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第12話-1 悪役令嬢は終わりにしましょう。
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カーテンから薄く朝日が差し込む。
寒い。季節が冬だということを痛感させられる。
布団にくるまっていても寒い。更に体を丸くして寒さから逃げようとする。
「ラティア・・・おはよう。
そろそろ起きないといけない時間だ。」
「ん・・・寒いからもう少しだけ・・・まだ寝させて。」
「仕方ないな。あと五分なら寝てていいよ。」
後ろからぎゅっと抱きしめられた。
ん??後ろから?温かい?
私は思わず後ろに顔を向けた。
金色の髪の美形が目の前にいた。
「やっぱり起きるの?」
いつもの少し前髪を分けている殿下ではなくそのまま降ろされていた。
嫌だ!朝からこんな艶めかしい姿が目の前にあるのは困ります!
「ラティア・・・」
朝から甘い声で私を呼ばないでください!
それでなくても状況判断に少し時間をいただきたいとおもっているところです。
「お、おはようございます!」
「朝から寝ぼけたラティアを見れるのはいいね。」
布団の上で頬杖をついて私を見ていた。
「あの・・・。」
「心配しなくても大丈夫だよ。君はすぐに寝てしまったからね。」
あの後、ベッドに二人腰掛けて私は自分の気持ちを話した。
「エディシス様…記憶のない五年間でまだわからないことがあります。確かにエディシス様と一緒に居たいとは言いましたが、あの…ですから…少し待って欲しいのですが…」
エディシス様はふっと微かに笑った。
「今日はこのまま抱きしめて寝ていい。
君の気持ちがきちんと整理できるまで待つよ。
だからこれ以上はしないから。安心して。
こうしているだけでいい。おやすみ。」
と言われた。
そうだ、そう言われて安心して寝てしまった。
温かかったのは殿下にずっと抱きしめられていたからなのね。
「エディシスフォード殿下、起きておられますか?」
「ハーデスか・・・。すまない。朝食は部屋に持ってきてくれないか?頼んだ。」
「ラティア、私は少し出てくる。着替えておいで。一緒に朝食を取ろうか。」
***
「で、どうだった?」
王族用の風呂に来た。毎日朝風呂に入りに来る。まあ習慣だ。
ハーデスが隣に控えている。
「ってなんでお前に私の感想を述べなければならないのだ。」
「別に私は単にラティディア様がどう返事をしたかお聞きしたかっただけです。」
「だから・・・。」
「えーーー?寝ただけ?」
「声が大きい!」
「お前はもっとがっつくと思ったがな・・・。」
「人を何だと思ってるんだ。」
「どうするんだ?」
「ラティアの気持ちがちゃんとついてきてからにしたんだ。
彼女はまだ記憶を無くしてから1か月だ。私に対してもまだ完全には心を開いてはいない。」
「そんなにのんびりしていると記憶戻しちゃうよ。」
「それでも、いい。天にまかせるよ。でも、やはりラティアには私を好きになってもらいたいんだ。」
「結構純情路線なんですね・・・。ひとまずなるようにしかなりませんね。
あなたがラティディア様を大事にする気持ちが早く届いたらいいのに・・・。」
***
「で、お・嬢・様。いかがでした?初めては」
「あ、いや・・・カーラ何を突然・・・。」
「だって興味あるじゃないですか?」
「単に抱きしめられて寝ただけよ。」
「ほらほら照れないでください。」
「本当のことだから!」
「そんな一晩ずっと男女が同じ寝所で何もないわけないですよね。お嬢様。ふふふ」
「だからキスしかしてないって!本当だから!!!」
「そうなんですか!王太子殿下って見かけより奥手なんですか?」
朝ごはんを食べてから図書館に行った。
恥ずかしかったがエディシス様の仕事が気になったので執務室に行った。
「エディシスフォード殿下、ラティディアです。」
私は返事を待って部屋に入った。
机を見た途端私は唖然とした。
昨日あんなに頑張って無くしたはずの書類がまた山積みになっている。
「ああ、ラティア。ありがとう。助かるよ。今日も頼む。」
「…またこんなにあるんですか…。はぁ…。」
「ラティディア様、お願いします。何かこの頃書類の処理が早くて間違いの指摘がわかりやすいとのことで陛下の他の仕事も回ってきてしまいました。」
「私のせいでしょうか?」
「かもね・・・。」
「ハーデス!余計なことをラティアに言うな!
だいたいお前が仕事もらってくるからだろ!」
「だってできる男なんだろ?」
「私の休みくらい考えろ!お前は私の側近じゃないのか?」
「ラティディア様、早くこいつから王太子の地位を奪ってください。私はあなたなら心からついていきたいと思います。」
「心から?ラティアは私のものだ。」
「だから恋愛感情じゃなくて、主君として!」
「駄目だ!ラティアの側にはいくな!1メートルは離れろ!」
「それじゃ仕事できないでしょ。やだやだこの嫉妬深い男は!」
何だか楽しそうだ。
ここにいて私いいのかな?
この人の隣にいたいな。
私は優しく微笑んだ。
昨日彼は自分とのことをもう一度考えて欲しいと言った。
そして私のことをちゃんと大事にしてくれていた。
ちゃんと考えてくれた。
それで十分じゃない?
もう過去の事はなかったことにしよう。
今のこの人を信じていこう。
雰囲気に流されてあんなことになってしまったけど
私の居場所がここに作られているんだと感じた。
記憶が戻らなくても私はここでやっていこう。
この人の側にいよう。
この人は私を優しく見つめてくれている。
大丈夫だ。この人の隣にいよう。
そう本当に許してもらわなけばいけないのは私の方だ。
5年間に何があったかは分からない。
だけど彼の信頼を無くしたのは私だから。
しかし少し気になるところがある。
少し気持ちを整理する時間は頂戴ね。
あなたを好きだと言うのはもう少し後・・・。
「エディシス様、仕事しましょうか。
早く片付けてゆっくりお茶でもしましょう。」
寒い。季節が冬だということを痛感させられる。
布団にくるまっていても寒い。更に体を丸くして寒さから逃げようとする。
「ラティア・・・おはよう。
そろそろ起きないといけない時間だ。」
「ん・・・寒いからもう少しだけ・・・まだ寝させて。」
「仕方ないな。あと五分なら寝てていいよ。」
後ろからぎゅっと抱きしめられた。
ん??後ろから?温かい?
私は思わず後ろに顔を向けた。
金色の髪の美形が目の前にいた。
「やっぱり起きるの?」
いつもの少し前髪を分けている殿下ではなくそのまま降ろされていた。
嫌だ!朝からこんな艶めかしい姿が目の前にあるのは困ります!
「ラティア・・・」
朝から甘い声で私を呼ばないでください!
それでなくても状況判断に少し時間をいただきたいとおもっているところです。
「お、おはようございます!」
「朝から寝ぼけたラティアを見れるのはいいね。」
布団の上で頬杖をついて私を見ていた。
「あの・・・。」
「心配しなくても大丈夫だよ。君はすぐに寝てしまったからね。」
あの後、ベッドに二人腰掛けて私は自分の気持ちを話した。
「エディシス様…記憶のない五年間でまだわからないことがあります。確かにエディシス様と一緒に居たいとは言いましたが、あの…ですから…少し待って欲しいのですが…」
エディシス様はふっと微かに笑った。
「今日はこのまま抱きしめて寝ていい。
君の気持ちがきちんと整理できるまで待つよ。
だからこれ以上はしないから。安心して。
こうしているだけでいい。おやすみ。」
と言われた。
そうだ、そう言われて安心して寝てしまった。
温かかったのは殿下にずっと抱きしめられていたからなのね。
「エディシスフォード殿下、起きておられますか?」
「ハーデスか・・・。すまない。朝食は部屋に持ってきてくれないか?頼んだ。」
「ラティア、私は少し出てくる。着替えておいで。一緒に朝食を取ろうか。」
***
「で、どうだった?」
王族用の風呂に来た。毎日朝風呂に入りに来る。まあ習慣だ。
ハーデスが隣に控えている。
「ってなんでお前に私の感想を述べなければならないのだ。」
「別に私は単にラティディア様がどう返事をしたかお聞きしたかっただけです。」
「だから・・・。」
「えーーー?寝ただけ?」
「声が大きい!」
「お前はもっとがっつくと思ったがな・・・。」
「人を何だと思ってるんだ。」
「どうするんだ?」
「ラティアの気持ちがちゃんとついてきてからにしたんだ。
彼女はまだ記憶を無くしてから1か月だ。私に対してもまだ完全には心を開いてはいない。」
「そんなにのんびりしていると記憶戻しちゃうよ。」
「それでも、いい。天にまかせるよ。でも、やはりラティアには私を好きになってもらいたいんだ。」
「結構純情路線なんですね・・・。ひとまずなるようにしかなりませんね。
あなたがラティディア様を大事にする気持ちが早く届いたらいいのに・・・。」
***
「で、お・嬢・様。いかがでした?初めては」
「あ、いや・・・カーラ何を突然・・・。」
「だって興味あるじゃないですか?」
「単に抱きしめられて寝ただけよ。」
「ほらほら照れないでください。」
「本当のことだから!」
「そんな一晩ずっと男女が同じ寝所で何もないわけないですよね。お嬢様。ふふふ」
「だからキスしかしてないって!本当だから!!!」
「そうなんですか!王太子殿下って見かけより奥手なんですか?」
朝ごはんを食べてから図書館に行った。
恥ずかしかったがエディシス様の仕事が気になったので執務室に行った。
「エディシスフォード殿下、ラティディアです。」
私は返事を待って部屋に入った。
机を見た途端私は唖然とした。
昨日あんなに頑張って無くしたはずの書類がまた山積みになっている。
「ああ、ラティア。ありがとう。助かるよ。今日も頼む。」
「…またこんなにあるんですか…。はぁ…。」
「ラティディア様、お願いします。何かこの頃書類の処理が早くて間違いの指摘がわかりやすいとのことで陛下の他の仕事も回ってきてしまいました。」
「私のせいでしょうか?」
「かもね・・・。」
「ハーデス!余計なことをラティアに言うな!
だいたいお前が仕事もらってくるからだろ!」
「だってできる男なんだろ?」
「私の休みくらい考えろ!お前は私の側近じゃないのか?」
「ラティディア様、早くこいつから王太子の地位を奪ってください。私はあなたなら心からついていきたいと思います。」
「心から?ラティアは私のものだ。」
「だから恋愛感情じゃなくて、主君として!」
「駄目だ!ラティアの側にはいくな!1メートルは離れろ!」
「それじゃ仕事できないでしょ。やだやだこの嫉妬深い男は!」
何だか楽しそうだ。
ここにいて私いいのかな?
この人の隣にいたいな。
私は優しく微笑んだ。
昨日彼は自分とのことをもう一度考えて欲しいと言った。
そして私のことをちゃんと大事にしてくれていた。
ちゃんと考えてくれた。
それで十分じゃない?
もう過去の事はなかったことにしよう。
今のこの人を信じていこう。
雰囲気に流されてあんなことになってしまったけど
私の居場所がここに作られているんだと感じた。
記憶が戻らなくても私はここでやっていこう。
この人の側にいよう。
この人は私を優しく見つめてくれている。
大丈夫だ。この人の隣にいよう。
そう本当に許してもらわなけばいけないのは私の方だ。
5年間に何があったかは分からない。
だけど彼の信頼を無くしたのは私だから。
しかし少し気になるところがある。
少し気持ちを整理する時間は頂戴ね。
あなたを好きだと言うのはもう少し後・・・。
「エディシス様、仕事しましょうか。
早く片付けてゆっくりお茶でもしましょう。」
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