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その25 木の下にて ルース視点

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彼女は何を考えているのだろう。

無言の時間が過ぎる。雨は酷く打ち付ける。木で雨宿りしているが横から降られては仕方ない。しかし木が大きいからなんとか雨の当たらないところにシャーリーを立たせる。雷がなり続けている。

無言だ。この時間は苦痛だ。きっと言われるんだ。
あの恐怖に満ちた表情をして言うんだ。

怖いからもう僕とは会わないって。

シャーリーが居なくなったらどうしよう。
僕こそ森でひっそり暮らしたいよ。
君が他の攻略対象とハッピーエンドになる姿なんて見たくないからね。
いっそこのままシャーリーを殺して僕も死のうか…。
それともどこかに閉じ込めてずっと僕の腕の中に閉じ込めておこうか。

あ…どうもいけない。またこんなことを考える。
僕は弱い。君に嫌われるのがこんなに怖い。
シャーリー、僕を捨てないで…。

今、君は何を考えている。何で震えているの?僕が怖い?

雷が地面までも震えさせる。稲光は酷くなり何本もの光が同時に空に走る。

シャーリーは雷が大嫌いだ。
本来ならシャーリーに声をかけたがったが躊躇ってしまった。僕は情けない。彼女に言われる一言を何とか聞かないようにしてる。

近くの木に雷が落ちた。ジーザスが興奮したから落ち着かせる。
シャーリーが心配だけど声をかけられない。

「ルース…」

一言、彼女が僕の名前を呼んだ。チラッとシャーリーを見たが表情は戸惑っていた。
怖いと思われるのも嫌だが同情されるのはもっと嫌だと。
彼女が同情などと言う名前で僕に接するくらいならいっそ嫌われてしまいたい。

すぐに下を向いた。

「シャーリー?大丈夫?君は雷は苦手だったよね?」

何とか平然を装ってシャーリーに声をかけてた。
しかし彼女の返事の前に雷鳴が鳴り響きシャーリーは耳をふさいでいる。

続けて目の前の木に稲妻が落ちた。轟音が鳴り響き地面が揺れた。木は燃え上がる。

シャーリーが、飛びついてきた。よっぽど怖かったんだね。

大丈夫だよと言わんばかりにシャーリーの背中に腕を回してそっと抱き寄せた。

「大丈夫かい?」

シャーリーが僕の顔を見た。大丈夫だよと言わんばかりに優しく微笑もうとしたがうまくできなかった。

しばらく時間が経った。雨の峠は少し超えたように思う。

しかしシャーリーは僕にくっついて離れない。
目の前で落雷を見てそらまふ怖いよね。
そろそろ声をかけようかと思ったとき

「ごめんなさい。」

と、彼女の口が開いた。

雷苦手だから仕方ないよ。
でも突然抱きついてこられたからかなりドキドキしてしまった。だってシャーリーの胸が当たって…あ、いや。そんなことを考えてわけではなくて…あ、いや柔らかかったんだけど、少しまた大きくなったかな?って違う…。
こんなシリアスな状況で僕は何を考えているんだか・・・。きっと言われるだろう決別の言葉を待つしかなかった。こんなことでも考えていなければ本当にシャーリーに手をかけていたかもしれない。

しかし彼女は何度も僕に謝る。

「だから大丈夫だって。僕がいるから大丈夫。ひとりじゃないでしょ?」

そう絶対に君を一人にはしないよ。離さないんだ。

また沈黙が続く。そんなに長い間ではなかったがすごく長く感じた。

するとシャーリーがくすっと笑った。

ん?笑うとこ?

「もう大丈夫。あなたが大切なの。あなたの全てを受け入れる。」

彼女の顔からさっきの戸惑いが消えていた。
あまりの予想外の言葉に僕の思考は停止してしまった。

は??今彼女はなんて言った??怖い、嫌いじゃない。

たしかに僕が大切だといった。そしてすべてを受け入れるといった。
何がどう彼女の中で変わったんだ。だってあんなに僕を怖がっていた。
この数十分の間で何が起きたんだ?

「ルースはルース。大好き。」

彼女は何をいっているんだ?理解できない。だって君は僕の赤い目をみたんだろう?それを怖がっていたはずだ。なぜ大好きだなんて今まで言ってくれたことのない僕がずっと欲しかった言葉を言うんだ?

「ルース、大好き。」

空を見上げた。まだ雨はやまない。黒い雲は頭の真上にあり、たまに全体を光らせている。
しかしさっきまで闇にとらわれていら僕の心には光が差し込んできた。暖かい光だ。
なんか目が潤んできたよ。

シャーリー、本当に君は・・・。これ以上僕を好きにさせてどうするんだ。
これ以上どうやって君を好きになればいいんだ。
僕はシャーリーの背中に回している手に力を入れた。
君はまだ僕が何も話していないのにいいんだ。もしかしたらやっぱり怖いと思うかもしれないのに・・・。

「だからそんな顔しないで。何があってもあなたを受け止める。あなたを離したくないから。」

僕はシャーリーを抱きしめて彼女の肩に顔をうずめた。
しばらくそうしていた。彼女を感じていたかった。
彼女もだまって僕の胸に顔を擦り付けていた。

どれだけ時間がたったのだろうか。雨の音が弱くなってきた。雷も遠くなっていた。

シャーリーは僕にとって今一番欲しい言葉をくれた。僕は最高に嬉しい。優しく笑いかける。

愛しい人の穏やかで何かが吹っ切れたような笑顔がそこにあった。

彼女を本当に愛しく思う。もう離してなんてあげられない。シャーリー…君から僕のことが大切だなんて、好きだなんて、離したくないだなんて・・・そんな言葉を聞ける日を待っていたんだ。

いっそのことここで君を僕のものにしてしまってもいい?もう抑えきれない。

腕に一層力が入る。

顔を上げた。シャーリーが笑っている。いつものシャーリーだ。いつもより穏やかで柔らかい笑顔。何か僕を見る目が潤んでいる。

雨はいつのまにか上がっていた。雷も鳴っていない。空から光が差し込んでいる。
最高なシチュエーションだ。

今しかない!

今ここでシャーリーに告白して本当に婚約者になるんだ!

僕はシャーリーの頬に手を当てて彼女に近づいた。

「シャーリー!僕も君が・・
「何たってルースは私の大事な幼なじみだもんね。」

はっ?何でここで言うんだ?
ったく…お約束かよ…。
もしくは天然…?

しかし僕は真っ赤になっているシャーリーを見て笑えてきた。
ごまかしても無駄だよ。君の気持ちは、君の決心はちゃんと受け取ったよ。
でも、今はすごくいい気分なんだ。これくらいは許してね。

シャーリーの頬に優しくキスをした。

「ありがとう…シャーリー大好きだよ。」



早く君に触れさせてよ。

もう待てないや。

シャーリー、早く全部僕のものになって。

次は逃げさせやしないよ。

心だけじゃない、君の全てを僕に差し出して。

全て、身も心も全部僕に堕ちてきて。
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