5 / 7
5.復讐
しおりを挟む
「セラフィーナ・アルトワよ、そなたは永久の世を生きる不死王・アゴールの伴侶となることを誓った。口付けが異論なき証となる――」
アゴールはそう言うと鎖を軽く引きちぎった。
まるで、雑草を引き抜くように。
「望みを言うがいい。何を望む? この世の支配か? 尽きることなき富か? 永遠の生か?」
湖のような色をした瞳がセラフィーナを見つめる。
見ているだけで魂が吸い込まれそうになる。
「わ、私は…… 父と母の仇を……」
「ほう。遠慮深いものだ」
すっと口の端を上げアゴールは笑った。
「つまるところ、男爵令嬢・トゥーリア・ウルネルと、リオルガンド王国、第一王子ステールを殺せばよいのか?」
「待って! そのふたりが本当に、絶対に仇なの?」
「ほう、疑うか…… ではここを出で、証明してみせよう」
不死王・アゴールと契ったセラフィーナ。
ふたりは地下室から出た。
◇◇◇◇◇◇
「この者が密偵であり、偽の反乱計画を作ったのだ。そうだな」
アゴールは魔方陣を展開し、呪文を唱えた。
青い光に包まれた魔方陣。
その光の中に人影があった。屋敷に人を召還したのだった。
アゴールはその男が密偵であり、偽の反乱計画の実行犯だと言った。
セラフィーナも知った顔だった。
下男の一人だった男だ。
「そんな、俺は何も知らない。やってない」
「認めよ、認めれば命だけは助けよう」
「あ、あ、あ、あ、あ」
男はアゴールに見つめられ、崩れ落ちそうになる。
圧倒的な美貌は、恐怖となり男に襲い掛かっていた。
「そ、そうです。やりました。命だけは…… 命だけは……」
「よかろう。命は助けよう。ただしだ……」
アゴールはすっと人差し指を男の額に当てた。
ほくろのような黒い点がそこにできた。
「この黒き星は、己の心の闇を食らって大きくなる。育てすぎぬよう注意することだ」
男の額にできた黒い星がうごめき、その大きさを増していく。
男は悲鳴を上げ、許しを請うた。
(やっぱり、トゥーリアと王子が……)
セラフィーナは自分の疑いが正しかったことを確信した。
アゴールはそう言うと鎖を軽く引きちぎった。
まるで、雑草を引き抜くように。
「望みを言うがいい。何を望む? この世の支配か? 尽きることなき富か? 永遠の生か?」
湖のような色をした瞳がセラフィーナを見つめる。
見ているだけで魂が吸い込まれそうになる。
「わ、私は…… 父と母の仇を……」
「ほう。遠慮深いものだ」
すっと口の端を上げアゴールは笑った。
「つまるところ、男爵令嬢・トゥーリア・ウルネルと、リオルガンド王国、第一王子ステールを殺せばよいのか?」
「待って! そのふたりが本当に、絶対に仇なの?」
「ほう、疑うか…… ではここを出で、証明してみせよう」
不死王・アゴールと契ったセラフィーナ。
ふたりは地下室から出た。
◇◇◇◇◇◇
「この者が密偵であり、偽の反乱計画を作ったのだ。そうだな」
アゴールは魔方陣を展開し、呪文を唱えた。
青い光に包まれた魔方陣。
その光の中に人影があった。屋敷に人を召還したのだった。
アゴールはその男が密偵であり、偽の反乱計画の実行犯だと言った。
セラフィーナも知った顔だった。
下男の一人だった男だ。
「そんな、俺は何も知らない。やってない」
「認めよ、認めれば命だけは助けよう」
「あ、あ、あ、あ、あ」
男はアゴールに見つめられ、崩れ落ちそうになる。
圧倒的な美貌は、恐怖となり男に襲い掛かっていた。
「そ、そうです。やりました。命だけは…… 命だけは……」
「よかろう。命は助けよう。ただしだ……」
アゴールはすっと人差し指を男の額に当てた。
ほくろのような黒い点がそこにできた。
「この黒き星は、己の心の闇を食らって大きくなる。育てすぎぬよう注意することだ」
男の額にできた黒い星がうごめき、その大きさを増していく。
男は悲鳴を上げ、許しを請うた。
(やっぱり、トゥーリアと王子が……)
セラフィーナは自分の疑いが正しかったことを確信した。
0
お気に入りに追加
105
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
わたしの愛する黒い狼
三谷玲
恋愛
めでたしめでたし。
で終わるおとぎ話。そのお話の続きなんて誰も興味はないんでしょう?
でも、それほんとにおめでたいのかしら?
リーレイ公太子の婚約者だったアビゲイル・コースティはその座をファネットゥ王女に奪われた上に彼女に后教育を施すことに。そんななか新たにアビゲイルの婚約者になったアシュリーとファネットゥ王女が恋仲に?
二度も婚約者を奪われたアビゲイルだが彼女には愛する黒い狼がいた。
黒い狼✕辺境伯令嬢の双方溺愛話です
テンプレな婚約破棄、悪役令嬢ものをベースにした異世界恋愛譚
2020/02/10本編は完結済みですが”ヒーロー”視点を追加連載してます
全七話更新予約済みです
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
妻と夫と元妻と
キムラましゅろう
恋愛
復縁を迫る元妻との戦いって……それって妻(わたし)の役割では?
わたし、アシュリ=スタングレイの夫は王宮魔術師だ。
数多くの魔術師の御多分に漏れず、夫のシグルドも魔術バカの変人である。
しかも二十一歳という若さで既にバツイチの身。
そんな事故物件のような夫にいつの間にか絆され絡めとられて結婚していたわたし。
まぁわたしの方にもそれなりに事情がある。
なので夫がバツイチでもとくに気にする事もなく、わたしの事が好き過ぎる夫とそれなりに穏やかで幸せな生活を営んでいた。
そんな中で、国王肝入りで魔術研究チームが組まれる事になったのだとか。そしてその編成されたチームメイトの中に、夫の別れた元妻がいて………
相も変わらずご都合主義、ノーリアリティなお話です。
不治の誤字脱字病患者の作品です。
作中に誤字脱字が有ったら「こうかな?」と脳内変換を余儀なくさせられる恐れが多々ある事をご了承下さいませ。
性描写はありませんがそれを連想させるワードが出てくる恐れがありますので、破廉恥がお嫌いな方はご自衛下さい。
小説家になろうさんでも投稿します。
【完結】用済みと捨てられたはずの王妃はその愛を知らない
千紫万紅
恋愛
王位継承争いによって誕生した後ろ楯のない無力な少年王の後ろ楯となる為だけに。
公爵令嬢ユーフェミアは僅か10歳にして大国の王妃となった。
そして10年の時が過ぎ、無力な少年王は賢王と呼ばれるまでに成長した。
その為後ろ楯としての価値しかない用済みの王妃は廃妃だと性悪宰相はいう。
「城から追放された挙げ句、幽閉されて監視されて一生を惨めに終えるくらいならば、こんな国……逃げだしてやる!」
と、ユーフェミアは誰にも告げず城から逃げ出した。
だが、城から逃げ出したユーフェミアは真実を知らない。
私をもう愛していないなら。
水垣するめ
恋愛
その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。
空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。
私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。
街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。
見知った女性と一緒に。
私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。
「え?」
思わず私は声をあげた。
なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。
二人に接点は無いはずだ。
会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。
それが、何故?
ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。
結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。
私の胸の内に不安が湧いてくる。
(駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)
その瞬間。
二人は手を繋いで。
キスをした。
「──」
言葉にならない声が漏れた。
胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。
──アイクは浮気していた。
貴方もヒロインのところに行くのね? [完]
風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは
アカデミーに入学すると生活が一変し
てしまった
友人となったサブリナはマデリーンと
仲良くなった男性を次々と奪っていき
そしてマデリーンに愛を告白した
バーレンまでもがサブリナと一緒に居た
マデリーンは過去に決別して
隣国へと旅立ち新しい生活を送る。
そして帰国したマデリーンは
目を引く美しい蝶になっていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる