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第5話
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しおりを挟む内奥深くに含まされた逞しい欲望が、ヌチュッと湿った音を立ててゆっくりと引き抜かれていく。苦しさと、剥き出しの性感帯を擦り上げられる快感が入り混じり、狂おしい肉の愉悦を生み出す。
「うあっ……、あっ、ああっ――」
「いい締まりだな、先生。そんなに、抜いてほしくないか?」
クッションに片頬を押し当てて声を上げる和彦に、背後から賢吾が話しかけてくる。いつもと変わらない、忌々しいほど魅力的なバリトンは、今は残酷で加虐的な響きを帯び、官能的でありながら、ひどく怖い。
そう、和彦は、今の賢吾がたまらなく怖かった。
一度は引き抜かれた賢吾のものが、蕩けて喘ぐ内奥をすぐにまたじっくりと犯し始める。太いものを呑み込まされて拒むこともできず、従順に締め付けて、擦り上げられ、捏ね回されていた。
快感による責め苦の成果を確かめるように、賢吾の片手が機械的に両足の間に差し込まれ、革紐できつく根元を縛り上げられた和彦のものを撫でてきた。一度も達することを許されず、熱くなったまま震えており、おそろしく敏感になっている。
「はっ……、賢吾、さん……、もう、取って……」
「ダメだ。遊びは、しっかり楽しまないとな。――それでなくても感じやすい先生だが、こうしているおかげで、いつも以上に感じやすくなっている。体を真っ赤にして、女みたいに細くて頼りない声を上げて、純粋に、尻だけの刺激で快感を味わっている」
腰を掴まれて突き上げられ、賢吾の欲望が深々と捩じ込まれる。和彦は悲鳴を上げてシーツを握り締めていた。
ぐうっと繋がりを深くして、背後から賢吾が覆い被さってくる。肩に唇が押し当てられた。
「――先生、刺青を入れないか」
そっと囁かれた言葉に、和彦は体を強張らせる。背に冷たい感覚が駆け抜けていた。
「嫌、だ……。ぼくは、ヤクザじゃない。千尋みたいに、ノリでタトゥーを入れる気もない」
「別に、俺みたいに大きなものを入れなくていい。目立たないところに、小さなものを入れるだけだ」
肩先、胸元、内腿、腰を撫でてきた賢吾の手が、和彦の尻を強く掴んでくる。
「尻はどうだ? 入れるとき、かなり痛いが、目立たない。先生を抱く人間しか見ることはないからな」
いたぶるように柔らかな膨らみを揉みしだかれ、腰をくねらせながらも和彦は、懸命に首を横に振る。
「ああっ、あっ、あっ、絶対、嫌だ――……」
「……悲鳴を上げて嫌がる先生を押さえつけて、絡み合う蛇の刺青を彫らせる、というのは、想像するだけで興奮する光景だがな」
腰を使っているため、多少息が上がっている賢吾だが、おもしろがるような口調の中に、わずかな本気も感じ取れる。
縛り上げられたものを再び扱かれてから、濡れた先端をヌルヌルと擦られる。息を詰まらせながら感じていると、穏やかな声で賢吾に問われた。
「イきたいか、先生?」
どんな怖いことを要求されるかと思いながらも、和彦はその言葉にすがりつく。
「イき、たい……」
次の瞬間、体を抱き起こされ、ベッドの上にあぐらをかいた賢吾の腰の上に座らされた。和彦は繋がったまま、両足を大きく開いた格好で下から突き上げられた。
「うあっ……」
「――どうだ、三田村。先生のイイところが、全部丸見えだろ?」
和彦の首筋を舐め上げて、賢吾が正面に立つ三田村に話しかける。ここまで、まるで三田村の存在などないように振る舞っていた賢吾だが、もちろん存在を忘れていたなど、あるはずがなかった。
賢吾は、和彦には快感で、三田村には見せ付けることで、罰を与えていたのだ。
背筋を伸ばした姿勢を崩さない三田村は、一切の感情を排した顔で、ベッドの上で繋がっている二人を見つめ続けている。罰を受けるのに相応しい姿勢と表情を、三田村は体に叩き込まれているのだ。
これまでさんざん、動物のように即物的に賢吾と交わる場面を三田村に見られ、屈辱と羞恥を味わわされてきた和彦だが、今日は特別だ。特別、つらいし、苦しい。
苦痛を与えられているわけではないが、こんな状況で、三田村に見られて感じてしまう自分が、おぞましく感じられる。
「はあっ… …、あっ、あっ、はあうっ」
三田村に見せ付けるように、賢吾の手に執拗に柔らかな膨らみを弄られ、きつく縛めを受けている和彦のものは反り返ったまま空しく震える。
「感極まった先生の尻は、搾り上げるように俺のものを締め付けてくるんだが、今日はずっとその状態だ。ずっと、尻だけで感じまくっている。……もう、こっちでイかなくてもいいんじゃねーか」
賢吾の指に反り返ったものの形をなぞられて、和彦は息を詰める。このとき自分でも、賢吾の熱い欲望をきつく締め付けたのがわかった。
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