ワケありなのに、執事がはなしてくれません!? ~庶子令嬢は、今日も脱出を試みる~

 ――お迎えに上がりました。ティーナお嬢さま。

 そう言って、白い手袋をはめた手を胸に当て、うやうやしく頭を下げたアイツ。アタシのいた寄宿学校に、突然現れた見知らぬ謎の若い執事。手にしていたのは、兄の訃報。8つ年上の、異母兄が事故で亡くなったというもの。

 ――亡き異母兄さまに代わって、子爵家の相続人となりました。

 え? は? 女子の、それも庶子だったアタシが?
 兄さまは母を亡くしたアタシを妹として迎え入れてくれたけど、結局は庶子だし。兄さまのお母さまには嫌われてたからこうして寄宿学校に放り込まれてたアタシが? 下町育ちのアタシが? 女子相続人? 子爵令嬢として?

 ――つきましては、この先ともに子爵家を守り立ててゆける伴侶をお探しください。

 いや、それ、絶対ムリ。子爵家ってオマケがついても、アタシを選んでくれる酔狂なヤツはいないって。
 なんて思うアタシの周り。どうやらいろいろ狙われてるみたいで。海に突き落とされそうになったり、襲われたり。なんだかんだで命が危ない。

 アタシ、このままじゃ殺される? なんかいろいろヤバくない? 逃げたほうがいいんじゃない?

 「どうしましたか、マイ・レディ」

 目の前で優雅に一礼するこの執事、キース。コイツが一番怪しいのよねえ。

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