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OLYMPUS QUEST Ⅲ ~神々の復活~
決戦
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光から飛び出してきたのは、オリンポスの神々だった。しかも、その姿は引退直前の弱々しい感じではない。身長も3メートルを超え、各々の神器を持つ、現役真っただ中の堂々とした立ち姿だ。
「なるほど。確かに、この時間軸で用を足した後に元の時間軸に戻せば、タイムパラドックスは起こりません」
イザナミが呟く。と、同時にアテナが声を上げた。
「計算が完了しました! 現在のカオスの暴走から考えて、我々が勝利する確率は約1%。全力を尽くさなければ勝てないでしょう。ウォームアップの時間はありませんよ!」
「上等じゃないか。久々に本気を出せる」
ゼウスが右手に持ったケラウノスを前に突き出す構えを取る。一瞬、動いただろうか。ケラウノスの先端から鋭い稲妻がカオスに向かって走り、闇の空間を照らす。
それが引鉄となった。
デュオニュソスとデメテルが、何かを持ち上げるような仕草を取る。すると、何もない大地から葡萄や蔦などの植物が一斉に生え、闇の塊を囲う。
「ふむ──少々暗いね」
「私も手伝いましょう」
アポロンとヘーメラが上空に手をかざすと、天に大きな光球が出現し、カオスの空間を明るく照らした。ゼウスの稲妻とは違い、光り続けるものだ。
「いざ、参る!」
唯一馬に乗っている男神──アレスが槍を掲げ、カオスに突進する。
彼は戦の神だ。この中ではゼウスをも凌駕する戦闘力を持っている。そんな神の攻撃……想像するだけで、背筋が泡立つ。
一直線にカオスへ走るアレス。その馬の足跡から、騎馬隊が出現する。その数は百を軽く凌駕しているだろう。
「拙いですね……彼らならカオスを殺しかねない。空間そのものでもあるカオスは居なくてはならない存在です」
イザナミの呟きを聞いて、桃色の弓を持った女神が一歩前に出る。
「私の愛の加護を!」
解き放たれた矢が放物線の軌跡を描く。彼女はアフロディテなのだろう。
「苦悩の神は私の愛で護られました。これで、どれだけの苦痛を得ようと召させることは無いでしょう」
……最悪の愛だな。悪意がないのも酷い。
ただ、これで手加減をする必要は無くなった。
「皆さん、本気でお願いします!」
「良いんだな?」
ゼウスがニヤリと笑う。最初とは違い、まるで突くかのようにケラウノスを構える。
そのから火花が散り、光球が溜まる。だがそれは次第に小さくなり、どんどん圧縮されているようだ。
「はあ─────」
点となった光球が放たれる。それは一直線にカオスへ向かい、進んでいく。といっても光の速さなので一瞬な訳だが……
カオスに当たったそれは、大量のプラズマを発生させて爆発した。もしここが地球だったら半分に割れていてもおかしくないような衝撃だ。俺も精神体じゃなかったら、生きていないだろう。
「凄いな……俺がガイアを倒した時を軽く上回ってる。これが神の本気なのか……」
ルーシュが呟く。彼も同じように感じていたのだろう。
しかし、驚くのはそれだけで済まなかった。
「構え! 進め!!」
アレスが叫ぶ。
騎馬隊と走るうちに彼は馬と共に巨大化し、カオスの元へ着く頃には軽く10メートルを軽く超えているようだった。強大な破壊力を持った神は自らを凌駕する神に立ち向かう。これなら、もしかすると──
「イ……たィ…………」
闇が爆ぜた。アレスが分解され、吹き飛ぶ。一体何が……
空間が静寂に支配される。
「俺が治す!」
沈黙を打ち消すようにルーシュが叫んだ。彼の能力ならアレスの時間を戻すことで復活も可能だろう。
「駄目だ」
静かに、しかし力強くゼウスが言った。
「貴様も時の神ならば解って居るだろう。傷こそ治せど生命を蘇らせるのは禁忌に触れることになる」
「それはそうだけど! だけど……」
「諦めろ。戦士は死すべき時に死ぬ。それが真理なのだ」
どちらも間違ってない。ただ、感情か理性かの絶対的な溝があるだけだ。
──と、そのとき。俺は天才的な作戦を思いついてしまった。もし、暴走していたルーシュが俺とイザナギに撃ってきた弾を、未来ではなく過去への動きに出来たら、カオスは暴走以前に戻るのではないか!
「無駄だな」
この案を話すと、ゼウスは一蹴した。
「貴様は人間だが、多少はものを考えられるだろう? 仮に戻ったとして、それはまた時間を辿り始める。そうすれば又種が発芽するのも時間の問題だ」
「確かにカオスは時間を辿ります。しかし、種を植え付けられる前まで戻せば、この時代に種を植える者はいません。そして、カオスが存在するのはこの時間です」
「……クロノス、できるのか?」
「空間を戻すなんて、初めてだけどね。不可能とは言いきれないよ」
決定だ。ルーシュが力を貯め始める。
半透明の球体が大きくなり、直径が1mを超える。だがそれでも彼は力を放たず、手元に溜め込んでいる。
2m……3m……大きくなるにつれて、ルーシュの身体がブレていく。彼自身も彼の作る時間流に影響されるのか──俺には分からない。
「はあああああ!!!」
時間が、飛んでいく。
「なるほど。確かに、この時間軸で用を足した後に元の時間軸に戻せば、タイムパラドックスは起こりません」
イザナミが呟く。と、同時にアテナが声を上げた。
「計算が完了しました! 現在のカオスの暴走から考えて、我々が勝利する確率は約1%。全力を尽くさなければ勝てないでしょう。ウォームアップの時間はありませんよ!」
「上等じゃないか。久々に本気を出せる」
ゼウスが右手に持ったケラウノスを前に突き出す構えを取る。一瞬、動いただろうか。ケラウノスの先端から鋭い稲妻がカオスに向かって走り、闇の空間を照らす。
それが引鉄となった。
デュオニュソスとデメテルが、何かを持ち上げるような仕草を取る。すると、何もない大地から葡萄や蔦などの植物が一斉に生え、闇の塊を囲う。
「ふむ──少々暗いね」
「私も手伝いましょう」
アポロンとヘーメラが上空に手をかざすと、天に大きな光球が出現し、カオスの空間を明るく照らした。ゼウスの稲妻とは違い、光り続けるものだ。
「いざ、参る!」
唯一馬に乗っている男神──アレスが槍を掲げ、カオスに突進する。
彼は戦の神だ。この中ではゼウスをも凌駕する戦闘力を持っている。そんな神の攻撃……想像するだけで、背筋が泡立つ。
一直線にカオスへ走るアレス。その馬の足跡から、騎馬隊が出現する。その数は百を軽く凌駕しているだろう。
「拙いですね……彼らならカオスを殺しかねない。空間そのものでもあるカオスは居なくてはならない存在です」
イザナミの呟きを聞いて、桃色の弓を持った女神が一歩前に出る。
「私の愛の加護を!」
解き放たれた矢が放物線の軌跡を描く。彼女はアフロディテなのだろう。
「苦悩の神は私の愛で護られました。これで、どれだけの苦痛を得ようと召させることは無いでしょう」
……最悪の愛だな。悪意がないのも酷い。
ただ、これで手加減をする必要は無くなった。
「皆さん、本気でお願いします!」
「良いんだな?」
ゼウスがニヤリと笑う。最初とは違い、まるで突くかのようにケラウノスを構える。
そのから火花が散り、光球が溜まる。だがそれは次第に小さくなり、どんどん圧縮されているようだ。
「はあ─────」
点となった光球が放たれる。それは一直線にカオスへ向かい、進んでいく。といっても光の速さなので一瞬な訳だが……
カオスに当たったそれは、大量のプラズマを発生させて爆発した。もしここが地球だったら半分に割れていてもおかしくないような衝撃だ。俺も精神体じゃなかったら、生きていないだろう。
「凄いな……俺がガイアを倒した時を軽く上回ってる。これが神の本気なのか……」
ルーシュが呟く。彼も同じように感じていたのだろう。
しかし、驚くのはそれだけで済まなかった。
「構え! 進め!!」
アレスが叫ぶ。
騎馬隊と走るうちに彼は馬と共に巨大化し、カオスの元へ着く頃には軽く10メートルを軽く超えているようだった。強大な破壊力を持った神は自らを凌駕する神に立ち向かう。これなら、もしかすると──
「イ……たィ…………」
闇が爆ぜた。アレスが分解され、吹き飛ぶ。一体何が……
空間が静寂に支配される。
「俺が治す!」
沈黙を打ち消すようにルーシュが叫んだ。彼の能力ならアレスの時間を戻すことで復活も可能だろう。
「駄目だ」
静かに、しかし力強くゼウスが言った。
「貴様も時の神ならば解って居るだろう。傷こそ治せど生命を蘇らせるのは禁忌に触れることになる」
「それはそうだけど! だけど……」
「諦めろ。戦士は死すべき時に死ぬ。それが真理なのだ」
どちらも間違ってない。ただ、感情か理性かの絶対的な溝があるだけだ。
──と、そのとき。俺は天才的な作戦を思いついてしまった。もし、暴走していたルーシュが俺とイザナギに撃ってきた弾を、未来ではなく過去への動きに出来たら、カオスは暴走以前に戻るのではないか!
「無駄だな」
この案を話すと、ゼウスは一蹴した。
「貴様は人間だが、多少はものを考えられるだろう? 仮に戻ったとして、それはまた時間を辿り始める。そうすれば又種が発芽するのも時間の問題だ」
「確かにカオスは時間を辿ります。しかし、種を植え付けられる前まで戻せば、この時代に種を植える者はいません。そして、カオスが存在するのはこの時間です」
「……クロノス、できるのか?」
「空間を戻すなんて、初めてだけどね。不可能とは言いきれないよ」
決定だ。ルーシュが力を貯め始める。
半透明の球体が大きくなり、直径が1mを超える。だがそれでも彼は力を放たず、手元に溜め込んでいる。
2m……3m……大きくなるにつれて、ルーシュの身体がブレていく。彼自身も彼の作る時間流に影響されるのか──俺には分からない。
「はあああああ!!!」
時間が、飛んでいく。
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