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2話
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眉目秀麗、成績優秀、家柄も良しの何処ぞの漫画のような完璧な生徒会長、それが漣奏太という男に対する俺の持っていた認識だった。
廊下を歩くのでさえ人目を集めるような男だ。平々凡々な俺はたまーにちらっと見かけるくらいで絡む事なんかは一度もなかったのだけれど。
(…全校集会とかで遠目から見て、Domじゃあないとは分かっていたけれど、まさかsubだったとは…)
てっきりDom寄りのSwitchだとばかりに思っていた。
が、そのお綺麗な顔を真っ青にしてガクガクと震える姿はまさにDomのGlareを受けたsubそのもの。
同じDomとして嫌悪している体育教師を懲らしめる為、普段は極限まで抑えているGlareを出したのだ。
既に一度、別のDomのGlareを至近距離で浴びているsubには溜まったもんじゃないだろう。
ふう、と思わず漏れてしまった溜息にビクリ、と漣は体を震わせた。
ああ、しまった。
「あー…会長さん? 大丈夫?」
未だ資料を持ったまま、バランスを取りつつ座り込む漣の前にしゃがみ込むと漣は震えながらも顔を上げようとしているが上手く体が動かせないらしい。
やがてゆっくりとした動作で顔を上げた漣はぱっちりとした二重の綺麗な青い瞳に涙を溜めて俺を見た。
う、美形のその顔は中々に来るものがあるな…じゃなくて。
不安げな眼差しで俺を見る漣と目を合わせて、俺はにっこりと笑みを浮かべる。
「Good-boy」
Glareを浴びてしまったsubやSwitchにはケアが必要だ。
それを怠ってしまえばdrop状態に陥り、体調不良などを起こしてしまう。
それくらいsubやSwitchにとってDomのGlareは恐ろしいものであり、だからこそDomは無闇矢鱈にGlareを放つ事を禁じられ、場合によっては逮捕されたりする事もある。
俺は一度立ち上がり、近くの机に頼まれていた資料を置いてから再び漣の元に戻る。
漣の状態を見るにすぐにでもAfter careをした方がいいのだけれど、自分を襲ってきたDomがいる空間ではゆっくりする事すら出来ないだろう。
そう判断した俺は漣の元に再度しゃがみ込むと目線を合わせる。
「会長さん、立ち上がれる?」
「え…?」
「場所、移動しよう。立てる?」
漣の視界にあの体育教師が入らないようにしつつ、そう問えば漣はまだ混乱状態から抜け出せていないのか、ギクシャクとした動きで立ち上がろうと体に力を込める。
が、一度弛緩してしまった体は中々言う事をきかないようで。
誠に残念な事ながら、平均身長の俺には自分よりも体格の良い漣を華麗に抱き上げてやる事なんて真似は出来ない。
なので、俺は漣の両腕を手に取り、その端整な顔に己の顔を近付ける。
「会長さん、アンタがこんな所で座り込む必要なんてない。アンタは自分の意志で、力で立ち上がる事が出来る。Stand-up」
「───!」
漣の目を見て、俺は漣にcommandを与える。
信頼関係も何もない俺の命令に答えてくれるかが問題なのだが、漣はじっと俺を見た後、ゆっくりと立ち上がった。
フラつく体を支えながら資料室を出る為、扉に向かい廊下に出ると俺は振り返り様、資料室の中に目を向ける。
そこには普段の傲慢な態度は何処へやら、頭を抱え小さく丸まる勝負に負けた情けないDomの姿があった。
俺はそれを無言で見遣った後、体育教師に何も告げず、資料室の扉を閉めたのであった。
俺の肩に腕を回し、何度か崩れ落ちそうになる体を支えながら、ようやっと辿り着いたのは生徒会室で。
保健室でも良かったのだけれど、あんな事があったのだ。少しでも漣が落ち着ける場所の方が良いだろうと思って連れて来たのだけれど。
誰もいない生徒会室に入り、入り口の扉に鍵を掛けた所で堪えきれなかったのか、漣がその場に座り込んだ。
「だ、大丈夫か…?」
「…ぅ、」
疲労感を滲ませるその顔に限界が近いと悟ると俺は室内を見渡し、近くにあった革張りの
ソファーに腰掛ける。
ソファーにまで向かう間、背中に漣の視線を感じていたから、漣もある程度は何をするのか予想が付いているだろう、と見当を付けて漣の方に視線を向けた。
「会長さん」
さあ、限界ギリギリまで頑張ったsubには褒美をあげなければ。
「Come」
ごくり、と漣が唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえた。
廊下を歩くのでさえ人目を集めるような男だ。平々凡々な俺はたまーにちらっと見かけるくらいで絡む事なんかは一度もなかったのだけれど。
(…全校集会とかで遠目から見て、Domじゃあないとは分かっていたけれど、まさかsubだったとは…)
てっきりDom寄りのSwitchだとばかりに思っていた。
が、そのお綺麗な顔を真っ青にしてガクガクと震える姿はまさにDomのGlareを受けたsubそのもの。
同じDomとして嫌悪している体育教師を懲らしめる為、普段は極限まで抑えているGlareを出したのだ。
既に一度、別のDomのGlareを至近距離で浴びているsubには溜まったもんじゃないだろう。
ふう、と思わず漏れてしまった溜息にビクリ、と漣は体を震わせた。
ああ、しまった。
「あー…会長さん? 大丈夫?」
未だ資料を持ったまま、バランスを取りつつ座り込む漣の前にしゃがみ込むと漣は震えながらも顔を上げようとしているが上手く体が動かせないらしい。
やがてゆっくりとした動作で顔を上げた漣はぱっちりとした二重の綺麗な青い瞳に涙を溜めて俺を見た。
う、美形のその顔は中々に来るものがあるな…じゃなくて。
不安げな眼差しで俺を見る漣と目を合わせて、俺はにっこりと笑みを浮かべる。
「Good-boy」
Glareを浴びてしまったsubやSwitchにはケアが必要だ。
それを怠ってしまえばdrop状態に陥り、体調不良などを起こしてしまう。
それくらいsubやSwitchにとってDomのGlareは恐ろしいものであり、だからこそDomは無闇矢鱈にGlareを放つ事を禁じられ、場合によっては逮捕されたりする事もある。
俺は一度立ち上がり、近くの机に頼まれていた資料を置いてから再び漣の元に戻る。
漣の状態を見るにすぐにでもAfter careをした方がいいのだけれど、自分を襲ってきたDomがいる空間ではゆっくりする事すら出来ないだろう。
そう判断した俺は漣の元に再度しゃがみ込むと目線を合わせる。
「会長さん、立ち上がれる?」
「え…?」
「場所、移動しよう。立てる?」
漣の視界にあの体育教師が入らないようにしつつ、そう問えば漣はまだ混乱状態から抜け出せていないのか、ギクシャクとした動きで立ち上がろうと体に力を込める。
が、一度弛緩してしまった体は中々言う事をきかないようで。
誠に残念な事ながら、平均身長の俺には自分よりも体格の良い漣を華麗に抱き上げてやる事なんて真似は出来ない。
なので、俺は漣の両腕を手に取り、その端整な顔に己の顔を近付ける。
「会長さん、アンタがこんな所で座り込む必要なんてない。アンタは自分の意志で、力で立ち上がる事が出来る。Stand-up」
「───!」
漣の目を見て、俺は漣にcommandを与える。
信頼関係も何もない俺の命令に答えてくれるかが問題なのだが、漣はじっと俺を見た後、ゆっくりと立ち上がった。
フラつく体を支えながら資料室を出る為、扉に向かい廊下に出ると俺は振り返り様、資料室の中に目を向ける。
そこには普段の傲慢な態度は何処へやら、頭を抱え小さく丸まる勝負に負けた情けないDomの姿があった。
俺はそれを無言で見遣った後、体育教師に何も告げず、資料室の扉を閉めたのであった。
俺の肩に腕を回し、何度か崩れ落ちそうになる体を支えながら、ようやっと辿り着いたのは生徒会室で。
保健室でも良かったのだけれど、あんな事があったのだ。少しでも漣が落ち着ける場所の方が良いだろうと思って連れて来たのだけれど。
誰もいない生徒会室に入り、入り口の扉に鍵を掛けた所で堪えきれなかったのか、漣がその場に座り込んだ。
「だ、大丈夫か…?」
「…ぅ、」
疲労感を滲ませるその顔に限界が近いと悟ると俺は室内を見渡し、近くにあった革張りの
ソファーに腰掛ける。
ソファーにまで向かう間、背中に漣の視線を感じていたから、漣もある程度は何をするのか予想が付いているだろう、と見当を付けて漣の方に視線を向けた。
「会長さん」
さあ、限界ギリギリまで頑張ったsubには褒美をあげなければ。
「Come」
ごくり、と漣が唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえた。
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