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その20 廊下にて ルース視点

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「だから私は忠告させていただきましたわよね?」
「僕だって頑張ってるさ。
ようやく交流会の報告が上がってきたんだ!今日君に持って行こうと思ってたところだ。
手紙といい、こんなに早く次の動きがあるとは分からなかったんだよ!」

「手紙?何ですか?また何か企んできたんですね。次から次へといろいろ思いつくわね。本当面倒くさい子ね。ったく、自己中は変わらない。」
「ん?ジコチュー?何だそれ。かわらない?」
「あ、こっちの話しよ。スルーしておいて。」
「スルー?」
「ああ、ごめんなさい。そこは引っかからくていいわよ。
あなたのルートに入るのが早いのですからそのくらい想定なさってください!相手も焦ってますようですし。」

法科に戻る途中の廊下でレイクルーゼ嬢と話をしていた。

「おや?またこの組み合わせか?」
後ろから声がした。

「王太子殿下…「レオンハルト王太子殿下、お会いできて光栄です。」

おっ…と身の代わりが早い。声のトーンが上がった。

金色の爽やかイケメンが現れた。嫌な日に嫌な奴に会った。
「学校にお見えになるなんてどうされました?」
「今度隣国の王太子が留学にくる際の警備体制を学園長と打ち合わせに来たのだが?この間交流会でも一緒にいたが、二人はそんなに仲が良かったのか?」

「は?こんな奴と「直接ではなくてシャーリーと仲がいいのですの。」

まあ…間違えはないな。

「ああ、そうだったな。」
「本当にシャーリーは妹みたいで可愛くて。ふふふっ。」

って公にはならないけど君が王太子妃になれば実際義理の妹にはなるよね。
「で、そのシャーリーはいないようだが、二人で何話をしてるのだ?」
「実は……」

かくかくしかじかだ。

「シャーリーが平民を虐めてる?」

まあ、シャーリーはそれを望んではいますがね。

「そうなんです。昼前からその噂で持ち切りで……。
皆様の噂を纏めますと、いつも強い口調で怒られる、物を取り上げられる、髪を引っ張られる、インクをかけられる、今朝なんては階段から落とされた……とかで。
更に交流会の騒ぎはルーズローツ様がその方に取られるのが嫌で自作自演したとか言われております。」

…の訳無いじゃない。かなり危なかったんだよ。
それに取られるって…すでに僕はシャーリーのものだ。

「ええ、ルーズローツ様がその方を助けようとしたらシャーリーが離さなかったとか…そして抱き上げて医務室に連れていくよう強制したとか…」

確かに離さなかったのは事実だな。
僕はすごく嬉しかったんだよ。
抱き上げたのは僕が勝手にやったんだ。
嬉しすぎてシャーリーを僕の腕の中に閉じこめたかっただけなんだよ。

「ルースとシャーリーは今朝は一緒じゃなかったのか?」
「一緒でしたよ。今日はルーズローツ様だけではなくて私も一緒でしたよ。ね?」

レイクルーゼ嬢がこっちを見るので大きく首を縦に振った。
仕方ないな。
ナイスフォローだろ。
Theシャーリーと仲良しです作戦。

「じゃあ何でそんな噂が出るんだ?」
「その平民の子はルーズローツ様を慕っているみたいなので多分シャーリーに不利になる噂を流して回っているかと……」
「ルース……お前なぁ。これじゃあシャーリーは私に返してもらわなきゃならないよ。」

ん?返すって、いつシャーリーがお前のものだったんだ。
前からずっと僕のものだよ。

「大丈夫です。ルーズローツ様はちゃんと行動しております。今も私とともにシャーリーの教室でちゃんと誤解を解いておりました。」

何だかレイクルーゼ嬢しっかりしすぎて入る余地ないな。
もう任せたよ。
僕は傍観者だ。

このあと殿下とレイクルーゼ嬢はいろいろ話をして意見を出し合った。
結局、巡回の見直し、護衛の強化などを先生方にに指示していた。
特に該当者の周りに注意するように命令した。
所詮学校はみんなの共有の場所だあまり制限はかけられない。

殿下は遅くなったが打ち合わせの為、学園長のもとへ向かった。
レイクルーゼ嬢と僕は一緒に法科の校舎に戻った。
完全に五限目は欠席だ。

それにしても何て迷惑な女なんだ。
しかし困ったな。どうすればいい?学校では限界がある。
これ以上のことが起こらないとは限らない。
シャーリーを休ませる?でも家で何かあればどうする?
じゃあ…あ~なんでシャーリーは魔科なんだ。
専攻を選ぶ時にもっと反対すれば良かった。今から僕が魔科に転科しようか…。
あ~あ無理だ。家柄的に無理だ。

僕が考え込みながら歩いているといつの間にか階段まできていた。1年は1階、3年は3階だ。
レイクルーゼ嬢が階段の手摺りに手をかけながら言った。

「ルーズローツ様、彼女は危険です。あまりにも行動が自己中心すぎです。彼女の推しはあなたです。あなたへの執着はこれからも増していき、あなたを手に入れるまで続くでしょう。あなたはシャーリー以外受け入れられない。短絡的な彼女はどうすると思います?」

そうだ、簡単なことだ。邪魔なら消せばいいだけ。でもそんなことをしたら・・・。

「そう、そんなことしてもあなたが彼女に心を向ける日はないでしょう。」

僕は頷いた。

「それがわかる人ならもうあなたから手を引いているはずです。しかしそれができないということは彼女はあまりにもあなたに執着しすぎて何も見えていない状態です。」

僕は再度頷くしかなかった。彼女の言うことは正論だ。

「あなたのルートへはかなり入るのが難しいんです。当然何度も何度もゲームをやり直していると思われます。ゲームとはそういうものなんです。やり直しがきくんです。」

レイクルーゼ嬢は僕に話す隙を与えず続けていく。

「何度もやり直しているということは、この先起こる内部分裂、反乱、戦争、疫病、魔族襲撃のイベント、それに携わる設定を把握しているということです。今の彼女の心理状態ならそれを自分の欲望を満たすために使うことが無いとはいえません。個人の欲の為に人に危険を及ぼすなど許されないことです。更には貴方の秘密、ザイン公爵家の秘密も把握しているはずです。外に漏らすかもしれません。それも決してあってはいけないのです。貴方のためにも、ザイン公爵家みなさんのためにも、王家のためにも、この世界の為にも、何よりあなたの愛しい婚約者のためにも彼女は消えていただかなければいけません。彼女は危険です。何か起こる前に排除して下さい。」 

彼女は手を握り締めて下を向いて低い声で言った。

「全てのイベントが起きるとは限りません。しかし中にはたくさんの犠牲を伴うものもあります。設定を知っているのならば避けることもできるかもしれません。その逆で起こすこともできるかもしれません。自分の欲の為に起きなくていいことを起こしてはいけないんです。傷つけなくていい人を傷つけてはいけないんです。彼女はそんなことも分からなくなってしまっています。今、止めないと大変なことになります。申し訳ありませんがザイン家のあなたにお願いするしかないんです。彼女を止めて下さい。どんな方法でも構いません。これ以上彼女に罪を犯させないで下さい。よろしくお願いします。」

レイクルーゼ嬢は深々と頭を下げてから階段を上がっていった。

何だ?レイクルーゼ嬢は彼女を知っているのか?どういうことだ?

それより何かすごいこと聞いたな。
内部分裂、反乱、戦争、疫病、魔族の襲撃…
おいおい、そんなの起こるんか?いや…ゲームでは起きていたんだ。可能性はないとは限らない。そうならないようにするしか無いな。少し情報を集めてみるか。ゲーム通りには行かせない。

ひとまずラブレターの日時がもうすぐだ。
仕方ないな。

呼び出されてあげるよ、僕が。
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