ワケありなのに、執事がはなしてくれません!? ~庶子令嬢は、今日も脱出を試みる~
――お迎えに上がりました。ティーナお嬢さま。
そう言って、白い手袋をはめた手を胸に当て、うやうやしく頭を下げたアイツ。アタシのいた寄宿学校に、突然現れた見知らぬ謎の若い執事。手にしていたのは、兄の訃報。8つ年上の、異母兄が事故で亡くなったというもの。
――亡き異母兄さまに代わって、子爵家の相続人となりました。
え? は? 女子の、それも庶子だったアタシが?
兄さまは母を亡くしたアタシを妹として迎え入れてくれたけど、結局は庶子だし。兄さまのお母さまには嫌われてたからこうして寄宿学校に放り込まれてたアタシが? 下町育ちのアタシが? 女子相続人? 子爵令嬢として?
――つきましては、この先ともに子爵家を守り立ててゆける伴侶をお探しください。
いや、それ、絶対ムリ。子爵家ってオマケがついても、アタシを選んでくれる酔狂なヤツはいないって。
なんて思うアタシの周り。どうやらいろいろ狙われてるみたいで。海に突き落とされそうになったり、襲われたり。なんだかんだで命が危ない。
アタシ、このままじゃ殺される? なんかいろいろヤバくない? 逃げたほうがいいんじゃない?
「どうしましたか、マイ・レディ」
目の前で優雅に一礼するこの執事、キース。コイツが一番怪しいのよねえ。
※ 2024年1月に開催される、「第7回キャラ文芸大賞」にエントリーしました。コンテストでも応援いただけると幸いです。
そう言って、白い手袋をはめた手を胸に当て、うやうやしく頭を下げたアイツ。アタシのいた寄宿学校に、突然現れた見知らぬ謎の若い執事。手にしていたのは、兄の訃報。8つ年上の、異母兄が事故で亡くなったというもの。
――亡き異母兄さまに代わって、子爵家の相続人となりました。
え? は? 女子の、それも庶子だったアタシが?
兄さまは母を亡くしたアタシを妹として迎え入れてくれたけど、結局は庶子だし。兄さまのお母さまには嫌われてたからこうして寄宿学校に放り込まれてたアタシが? 下町育ちのアタシが? 女子相続人? 子爵令嬢として?
――つきましては、この先ともに子爵家を守り立ててゆける伴侶をお探しください。
いや、それ、絶対ムリ。子爵家ってオマケがついても、アタシを選んでくれる酔狂なヤツはいないって。
なんて思うアタシの周り。どうやらいろいろ狙われてるみたいで。海に突き落とされそうになったり、襲われたり。なんだかんだで命が危ない。
アタシ、このままじゃ殺される? なんかいろいろヤバくない? 逃げたほうがいいんじゃない?
「どうしましたか、マイ・レディ」
目の前で優雅に一礼するこの執事、キース。コイツが一番怪しいのよねえ。
※ 2024年1月に開催される、「第7回キャラ文芸大賞」にエントリーしました。コンテストでも応援いただけると幸いです。
あなたにおすすめの小説
猫ネコ☆ドロップ!
若松だんご
キャラ文芸
――あたし、猫になっちゃった!?
いつの間にかポケットに入っていた水色のドロップ。それを舐めた途端、みるみる間に体が小さくなっていって。
あたし、猫になっちゃった!
ちいさな灰色ハチワレ猫。
なんで、どうして、ウソでしょ、ブミャミャミャミャア~~!
マンションの部屋の前で、オタオタしてたあたし。そこに
「あれ、猫?」
やって来たのは、お隣に住む、佐保宮志乃さま。あたしの推し、乙女ゲーム『何度でもキミと恋する約束を』(略して「ナンキミ」)のキャラ、シノ・グランディールさまのソックリさん。とってもイケメン大学生。
「閉め出されたの? 仕方ないな」
その志乃さまが、あたしを抱き上げ、ご自身の部屋に。
猫として、お隣の預かりものとして、あたし(猫)を大事にしてくださる志乃さまだけど。
「お前、――メスか」
フッ、フギャアアアアアッ!
志乃さまのお腹チェック。あたし、もう、お嫁に行けない。クスン。
そんなこんなの猫ライフ。一定の時間が経てば人に戻れることもわかって。
(もうちょっとだけ、志乃さまを近くで見ていたいな。推し似、三次元志乃さま堪能! 猫なら、いつもは出来ないようなことも大胆に。ムフフ)
なーんて欲張ったものだから。ウッカリ、志乃さまの前で元の筒井のどかに戻ってしまって……。ストーカー女認定。
「このこと、誰にも話さない代わりに、俺の言う事きいてよ」
ななな、なんでしょう。ニヤリと笑った志乃さま。二次元シノさまと違って、なんか怖い。
「俺のカノジョになって」
――――へ? カノジョ? なんで? あたしが?
あ! そうか! 女よけってことですね!
現実にそういうこと言う人、初めて見たけど。そっか、そうですよね、志乃さまほどかっこよかったら、そういう事案もありますよね!
わかりました! この筒井のどか、三次元志乃さまのボディガードとして、女よけ、ニセモノカノジョ、頑張って務めさせていただきます!
推し似志乃さまを護る、ニセモノカノジョ。これも立派な「推し事」です!
オレの師匠は職人バカ。~ル・リーデル宝石工房物語~
若松だんご
児童書・童話
街の中心からやや外れたところにある、「ル・リーデル宝石工房」
この工房には、新進気鋭の若い師匠とその弟子の二人が暮らしていた。
南の国で修行してきたという師匠の腕は決して悪くないのだが、街の人からの評価は、「地味。センスがない」。
仕事の依頼もなく、注文を受けることもない工房は常に貧乏で、薄い塩味豆だけスープしか食べられない。
「決めた!! この石を使って、一世一代の宝石を作り上げる!!」
貧乏に耐えかねた師匠が取り出したのは、先代が遺したエメラルドの原石。
「これ、使うのか?」
期待と不安の混じった目で石と師匠を見る弟子のグリュウ。
この石には無限の可能性が秘められてる。
興奮気味に話す師匠に戸惑うグリュウ。
石は本当に素晴らしいのか? クズ石じゃないのか? 大丈夫なのか?
――でも、完成するのがすっげえ楽しみ。
石に没頭すれば、周囲が全く見えなくなる職人バカな師匠と、それをフォローする弟子の小さな物語
とびきりのクズに一目惚れし人生が変わった俺のこと
未瑠
BL
端正な容姿と圧倒的なオーラをもつタクトに一目惚れしたミコト。ただタクトは金にも女にも男にもだらしがないクズだった。それでも惹かれてしまうタクトに唐突に「付き合おう」と言われたミコト。付き合い出してもタクトはクズのまま。そして付き合って初めての誕生日にミコトは冷たい言葉で振られてしまう。
それなのにどうして連絡してくるの……?
アオハルオーバードーズ!
若松だんご
青春
二度とない、高二の夏! 十七の夏!
「アオハルしたい!」と騒ぎ出した友人、健太。彼に巻き込まれるようにして始まった、「アオハルオーバードーズ計画」。
青春に、恋は外せない、必須事項。だから。
僕は、「家が近所」という理由で、クラスメイトの山野未瑛と強引にカップルにされてしまう。
全校生徒20人にも満たない、廃校寸前の小さな海辺の高校。僕たち二年生は、わずかに6人。それぞれが誰かとお試しカップルになり、「恋とはなにか」を探す日常。
いっしょに登下校。互いにお弁当を作ってくる。時に二人で買い食いして。時にみんなでカラオケしたり。思いっきりバカをやったり、腹の底から笑ったり。
騒がしく落ち着かない初夏の僕たち。
僕、大里陽と絵を描くのが好きな山野未瑛。言い出しっぺ川嶋健太と一年生の長谷部明音。陸上部の長谷部逢生と海好き鬼頭夏鈴。本好きで日下先生推しの榊文華。
アオハルってナニ? 何をしたら、アオハルなわけ?
試行錯誤、行き当たりばったり。正解なんて見つからない。正解なんてないのかもしれない。
でも、楽しい。でも、苦しい。そして、切なく。そして、愛しい。
なんでもない、普通の初夏。他愛のない高校生活。そんな一日一日が、キラキラと輝く宝物のように、サラサラと指の隙間からこぼれ落ちる砂のように流れ去っていく。
伊勢志摩の小さな海辺の町で繰り広げられる、甘く切ない恋の物語。
完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!
音爽(ネソウ)
恋愛
正妃サハンナと側妃アルメス、互いに支え合い国の為に働く……なんて言うのは幻想だ。
頭の緩い正妃は遊び惚け、側妃にばかりしわ寄せがくる。
都合良く働くだけの側妃は疑問をもちはじめた、だがやがて心労が重なり不慮の事故で儚くなった。
「ああどうして私は幸せになれなかったのだろう」
断末魔に涙した彼女は……
上から王子と底辺令嬢。~押しつけ恋愛、間に合ってます~
若松だんご
恋愛
王太子殿下の花嫁さがし。
十七から二十五歳までの貴族の令嬢はすべて強制参加という、花嫁さがし。ふざけんじゃないわよと思わないでもないけれど、参加しなけりゃ、お家がお取り潰しになると言われちゃ仕方ない。
ギリギリ選考基準に引っかかってしまったからには、落選希望で参加するしかない。
けど、その思惑はひょんなことからハズレてゆき……。
――喜べ!! キサマを最終選考に残してやったぞ!!
どこまでも上から目線。居丈高。高圧的。高飛車。
ふんぞり返って腰に手を当て、ハーハッハッハッと高笑いされて喜ぶヤツがいるだろうか!? いやいない。(反語的表現)
そもそも、私、最終選考に残してくれ、なんてお願いすらしてない。むしろ残すな、解放しろと思ってたぐらいだ。だから、「ありがとう」とも、「感謝します」とも言わない。
淡々と、白けた目で目の前の男を眺めるだけ。もちろん顔は、お面のように無表情。
「なんだ!? うれしすぎて言葉もでないか? ん!?」
いいえ、まったくそんなことはありません。むしろ、残されて迷惑です。
嫌われて、皿の端っこに残されたピーマンやニンジンはこんな気分なんだろうか。
「そうだろう、そうだろう。あれだけの難関をくぐり抜けての最終選考だからな。喜ばぬはずがない」
いやいや。
話、聞いてます!?
今の私、どのへんが喜んでいると?
勝手にウンウンと納得したように頷くなっ!!
「このままいけば王太子妃、つまりはオレの妻になれるのだからな。お前のような令嬢には望外の喜びといったところか」
いえいえ。
どっちかというと青天の霹靂。降って湧いた災難。
疫病神にでも憑りつかれた気分です。
どこをどう見たら、私が候補に選ばれて喜んでいるように見えるのか。
勝手に始まって、勝手に目をつけられた私、アデル。
お願いだから自由にさせてよ、このクソバカ高飛車上から王子!!
神嫁、はじめました。
若松だんご
キャラ文芸
「申し訳ありませんが、この書類は受理できません」
パスポート取得のため、戸籍謄本を取りに行った役所で言われたこと。申請書の苗字が違う。住所が違う。そして。
「倉橋日菜子さん。アナタ、結婚されてますよね?」
――は?
私、これからカレシと、うれしはずかし海外旅行に出かけるはずだったんですけど?
結婚? いつの間に? 誰が? 誰と?
ややこしい女はゴメンだと、カレシにフラれ(フリ返した)、向かった先は野賀崎町。私の曽祖父母が暮らす、一次産業と年寄りしか残ってない町。こんなしょぼくれた町だから、老眼ヒドすぎで戸籍を書き間違えたのよ。そうよ。そうに決まってるわ。
「よう来たなあ」
意気込んで町にたどり着いた私を待ち受けてた曽祖父母と、なぜか町の人たち?
「さあ、行くぞ、日菜子」
どこへ?
質問する間もなく、無理やり着替えさせられ運ばれたのは、山の中腹にある神社。
「待っていたぞ、吾妹子よ」
そこに立っていた青年。ってか、「ワギモコ」ってナニ?
「吾妹。つまり、吾の妻ということ。汝は吾の妻なのだ」
はぁあぁあっ!?
なに言ってんの、この人。顔はいいのに、中身は残念な人?
「吾は人ではない。この野賀崎を守る神だ」
なんかますますヤバい人ですけど???
どうやら、幼い頃に山で迷子になったのを助けてくれたのがこの(自称)神様で。その時、将来をともにすることを約束してたとかなんとかで。だから、(勝手に)私と入籍させてたんだとか。
「日菜子に悪い虫がつきそうだったからな」
だったからな――って。
「勝手に戸籍改ざんすんなっ!」
神様だって何様だって、勝手に結婚させられてうれしいわけない! 私を元の倉橋日菜子に戻して!