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『ジールとローズの話⑥』

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お客さんを待たせるといけないと思い、私はサレナにお礼を言うと急いでエントランスへと向かった。
お客さんが待っているという、応接室の前へと着くとドアをノックする。
すると中からどうぞという声が聞こえてきたので、ドアを開け中へと入ると…


「え……?ジール様?」


思わず声が漏れてしまった。ジール様はよっと片手を上げている。それだけで顔が赤くなっていく。恋という感情は本当に厄介だ。でも、なぜジール様がここに?と疑問に思っていると……


「今日は王子のお使いで来たんです」


と、ジール様が教えてくれた。お使い?しかも、王子から……?


「お使い、ですか……それも、王子から?嫌な予感しかしないのですが……」


悪いことを言っていることは自覚はしているが、本音が溢れてしまう。ジール様は、王子の使いで来た。この言葉に嫌な予感しかしない。しかもお使いが、王子からだなんて……絶対に何か企んでいるに違いない。
私がげんなりとしていると、ジール様は苦笑いを浮かべながら……


「気持ちは分かるけども……でも、今日は珍しく普通だからさ」


珍しくを強調するジール様。ジール様も王子のお使いで大変な目にあったのだろう。同情するわ……!しかし……


「普通、ですか…?」


「ああ。普通だ」


普通、という割にはジール様の表情がおかしい。何か言いたそうにしているが、口をモゴモゴとしている。
いつも飄々としているジール様が、ここまで言葉に詰まるなんて珍しいわね……
やはり普通ではないのでは?と思っていると、


「………ごめん。普通と言ったけども、それは嘘だ」


ジール様は言いづらそうに口を開いた。やっぱり普通ではなかったのね……じゃあ……一体何の用事なのだろう?私が不思議に思っていると、ジール様は言いづらそうにしながらも……


「……普通とか、感覚麻痺していたわ。ごめん、やっぱり王子は普通じゃない。でも、王子の頼みだ。だから……」


ため息を深々をついた。王子はジール様に何を頼んだのだろう? 私が不思議に思っていると、


「………ローズさんは嫌かもしれないけど。僕と付き合って欲しい」


……は? 今、ジール様なんて言った……?付き合うって聞こえたんだけど……聞き間違いかしら? 私は思わず目をパチパチとさせてしまう。何を言われのか理解が出来なかった。
ジール様はそんな私を見て、申し訳なさそうに頭をかきながら……


「これが王子の頼み。ローズさんとデートをして欲しい。と、頼まれた」


「それが普通の頼み事だと思ってたの!?」


思わずツッコミを入れてしまった。
だってどう考えても変だろう。私とデートするのが頼み事なんて……その時点で変だ。


それを普通と捉えていたジール様も変。こんなことを言う人じゃなかったはずだし……、


「感覚麻痺していたんだ……先までやってたのがあまりにも理不尽で過酷だったから……」


ジール様は遠い目をしていた。一体、ジール様に何があったのだろう……?この命令が普通だと思ってしまうほどのことだ。ろくでもない命令だったんだろうな……


でも……。


「それで……デート、ですか……」


ジール様とデート。別に嫌な気はしない。寧ろ、恋心を自覚し、ジール様を好きだと自覚した今、この誘いは嬉しい。
だけど……


「王子の誘いを断るのなんて言語道断。ローズさん、お願いだ」


ジール様はそう言って私の手を握ってきた。ジール様に手を握られると……顔が熱くなってく。なんて言う罪深い人なのだろう。ジール様は……! 


そんなことされたら、断れるわけない。だって本当に困っているみたいだし……
私はジール様から顔を逸らし、ボソッと呟く。
……王子の頼みだもの、仕方ないわ。うん、そうだわ。仕方ないの。
そう自分に言い聞かせながら、


「ええ」


と、頷いた。
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