10 / 23
巻の十、賽はブン投げられた
しおりを挟む
――こんな危険なこと、君に頼むのは私も心苦しい。だけど、これは君にしか頼めないんだ。
そう仰っていただいたのに。
――この企みが成功したら。朱煌国を攻め滅したら。そうしたら、里珠。私の妻になってくれないか。
――私は、君を見つけたときからずっと君に惹かれていた。恋い焦がれていた。だから。二人で祖国を守ろう。私の計画、扶けてくれるね?
だから、ここで頑張ろうと思っていたのに。
(ううん。わたし、わかってたんだ。あれがウソだって、わかってた)
愛する人のために、命をかける。愛する人のために、敵を籠絡する。敵を滅ぼしたら、愛する人とのハッピーエンドが待っている。そのロマンチックな展開に酔いしれていた。
(わかってたんだ。本当は)
彼は皎錦国の宰相。わたしは貧しさに売られただけの女。
身分が違いすぎる、相手にされないってわかってたんだ。けど、愛されてるって夢を見たかった。
本当に、彼がわたしを慕ってくれていたのなら、あんな桃園に送り込まなくても、そのまま家に連れ帰って、妻として養育すればよかったのに。それをしなかったってことは、彼は、わたしを「使える手駒」としてしか見てなかったんだ。
よりすぐりの美女を集めた桃園で。わたしを最高の体に仕立て、最高の教養と性技を身に着けさせた。それはこうしてハニトラに使うためであって、わたしを愛するためじゃない。
計画が成功した後のことだってそう。
計画が成功して、朱煌国を滅ぼしたとしても、わたしが故国に帰れるわけがない。
皇帝を籠絡した女。それほど耽溺させていたのなら、孕んでいてもおかしくない。
我が国は正々堂々と戦い、悪しき敵を討ち滅ぼしただのだと公言するためには、わたしは邪魔。
朱煌国を滅ぼすドサクサに紛れて、わたしも殺す。わたしを殺した犯人は、……そうね。傾国の原因となったわたしに、朱煌国の民の怒りが向かったせいだとでもしておきましょうか。皇帝を溺れさせた悪女を、民が殺したとでも。
(わかってたのに……)
真実からずっと目を背けて、夢ばっかり見てた。
愛する人のためにって、自分に発破をかけてた。
けど。
(これから、どうしよう……)
ハニトラ失敗したわたしは、彼に毒を盛られるほど嫌われている。死んでくれと望まれている。失敗した作戦であっても、朱煌国にバレると不都合だから。
作戦が成功したとして。この国が滅んだところで、彼はわたしを受け入れてくれるだろうか。――否。おそらく、「敵国の皇帝に抱かれた女」として処刑されるだろう。万が一、敵の子を身ごもっていたら面倒だから。
(馬鹿だ。わたし)
よく考えればわかったことなのに。大事にされてる愛されてるって幻に囚われて、こんな後宮まで来てしまった。こんなところまで来て、尚佳を巻き込んでしまった。
(尚佳……)
同じ寝台の上。月明かりに照らされた尚佳の寝顔を眺める。
わたしより六つ年下の尚佳。
働き者で、よく気が利く子で。そばに居てとっても楽しい友だちみたいに思ってた。
(今までわたしのこと、どう思ってたんだろう)
「クソ」扱いしてたけど、自分の父親に懸想する女をどう思ってたんだろう。懸想して、利用されて、駒にされてた女を。
呆れてた? 憐れんでた? それとも笑ってた? ううん。尚佳はそんな子じゃない。ずっとそばに居たから。こんな敵地でもそばに居てくれたからわかる。尚佳はそんな子じゃない。
わたしの前に桃を食べたのだって、わたしを毒から守るためだった。もしかして万が一と、用心してくれていた。遅効性の毒だったから、尚佳が食べた時点で変化がなく、そのままわたしのもとに毒桃を持ってきてしまっただけ。
わたしが慈恩に惚れてるのを知ってたから、その想いを壊さないように、自分の出自を黙っていてくれた。けど、毒桃のことがあって、我慢できなくて、わたしにすべてを話してくれた。
――今まですみませんでした。
眠る前、尚佳は謝ってくれた。黙っていたことを。父親が騙してたことを。尚佳が悪いわけじゃないのに。それでもキチンと謝ってくれた。そして。
――里珠さまがご無事で、本当によかった。
最後は泣いてくれた。わたしが無事だったことに、心の底から喜んでくれた。
だとしたら。
(わたしが尚佳にしてあげられることはなに?)
父親にいいように扱われて、それでも必死にわたしを守ろうとしてくれた彼女に、わたしはなにがしてあげられる?
窓の外、丸く白い月が夜空を藍色に染める。
星さえも見えないその明るい夜空を見つめ、わたしは一つ、決意を固める。
* * * *
「尚佳。悪いけど、髪を結い上げるの、手伝ってくれないかしら」
翌朝。
わたしは、尚佳に手伝ってもらいながら、身支度をした。
別に、最高のわたしになろうとかそういうのじゃない。普通に、普通の身支度をしただけ。簪も髪をまとめるだけの質素なものだし、衣だって刺繍の入ってない簡素なもの。最低限の化粧として口紅だけ塗った。
団扇も持たないし、領巾も肩にかけない。本当に簡素な装い。寝起きそのままでもよかったんだけど、まあ、最後の意地として? 身だしなみだけはきちんとしておきたい。
「じゃあ、ちょっと出かけてくるわね」
「里珠さま……」
「大丈夫よ。ちょっと皇帝陛下にご挨拶してくるだけだから」
心配そうにこっちを見てくる尚佳に、明るく笑ってみせる。
出かける先は思清宮。皇帝陛下の宮殿。
わたしはそこに、医師を手配してもらったことへの謝辞を述べに行くだけ。それだけ。
「じゃあね」
菫青宮に尚佳を残して、一人歩き出す。
(頬紅、さしておけばよかったかなあ)
そしたら、緊張してるのもごまかせたのに。尚佳を不安にさせてしまったことを後悔する。
回廊を渡り、門をくぐる。
この間はあわてて迷った末だったけど、今日はちゃんと正規のルートでたどり着く。後宮から人が訪れるなんて想定してないのか。思清宮の衛兵は、ものすごくビックリした顔をしていた。
「――菫青妃、陽里珠。陛下に申し上げたき儀がございまして、罷り越しました。お目通り、お許しくださいませ」
緊張して震えるのを必死にこらえ、朗々と声を張る。
噤鳥美人の名にかけて。ここでブルっちゃ女が廃る!
もう、後戻りはできない。何があっても前に進む!
ここからが、わたしの一世一代の大仕事なんだから!
そう仰っていただいたのに。
――この企みが成功したら。朱煌国を攻め滅したら。そうしたら、里珠。私の妻になってくれないか。
――私は、君を見つけたときからずっと君に惹かれていた。恋い焦がれていた。だから。二人で祖国を守ろう。私の計画、扶けてくれるね?
だから、ここで頑張ろうと思っていたのに。
(ううん。わたし、わかってたんだ。あれがウソだって、わかってた)
愛する人のために、命をかける。愛する人のために、敵を籠絡する。敵を滅ぼしたら、愛する人とのハッピーエンドが待っている。そのロマンチックな展開に酔いしれていた。
(わかってたんだ。本当は)
彼は皎錦国の宰相。わたしは貧しさに売られただけの女。
身分が違いすぎる、相手にされないってわかってたんだ。けど、愛されてるって夢を見たかった。
本当に、彼がわたしを慕ってくれていたのなら、あんな桃園に送り込まなくても、そのまま家に連れ帰って、妻として養育すればよかったのに。それをしなかったってことは、彼は、わたしを「使える手駒」としてしか見てなかったんだ。
よりすぐりの美女を集めた桃園で。わたしを最高の体に仕立て、最高の教養と性技を身に着けさせた。それはこうしてハニトラに使うためであって、わたしを愛するためじゃない。
計画が成功した後のことだってそう。
計画が成功して、朱煌国を滅ぼしたとしても、わたしが故国に帰れるわけがない。
皇帝を籠絡した女。それほど耽溺させていたのなら、孕んでいてもおかしくない。
我が国は正々堂々と戦い、悪しき敵を討ち滅ぼしただのだと公言するためには、わたしは邪魔。
朱煌国を滅ぼすドサクサに紛れて、わたしも殺す。わたしを殺した犯人は、……そうね。傾国の原因となったわたしに、朱煌国の民の怒りが向かったせいだとでもしておきましょうか。皇帝を溺れさせた悪女を、民が殺したとでも。
(わかってたのに……)
真実からずっと目を背けて、夢ばっかり見てた。
愛する人のためにって、自分に発破をかけてた。
けど。
(これから、どうしよう……)
ハニトラ失敗したわたしは、彼に毒を盛られるほど嫌われている。死んでくれと望まれている。失敗した作戦であっても、朱煌国にバレると不都合だから。
作戦が成功したとして。この国が滅んだところで、彼はわたしを受け入れてくれるだろうか。――否。おそらく、「敵国の皇帝に抱かれた女」として処刑されるだろう。万が一、敵の子を身ごもっていたら面倒だから。
(馬鹿だ。わたし)
よく考えればわかったことなのに。大事にされてる愛されてるって幻に囚われて、こんな後宮まで来てしまった。こんなところまで来て、尚佳を巻き込んでしまった。
(尚佳……)
同じ寝台の上。月明かりに照らされた尚佳の寝顔を眺める。
わたしより六つ年下の尚佳。
働き者で、よく気が利く子で。そばに居てとっても楽しい友だちみたいに思ってた。
(今までわたしのこと、どう思ってたんだろう)
「クソ」扱いしてたけど、自分の父親に懸想する女をどう思ってたんだろう。懸想して、利用されて、駒にされてた女を。
呆れてた? 憐れんでた? それとも笑ってた? ううん。尚佳はそんな子じゃない。ずっとそばに居たから。こんな敵地でもそばに居てくれたからわかる。尚佳はそんな子じゃない。
わたしの前に桃を食べたのだって、わたしを毒から守るためだった。もしかして万が一と、用心してくれていた。遅効性の毒だったから、尚佳が食べた時点で変化がなく、そのままわたしのもとに毒桃を持ってきてしまっただけ。
わたしが慈恩に惚れてるのを知ってたから、その想いを壊さないように、自分の出自を黙っていてくれた。けど、毒桃のことがあって、我慢できなくて、わたしにすべてを話してくれた。
――今まですみませんでした。
眠る前、尚佳は謝ってくれた。黙っていたことを。父親が騙してたことを。尚佳が悪いわけじゃないのに。それでもキチンと謝ってくれた。そして。
――里珠さまがご無事で、本当によかった。
最後は泣いてくれた。わたしが無事だったことに、心の底から喜んでくれた。
だとしたら。
(わたしが尚佳にしてあげられることはなに?)
父親にいいように扱われて、それでも必死にわたしを守ろうとしてくれた彼女に、わたしはなにがしてあげられる?
窓の外、丸く白い月が夜空を藍色に染める。
星さえも見えないその明るい夜空を見つめ、わたしは一つ、決意を固める。
* * * *
「尚佳。悪いけど、髪を結い上げるの、手伝ってくれないかしら」
翌朝。
わたしは、尚佳に手伝ってもらいながら、身支度をした。
別に、最高のわたしになろうとかそういうのじゃない。普通に、普通の身支度をしただけ。簪も髪をまとめるだけの質素なものだし、衣だって刺繍の入ってない簡素なもの。最低限の化粧として口紅だけ塗った。
団扇も持たないし、領巾も肩にかけない。本当に簡素な装い。寝起きそのままでもよかったんだけど、まあ、最後の意地として? 身だしなみだけはきちんとしておきたい。
「じゃあ、ちょっと出かけてくるわね」
「里珠さま……」
「大丈夫よ。ちょっと皇帝陛下にご挨拶してくるだけだから」
心配そうにこっちを見てくる尚佳に、明るく笑ってみせる。
出かける先は思清宮。皇帝陛下の宮殿。
わたしはそこに、医師を手配してもらったことへの謝辞を述べに行くだけ。それだけ。
「じゃあね」
菫青宮に尚佳を残して、一人歩き出す。
(頬紅、さしておけばよかったかなあ)
そしたら、緊張してるのもごまかせたのに。尚佳を不安にさせてしまったことを後悔する。
回廊を渡り、門をくぐる。
この間はあわてて迷った末だったけど、今日はちゃんと正規のルートでたどり着く。後宮から人が訪れるなんて想定してないのか。思清宮の衛兵は、ものすごくビックリした顔をしていた。
「――菫青妃、陽里珠。陛下に申し上げたき儀がございまして、罷り越しました。お目通り、お許しくださいませ」
緊張して震えるのを必死にこらえ、朗々と声を張る。
噤鳥美人の名にかけて。ここでブルっちゃ女が廃る!
もう、後戻りはできない。何があっても前に進む!
ここからが、わたしの一世一代の大仕事なんだから!
10
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
純白の檻に咲く復讐のバラ
ゆる
恋愛
貴族社会で孤独と屈辱に耐えながらも、自分を見失わずに生き抜こうとするヒロイン・ジュリア。裏切られた過去に縛られ、愛を信じられなくなった彼女の前に現れたのは、幼なじみのレオナルドだった。彼の誠実な想いと温かな支えに触れ、少しずつ心を開いていくジュリア。
屋敷を拠点に新しい活動を始め、支援を必要とする人々に手を差し伸べることで、自分自身の人生を取り戻していく。純白のバラが咲き誇る庭で、ジュリアが見つけたのは過去を乗り越える強さと、共に歩む未来だった――。
裏切り、再生、そして真実の愛。困難な運命を乗り越え、自らの力で未来を切り開くヒロインの物語。
次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。
そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。
お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。
挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに…
意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いしますm(__)m
果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
機姫想杼織相愛 ~機織り姫は、想いを杼に、相愛を織る~
若松だんご
恋愛
――最高の布を織るためには、機織り女は、男を知ってはならない。
師匠でもある亡き祖母から、強く言われて育った里珠。
その言葉通り、十八になるまで、男も知らず、ただひたすらに機織りに熱中していたのだけど。
ある日、里珠の家の庭に落ちてきた男。如飛。
刑吏に追われていた彼に口づけられ、激しいめまいのような、嵐のような情動に襲われる。
けれど、それは一瞬のことで。もう永遠に彼には会わないと思ってたのに。
――面を上げよ。
いきなり連れてこられた皇宮で。里珠を待っていたのは、如飛。
彼は、この国の新しい皇帝で。自分を支えてくれる〝陰陽の乙女〟を捜していた。
代々皇帝の一族は、庶民にはない魔力を持って国を治めていて。その膨大な魔力を維持するためには、身の内にある陰陽を整えなくてはいけなくて。乙女は、皇族と交わることで、陰陽の均衡を保つ存在。
ゆえに、乙女なしに、皇帝には即位できず、如飛は、自らの乙女を必要としていた。
「別に、お前をどうこうしようとは思っていない。ただこの後宮で暮らしてくれればよい」
そう、如飛は言ってくれて、里珠のために、新しい機と糸を用意してくれるけど。
(本当に、それだけでいいの?)
戸惑う里珠に、重ねて如飛が言う。
「愛してもないのに交わるのは、互いに不幸になるだけだ。俺は、国のためだけに誰かを不幸にしたくない」
里珠を想うからこそ出た言葉。過去にいた、悲しい乙女を知っているからこそ、如飛は里珠を不幸にしたくなかった。
それらすべてを知った里珠は、如飛の危機に駆けつけて――?
街の機織り女と力を操る皇帝の、真っ直ぐ一途な恋物語。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる