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第8話-2 婚約破棄しようとしていたのはだあれ。

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「ああ、ラティディア。この書類に目を通しておいてくれないか。今度の視察の資料だ。」
「はい。」

今日もエディシスフォード殿下の机にはたくさんの書類がある。
お父様の仕業だわ。全く大人気ないんだから。

「あ、ラティディア。今日仕事がある程度片付いたら街にでも行かないか?」
「えっ!いいんですか?」

…しかし片付くんですか?

「君は出かけるための服はもちろん鞄とか靴ももってないだろう…」
「持っていないというか・・・」
あるにはあるのですが残念ながら好みに合いません・・・。

その街に行く目的に少しがっくりした。
食べ歩き!…したかったです。
しかし街にいける。それだけでも嬉しい。
早く仕事を終わらせよう!!

「しかし・・・また爆発に巻き込まれないでしょうか・・・」
「そんなに行くたびに起こらないよ。
あっ、ラティディアは爆発を呼ぶ体質だったね。あるかもね。」

そんな体質欲しくないです!

街には行きたい!
全力で頑張らせていただきます。

「ってペース早くないか?」
「だって街ですよ!記憶を無くしてからは私は王宮から一歩もでていないんですよ!」

猛スピードだ。
早く仕事が終わった。
まだお昼前だ!やれば出来る!!

殿下はヘトヘトだ。

「お疲れ…ラティディア…。ふうっ。じゃあ着替えておいで、後で、会おう…。はぁ・・・。」

大丈夫か?エディシスフォード殿下へのダメージが大きいようだ。
ちょっと頑張りすぎましたか? 

中庭にある馬車の乗り場に着いたらもうエディシスフォード殿下は待っていた。
「すみません。遅くなりました。」
「あ、へっ?」
記憶を失くして3週間。いい加減に驚くのは終わりにしてください。
少し寒いのでそれなりの服を着たかったのですが残念ながらコートなどは私の意に反するものしかありませんでした。
仕方ないのでいつもの部屋着のみです。
「そうか・・・気が付かなくて申し訳ない。先にコートを買いに行こう。」
「・・・申し訳ありません。できればそれでお願いいたします。」

風邪をひくのは嫌だ。
何やら殿下がハーデス様に耳打ちしている。
「寒いから早く馬車に乗ろう。」
「ありがとうございます。」
寒さに耐えているのが分かっていただけましたでしょうか?
馬車の中も風がないだけで別段温かくないです。
するとハーデス様が来ていたコートを渡してくれた。
「へっ?ハーデス様!それはいけません。あなたが寒くなってしまします。」
「エディシスの命令だからね。じゃあラティディア様はこれを受け取らずにエディシスのを貸してもらうんだね。」
「それは無理です!」
王太子殿下を追いはぎするなんてできません!
「大丈夫。私は他のものを今から取ってくるから。その後追いかけるから安心して。」
「はい・・・ありがとうございます。」

早くコートを買わなきゃいけない・・・。

馬車が走り出した。
ゆっくり揺れる馬車が心地いい。
さすが王族用の馬車です。たかが馬車ですが乗っていても下にひくクッションがいらない。
お尻がいたくなりません!

しかしこの頃の王太子殿下はどうしたんだろう。
優しすぎる。
私との婚約はどうなるのだろう。
全く何も言わない。
ダリア様とはどうなっているのだろう。

馬車の窓から頬杖をついて窓の外を見ているエディシスフィード殿下を見る。
金色の髪が風になびく。なびくたびにキラキラ光っている。
本当に綺麗な金髪だ。
さらにこげ茶の瞳の周りは少し明るい茶色なんだ。
睫毛も長い。手だって綺麗だ。
スッとしたあごのライン。
何でこんなにいいところばかり持っているんだ。
見惚れてしまう。

「ラティディア、何を考えている。」
「殿下がすごく美しいなと思って見惚れていました。」
「はっ?」

しまった!本人目の前にして思ったことを口に出してなにしてるんだ私。
慌てて口を手で覆う。
「ラティディアの方が綺麗だよ、って言うか可愛いよ。」
「はっ?」
なんなんだ。スラーッとさりげなく言ったぞ。

この会話は。はやく切り上げよう。
「早く着かないかなって…。はははっ。」

何とかコートをゲットして
服も視察用、普段着、小物も少々。靴もブーツを買って早速履いている。
ようやくハーデス様の上着を返すことができた。

「本当にこうやってキチンとすると銀の髪に映えて綺麗だ。」
・・・エディシスフォード殿下・・もうその褒め殺しはおやめください。
有頂天になってしまいます。
しかし本当に5年間の私には感謝です!
何でこんなにスタイルいいんだろう。フフフッ。

買い物もある程度終わり、本屋にも寄ってもらった。
少しお茶もした。
結構いろいろ連れまわした?連れまわされた。

もう夕方だ。少し寒くなってきた。
少し歩こう。
「はい?」
馬車が止まった。少し高台の見晴らしの良い場所だった。
「ほら。」
今日は一日馬車から降りる時は必ず殿下が手を差し出してくれた。

日がかなり傾いていた。
「ここから街が見渡せるんですね。」
「ああ。」
目下には街が広がる。ちょうど後ろにある夕日の光によってオレンジ色に照らされている。
「すごい!」
すごく綺麗だ。
「よくこんな場所知っていましたね。よく来るんですか?」
「母に連れてきてもらったことがあるんだ。王太子としてやっていけるか不安になる時によくくるんだ。」
「不安?」
「自分が本当に王太子…国王なんかになっていいのかなんて思うときばかりだ。ジェイデンの方がいいんじゃないかとか考えてしまったりもする。だからここにきて考えるんだ。」
私と殿下の影が長く伸びていた。

そんな事考えていたんだ。
普段あまりそんな事見せない。
王太子って大変なんだ。

エディシスフォード殿下はずっと夕陽に染まる街を見ていた。
「ここから街を見ると、この国を豊かな人々が安心して笑って暮らせるようにするんだっていつも自分を奮いたたせるんだ。私は負けてはいけない…。頑張らなくてはいけないんだ…って自分に言い続ける。」

エディシスフォード殿下が私の方を向いた。
夕陽が彼を照らした。

「エディシスフォード殿下は頑張っていますよ。大丈夫です。殿下はちゃんと国を治めていけます。自信を持ってください。」

「少し前は逃げてばかりだった。でもわかったんだ。逃げてばかりではいけない。この国の民に申し訳ない。自分の出来ることをやらないといけない。前に進まなきゃいけないんだ。」

「そうですね。殿下がそう思って頑張っていれば結果はついてくると思います。この国の人があなたに期待をしています。確かに押しつぶされそうになると思いますがハーデス様もいらっしゃいます。他にもあなたを支えてくれる人はたくさんいます。皆さんを信じてください。そして何より自分を信じてください。殿下は出来る人ですよね。」

エディシスフォード殿下はふふっと笑った。
「やっぱりいいね…。」
「ん?」
何がいいんだ?私は首を傾げた。
私を見ている殿下の顔は夕陽のオレンジ色に染まり
金の髪も光輝いている。
もともと顔はかなりいい。すごい美形がそのこげ茶の瞳で私を見つめる。
…耐えられません。
直視はやめてください。

「その支えてくれてる人に君は入ってる?」
「はい、微力ながら私もこの国の民として殿下を支えていくつもりです。」

殿下はまた、ふふっと笑い、街を眺めた。
「そういう意味じゃないんだけどな…」
「何かいいました?」
「あ、いや。さあ戻ろうか。少し遅くなってしまったね。」
殿下は手を差し出した。
夕陽をバックに美形がさらにアップしています。
私は少しドキドキしながらその手に自分の手を置いた。

「お腹空きました!」
「やっぱり君は雰囲気ぶち壊すね。」
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