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三章〜出会いと別れ〜

五十五話 『放課後』

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季節は夏。あの中間テストの件はお母様達は盛大に煽られていたらしい。それについては申し訳なさは感じてはいるが、もう過ぎたことなのでどうしようもないし、お母様達から圧をかけられたりしたのでいつも以上に勉強を頑張ろうと決めたのだ。


決して親と一緒に煽りたいわけじゃないよ!決して、緑川に一泡吹かせたいとかそういうことは思っていないんだからねっ!!……嘘ですごめんなさい。


本当は緑川すみれに一泡吹かせたいし、なんならマウントを取ってやりたいと思っている。性格が悪いと罵られても構わない。私はただ、あの女の悔し顔が見たいのだ。


中間テストの件以来、私に対して何かと突っかかってくるし、私のことを馬鹿にして見下してくる。正直言ってウザいし。その癖、華鈴様には媚びを売るのだから尚更腹立たしい。


まぁ、華鈴様が相手にしてないけどな。ざまぁ~って思うわ。


「透華様?どうかしました?」


美月さんが心配そうに声をかけてきた。いけない、考え事をしていたらボーッとしていたようだ。


今は放課後。今日はブラブラと佐川と美月さんと3人で街に出ていた。たまには息抜きをしましょうということで誘ったのだが、2人とも喜んでくれたようで良かった。


まぁ、佐川枠は華鈴様だったんだけどねぇ……華鈴様は西園寺様と先約があったらしくて断られたのだ。


……最近の華鈴様は西園寺とめっちゃくちゃ距離が近いんだよなぁ……付き合ってるんじゃないかと思うくらいの距離感なのだ。


最近の華鈴様の行動や言動がツンデレにしか見えないんだよねぇ。満更でもない様子だし。西園寺も焦ってたりするのかねぇ……?お兄様の件は本人的には焦ってたりしてたのかなぁ。


今は解決したし、華鈴様もお兄様のことは吹っ切れた……と、本人の口から聞いたけどまだ恋心あってもおかしくはないよね……。
それにしても、本当に最近になって急接近している気がする。前まではあんなにも避けていたというのに……


今じゃ一緒にいるところをよく見かけるようになった。……やっぱり、あれなのかなぁ。華鈴様がお兄様に失恋したし、傷心中の時に優しくされたから好きになった的なアレなのかしら?


西園寺って女の子の扱い慣れてそうだし。好きな人なら尚更だろう。失恋なんて西園寺からしたらめっちゃくちゃ好都合だよな……後、王子も何故か香織様のこと諦めたから罪悪感もないはずだし。


「……透華様?大丈夫ですか?」


佐川の声によってハッとする。どうやらまた考え事に没頭してしまっていたらしい。
いけないいけない。せっかくみんなで遊びに来ているんだものね。楽しまないと! 


私はそう思いながら笑顔で返事をした。


△▼△▼


その後はみんなでクレープを食べに行ったり、服屋を回ったりした。あの時間楽しかったなぁ……佐川も美月さんも服のセンスが良くて羨ましい限りである。


私なんか全然わからないもん。着れればなんでもいいという思考だからか、あまり服装に興味がないのだ。
まあでも、今日の買い物で美月さんと佐川で私に合う服を何点か見繕ってくれたのでそれを買った。


二人のセンスがめっちゃくちゃ光ってたし、似合いそうなものを沢山買ってしまった。だって可愛いかったしね。


と、まぁ、そんなこんなで楽しい放課後のお出かけは楽しめたし、これからも楽しみなことだらけだ。


「夏休みの前に期末テストがあるし…頑張らないと」


そしてあの憎き緑川すみれにマウントを取れるように……!とそう思った。
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