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第5話
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得体の知れないあの男は、生理的に受け付けられない嫌悪感を和彦に植え付けてきた。しかしそれは重要ではない。看過できないのは、男は、千尋が長嶺組組長の息子だと知っていたということだ。必然的に、総和会の現会長の孫であることも知っているはずだが、そのうえで、あんな手荒な行動に出たのだ。
男の正体がなんであれ、ヤクザの不文律が通じない相手は、危険だ。本当にあの場で、いきなり刃物を出されても不思議ではなかった。
千尋の話では、男が何者であるかまったく見当がつかないという。さきほど部屋を覗いたら、組員数人が見守る中、パソコンに向き合っていた。過去に長嶺組と諍いを起こした組や人物たちのデータをチェックしているのだという。
千尋の見た目の好青年ぶりも、組員たちに囲まれると、妙な迫力を帯びる。こいつもヤクザなのだと、唐突に和彦は実感させられるのだ。
「――なんか、和むなー。先生がのんびりお茶飲んでる姿見ると」
そんな声をかけられて和彦が視線を上げると、千尋が廊下に立ち、こちらを見て笑っていた。いつもの千尋の笑顔に、つられて和彦も笑みで返す。
「悪いな、緊迫感に欠けていて」
「いいよ。先生は、そのほうが似合ってる」
和彦が立ち上がって縁側に歩み寄ると、腰を屈めた千尋が肩に額をすり寄せてきた。そんな千尋の頭を撫でてやりながら尋ねる。
「お前、仕事は?」
「飽きた」
「……どっちが緊迫感ないんだ」
「だってさー、ムサい男の画像ばかり見てるんだよ? それに――あいつ多分、組関係の人間じゃないと思うんだよね」
和彦は千尋の顔を上げさせ、頬を両手で挟む。
「根拠は?」
「俺の直感」
「あー、それは確かだな。お前の直感は絶対だ」
「先生……、思いきり冷めた声で、台詞を棒読みするように言わないでよ」
それより、と言葉を続けた千尋が、耳元に顔を寄せて囁いてきた。
「今は、先生に目一杯、甘えさせてもらいたい」
「……いつも目一杯甘えてるだろ、お前……」
「先生が、俺のために顔色変えて、いかにもヤバげな男に立ち向かってる姿見て、興奮したんだよ」
口ではそんなことを言いながらも、すがる犬っころのような眼差しを向けられると、和彦は千尋のわがままを聞き入れずにはいられない。
本当は和彦も、必死に自分を守ってくれようとしていた千尋の姿を思い返し、胸が疼くものがあった。
あの男から植え付けられた生理的嫌悪感も、千尋とじゃれ合っているうちに消えてしまうだろう。
二階にある千尋の部屋に上がり、ベッドに倒れ込むと、会話を交わす余裕もなく互いの服を脱がし合い、すでに汗ばんでいる素肌を擦りつけ合う。
和彦は、未熟な蛮勇を奮おうとした千尋をまず労うため、しなやかな体に覆い被さり、滑らかな肌をじっくりと舐め上げる。浮き上がった腹筋に舌先を這わせ、柔らかく吸い上げてから、胸の突起を口腔に含むと、千尋がくすぐったそうに笑い声を上げる。
だがそれもわずかな間で、和彦が絶えず唇と舌を動かし続けると、次第に切なげな息遣いとなり、微かに声を洩らし始める。そんな千尋に引き寄せられて顔を上げると、有無を言わさず唇を塞がれた。
「クーラーつけようか?」
貪り合うような口づけの合間にそう問われた和彦は、すでに滴っている千尋の汗をてのひらで拭ってやってから答える。
「いらない。せっかくの熱が冷める」
「……いやらしいなー、先生」
ニヤリと笑った千尋の唇に軽いキスを落としてから、和彦は頭を下ろす。多分今、この部屋の中でもっとも高い熱を持っているはずのものをてのひらに包み込み、ゆっくりと上下に扱き始めると、千尋が心地よさそうに深い吐息を洩らした。
和彦は、望まれた通りにたっぷりと千尋を甘やかすことにした。
何より甘やかされるのが好きな千尋の分身を口腔に含み、熱く濡れた粘膜で包み込みながら唇で締め付け、滲み出る透明なしずくを丹念に舌で舐め取っていく。堪えきれないように千尋が声を上げ始めると、口腔から出し入れしながら、根元から指の輪で扱いてやる。
千尋のものが素直に悦びを示し、瞬く間に成長して張り詰める。その変化を、和彦は舌を絡ませて感じていた。
ふいに、腕を掴まれて体を引き上げられると、両腕できつく抱き締められる。千尋の体は燃えそうなほど熱くなっていた。
「先生の中で甘やかしてもらっていい?」
「……いつも、そんなこと言わないで、勝手に入ってくるだろ」
和彦の体はベッドに押さえつけられ、今度は千尋が獣のようにのしかかってくる。両足の間に腰が割り込まされ、両手で頬を撫でられる。
「今日の先生、本当にいやらしい……」
男の正体がなんであれ、ヤクザの不文律が通じない相手は、危険だ。本当にあの場で、いきなり刃物を出されても不思議ではなかった。
千尋の話では、男が何者であるかまったく見当がつかないという。さきほど部屋を覗いたら、組員数人が見守る中、パソコンに向き合っていた。過去に長嶺組と諍いを起こした組や人物たちのデータをチェックしているのだという。
千尋の見た目の好青年ぶりも、組員たちに囲まれると、妙な迫力を帯びる。こいつもヤクザなのだと、唐突に和彦は実感させられるのだ。
「――なんか、和むなー。先生がのんびりお茶飲んでる姿見ると」
そんな声をかけられて和彦が視線を上げると、千尋が廊下に立ち、こちらを見て笑っていた。いつもの千尋の笑顔に、つられて和彦も笑みで返す。
「悪いな、緊迫感に欠けていて」
「いいよ。先生は、そのほうが似合ってる」
和彦が立ち上がって縁側に歩み寄ると、腰を屈めた千尋が肩に額をすり寄せてきた。そんな千尋の頭を撫でてやりながら尋ねる。
「お前、仕事は?」
「飽きた」
「……どっちが緊迫感ないんだ」
「だってさー、ムサい男の画像ばかり見てるんだよ? それに――あいつ多分、組関係の人間じゃないと思うんだよね」
和彦は千尋の顔を上げさせ、頬を両手で挟む。
「根拠は?」
「俺の直感」
「あー、それは確かだな。お前の直感は絶対だ」
「先生……、思いきり冷めた声で、台詞を棒読みするように言わないでよ」
それより、と言葉を続けた千尋が、耳元に顔を寄せて囁いてきた。
「今は、先生に目一杯、甘えさせてもらいたい」
「……いつも目一杯甘えてるだろ、お前……」
「先生が、俺のために顔色変えて、いかにもヤバげな男に立ち向かってる姿見て、興奮したんだよ」
口ではそんなことを言いながらも、すがる犬っころのような眼差しを向けられると、和彦は千尋のわがままを聞き入れずにはいられない。
本当は和彦も、必死に自分を守ってくれようとしていた千尋の姿を思い返し、胸が疼くものがあった。
あの男から植え付けられた生理的嫌悪感も、千尋とじゃれ合っているうちに消えてしまうだろう。
二階にある千尋の部屋に上がり、ベッドに倒れ込むと、会話を交わす余裕もなく互いの服を脱がし合い、すでに汗ばんでいる素肌を擦りつけ合う。
和彦は、未熟な蛮勇を奮おうとした千尋をまず労うため、しなやかな体に覆い被さり、滑らかな肌をじっくりと舐め上げる。浮き上がった腹筋に舌先を這わせ、柔らかく吸い上げてから、胸の突起を口腔に含むと、千尋がくすぐったそうに笑い声を上げる。
だがそれもわずかな間で、和彦が絶えず唇と舌を動かし続けると、次第に切なげな息遣いとなり、微かに声を洩らし始める。そんな千尋に引き寄せられて顔を上げると、有無を言わさず唇を塞がれた。
「クーラーつけようか?」
貪り合うような口づけの合間にそう問われた和彦は、すでに滴っている千尋の汗をてのひらで拭ってやってから答える。
「いらない。せっかくの熱が冷める」
「……いやらしいなー、先生」
ニヤリと笑った千尋の唇に軽いキスを落としてから、和彦は頭を下ろす。多分今、この部屋の中でもっとも高い熱を持っているはずのものをてのひらに包み込み、ゆっくりと上下に扱き始めると、千尋が心地よさそうに深い吐息を洩らした。
和彦は、望まれた通りにたっぷりと千尋を甘やかすことにした。
何より甘やかされるのが好きな千尋の分身を口腔に含み、熱く濡れた粘膜で包み込みながら唇で締め付け、滲み出る透明なしずくを丹念に舌で舐め取っていく。堪えきれないように千尋が声を上げ始めると、口腔から出し入れしながら、根元から指の輪で扱いてやる。
千尋のものが素直に悦びを示し、瞬く間に成長して張り詰める。その変化を、和彦は舌を絡ませて感じていた。
ふいに、腕を掴まれて体を引き上げられると、両腕できつく抱き締められる。千尋の体は燃えそうなほど熱くなっていた。
「先生の中で甘やかしてもらっていい?」
「……いつも、そんなこと言わないで、勝手に入ってくるだろ」
和彦の体はベッドに押さえつけられ、今度は千尋が獣のようにのしかかってくる。両足の間に腰が割り込まされ、両手で頬を撫でられる。
「今日の先生、本当にいやらしい……」
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