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本編
108.「し、死にたくねぇ……!」
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「遅い!蔡藤家はいつになったらここにくるんじゃ!?」
蒼織波の残党の陣地。その本陣にある陣幕の中で初老の女が目を血走らせながら部下を怒鳴りつけている。
蒼織波残党───。未だに湾織波に従わぬ武家達はそう呼ばれ、今や残党狩りの標的となっている。
この初老の女もそんな残党の武家の当主であった。
彼女達は湾織波に頭を下げ服従するタイミングを見誤り、こうして生き残ろうともがき続けていたのだ。
───織波秀菜率いる湾織波は蒼織波の残党を許さなかった。
戦が始まる前に秀菜に服従した者には然るべき地位を与え、戦の趨勢が決まってから降伏した者は命だけを助け、この期に及んで歯向かう愚か者達は一族郎党根絶やしにする。
そうやって徹底的に蒼織波の残党を潰しているのだ。そしてその圧に耐えられなくなった者達は決起し、こうして兵を集め湾織波の軍勢に対抗しようとしている。
そんな彼女達にとっての頼みの綱が蔡藤家からの援軍だった。湾織波の軍勢が迫っているという一報を聞いて蔡藤家はこの蒼鷲地方にいる蒼織波の残党に援軍を送ったのだ。
歴史的に長らく蔡藤家と争ってきた織波家ではあるが、本家が滅亡した今、分家である湾織波の勢いが脅威に映るらしくなんとしてでもその勢いを削ぐべく本家の残党と手を組み、湾織波の殲滅に赴いている。
しかし───
「はっ!伝令の話だと後二日は掛かるとのこと!蔡藤家の将からは動かず、防衛に徹しろとの言伝が!」
部下の兵士の言葉に残党の将は地団駄を踏み、怒りをあらわにさせる。
「ふ、二日……だと!?そんなに持つわけがないだろうが……!!こちらの兵は二千しかおらぬのだぞ!!」
残党が用意出来た兵は二千。それも烏合の衆とも言うべき兵で、練度も低く、無理矢理徴兵してきた農民が主である。
「ええい!蔡藤のクソ共め!!上から目線で私に命令しおって……!!見ておれ、この兵で湾織波を殲滅すれば文句はないのであろう!」
残党の将のその言葉に部下の兵はギョっと目をむき、慌てて止めに入る。
「し、しかし敵方の兵は我等を圧倒しております!このまま戦えば全滅は必至!ここは何としてでも蔡藤家の援軍を待たねば───」
「黙れ!蔡藤のクソ共に舐められて堪るか!それにこの期に及んで怖じ気づくとは何たる腑抜け共か!!」
部下の言葉に将は激怒し、持っていた扇子で力一杯部下を殴りつける。
殴られた部下は地面に倒れ伏すが、将の怒りは収まらず、近くにいた兵士も殴りつけるではないか。
「私の命がどうなってもよいというのか!?貴様らは命惜しさに、恥知らずにも逃げるつもりか!!分家のクソ共に一矢報いる絶好の機会をみすみす逃すというのか!!それでも貴様は蒼織波の人間かッ!!」
将は部下の胸ぐらを掴み上げ、唾を飛ばしながら怒鳴り続ける。
「秀菜の成り上がり者めが……!分家の癖に蒼織波に歯向かいおって……!」
将の怒りの原因はそこだった。卑しい分家如きが、宗主である本家に反旗を翻すなど愚かにも程がある。
本来ならば蒼織波が蒼鷲を纏め上げ、天下に号令を掛けるべきだったというのに楯突きおって───。
「何が秀菜だ!小娘の成り上がり者ではないか!」
将はそう罵倒するが、本家は分家の人間に負けたのだ。
その認識が出来ないが故に残党はこうして未だに秀菜に刃を向けるのだ。もっとも、今更降伏したところで切腹は免れないのだが。
「先の戦も、ただのまぐれにすぎん!全軍前進だ!まずは分家の連中を討ち、蔡藤家の軍勢と合流し再び蒼鷲地方を本家のものとしようぞ!」
こうして残党は進軍を開始した。
だが、その進軍を待っていた者がいたのだ。
「な───なんだ!?何が起こっている!?」
湾織波の残党が突如浮き足立ち、兵達の間で狼狽する声が聞こえる。
なにやら馬の嘶きと人馬の奔る音、それに悲鳴も混じっていた。
「報告します!!分家の軍が攻め込んできました!!そ、それも恐ろしく速い動きでして───」
兵士の報告に将は目を見開いて言葉を失う。
馬鹿な、まだ分家の軍勢とは距離がある筈だ。なのに何故───
「馬鹿な!!分家の軍は遥か前方にいる筈であろう!?こんな短時間でここまで来れる訳がない!!」
「し、しかし現に───」
将は錯乱しながら辺りを見渡す。すると前方にいた味方が彼方へと吹き飛ばされるではないか。
将は困惑と恐怖で目を見開き、言葉にならない声を上げる。そんな時だ。ふと強烈な圧を感じ、その方向を見ると爆炎が上がっている。
「ば、馬鹿な……!!あの炎は───」
将はその爆炎に見覚えがある。織波の英傑が使う、技法。極限まで研ぎ澄まされた闘気を刃に乗せ、織波秘伝の技法である爆炎で敵を焼き払うと言われる奥義。
その爆炎が今、残党の兵を焼いているのだ。
「あ、あああ…………」
将はガタガタと震え出す。本物の英傑が出すそれは、死を予感させる。
そして───爆炎が晴れるとそこには鎧姿の騎馬武者達がいた。その鎧は血で濡れており、彼らの周りにはボロ雑巾と化した蒼織波の兵が無数に転がっていたのだ。
騎馬兵。この世界では英傑に近い精鋭が務める兵種であり、通常の兵と比べて練度が高く、士気も高い。
しかし決して愚直に突撃するものではなく、側面からの奇襲攻撃や乱戦の最中から死角に回り込み、一気呵成に敵を討ち倒す戦法が主なのだ。
しかし、今行われた戦法は違う。愚直に、ただ真っ直ぐ敵に突撃しているのだ。なんと愚かで、なんと稚拙な戦法か。
だがその戦法が───いや、たった百騎余の騎兵が本家の軍勢を一方的に蹂躙しているのだ。
「ば、馬鹿な……こんな馬鹿な話が───」
将はそう絶句するが、しかし目の前の光景は現実である。騎馬が残党の軍を切り裂くように貫き、そして今この本陣にまでその刃が迫っていた。
「ひ、ひいいいッ!!」
将は悲鳴をあげ、腰を抜かす。そんな時だ。本陣に馬に乗った女が一人乗り込んでくるではないか。
その少女は手綱を引き馬を停めると、長い槍の切っ先を指揮官に突きつける。
そして叫んだ。
「貴様が残党共の将か!その首、この前利又米が貰い受ける!」
金色に髪を染めた女が、槍を振りかぶった。
─────────
残党の兵が騎馬集団に蹂躙される少し前の出来事───
平野を疾走する騎馬武者の軍勢。それは数百余の騎影だが、騎兵である事自体が精鋭である。
そして馬に跨がる武士達の鎧は黒く、煌めいていた。この黒い鎧こそが織波信葉の近衛である証。
織波家の天才児、織波信葉が自身の領地にて育て上げた軍団である。
「フッー……フッー……」
そんな騎馬集団の中に、前利又米はいた。彼女は傾いた服装ではなく、武士の鎧を身に着けており、騎馬を繰っている。
しかしその顔はどこか落ち着きがなく、視線も定まっていなかった。
それもそうだろう、彼女はこれが初陣であるのだ。元不良で喧嘩には慣れているとはいえ、あくまで喧嘩。これから命の奪い合いをする戦場に身を投じるのは流石に怖い。
だが、そんな前利又米の思いとは裏腹に彼女の駆る馬は嘶き、雄々しく走る。まるで今から始まる命のやり取りに武者震いするかのように。
「こ、怖くねーからな!テメーとはまだ短い付き合いだけどよ。こんな大一番なんだ、張り切ってくれよな」
前利は自身を鼓舞するように自らの馬にそう言うが───手綱を掴む両手に力が篭るのが分かった。
怖いのだ。これから殺し合いをするのが堪らなく怖いのだ。
並走する騎馬武者達を見る。そこには前利の同期である笹や、川知も彼女と同じように馬を駆っている。だが、その表情はいつもの彼女達と違い、緊張と恐怖が入り混じっている。
そんな中、前利は出陣の前に、大将である信葉から掛けられた言葉を思い出す。
『これから敵本陣に突撃するわ!私と、アンタ達だけで!』
一瞬、はぁ?と言葉が出なかった。
今、信葉はなんと言った?私とアンタ達だけで……?
最初は聞き間違いだと思った。何故なら自分達はたった百余りの騎兵。騎兵ではあるが、数が少ない。
しかし相手……本家の残党の軍勢は二千を超えるという話ではないか。
それがどうしてそんな話になるのだ?いや、そもそも何故数の利を活かして戦わないのだろうか?
此方の本軍は八千だというのに、何故わざわざ数の少ない騎馬だけで突撃なんて馬鹿な真似をするのだろうか?
『おいおい、信葉さま、正気か?残党の奴等、二千はいるんだぜ。それで俺達だけで真正面からぶつかれだって?』
前利達の教官……戦場では上司に当る力丸がそう言った。
いいぞ、もっと言ってくれ!と前利達は思った。自分達では信葉に意見など言えない。だが、忌憚のない意見を言える力丸ならば、と思ってしまったのだ。
『勿論。正気も正気よ。寧ろ多すぎるくらいだわ』
だというのに、信葉はそんな言葉を力丸に返してきた。
力丸はその言葉を聞き、一瞬呆けた顔をするもすぐにニカっと笑い『そうか!!信葉さまがそう言うならそうなんだろうな!!』と言い、信葉の肩をポンポンと叩いた。
……いやそうじゃねぇよ!!もっと言ってくれよ!無謀だって!
前利は戦法については素人同然だが、それでも寡兵で突撃するなんて馬鹿げてる。そんな事は分かりきっていた。
前利は助けを求めるように、同じく教官的な立場である鈴華を見る。彼女は常識人だ。そうだ、鈴華が止めてくれる!そう信じ、縋るような思いで見たのだが───
『皆さん。貴方達の初陣ではありますが、これまでの訓練で実力はしっかり付いています。そして織波信葉の近衛として、その名に恥じない働きを期待します』
鈴華は激励とも取れる言葉を送った。それはつまり、前利達は決死の覚悟で戦えという事だ。
まさかの裏切り。前利は頭が真っ白になり、思わず「オイィ!!何言ってんだよッ!?」と叫んでしまいたいところだった。
そんな前利達に鈴華はニコリと微笑むと、こう言ったのだ。
『大丈夫。私達はきっと、勝てる。それに、私が皆を護ります』
鈴華は優しく、諭すように言った。それはきっと自分に向けた言葉だったのだろう。前利達にそれ程の自信がなく、恐怖を感じてしまっているのを察していたのだろう。
しかしその言葉は逆に前利達を苦しめた。何故なら鈴華にこう言われてしまってはもう逃げることは許されないのだから。
『行くぞ!信葉様に遅れるなよ!』
信葉の腹心である瀬良の号令と共に、信葉の兵達は馬を走らせ、突貫する。先頭には織波信葉。そして後に続くように瀬良、鈴華、力丸が馬を走らせる。
前利達初陣の集団は慌てて彼女達の後を追った。
─── そして、現在に至る。
百騎余りの騎兵が同時に馬を駆る光景はまさしく圧巻の一言だが、前利にとっては悪夢でしかない。
なにせこれからそれよりも遥か数の多い、二千の敵兵に突撃するのだから。
「く、狂ってやがる……!」
生き残れる気がしなかった。信葉や瀬良は英傑だ。そして恐らく鈴華もその類だし、力丸も常人より遥かに強い力を持っている。
だが、自分は……自分達は常人だ。刀で斬られれば死ぬし、矢が刺さっても死ぬ。鉄砲に撃たれた日には即死してしまうかもしれない。
「し、死にたくねぇ……!」
前利はそう呟くが、しかし無慈悲にも騎馬の軍勢は敵陣へと着実に進んでいる。
前利がそう恐怖に慄いている、その時だった。
不意に、自身の駆る馬の横を並走する小さな人影……。疾走する騎馬と並走するだなんて常識外れではあるのだが、前利はその人物を見ると納得した。
「前利!調子はどう?」
キツネの半化生、白狐。この半化生はいつもと同じようににこにこと笑みを浮かべ、前利にそう話しかけていた。
「けっ!調子いいわけあるか!これから大軍に突撃するんだぞ!」
「あはーやっぱり怖い?」
「あったりめーだろ!死にたくねーよ、まだやりたい事も沢山あるっつーのに……!!」
白狐の言葉に前利は馬上で泣きそうな表情になりながら返す。
白狐は前利の心中を察しているのか、「う~ん」と唸りながら前利の横を並走していた。
そして不意に白狐が前利に問いかけた。
「前利のやりたい事って?」
「はぁ?そんなの決まってんだろ!金だって欲しいし、いいもんだって食いたいし、それに……」
前利は一息溜める。そして、
「男とイチャつきてぇよ!」
と叫んだ。
それは心の底からの本心であった。前利は今まで男に媚びを売るような生き方しかしていなかった。彼女の容姿は悪くない。悪くないどころか美人の部類だ。
だが、彼女の周りにいるのは男ではなく、荒っぽい不良の女達……。ただでさえ男が少ない世界だというのに、これでは男が寄り付く訳がなかったのだ。
「一回でいいから男とヤッてみてーよ!それにあたしは不良として生きてきたから男と付き合った事なんてねーんだよ!せめて一回くらい良い目見てーよ!」
前利は心の底からの願望を口にする。
そんな前利の言葉を聞き、白狐はうんうんと頷いた。
「つまり処女のまま死にたくないってことだね!」
「はっ!?し、処女とはいってねーだろ!」
白狐の言葉に思わず否定するが、しかし言葉は前利の本心である。
別に誰が好きという訳ではないが……そう、この女だらけの世界で処女を捨てるのは想像以上に難しいのだ。
無論、娼館……もとい男衆館に行き金さえ払えば男を抱いて処女を捨てる事は出来るが、前利という女はそんな愛のないセックスはしたくなかった。
もっとこう、互いに求め合うような、そんな熱い子作りをしたいのだ。
だから前利は未だに男というものを知らなかった。そもそもそんな金は持っていない……。
初陣を前に、前利がそんな事を考えて悶々としていると、前利の横を走っていた白狐がふと前利に声をかける。
「じゃあこの戦が終わって、前利が無事だったら気持ちいい事してあげるね!♡」
「は?」
こいつは一体何を言っているんだ、と言わんばかりの表情を白狐に向ける前利。
しかし白狐はニコニコと笑顔を絶やさなかった。そしてこう続ける。
「これはその前払いでーす!♡」
馬と並走していた白狐の姿が突然掻き消えた。その直後に前利は自分の背後に何者かが張り付いているのを感じ取った。
「お、おいてめー!」
見るといつの間にか白狐が自身の後ろに取り付いていた。そして白狐は前利の鎧を器用に外すと、彼女の胸を揉みしだいてきたのだ。
「なにしやがんだ、テメー!!」
「ふにゃあ……♡意外と柔らかいにゃあ……♡」
前利は叫ぶが、白狐はまるで聞いていないかのようにそんな事を呟く。
こいつ……!本当にイカれてやがる!!と怒りを覚えつつ前利は振り払おうとするも、しかし馬の振動で上手く払いのけられない。
「女に揉んで貰っても嬉しくねーんだよ!ぶっ殺すぞこら!」
そう凄む前利だったが、ふと気が付くと既に白狐の姿は無かった。
何処に行ったんだときょろきょろと探すと、そこには笹に絡んでいる白狐の姿があった。
「ねぇねぇ笹、調子はどう?」
「し、尻尾成分が……足りない……ハムハムさせて……」
「あ、それはちょっと」
どうやら一人一人回って元不良達の様子を見て周っているようだ。
恐らくは……彼は信葉の子分達を心配しているのだろう。初陣だというのに死地に赴こうとしている自分達の事が心配なのだ。
だからこうやって周りを周って、心配したり元気付けようとしているのだ。
「……ったく、おせっかいなキツネだ……」
思わずそう呟く前利だったが、気が付くと直前まで感じていた死への恐怖は薄れていた。
もし無事に帰れたら、前利は生意気なキツネをしめてやろうと、そう思った。
蒼織波の残党の陣地。その本陣にある陣幕の中で初老の女が目を血走らせながら部下を怒鳴りつけている。
蒼織波残党───。未だに湾織波に従わぬ武家達はそう呼ばれ、今や残党狩りの標的となっている。
この初老の女もそんな残党の武家の当主であった。
彼女達は湾織波に頭を下げ服従するタイミングを見誤り、こうして生き残ろうともがき続けていたのだ。
───織波秀菜率いる湾織波は蒼織波の残党を許さなかった。
戦が始まる前に秀菜に服従した者には然るべき地位を与え、戦の趨勢が決まってから降伏した者は命だけを助け、この期に及んで歯向かう愚か者達は一族郎党根絶やしにする。
そうやって徹底的に蒼織波の残党を潰しているのだ。そしてその圧に耐えられなくなった者達は決起し、こうして兵を集め湾織波の軍勢に対抗しようとしている。
そんな彼女達にとっての頼みの綱が蔡藤家からの援軍だった。湾織波の軍勢が迫っているという一報を聞いて蔡藤家はこの蒼鷲地方にいる蒼織波の残党に援軍を送ったのだ。
歴史的に長らく蔡藤家と争ってきた織波家ではあるが、本家が滅亡した今、分家である湾織波の勢いが脅威に映るらしくなんとしてでもその勢いを削ぐべく本家の残党と手を組み、湾織波の殲滅に赴いている。
しかし───
「はっ!伝令の話だと後二日は掛かるとのこと!蔡藤家の将からは動かず、防衛に徹しろとの言伝が!」
部下の兵士の言葉に残党の将は地団駄を踏み、怒りをあらわにさせる。
「ふ、二日……だと!?そんなに持つわけがないだろうが……!!こちらの兵は二千しかおらぬのだぞ!!」
残党が用意出来た兵は二千。それも烏合の衆とも言うべき兵で、練度も低く、無理矢理徴兵してきた農民が主である。
「ええい!蔡藤のクソ共め!!上から目線で私に命令しおって……!!見ておれ、この兵で湾織波を殲滅すれば文句はないのであろう!」
残党の将のその言葉に部下の兵はギョっと目をむき、慌てて止めに入る。
「し、しかし敵方の兵は我等を圧倒しております!このまま戦えば全滅は必至!ここは何としてでも蔡藤家の援軍を待たねば───」
「黙れ!蔡藤のクソ共に舐められて堪るか!それにこの期に及んで怖じ気づくとは何たる腑抜け共か!!」
部下の言葉に将は激怒し、持っていた扇子で力一杯部下を殴りつける。
殴られた部下は地面に倒れ伏すが、将の怒りは収まらず、近くにいた兵士も殴りつけるではないか。
「私の命がどうなってもよいというのか!?貴様らは命惜しさに、恥知らずにも逃げるつもりか!!分家のクソ共に一矢報いる絶好の機会をみすみす逃すというのか!!それでも貴様は蒼織波の人間かッ!!」
将は部下の胸ぐらを掴み上げ、唾を飛ばしながら怒鳴り続ける。
「秀菜の成り上がり者めが……!分家の癖に蒼織波に歯向かいおって……!」
将の怒りの原因はそこだった。卑しい分家如きが、宗主である本家に反旗を翻すなど愚かにも程がある。
本来ならば蒼織波が蒼鷲を纏め上げ、天下に号令を掛けるべきだったというのに楯突きおって───。
「何が秀菜だ!小娘の成り上がり者ではないか!」
将はそう罵倒するが、本家は分家の人間に負けたのだ。
その認識が出来ないが故に残党はこうして未だに秀菜に刃を向けるのだ。もっとも、今更降伏したところで切腹は免れないのだが。
「先の戦も、ただのまぐれにすぎん!全軍前進だ!まずは分家の連中を討ち、蔡藤家の軍勢と合流し再び蒼鷲地方を本家のものとしようぞ!」
こうして残党は進軍を開始した。
だが、その進軍を待っていた者がいたのだ。
「な───なんだ!?何が起こっている!?」
湾織波の残党が突如浮き足立ち、兵達の間で狼狽する声が聞こえる。
なにやら馬の嘶きと人馬の奔る音、それに悲鳴も混じっていた。
「報告します!!分家の軍が攻め込んできました!!そ、それも恐ろしく速い動きでして───」
兵士の報告に将は目を見開いて言葉を失う。
馬鹿な、まだ分家の軍勢とは距離がある筈だ。なのに何故───
「馬鹿な!!分家の軍は遥か前方にいる筈であろう!?こんな短時間でここまで来れる訳がない!!」
「し、しかし現に───」
将は錯乱しながら辺りを見渡す。すると前方にいた味方が彼方へと吹き飛ばされるではないか。
将は困惑と恐怖で目を見開き、言葉にならない声を上げる。そんな時だ。ふと強烈な圧を感じ、その方向を見ると爆炎が上がっている。
「ば、馬鹿な……!!あの炎は───」
将はその爆炎に見覚えがある。織波の英傑が使う、技法。極限まで研ぎ澄まされた闘気を刃に乗せ、織波秘伝の技法である爆炎で敵を焼き払うと言われる奥義。
その爆炎が今、残党の兵を焼いているのだ。
「あ、あああ…………」
将はガタガタと震え出す。本物の英傑が出すそれは、死を予感させる。
そして───爆炎が晴れるとそこには鎧姿の騎馬武者達がいた。その鎧は血で濡れており、彼らの周りにはボロ雑巾と化した蒼織波の兵が無数に転がっていたのだ。
騎馬兵。この世界では英傑に近い精鋭が務める兵種であり、通常の兵と比べて練度が高く、士気も高い。
しかし決して愚直に突撃するものではなく、側面からの奇襲攻撃や乱戦の最中から死角に回り込み、一気呵成に敵を討ち倒す戦法が主なのだ。
しかし、今行われた戦法は違う。愚直に、ただ真っ直ぐ敵に突撃しているのだ。なんと愚かで、なんと稚拙な戦法か。
だがその戦法が───いや、たった百騎余の騎兵が本家の軍勢を一方的に蹂躙しているのだ。
「ば、馬鹿な……こんな馬鹿な話が───」
将はそう絶句するが、しかし目の前の光景は現実である。騎馬が残党の軍を切り裂くように貫き、そして今この本陣にまでその刃が迫っていた。
「ひ、ひいいいッ!!」
将は悲鳴をあげ、腰を抜かす。そんな時だ。本陣に馬に乗った女が一人乗り込んでくるではないか。
その少女は手綱を引き馬を停めると、長い槍の切っ先を指揮官に突きつける。
そして叫んだ。
「貴様が残党共の将か!その首、この前利又米が貰い受ける!」
金色に髪を染めた女が、槍を振りかぶった。
─────────
残党の兵が騎馬集団に蹂躙される少し前の出来事───
平野を疾走する騎馬武者の軍勢。それは数百余の騎影だが、騎兵である事自体が精鋭である。
そして馬に跨がる武士達の鎧は黒く、煌めいていた。この黒い鎧こそが織波信葉の近衛である証。
織波家の天才児、織波信葉が自身の領地にて育て上げた軍団である。
「フッー……フッー……」
そんな騎馬集団の中に、前利又米はいた。彼女は傾いた服装ではなく、武士の鎧を身に着けており、騎馬を繰っている。
しかしその顔はどこか落ち着きがなく、視線も定まっていなかった。
それもそうだろう、彼女はこれが初陣であるのだ。元不良で喧嘩には慣れているとはいえ、あくまで喧嘩。これから命の奪い合いをする戦場に身を投じるのは流石に怖い。
だが、そんな前利又米の思いとは裏腹に彼女の駆る馬は嘶き、雄々しく走る。まるで今から始まる命のやり取りに武者震いするかのように。
「こ、怖くねーからな!テメーとはまだ短い付き合いだけどよ。こんな大一番なんだ、張り切ってくれよな」
前利は自身を鼓舞するように自らの馬にそう言うが───手綱を掴む両手に力が篭るのが分かった。
怖いのだ。これから殺し合いをするのが堪らなく怖いのだ。
並走する騎馬武者達を見る。そこには前利の同期である笹や、川知も彼女と同じように馬を駆っている。だが、その表情はいつもの彼女達と違い、緊張と恐怖が入り混じっている。
そんな中、前利は出陣の前に、大将である信葉から掛けられた言葉を思い出す。
『これから敵本陣に突撃するわ!私と、アンタ達だけで!』
一瞬、はぁ?と言葉が出なかった。
今、信葉はなんと言った?私とアンタ達だけで……?
最初は聞き間違いだと思った。何故なら自分達はたった百余りの騎兵。騎兵ではあるが、数が少ない。
しかし相手……本家の残党の軍勢は二千を超えるという話ではないか。
それがどうしてそんな話になるのだ?いや、そもそも何故数の利を活かして戦わないのだろうか?
此方の本軍は八千だというのに、何故わざわざ数の少ない騎馬だけで突撃なんて馬鹿な真似をするのだろうか?
『おいおい、信葉さま、正気か?残党の奴等、二千はいるんだぜ。それで俺達だけで真正面からぶつかれだって?』
前利達の教官……戦場では上司に当る力丸がそう言った。
いいぞ、もっと言ってくれ!と前利達は思った。自分達では信葉に意見など言えない。だが、忌憚のない意見を言える力丸ならば、と思ってしまったのだ。
『勿論。正気も正気よ。寧ろ多すぎるくらいだわ』
だというのに、信葉はそんな言葉を力丸に返してきた。
力丸はその言葉を聞き、一瞬呆けた顔をするもすぐにニカっと笑い『そうか!!信葉さまがそう言うならそうなんだろうな!!』と言い、信葉の肩をポンポンと叩いた。
……いやそうじゃねぇよ!!もっと言ってくれよ!無謀だって!
前利は戦法については素人同然だが、それでも寡兵で突撃するなんて馬鹿げてる。そんな事は分かりきっていた。
前利は助けを求めるように、同じく教官的な立場である鈴華を見る。彼女は常識人だ。そうだ、鈴華が止めてくれる!そう信じ、縋るような思いで見たのだが───
『皆さん。貴方達の初陣ではありますが、これまでの訓練で実力はしっかり付いています。そして織波信葉の近衛として、その名に恥じない働きを期待します』
鈴華は激励とも取れる言葉を送った。それはつまり、前利達は決死の覚悟で戦えという事だ。
まさかの裏切り。前利は頭が真っ白になり、思わず「オイィ!!何言ってんだよッ!?」と叫んでしまいたいところだった。
そんな前利達に鈴華はニコリと微笑むと、こう言ったのだ。
『大丈夫。私達はきっと、勝てる。それに、私が皆を護ります』
鈴華は優しく、諭すように言った。それはきっと自分に向けた言葉だったのだろう。前利達にそれ程の自信がなく、恐怖を感じてしまっているのを察していたのだろう。
しかしその言葉は逆に前利達を苦しめた。何故なら鈴華にこう言われてしまってはもう逃げることは許されないのだから。
『行くぞ!信葉様に遅れるなよ!』
信葉の腹心である瀬良の号令と共に、信葉の兵達は馬を走らせ、突貫する。先頭には織波信葉。そして後に続くように瀬良、鈴華、力丸が馬を走らせる。
前利達初陣の集団は慌てて彼女達の後を追った。
─── そして、現在に至る。
百騎余りの騎兵が同時に馬を駆る光景はまさしく圧巻の一言だが、前利にとっては悪夢でしかない。
なにせこれからそれよりも遥か数の多い、二千の敵兵に突撃するのだから。
「く、狂ってやがる……!」
生き残れる気がしなかった。信葉や瀬良は英傑だ。そして恐らく鈴華もその類だし、力丸も常人より遥かに強い力を持っている。
だが、自分は……自分達は常人だ。刀で斬られれば死ぬし、矢が刺さっても死ぬ。鉄砲に撃たれた日には即死してしまうかもしれない。
「し、死にたくねぇ……!」
前利はそう呟くが、しかし無慈悲にも騎馬の軍勢は敵陣へと着実に進んでいる。
前利がそう恐怖に慄いている、その時だった。
不意に、自身の駆る馬の横を並走する小さな人影……。疾走する騎馬と並走するだなんて常識外れではあるのだが、前利はその人物を見ると納得した。
「前利!調子はどう?」
キツネの半化生、白狐。この半化生はいつもと同じようににこにこと笑みを浮かべ、前利にそう話しかけていた。
「けっ!調子いいわけあるか!これから大軍に突撃するんだぞ!」
「あはーやっぱり怖い?」
「あったりめーだろ!死にたくねーよ、まだやりたい事も沢山あるっつーのに……!!」
白狐の言葉に前利は馬上で泣きそうな表情になりながら返す。
白狐は前利の心中を察しているのか、「う~ん」と唸りながら前利の横を並走していた。
そして不意に白狐が前利に問いかけた。
「前利のやりたい事って?」
「はぁ?そんなの決まってんだろ!金だって欲しいし、いいもんだって食いたいし、それに……」
前利は一息溜める。そして、
「男とイチャつきてぇよ!」
と叫んだ。
それは心の底からの本心であった。前利は今まで男に媚びを売るような生き方しかしていなかった。彼女の容姿は悪くない。悪くないどころか美人の部類だ。
だが、彼女の周りにいるのは男ではなく、荒っぽい不良の女達……。ただでさえ男が少ない世界だというのに、これでは男が寄り付く訳がなかったのだ。
「一回でいいから男とヤッてみてーよ!それにあたしは不良として生きてきたから男と付き合った事なんてねーんだよ!せめて一回くらい良い目見てーよ!」
前利は心の底からの願望を口にする。
そんな前利の言葉を聞き、白狐はうんうんと頷いた。
「つまり処女のまま死にたくないってことだね!」
「はっ!?し、処女とはいってねーだろ!」
白狐の言葉に思わず否定するが、しかし言葉は前利の本心である。
別に誰が好きという訳ではないが……そう、この女だらけの世界で処女を捨てるのは想像以上に難しいのだ。
無論、娼館……もとい男衆館に行き金さえ払えば男を抱いて処女を捨てる事は出来るが、前利という女はそんな愛のないセックスはしたくなかった。
もっとこう、互いに求め合うような、そんな熱い子作りをしたいのだ。
だから前利は未だに男というものを知らなかった。そもそもそんな金は持っていない……。
初陣を前に、前利がそんな事を考えて悶々としていると、前利の横を走っていた白狐がふと前利に声をかける。
「じゃあこの戦が終わって、前利が無事だったら気持ちいい事してあげるね!♡」
「は?」
こいつは一体何を言っているんだ、と言わんばかりの表情を白狐に向ける前利。
しかし白狐はニコニコと笑顔を絶やさなかった。そしてこう続ける。
「これはその前払いでーす!♡」
馬と並走していた白狐の姿が突然掻き消えた。その直後に前利は自分の背後に何者かが張り付いているのを感じ取った。
「お、おいてめー!」
見るといつの間にか白狐が自身の後ろに取り付いていた。そして白狐は前利の鎧を器用に外すと、彼女の胸を揉みしだいてきたのだ。
「なにしやがんだ、テメー!!」
「ふにゃあ……♡意外と柔らかいにゃあ……♡」
前利は叫ぶが、白狐はまるで聞いていないかのようにそんな事を呟く。
こいつ……!本当にイカれてやがる!!と怒りを覚えつつ前利は振り払おうとするも、しかし馬の振動で上手く払いのけられない。
「女に揉んで貰っても嬉しくねーんだよ!ぶっ殺すぞこら!」
そう凄む前利だったが、ふと気が付くと既に白狐の姿は無かった。
何処に行ったんだときょろきょろと探すと、そこには笹に絡んでいる白狐の姿があった。
「ねぇねぇ笹、調子はどう?」
「し、尻尾成分が……足りない……ハムハムさせて……」
「あ、それはちょっと」
どうやら一人一人回って元不良達の様子を見て周っているようだ。
恐らくは……彼は信葉の子分達を心配しているのだろう。初陣だというのに死地に赴こうとしている自分達の事が心配なのだ。
だからこうやって周りを周って、心配したり元気付けようとしているのだ。
「……ったく、おせっかいなキツネだ……」
思わずそう呟く前利だったが、気が付くと直前まで感じていた死への恐怖は薄れていた。
もし無事に帰れたら、前利は生意気なキツネをしめてやろうと、そう思った。
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