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5.復讐

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「セラフィーナ・アルトワよ、そなたは永久の世を生きる不死王・アゴールの伴侶となることを誓った。口付けが異論なき証となる――」

 アゴールはそう言うと鎖を軽く引きちぎった。
 まるで、雑草を引き抜くように。

「望みを言うがいい。何を望む? この世の支配か? 尽きることなき富か? 永遠の生か?」

 湖のような色をした瞳がセラフィーナを見つめる。
 見ているだけで魂が吸い込まれそうになる。

「わ、私は…… 父と母の仇を……」
「ほう。遠慮深いものだ」

 すっと口の端を上げアゴールは笑った。

「つまるところ、男爵令嬢・トゥーリア・ウルネルと、リオルガンド王国、第一王子ステールを殺せばよいのか?」

「待って! そのふたりが本当に、絶対に仇なの?」

「ほう、疑うか…… ではここを出で、証明してみせよう」

 不死王・アゴールと契ったセラフィーナ。
 ふたりは地下室から出た。

        ◇◇◇◇◇◇

「この者が密偵であり、偽の反乱計画を作ったのだ。そうだな」

 アゴールは魔方陣を展開し、呪文を唱えた。
 青い光に包まれた魔方陣。
 その光の中に人影があった。屋敷に人を召還したのだった。
 アゴールはその男が密偵であり、偽の反乱計画の実行犯だと言った。
 セラフィーナも知った顔だった。
 下男の一人だった男だ。

「そんな、俺は何も知らない。やってない」

「認めよ、認めれば命だけは助けよう」

「あ、あ、あ、あ、あ」

 男はアゴールに見つめられ、崩れ落ちそうになる。
 圧倒的な美貌は、恐怖となり男に襲い掛かっていた。
 
「そ、そうです。やりました。命だけは…… 命だけは……」

「よかろう。命は助けよう。ただしだ……」

 アゴールはすっと人差し指を男の額に当てた。
 ほくろのような黒い点がそこにできた。

「この黒き星は、己の心の闇を食らって大きくなる。育てすぎぬよう注意することだ」

 男の額にできた黒い星がうごめき、その大きさを増していく。
 男は悲鳴を上げ、許しを請うた。

(やっぱり、トゥーリアと王子が……)

 セラフィーナは自分の疑いが正しかったことを確信した。
 
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