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その33 秘密の部屋にて ルース視点(2) 

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時計を見た。もう12時を回っていた。
どおりでかなり冷えてきたわけだ。

「何で僕のルートになかなか入れないの?おかげで結構大変だったんだよ。」
『あとで付け足したものだし仕方ないの。プログラム変更がいろいろ大変なのよ。結局隠しモードはバグでなかなか進まなかったし、容量莫大にかかるの。
私がいないとパスワード外れないからプログラム変更できないから絶対に追加オプションは出ない。幻のルートよ。
でも、そのせいだけじゃないわよ。もともとルーズローツルートは殺人、薬、誘拐、人身売買、政治的な陰謀、他国とかの摩擦とか巻きこまれて大変なのよ。それを氷の魔族の件一つで終われたんだから感謝してね!』

は?驚いたけどそんなにあったのか?
まあそれなら仕方ないか。あんな事件何回もあったら精神的に持たない。

「はいはい、でも、せめてわかってたなら教えてくれればよかったのに。」
『あら、あなたにとってはよかったんじゃなくて?愛しのシャーリーからプロポーズされたんだって。』
「は?誰がその情報流してるんだ?」

ザイン家の中しか知らないはずだ。

『あなたのお父様よ。この間の事件の報告をされた人が楽しそうに話されたって呆れながら言ってたわ。』

は??あの親バカっ!!何話して歩いてるんだ。

『どうせ新年あけたら結婚するように手を回してるんでしょう?まあいいじゃない。
あのイベントは起こらなきゃいけないの。あのイベントがなければ王太子がそのままシルバーサの王女と結婚して、彼女を王妃にしてしまうじゃない。確か今朝婚約破棄になったはずよ。』
「情報早いな。ますますザイン情報部に欲しいな。」
『裏モードでシャーロレットが他の攻略対象と結ばれれば悪役令嬢のアインシュバッツ侯爵令嬢が王太子妃になるのよ。
だけど誰かさんが裏から手を回してシルバーサの王女を王太子の婚約者にしてしまうからちょっと困ったわ。
あのくらいのイベントはいいきみだわ。
これで彼女が王太子妃だわ。シャーロレットが王太子ではなくあなたと婚約してくれたおかげで彼女は悪役令嬢にならなかったし、王太子殿下からも嫌われてない。うまくいくものね。』 

「嫌われてないどこか、この頃は気に入られてると思うよ。」
踊り子はツボだったみたいだね。
交流会の付近から彼女もあまり飾ってないというか、かなり話しやすくなったかな。あれが素なんだね。

『私のこともあるし、あの子のこともあったから、シャーロレットにはあなたのルートにどうしても入って欲しかったの。本当によかったわ。』

「僕はまんまとこの世界でも君にうまく動かされたのかな?」 

『そんなことはないけど。あなたがシャーロレットを好きになってくれるかは本当に不安だったわよ。』
「君のゲームなら溺愛なんだろ。心配いらなくない?さっき言ってたじゃないか。」
『それはゲームの中。やっぱりこれは現実なのよ。
あなたも私もシャーロレットもアインシュバッツ侯爵令嬢もみんなこの世界で生きてるの。ダメならそれでよかったんだけどね。
シャーロレットを婚約者にしたって聞いた時にはうまくいきすぎて驚いたけど、あなたがシャーロレットを好きになってくれたおかげでみんなハッピーエンド。』

「一人を除いてね。ゲームがきっかけだろうがシャーリーを好きなことには変わりないよ。どんな始まりでも今は彼女が愛しい。抱きしめて離したくないからね。シャーリーは喜んでいると思ってるけど……。さっきだって蕩けそうな顔して…可愛い。」

彼女が呆れたような顔をした。
まあいつものことだ。
『はいはい、まあせいぜい可愛がってあげてね。あなた達が幸せならいいわ。あの子は自業自得よ。昔から自己中心で思い込みが激しくてね。』

昔から??
話の端々から少し気づいてはいたがやはりあいつのことは転生前から知っていたんだ。

「まあ君も頑張れよ。せっかく隣国の王子の婚約者に決まりかけていた令嬢を……これは言っちゃいけないね。」
『そうね。ああ、あと約束忘れないでね。』
「わかってる。この先君の国と戦争になるのを和平すればいいんだろ?」
「将来、あなたが戦争を推進して攻めてくるのよ。するとせっかく幸せに暮らしたのに、せっかく国王になった旦那は死ぬし、子供は連れてかれるし、国は滅びるわで大変なの。そんなのごめんだわ。辞めてね。」
「何でそんな後まで設定してあるんだ。大丈夫。恩は返すよ。」

彼女もまた魔法石の向こうで大きく深呼吸をした。

『しかし長かったけど短かったわね。』
「ああ、ようやく終わりだ。」
『本来なら15歳の学校入学から始まって18歳の卒業で終わる話なんだけどね。16歳で終わる。
私は隠れキャラの一推し隣国王太子を手に入れた。あの子も一押しレオンハルトの王太子妃になれた。シャーロレットも溺愛してくれる愛しの伴侶がいる。全て良し。よかったわ、あの時あなたに話をして。』
「びっくりしたよ。11歳の時、同じ歳くらいのの女の子が訪ねて来たらと思ったら突然あなたは監禁溺愛絶倫エンドなんです、って言うんだから。」
『いや、忘れて。汚点だわ。確かになかったわ。』
「初めは何いってるんだ?としか思わなかったけど、シャーリーに話を聞いていく内に信じれたよ。」
『それから早かったわね。』
「だってゲームが始まるのは15歳だろ?始まってしまう前にシャーリーを自分のものにしないとね。」
『あなたが急ぐからいろいろ大変だったんだからね。』
「まあ結果的にはシャーリーが僕を好きだって思ってくれたからよかったんだけど、駄目ならやっぱり監禁エンドだったかもね。あ、でも確かに今でもそういうことになるのかな?だってこれからは彼女の自由は僕の手の中にしかないんだしね。」
『やだわ、これまでもそうだったじゃない?彼女はいつだってあなたの手の中にいた。彼女にはあなた一択しかなかったわよ。』

僕は再び水を飲んだ。
シャーリーをチラッと見たが大丈夫、気持ちよさそうに寝ている。

「ああ、そういえば忘れてた最後に5つ聞きたいことがあるんだ。」
『5つも?』
「これでも結構厳選して絞ったんだけどな。」
『簡単なのにしてよね。』

彼女は面倒くさそうな顔をしていた。

一つ目。
「アイザックは正ルートしか出てこないって言ってたよ?何で出てきたの?」
『あら、やだ。あの子が言ったのかしら?』
「君の仕業なんだね。」
『あら、何で分かったの?やだわ。だって王太子の婚約を解消する為にはこのイベントを使うしかなかったのよ。やはりあの子には幸せになってもらいたいからね。正妃がいる側妃なんて立ち位置は嫌でしょう。せっかく元ヒロインがイベントを起こしてくれたんだから使わなきゃね。』
「じゃあアイザックにルピアの存在を教えたのはなぜ?アイザックだけでよくなかった?」
『もともとあの子がシルバーサにキルナスの森で隠れ住んでいる氷の魔族の情報を闇の商人に流すから収集がつかなくなっちゃたのよ。当然シルバーサ王国はあれだけの情報を持つ彼女を手に入れようとしていたからね。彼女がシルバーサの手に渡ればこの国はもちろんダマガランの国も平和ではいられなかったでしょうね。だから彼女には本当は消えてほしかったの。今後はちゃんと監視をしておいてね。』
「父上にはいっておくよ。」

二つ目。
「どうやって隣国の王子を落としたんだ?接点あった?」
『闇討ちかな。』
「は??留学した時にか?よく会えたね。留学中は王族居住区域にいたんだよね?」
『いやね。許可書があったり、顔パスで入れる人だっているのよ。』
「…いるんだ。あ、あいつか。やはり君を隣国に手放すのは痛いな。こっちの情報ダダ漏れじゃないか。ふうっ…お手柔らかに頼む。じゃあ学校で放課後に会っていたのはやはり君か。」
『だって王宮内より学校の方が会うの楽でしょ?』
「はぁ…ったく、君は本当に自由だな。敵わない。」

三つ目。
「王太子とルキシス副団長の歳は設定と違うんだ?本来なら2つしか違わないはずだろ?」
『それは私にもわからないの。多分私たちが転生したことでゆがみが起きてしまったんじゃないのかな?おかげで最初からここはゲームの世界とは違うんだと思えたからよかったわ。次は?』

四つ目。
「なんで君たち四人なんだ?何か接点でもあったのか?」
『難しいところついてくるのね。三人にはゲームをしてたという共通点があるし、何らかの繋がりがあったわ。しかしシャーリーだけわからないの。なぜゲームもしていない彼女が転生したのか・・。でもひとつだけ気になることはあるの。私たちの前世の母も何か関係してそうなのよね。憶測でしかなくて…。まあ私も答えを教えて欲しいくらいよ。知りたいとは思うけど解けない謎が一つや2つくらいあってもいいんじゃないの?』

彼女達の前世の母親…。
もし彼女も転生してたとしたら?
すとんと僕の中に答えが入ってきた。
あー、そういうことか。
「それを聞いて何も変わるわけじゃないからいいや。」

五個目。
『最後は?』
「妹さんには会わないのか?図書館であった時、彼女は気づかなかったようだが…。」
『いいのよ。そのうち会えるわ。』
「言わなくてもいいのか?」
『あら私の妹を見くびらないで。多分わかっているわよ。
今は会わなくても大丈夫。今はね。これからも妹をよろしくね。ああ、あなたには義理の姉かしら?私の方が年下なのに姉だって言ったら変な感じ。』

彼女は穏やかな笑顔をしていた。今までいろいろ気を張っていたのだと思うがようやく終わったって感じの顔だった。
少し年相応に見えた。

『今までありがとう。』
「こちらこそ。せいぜい幸せにね。」
『あ、そうそう忘れていたわ。一つお願いあるの。』
「何だ?」
『シャーリー様と通信したいから通信用の魔法石を用意できるかしら。』
僕は目を伏せて答えた。

「ああ、わかった。これからも仲良くしてやってくれ。」
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