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三章〜出会いと別れ〜

五十九話 『人気』

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王子の人気が更に高まっている。これは気のせいではなく、事実だった。
女子は勿論、男子にも人気が上がっているのは目に見えた。


香織様の恋を諦めた、というのも原因の一つだろう。あれ以来、王子を狙う目が絶えないし。まぁ、本人は『恋は暫くいい』とぼやいているけど。


西園寺は華鈴様がいるからかなぁ。正式には付き合ってないけど、側から見たらもう恋人同士だし、華鈴様のことを目の敵にしていた西園寺のファンも諦めムードだもんなー。


まぁ、西園寺の華鈴様の好意を隠そうともしてないし、華鈴様も満更でもない感じだからね……お兄様の恋諦めたみたいだし。


そして私はというと……私は特に恋愛事はないです(ガチギレ)。いや、マジで。
私に言い寄ってくる男共なんて皆、私の容姿にしか興味がないんだもの!


酷い話だ。街を歩けば比較的にナンパされるけど、下心丸見えなんだよね……。そんな奴らに靡くわけないじゃん?私の好みは私のことを大事にしてくれて、優しくしてくれる人だし。


私の恋の相手は美穂ちゃんのところの瑛太くんだったりするのだろうか……?瑛太くんの顔を思い浮かべながら考えるものの――、


「(私、あの瑛太くんのこと何も知らないわ……)」


私が原作で知っているだけであっちは私のことなんて知らないだろうし、接点もないし。原作だと一目惚れってなってるし、ここの世界線でも一目惚れされた感じだけど、それだってただ単に顔が良いからだと思ってしまう。


最初は一目惚れだった感じだし、あれ以来会ってないし連絡先すら交換していない。美穂ちゃんとも会ってないし、連絡も取ってないから彼の近況を知る術もないのだ。


「透華様……?どうかされましたか?ボーッとして……」


そう思っていると、美月さんに声をかけられた。……あ、今授業中じゃん。ヤバっ……と思っていると、


「透華様、授業はもう終わりましたよ?」


佐川は苦笑いしながら教えてくれた。……え?授業終わったの?いつの間に!?ボーッとしすぎだろ……!!


「ああ……そうなのですね」


恥ずかしさを隠すように頬に手を当ててながら教科書を持ち、


「さ、早くいきましょう。お二人さん。次移動教室ですよ!」  


と言って歩き出した。すると後ろの方から『待ってください!』と言う声が聞こえてきた。


……高等部になったら原作が始まる。その日までに私がどうなるかは分からない。運命の強制力で破滅するかもしれなけれど、それでも抗うだけ抗いたいなと思う。
とりあえず今は勉強頑張ろう。そう思いながら私は後ろを振り返った。
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