オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ

文字の大きさ
上 下
90 / 120

その31 温室にて

しおりを挟む
頭がスッキリしてる。
ん~と手を上に上げて伸びた。
窓から光が入ってくる。朝?
いやいや太陽が割と高くまで登っていた。昼が近いみたいだ。

昨日はいろいろあった。
疲れていたから朝早く起きてからまた寝てしまったんだわ。
あら?まだルースの部屋じゃない?
ずっとルースのベッドを占領してるの!

「シャーリー?起きた?」

扉を開けてルースが入ってきた。

「今、君の家から着替えが届いたよ。よく寝れた?もう昼だよ。
まあ疲れていたから仕方ないけど。結局朝もご飯も食べてないし、お風呂も入ってないよ。
一応魔法はかけたからベタベタしてないと思うけど。
先にお風呂に入るかい?ゆっくり湯船に浸かって疲れを取るといいよ。」

「ええ……そうね。あ、ありがとう…。」

確かにさらりとはしてるし服も着替えて…ん?

「サンドラに来てもらってるから何かあれば呼ぶといいよ。
今呼んだ方がいい?あ、着替えさせたのはサンドラだから安心して。」

先に言われた。

「ルース…ごめんなさい…。私ずっとベッド使ってて…」
「気にしないで。僕のベッド広いから大丈夫だよ。」
「へっ?」
「また、あの後シャーリー寝ちゃったんだけど、まだ、朝早かったし、心配だったから一緒に寝てだけど気づかなかった?
シャーリーぐっすりだったからね。」

えっーー!隣で寝てたの!?一緒のベッドで?

あ、でも昨日あんな怖いことがあったけどなんかずっと暖かかったな。
ずっと何かに包まれている…包まれて?つまり隣で抱き…抱きしめてくれていたんだ。
なんだかちょっといいなって思った。

ようやくお風呂にも入り、ようやくお昼ご飯にありつけた。
ちなみに、昨日の朝から久しぶりのご飯だ。なんだか食欲というものを忘れていたが、いざ目の前に並ぶと食べられるものだ。

あれからザイン侯爵様、タチヒア様、エルシーお姉様に丁寧にお礼を言った。
カール兄様には通信用魔法石でお礼を伝えた。

ひとまず今日はまだ、疲れているし、体も見たところは何もないが何かあったら困るのでザイン家でゆっくりしていけばいいと言われた。
エルシーお姉様が治癒魔法が使えるので何か体に変調があればすぐに駆けつけてくれるらしい。

まったり、だらだらした日を過ごす。
太りそうだわ。

今は温室で本を読んでいる。
外は冬だから寒い。
しかしこの温室は光をすごく吸収して暖かい。
気持ちいい。お茶を飲みながらマカロンを頬張る。
至福のひとときだ。

いつの間に揃えたのか分からないが私の服は家から持ってきてもらったものではない。
何だか新しい。
更に新しいリボンが私の髪に揺れている。綺麗な深い水色だ。
まあ当然ザイン家の紋章入りだ。服もこの色に合わせてある。
リボンが先か?服が先か?ん…どっちだろ?
そんなたわいもないことを考えていたらまた寝てしまった。

「シャーリー?起きた?」
どのくらい寝ていただろうか。起きたらルースの顔が上にあった。
どうも膝枕をさせていたようだ。
「ん…おはよ…」
「もう寝ぼけたシャーリー可愛い。」

チュッ。

「って、ん??」

私はルースにキスされた頬を押さえながら彼を見た。
このキス魔め。

「僕が来たのに気づかないくらいよく寝てたから起こせなかったよ。
まだ疲れてるよね。もう怖いのは大丈夫?」
「大丈夫。何だかゆっくりして暖かくて気持ちいいから忘れちゃってたわ。」
「シャーリー。本当にごめんね。」
「ルースのせいじゃないわよ…ん?いやルースのせいだよね。」
ルースがちょっと不貞腐れていた。
「でも、僕自身は何もやってないんだけどな。何でかな?」
「それでもいいじゃない。」
私はルースの肩に頭を置いた。
「そうだね。」
ルースの左手が私の右頬に触れてそのまま軽く上を向かされた。
優しくキスが降ってくる。幸せだ…。

お茶を入れ直して貰って2人で雑談をしていたが突然ルースが爆弾発言をしてきた。

「あと二週間で新年だ。そしたら僕達は16歳だ。すぐに結婚しよう!」
「へっ?!」

今日の早朝にようやく幼なじみから恋人に昇格したばかりですが?
普通そんなにはやく昇進しませんよね?

「いやだな。あんなシチュエーションであんな感動的な事を言われたら我慢できないよ。
ねぇ、シャーリー。覚えてないの?シャーリーからプロポーズしてくれたのに。
嬉しかったけど、やっぱり僕からしたかったな。」

感動的…へっ?!プロポーズ…あっ…たしかに…覚えてます…。

「しかし準備とかがあるしね…すぐにはね。ふふ…」

ルースが少し不服そうな顔をした。

あ~!もう死ぬからいいやって思ってました。
結婚式の誓いの言葉を…確かに言いましたね。
やってしまいました。何故あの時そのセリフを言ってしまったんだ。
一生の不覚…。
まあ、確かにそのつもりはありました。
ルースのことを受け入れるつもりでした。

ルースが私の手を取った。
ニヤリと笑った。

ん?何だこの艶かしルースは?色気出して来た。
嫌!バックにバラが咲く。キラキラしてる。
来るな!だいたいルースの行動は読めてる。
ダメ!!

ルースが立ち上がった。そして私の手をひいた。
私も立ち上がった。

すっとルースが私の前に左足を立てて膝まづいた。

金色のストレートの髪が温室のガラスを通して届く光に照らされた。
碧眼が下から私を見つめる。
その顔に胸が最高潮に張り詰めた。

「シャーロレ…「待って!ちょっと待って!」
「へっ?」
「ルース…少しだけ待って。」

私は叫んだ。

「はぁ!シャーリー今止める?おかしくない?めちゃくちゃいいところだよ?分かる?」
「わかってる。わかってるけど。ごめんなさい。」
「シャーリー!僕は本気なんだよ。何なの!もう!」
「と、に、か、く、サンドラを呼んで。」

ルースは渋々サンドラを呼んだ。
頬が膨れている。かなり拗ねている。

サンドラはすぐにやって来た。
私が持って来て欲しい物があることを一言告げると

「今お持ちします。お待ち下さい!至急とってきます。」

ルースは首を傾げている。

本当に数分でサンドラは四角い箱を持って帰ってきた。
忍者?割と屋敷と距離あるわよ。
さすができる40代。

「お嬢様~。私は本当に嬉しゅうございます。
ヴィクセレーネの家からお着替えと一緒に持ってきておいて本当にようございました。うううっ」
「サンドラなら絶対に持って来てくれてるって思ったわ。やっぱりサンドラがいてくれてよかったわ。ありがとう。ほら泣かないで。」

サンドラは割と涙もろい。

「お嬢様~勿体ないお言葉です。でも嬉しいです。ようやく…あんなことがあり一時はどうなるかと思いましたが…うううっ…」
「何だ?何があったんだ?」

ルースが引いている。
少し大柄のおばさんが泣いているのだ。まあ仕方ないだろう。

「サンドラ本当にありがとう。」
サンドラはハンカチで覆っていた顔をあげてルースに向かって言った。
「ルーズローツ坊っちゃま!くれぐれもくれぐれもお嬢様をお願いいたします。
昨日のようなことがあれば力づくでもお嬢様を連れて帰らせていただきます。
はい!どうぞ。」

バンッ!

「は?」

サンドラはルースに四角い箱を叩きつけて?渡して去っていった。

「何だったんだ?シャーリー、これ。何か渡されたけど…」

私はにっこり微笑んで言った。
「開けて。」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。

玖保ひかる
恋愛
[完結] 北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。 ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。 アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。 森に捨てられてしまったのだ。 南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。 苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。 ※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。 ※完結しました。

リリィ=ブランシュはスローライフを満喫したい!~追放された悪役令嬢ですが、なぜか皇太子の胃袋をつかんでしまったようです~

汐埼ゆたか
恋愛
伯爵令嬢に転生したリリィ=ブランシュは第四王子の許嫁だったが、悪女の汚名を着せられて辺境へ追放された。 ――というのは表向きの話。 婚約破棄大成功! 追放万歳!!  辺境の地で、前世からの夢だったスローライフに胸躍らせるリリィに、新たな出会いが待っていた。 ▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃ リリィ=ブランシュ・ル・ベルナール(19) 第四王子の元許嫁で転生者。 悪女のうわさを流されて、王都から去る   × アル(24) 街でリリィを助けてくれたなぞの剣士 三食おやつ付きで臨時護衛を引き受ける ▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃ 「さすが稀代の悪女様だな」 「手玉に取ってもらおうか」 「お手並み拝見だな」 「あのうわさが本物だとしたら、アルはどうしますか?」 ********** ※他サイトからの転載。 ※表紙はイラストAC様からお借りした画像を加工しております。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

88回の前世で婚約破棄され続けて男性不信になった令嬢〜今世は絶対に婚約しないと誓ったが、なぜか周囲から溺愛されてしまう

冬月光輝
恋愛
 ハウルメルク公爵家の令嬢、クリスティーナには88回分の人生の記憶がある。  前世の88回は全てが男に婚約破棄され、近しい人間に婚約者を掠め取られ、悲惨な最期を遂げていた。  彼女は88回の人生は全て自分磨きに費やしていた。美容から、勉学に運動、果てには剣術や魔術までを最高レベルにまで極めたりした。  それは全て無駄に終わり、クリスは悟った。  “男は必ず裏切る”それなら、いっそ絶対に婚約しないほうが幸せだと。  89回目の人生を婚約しないように努力した彼女は、前世の88回分の経験値が覚醒し、無駄にハイスペックになっていたおかげで、今更モテ期が到来して、周囲から溺愛されるのであった。しかし、男に懲りたクリスはただひたすら迷惑な顔をしていた。

悪役令嬢はSランク冒険者の弟子になりヒロインから逃げ切りたい

恋愛
王太子の婚約者として、常に控えめに振る舞ってきたロッテルマリア。 尽くしていたにも関わらず、悪役令嬢として婚約者破棄、国外追放の憂き目に合う。 でも、実は転生者であるロッテルマリアはチートな魔法を武器に、ギルドに登録して旅に出掛けた。 新米冒険者として日々奮闘中。 のんびり冒険をしていたいのに、ヒロインは私を逃がしてくれない。 自身の目的のためにロッテルマリアを狙ってくる。 王太子はあげるから、私をほっといて~ (旧)悪役令嬢は年下Sランク冒険者の弟子になるを手直ししました。 26話で完結 後日談も書いてます。

転生したので前世の大切な人に会いに行きます!

本見りん
恋愛
 魔法大国と呼ばれるレーベン王国。  家族の中でただ一人弱い治療魔法しか使えなかったセリーナ。ある出来事によりセリーナが王都から離れた領地で暮らす事が決まったその夜、国を揺るがす未曾有の大事件が起きた。  ……その時、眠っていた魔法が覚醒し更に自分の前世を思い出し死んですぐに生まれ変わったと気付いたセリーナ。  自分は今の家族に必要とされていない。……それなら、前世の自分の大切な人達に会いに行こう。そうして『少年セリ』として旅に出た。そこで出会った、大切な仲間たち。  ……しかし一年後祖国レーベン王国では、セリーナの生死についての議論がされる事態になっていたのである。   『小説家になろう』様にも投稿しています。 『誰もが秘密を持っている 〜『治療魔法』使いセリの事情 転生したので前世の大切な人に会いに行きます!〜』 でしたが、今回は大幅にお直しした改稿版となります。楽しんでいただければ幸いです。

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~

浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。 「これってゲームの強制力?!」 周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。 ※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

処理中です...