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四章 〜原作突入〜

九十一話 『面倒ごと』

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問題用紙と回答用紙が配られ、いよいよ期末テストが始まる。私はカリカリとシャープペンシルで問題を解き始める。


瑛太くんの受験に力を入れていた割には結構解けるじゃん!と思いながら私は問題をスラスラ解いていく。……自分のことながら凄いと思う。


が、流石に難しい問題になると解けなくなる。……ここは、この公式を使うんだっけ……?え、それとも違う公式を使うのか?


「(瑛太くんに教えた範囲なら楽勝なんだけどなぁ……)」


当たり前の話だが、受験生と現役高校生では勉強する範囲が違う。美穂ちゃんもたまに瑛太くんと颯斗くんの勉強を教えているのに、どうしてこんなにも差が出てしまうんだろうか……これに関しては、才能なのかなぁ……それとも努力?……どちらにせよ、私と美穂ちゃんは学力に大きな差があるのは間違いない。


私は、そんなことを考えながらも問題を解く手を止めなかった。


△▼△▼


そしてあっという間にテストは終わり、私たちはお昼ご飯を食べて帰る準備をしていた。……テストの結果はまあまあだったかな……平均点くらいは取れた……と思う。自信はないけどね……


そして――。


「ねぇ、城ヶ崎さん……」


バイト中、珍しく颯斗くんに声をかけられた。私は颯斗くんの方を見ると、彼は真剣な表情をしてこちらを見ていた。


「な、何?颯斗くん」


思わず、声を上ずらせてしまった……だって、あの無言でクールイケメンがいきなり話しかけてくるんだよ!?驚くよ!!心臓に悪いってば!


「最近……姉さんが変な男と会っているみたいなんだよね……」


「………変な男?」


変な男って……王子のことか……?まぁ、確かに王子は変な人だけどさ……でも、その言い方だとまるでストーカーみたいだ。


「そう、やたら高い車に乗っている変な男と一緒なんだよ、姉さんは友達とか言っているけど、俺は全然信じていないから!」


…颯斗くん……珍しく声を荒げてる……姉思いというか……シスコンというか……


「え!?美穂先輩、変な人に絡まられちゃったんですか!?大丈夫なんですか!?」


私の横にいた瑛太くんが驚いたように言った。……うん、普通に心配になるよね……


「男……って伊集院様のことでしょうか……?」
 

「伊集院……なのかは分からないけど、そいつかもしれない。それで……城ヶ崎さん、そいつは姉さんに相応しい男だと思う?」


颯斗くんが怖い顔して聞いてくる。…うう……迫力あるなぁ………


「美穂ちゃんと伊集院様のことならお似合いだと私は思うわ。いつも学年一位二位を争っているし、お互いに信頼している……と思っているわ」


最後の方は憶測でしかないけどね……実際どう思っているのかなんてわからないし。


「………そんなに優秀なの?そいつは……」


「ええ。優秀よ。それに見た目もいいし」


私の言葉を聞いた瞬間、颯斗くんは何やら考え事をしている。……何が引っかかってるんだろ?


「あの……颯斗くん、どうしたの?」


「いや、伊集院……って聞いたことあるような……ないような……」


颯斗くんは記憶を辿っているようだ。……まぁ、伊集院は……


「すみませーん。花が欲しいんですけど……」


「あ、はーい!」


颯斗くんの言葉を遮ってお客さんが来たので私はお客さんのところまで走っていく。


「お客様、どのお花をご希望でしょうか?」


と、言った後に白鷺学園の制服を着ていることに気付いた。……ここに通っている白鷺学園の生徒って………まさか……。


「……ああ、このバラを……って!お前……!」


驚いたように、私を見上げる王子。それは私も同じ。どうして王子がここにいるの?


「城ヶ崎……お前、ここでバイトしているのか?」


「ええ。そうですよ。文句あります?」


開き直ろう。私がここでアルバイトしていることは王子は興味ないだろうし、開き直っちゃえばいいんだ。
私がそう言うと、王子は少し考え込むようにして……


「お前の家ってそんなに家庭が苦しいのか……?」


憐れむ様な表情で言ってきた。……このやろう……!苦しくねーわ!お前の家程じゃねーけど、十分裕福な方だわ!! と、言いたいところだったが、私はグッと我慢する。
 

だって私は今は店員で王子は今お客様。ここで私がブチ切れて喧嘩をおっぱじめたら……確実にクビだ。


「いえ、社会勉強ですわー。伊集院様」


別にこれは嘘じゃない。そう、私は社会勉強のためにアルバイトをしていることになっているし、実際なってるし。


「……ふーん。ところで今日……月坂は……」


チラチラと王子が店内を見る。……恋する少年みたいになってる……!


「……み…いえ、つ、月坂さんはいらっしゃいませんわ」


「そう……なのか……」


あからさまにガッカリする王子。これは恋しているのは確定だね…!美穂ちゃんの方はまだよくわからないけど。


「……恋してるんですか?」


「はぁ?そ、そんなわけないだろう」


「いやいや。恋してますよね?恋する男の子に見えますよ」


私のその言葉に王子は顔を真っ赤にして怒る……かと思いきや、また考え事をしていた。


「………そうか」


王子は何かに気付いたようにハッとした表情をした。そして、少し考え込むようにして……


「城ヶ崎、何時にバイト終わる?」


「え、えっと……あと1時間くらいですかね」


私は時計を見て答える。すると王子は何か決心したように私の目を見た。


「わかった。………バイトが終わったら相談に乗ってほしいことがある」


「え、ええ。いいですけど……相談?」


――これはまた珍しい。私なんかに相談するなんて……一体なんの相談だろう? 私は首を傾げたが、王子は何も言わずに店を出ていった。……え。一時間後来るの?


「………何か面倒なことに首を突っ込んでしまった気がする……」


と、私は後悔した。
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