猫ネコ☆ドロップ!

 ――あたし、猫になっちゃった!?

 いつの間にかポケットに入っていた水色のドロップ。それを舐めた途端、みるみる間に体が小さくなっていって。
 あたし、猫になっちゃった!
 ちいさな灰色ハチワレ猫。
 なんで、どうして、ウソでしょ、ブミャミャミャミャア~~!
 マンションの部屋の前で、オタオタしてたあたし。そこに
 「あれ、猫?」
 やって来たのは、お隣に住む、佐保宮志乃さま。あたしの推し、乙女ゲーム『何度でもキミと恋する約束を』(略して「ナンキミ」)のキャラ、シノ・グランディールさまのソックリさん。とってもイケメン大学生。
 「閉め出されたの? 仕方ないな」
 その志乃さまが、あたしを抱き上げ、ご自身の部屋に。
 猫として、お隣の預かりものとして、あたし(猫)を大事にしてくださる志乃さまだけど。
 「お前、――メスか」
 フッ、フギャアアアアアッ!
 志乃さまのお腹チェック。あたし、もう、お嫁に行けない。クスン。
 そんなこんなの猫ライフ。一定の時間が経てば人に戻れることもわかって。
 (もうちょっとだけ、志乃さまを近くで見ていたいな。推し似、三次元志乃さま堪能! 猫なら、いつもは出来ないようなことも大胆に。ムフフ)
 なーんて欲張ったものだから。ウッカリ、志乃さまの前で元の筒井のどかに戻ってしまって……。ストーカー女認定。
 「このこと、誰にも話さない代わりに、俺の言う事きいてよ」
 ななな、なんでしょう。ニヤリと笑った志乃さま。二次元シノさまと違って、なんか怖い。
 「俺のカノジョになって」
 ――――へ? カノジョ? なんで? あたしが?
 あ! そうか! 女よけってことですね!
 現実にそういうこと言う人、初めて見たけど。そっか、そうですよね、志乃さまほどかっこよかったら、そういう事案もありますよね!
 わかりました! この筒井のどか、三次元志乃さまのボディガードとして、女よけ、ニセモノカノジョ、頑張って務めさせていただきます!
 推し似志乃さまを護る、ニセモノカノジョ。これも立派な「推し事」です!
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