く呻いた三田村が、内奥深くで精を迸らせた。傷つけてはいけないと思いながらも、たまらず和彦は背の虎に爪を立て、快美さに全身を震わせる。
「あっ、あっ、あぁっ――……」
肉の悦びを与えてくれた男のものが、脈打ち、震えている。和彦の内奥もまた、淫らな蠕動を繰り返しながら、ひくついている。二人は唇を啄ばみながら、互いが与え合った快感の余韻を堪能していた。
抱き合うと、ボディソープの香りが鼻先を掠める。ついでに、濡れた肌がヌルヌルしていた。三田村も同じことが気になったらしく、和彦の顔を覗き込み、苦笑交じりで提案してきた。
「先生、シャワーを浴び直さないか」
もちろん、和彦に異論はなかった。
ベッドのマットレスが濡れてしまったので、床の上に毛布を敷き、その上に座り込んで二人は寛ぐ。今夜は、ここで眠ることになりそうだ。
和彦はワインを、三田村は缶ビールを一本開けたあと、今はハイボールを味わいながら、身を寄せ合い、他愛ない会話を交わしていた。特別なことをしなくても、それだけで楽しい。
両足を投げ出し、壁にもたれかかった和彦は、三田村の手首に手をかける。すると、心得たように三田村は、手に持ったグラスを差し出してくれる。和彦は、自分の手で持つ必要もなかった。三田村にグラスを傾けてもらい、ハイボールを少し飲ませてもらう。
「うん、美味しい」
「もっと飲みたいなら、作ってくるが……」
「いい。あんたのを飲ませてもらうから」
和彦の言葉に、三田村は柔らかな笑みを浮かべる。少し前まで、激しく自分を貪っていた男とは思えない表情だ。一方の和彦も、激しく求めていたのだから、お互い様なのかもしれないが――。
グラスを少し離れた場所に置いた和彦は、三田村の肩に頭をのせる。すぐに、自然な動作で肩を抱かれた。
二人が黙ってしまうと、この部屋は静かだった。テレビもラジオもない部屋なので、相手の息遣いすら感じることができる。
突然、三田村が切り出した。
「――先生、俺に話したいことがあるんじゃないのか」
和彦は頭を上げ、間近にある三田村の顔を見つめる。三田村は、少し困ったように笑った。
「組長直々に、先生と過ごすよう言われたんだ。何かあると思うだろう」
「それも……、そうだな」
今度は和彦が、小さく笑みをこぼす。三田村もグラスを置き、二人は指を絡め合った。
どうやって話すべきだろうかと迷った挙げ句、和彦は単刀直入に告げた。
「……多分ぼくは、鷹津と寝る……」
和彦は濡れたシーツの上でしどけなく身悶えながら、三田村に向けて片手を伸ばす。意図を察した三田村に抱き締められると、ほっと吐息を洩らした和彦は、すがりつくように両腕を背に回した。
内奥が蠕動し、多淫な襞と粘膜が、大事な〈オトコ〉を愛し始める。和彦の率直な気持ちの表れだ。
「はっ……、あっ、いっ……、い、ぃ――。気持ちいい、三田村」
奥深くに到達した三田村のものが、感触を堪能するようにゆっくりと何度も突き上げてくれる。湧き上がる快感に和彦は陶酔し、悦びを言葉にする。
「……奥、好きなんだ。あんたに、そんなふうにされると、ゾクゾクする」
「ああ、よくわかる。先生の体は素直だから、俺みたいな不器用な男でも、先生を感じさせてやれる。それが俺は、嬉しい」
虎の刺青を撫でた和彦は息を弾ませながら、そっと三田村の唇に噛みつく。
「ぼくより料理ができるくせに、どこが不器用なんだ……」
欲情のため余裕のない表情をしていた三田村だが、このときだけはふっと優しい笑みを浮かべた。
「先生と比べて、というのは、基準として喜んでいいのかな」
「失礼な、男だ……」
本気で言ったわけではないが、三田村は機嫌を取るように和彦の唇を啄ばんでくれる。微かに声を洩らして笑った和彦は、三田村のあごの傷跡に舌先を這わせてから囁いた。
「――でも、ぼくの大事なオトコだ」
三田村の逞しい腰に両腕を回し、わずかに力を込めて促す。緩やかに律動が繰り返され、和彦は伸びやかな悦びの声を上げ、送り込まれる快感に陶然としていた。そんな和彦を追い上げるように三田村は、緩やかに、しかし大きく腰を突き上げてくる。
内奥深くの襞と粘膜が強く擦り上げられていた。三田村は、和彦が感じる部分を容易に探り出し、愛してくれる。和彦の体は、甘く溶かされる。
「はあっ……、んっ、んうっ、あっ……、んくっ」
一際大きく突き上げられて、息を詰める。低く呻いた三田村が、内奥深くで精を迸らせた。傷つけてはいけないと思いながらも、たまらず和彦は背の虎に爪を立て、快美さに全身を震わせる。
「あっ、あっ、あぁっ――……」
肉の悦びを与えてくれた男のものが、脈打ち、震えている。和彦の内奥もまた、淫らな蠕動を繰り返しながら、ひくついている。二人は唇を啄ばみながら、互いが与え合った快感の余韻を堪能していた。
抱き合うと、ボディソープの香りが鼻先を掠める。ついでに、濡れた肌がヌルヌルしていた。三田村も同じことが気になったらしく、和彦の顔を覗き込み、苦笑交じりで提案してきた。
「先生、シャワーを浴び直さないか」
もちろん、和彦に異論はなかった。
ベッドのマットレスが濡れてしまったので、床の上に毛布を敷き、その上に座り込んで二人は寛ぐ。今夜は、ここで眠ることになりそうだ。
和彦はワインを、三田村は缶ビールを一本開けたあと、今はハイボールを味わいながら、身を寄せ合い、他愛ない会話を交わしていた。特別なことをしなくても、それだけで楽しい。
両足を投げ出し、壁にもたれかかった和彦は、三田村の手首に手をかける。すると、心得たように三田村は、手に持ったグラスを差し出してくれる。和彦は、自分の手で持つ必要もなかった。三田村にグラスを傾けてもらい、ハイボールを少し飲ませてもらう。
「うん、美味しい」
「もっと飲みたいなら、作ってくるが……」
「いい。あんたのを飲ませてもらうから」
和彦の言葉に、三田村は柔らかな笑みを浮かべる。少し前まで、激しく自分を貪っていた男とは思えない表情だ。一方の和彦も、激しく求めていたのだから、お互い様なのかもしれないが――。
グラスを少し離れた場所に置いた和彦は、三田村の肩に頭をのせる。すぐに、自然な動作で肩を抱かれた。
二人が黙ってしまうと、この部屋は静かだった。テレビもラジオもない部屋なので、相手の息遣いすら感じることができる。
突然、三田村が切り出した。
「――先生、俺に話したいことがあるんじゃないのか」
和彦は頭を上げ、間近にある三田村の顔を見つめる。三田村は、少し困ったように笑った。
「組長直々に、先生と過ごすよう言われたんだ。何かあると思うだろう」
「それも……、そうだな」
今度は和彦が、小さく笑みをこぼす。三田村もグラスを置き、二人は指を絡め合った。
どうやって話すべきだろうかと迷った挙げ句、和彦は単刀直入に告げた。
「……多分ぼくは、鷹津と寝る……」
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