13 / 39
共通ルート
『泳ぎ』
しおりを挟む
「ほーら。菜乃花。大丈夫だから!水は怖くないからね?」
お姉ちゃんはそう言って両手を繋いでくれたけど……。やっぱり怖いものは怖い。
「ほ、ほら!菜乃花ちゃん!私も一緒だよ!」
美咲さんが手を差し伸べてくれる。二人から手を繋がれている私は恐る恐るプールに入ろうとするが――、
「ああ!やっぱり無理ーーーっ!」
私はそう言いながらここから逃げ出した。……何故私がプールに来ているのかというと、それは数週間前に遡る――。
△▼△▼
『ねぇ、来週の日曜日ぐらいに、海に行かない?海』
家で小説を書いていると、真白先輩がLINEでそう言ってきた。海……か。……私には海にトラウマがある。泳げなくて、溺れてしまって死にかけた事があるのだ。
あのときはお姉ちゃんに助けてもらえたから良かったものの、もし誰もいなかったらと想像するとゾッとする。
だから海はトラウマなのだ。でも、せっかく誘ってくれてるんだもんなぁ……。断っちゃうのも申し訳ないし……
「…私は」
ふっと見ると、私以外は全員『行く』という返事をしていた。……どうしようかな。海に行くってことは水着になるんだよな……私、水着なんて持ってないんだよなぁ。中学の時はプールは全部見学で乗り切ったからスクール水着すらない。
いや、流石にみんなで行くのにスクール水着はないよな……。買いに行ってもいいんだけどお金がないし……いや、断れば良いのか。
『菜乃花ちゃんは来る??』
真白先輩からのメッセージだ。………めっちゃくちゃ圧を感じるわーー!こ……いや、断ればいいんだけど。いや、でも……
結局、断りきれずに海に行くことになってしまった。
△▼△▼
そして今、お姉ちゃんに泳ぎを教わっている。お姉ちゃん曰く、私は水を怖がってるだけで、別に運動神経が悪いわけじゃないらしい。
いや、でも……やはり、水は怖い。何度やっても足がつく感覚がないのだ。あとちょっとで頭まで沈んでしまうんじゃないかと思うほど深い気がする。
「いやー……やっぱり菜乃花ちゃん、水怖いんだね。私が真美に言っておこうか?」
美咲さんが心配そうな顔で言う。……確かにそうだ。このままじゃ迷惑をかけてしまうかもしれない。それに、お姉ちゃんにも負担がかかるだろうし……。
「…でもでも……!私は菜乃花に泳いでもらいたいわ!だって、泳げるようになった方が楽しいもの!」
………お姉ちゃん、優しいなぁ。その優しさに甘えてしまいそうになる……完璧なお姉ちゃんと、駄目駄目な妹……。この差は何なんだろうか。
そんなことを考えているうちに、もう1時間くらい経っていたようだ。
「でも……菜乃花ちゃんは無理しない方がいいんじゃ……」
美咲さんの言う通りだと思う。だけど……やっぱり泳げるようになりたい気持ちもある。そして何より――。
「い、いいえ!大丈夫です!!頑張ります!!」
その後、二時間の時間を費やし、やっとのことで多少は泳げるようになっていた。
△▼△▼
後はみんなで海を楽しむだけだと思っていたのだが……そう上手くはいかなかった。だって――、
「熱ね。今日はゆっくり休みなさい」
お姉ちゃんはそう言ってリンゴの皮を剥いている。……朝起きたら体が怠くて頭が痛かったのだ。肝心な日にこんなことになっちゃうなんて最悪だ。せっかく海に行けると思って楽しみにしてたのに……。
「菜乃花は頑張り屋だからね~。疲れが出ちゃったんだよきっと~」
そう言ってお姉ちゃんは私の頭を撫でてくれた。その手はとても温かかったけど……少し震えていたような気もした。
お姉ちゃんはそう言って両手を繋いでくれたけど……。やっぱり怖いものは怖い。
「ほ、ほら!菜乃花ちゃん!私も一緒だよ!」
美咲さんが手を差し伸べてくれる。二人から手を繋がれている私は恐る恐るプールに入ろうとするが――、
「ああ!やっぱり無理ーーーっ!」
私はそう言いながらここから逃げ出した。……何故私がプールに来ているのかというと、それは数週間前に遡る――。
△▼△▼
『ねぇ、来週の日曜日ぐらいに、海に行かない?海』
家で小説を書いていると、真白先輩がLINEでそう言ってきた。海……か。……私には海にトラウマがある。泳げなくて、溺れてしまって死にかけた事があるのだ。
あのときはお姉ちゃんに助けてもらえたから良かったものの、もし誰もいなかったらと想像するとゾッとする。
だから海はトラウマなのだ。でも、せっかく誘ってくれてるんだもんなぁ……。断っちゃうのも申し訳ないし……
「…私は」
ふっと見ると、私以外は全員『行く』という返事をしていた。……どうしようかな。海に行くってことは水着になるんだよな……私、水着なんて持ってないんだよなぁ。中学の時はプールは全部見学で乗り切ったからスクール水着すらない。
いや、流石にみんなで行くのにスクール水着はないよな……。買いに行ってもいいんだけどお金がないし……いや、断れば良いのか。
『菜乃花ちゃんは来る??』
真白先輩からのメッセージだ。………めっちゃくちゃ圧を感じるわーー!こ……いや、断ればいいんだけど。いや、でも……
結局、断りきれずに海に行くことになってしまった。
△▼△▼
そして今、お姉ちゃんに泳ぎを教わっている。お姉ちゃん曰く、私は水を怖がってるだけで、別に運動神経が悪いわけじゃないらしい。
いや、でも……やはり、水は怖い。何度やっても足がつく感覚がないのだ。あとちょっとで頭まで沈んでしまうんじゃないかと思うほど深い気がする。
「いやー……やっぱり菜乃花ちゃん、水怖いんだね。私が真美に言っておこうか?」
美咲さんが心配そうな顔で言う。……確かにそうだ。このままじゃ迷惑をかけてしまうかもしれない。それに、お姉ちゃんにも負担がかかるだろうし……。
「…でもでも……!私は菜乃花に泳いでもらいたいわ!だって、泳げるようになった方が楽しいもの!」
………お姉ちゃん、優しいなぁ。その優しさに甘えてしまいそうになる……完璧なお姉ちゃんと、駄目駄目な妹……。この差は何なんだろうか。
そんなことを考えているうちに、もう1時間くらい経っていたようだ。
「でも……菜乃花ちゃんは無理しない方がいいんじゃ……」
美咲さんの言う通りだと思う。だけど……やっぱり泳げるようになりたい気持ちもある。そして何より――。
「い、いいえ!大丈夫です!!頑張ります!!」
その後、二時間の時間を費やし、やっとのことで多少は泳げるようになっていた。
△▼△▼
後はみんなで海を楽しむだけだと思っていたのだが……そう上手くはいかなかった。だって――、
「熱ね。今日はゆっくり休みなさい」
お姉ちゃんはそう言ってリンゴの皮を剥いている。……朝起きたら体が怠くて頭が痛かったのだ。肝心な日にこんなことになっちゃうなんて最悪だ。せっかく海に行けると思って楽しみにしてたのに……。
「菜乃花は頑張り屋だからね~。疲れが出ちゃったんだよきっと~」
そう言ってお姉ちゃんは私の頭を撫でてくれた。その手はとても温かかったけど……少し震えていたような気もした。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」



すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…
アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。
婚約者には役目がある。
例え、私との時間が取れなくても、
例え、一人で夜会に行く事になっても、
例え、貴方が彼女を愛していても、
私は貴方を愛してる。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 女性視点、男性視点があります。
❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる