【完結】君に伝えたいこと

かんな

文字の大きさ
上 下
59 / 65
番外編

『中村優子の観察』

しおりを挟む


最近の弟はめちゃくちゃ浮かれている。浮かれている原因は分かっている。彼女が出来たのだ。それ自体は別にいいのだが――、


「ねぇ。私に会わせてよー。久しぶりにみのりちゃんに会いたーい」


「絶対ヤダ」


お願いしても、全然会わせてくれない。なんでよ。


「別に良いじゃない。ケチ」


「とにかくダメ!」


私が駄々をこねると、弟は鬱陶しそうにそう言って睨んできた。まったくもう。本当にケチなんだから。


「あー、もう!何なのよ!雄太くんもみのりちゃんに会わせてくれないし!もう!」


私は怒りながら自分の部屋に戻った。本当にイライラする!私、そんなに嫌われるようなことした?


「なんで会わせてくれないのよ。ムカつくわ、ホントに!」


私はベッドにダイブした。そして、枕に顔を埋めながら唸った。こうなったら、こっそり会いに行こうかしら?そうだ、そうしよう! でも、どうやって会おうかしら?


「(洋介や雄太くんにバレると面倒だし、慎重に考えなきゃね!)」


私は色々考えてスマホをポチポチ操作した。そして、思いついた作戦を実行することにした。それは――。


「(ふふん、これで完璧ね!)」


私はスマホの画面に映るみのりちゃんにメッセージを送った。


△▼△▼


私――中村優子は彼氏に憧れていた。幼い頃、少女漫画に出てくるヒーローみたいな彼氏が欲しかった。でも、現実は違った。
少女漫画に出てくるヒーローみたいな男子なんていない。いたら見てみたいものだ。


いや、いるのかもしれないけども少なくとも同級生にはいない。
だからこそ、私はずっと憧れていた。自分を守ってくれるような存在に。


しかし、そんなもんはいない。
小学生の時も中学生の時も高校生になっても――。


「あ、あの……」


不意にか細い声が聞こえてくる。振り返るとそこには、


「みのりちゃん!」


みのりちゃんがいた。彼女は緊張しているのか、顔を真っ赤に染めて俯いている。可愛いわぁ……『守りたくなる女子ランキング』があったら断トツで一位に輝いている可愛さなんだよなぁ。


「そ、それで……話したいことって……何でしょうか……?」


みのりちゃんはおずおずと尋ねてきた。その仕草も可愛らしい。
私はニマニマしながら、彼女を見つめる。うん、やっぱり可愛いわぁ! でも、ここで調子に乗ると嫌われるかもしれないから気を付けないとね。私は平静を装って答えることにした。
あぁ……ヤバいわ……私ったらニヤけそう……!


「あのね、みのりちゃん!私ね、貴方に会いたかったの!」


「私にですか!?」


私の言葉にみのりちゃんは驚いていた。そんなに驚くことか……?そんなに意外か?


「うん!私ね、ずっと貴方に会いたかったのよ!でも、雄太くんや洋介のガードが固くて全然会わせてくれなかったのよね!酷いと思わない!?」


「え……えっと……」


私が捲し立てるように話していると、みのりちゃんが困ったような顔をした。しまった、興奮してしまったようだ。


「ご、ごめんなさいね。私ったらつい……」


興奮しすぎて早口に捲し立てるのは私の悪い癖。これのせいで何度も失敗している。友達との会話でも、よくやらかしてしまうのだ。気を付けないとな……。
私が反省していると、


「だ、大丈夫……ですよ……」


みのりちゃんがおずおずと呟いた。か細い声だけど、しっかり聞こえた。はぁ?洋介はこんなかわいい子を私に会わせなかったっていうの?


「(あー!もう!みのりちゃんかわいい!)」


私は心の中で悶え苦しみながら、みのりちゃんを見た。彼女は恥ずかしそうにモジモジしている。
はぁ……本当にかわいいわぁ……!私は心の中で悶え苦しみながら、みのりちゃんを見ていた。すると、彼女はおずおずと私を見ると口を開いた。


「……あの……聞きたいことがあるんですけど……」


みのりちゃんはモジモジしながら聞いてくる。私は首を傾げた。聞きたいこと?なんだろう? 彼女の聞きたいことって…もしかしてなくても洋介のことか?


「(それならウェルカムだけども!)」


私はニヤニヤしながら、みのりちゃんを見つめる。彼女は緊張した面持ちで私を見ていた。


「…あ、あの……私、お姉さんのことをもっと知りたくて……」


予想外の言葉に私は目を見開いた。お姉さん?お姉さんって私のことか?いや、当たり前なんだけども……でも、なんで私のこと知りたいんだ?


「別にいいけど……なんで?」


「そ、その……洋介くんからよくお姉さんのことよく聞くんです。それで面白い方なんだなって思って……」


初めて知った。洋介の奴、私のこと話してたんだな……!そのことについてもっと詳しく聞きたいところだが……!


「面白い人ってどんな風に言ってるの?私の悪口?」


私は興味津々でみのりちゃんに尋ねた。どんな風に言ってるのか気になる!悪口だったら泣くぞ!いや、それか照れ隠ししている可能性もあるな……。


「わ、悪口……ではないです。どっちかというと……その……褒めてました」


「マジ!?」


みのりちゃんの言葉に私は驚いた。え!?私のこと褒めてくれるの!?洋介が!?私を褒めるとか天地がひっくり返っても有り得ないと思ってたわ。


「うざい、なんて口では言ってますけど……お姉さんの話をしている時がすごく楽しそうな感じだったんです……!だから、もっと知りたいなって……!」


キラキラと目を輝かせて語るみのりちゃん。そんなみのりちゃんに私は悶えそうになる。弟なんかより、みのりちゃんの方が可愛いわ!


「かわいい~~!!ねぇねぇ!みのりちゃん!私の弟のどこが好き!?」


私は興奮しながら、みのりちゃんに詰め寄る。


「え!?よ、洋介くんの好きなところですか……!?」


みのりちゃんは顔を真っ赤にして俯いた。あぁ~!もう!かわいいなぁ~!この初々しさがたまんないよ!


「……洋介くんの優しいところが……好きです。私が言葉に詰まっている時も優しくフォローしてくれるところとか……」


もじもじしながら答えるみのりちゃん。その仕草もかわいいわぁ……!その後、彼女はもっと弟のことを話し始めた。それはどれもこれも弟がかっこいい場面ばかりだ。


私としては美化しすぎなんじゃない?と思う部分もあったし、みのりちゃんの前で格好つけてるな……と思うところもあった。


「かー。あいつ格好つけるからねぇ~!みのりちゃん、騙されちゃダメだよー?あいつはズボラでだらしない奴なんだから!」


私はみのりちゃんにそう言うと、彼女はクスクス笑った。私は首を傾げると彼女は言う。


「洋介くんは確かにだらしないところありますけど……でも、そこも含めて好きですから……」


そう言って微笑むみのりちゃん。めちゃくちゃかわいい!は!?この子が義妹になるの確定なの!?最高かよ! 私は悶え、心の中で叫んだが、それを悟られるわけにはいかないので、必死で平静を装った。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

水曜日のパン屋さん

水瀬さら
ライト文芸
些細なことから不登校になってしまった中学三年生の芽衣。偶然立ち寄った店は水曜日だけ営業しているパン屋さんだった。一人でパンを焼くさくらという女性。その息子で高校生の音羽。それぞれの事情を抱えパンを買いにくるお客さんたち。あたたかな人たちと触れ合い、悩み、励まされ、芽衣は少しずつ前を向いていく。 第2回ほっこり・じんわり大賞 奨励賞

月曜日の方違さんは、たどりつけない

猫村まぬる
ライト文芸
「わたし、月曜日にはぜったいにまっすぐにたどりつけないの」 寝坊、迷子、自然災害、ありえない街、多元世界、時空移動、シロクマ……。 クラスメイトの方違くるりさんはちょっと内気で小柄な、ごく普通の女子高校生。だけどなぜか、月曜日には目的地にたどりつけない。そしてそんな方違さんと出会ってしまった、クラスメイトの「僕」、苗村まもる。二人は月曜日のトラブルをいっしょに乗り越えるうちに、だんだん互いに特別な存在になってゆく。日本のどこかの山間の田舎町を舞台にした、一年十二か月の物語。 第7回ライト文芸大賞で奨励賞をいただきました。ありがとうございます、

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

武者走走九郎or大橋むつお
ライト文芸
 神楽坂高校の俺は、ある日学食に飯を食いに行こうとしたら、数学の堂本が一年の女子をいたぶっているところに出くわしてしまう。数学の堂本は俺にω(オメガ)ってあだ名を付けた意地悪教師だ。  ωってのは、俺の口が、いつもωみたいに口元が笑っているように見えるから付けたんだってさ。  いたぶられてる女子はΣ(シグマ)って堂本に呼ばれてる。顔つきっていうか、口元がΣみたいに不足そうに尖がってるかららしいが、ω同様、ひどい呼び方だ。  俺は、思わず堂本とΣの間に飛び込んでしまった。

華京院 爽 16歳 夏〜『有意義』なお金の使い方! 番外編〜

平塚冴子
ライト文芸
『有意義』の番外編 華京院 奈落が華京院 爽の下で働く様になったきっかけ。 仕事も出来て、頭もいい爽。 けれど性格の問題があり、その部下に指名される人間は現れない。 自分に原因があると知りつつ、坦々と日々仕事をこなしていた。 8月…年に1度の華京院親族の低年齢層とのコミュニケーションプログラムで、爽の元に現れた2人の少年。 彼等と1日、楽しくコミュニケーションを取ったり、仕事への適性判断をしなければならない。 果たして、上手く行くのだろうか…。

【本編完結】繚乱ロンド

由宇ノ木
ライト文芸
番外編更新日 12/25日 *『とわずがたり~思い出を辿れば~1 』 本編は完結。番外編を不定期で更新。 11/11,11/15,11/19 *『夫の疑問、妻の確信1~3』  10/12 *『いつもあなたの幸せを。』 9/14 *『伝統行事』 8/24 *『ひとりがたり~人生を振り返る~』 お盆期間限定番外編 8月11日~8月16日まで *『日常のひとこま』は公開終了しました。 7月31日   *『恋心』・・・本編の171、180、188話にチラッと出てきた京司朗の自室に礼夏が現れたときの話です。 6/18 *『ある時代の出来事』 6/8   *女の子は『かわいい』を見せびらかしたい。全1頁。 *光と影 全1頁。 -本編大まかなあらすじ- *青木みふゆは23歳。両親も妹も失ってしまったみふゆは一人暮らしで、花屋の堀内花壇の支店と本店に勤めている。花の仕事は好きで楽しいが、本店勤務時は事務を任されている二つ年上の林香苗に妬まれ嫌がらせを受けている。嫌がらせは徐々に増え、辟易しているみふゆは転職も思案中。 林香苗は堀内花壇社長の愛人でありながら、店のお得意様の、裏社会組織も持つといわれる惣領家の当主・惣領貴之がみふゆを気に入ってかわいがっているのを妬んでいるのだ。 そして、惣領貴之の懐刀とされる若頭・仙道京司朗も海外から帰国。みふゆが貴之に取り入ろうとしているのではないかと、京司朗から疑いをかけられる。 みふゆは自分の微妙な立場に悩みつつも、惣領貴之との親交を深め養女となるが、ある日予知をきっかけに高熱を出し年齢を退行させてゆくことになる。みふゆの心は子供に戻っていってしまう。 令和5年11/11更新内容(最終回) *199. (2) *200. ロンド~踊る命~ -17- (1)~(6) *エピローグ ロンド~廻る命~ 本編最終回です。200話の一部を199.(2)にしたため、199.(2)から最終話シリーズになりました。  ※この物語はフィクションです。実在する団体・企業・人物とはなんら関係ありません。架空の町が舞台です。 現在の関連作品 『邪眼の娘』更新 令和6年1/7 『月光に咲く花』(ショートショート) 以上2作品はみふゆの母親・水無瀬礼夏(青木礼夏)の物語。 『恋人はメリーさん』(主人公は京司朗の後輩・東雲結) 『繚乱ロンド』の元になった2作品 『花物語』に入っている『カサブランカ・ダディ(全五話)』『花冠はタンポポで(ショートショート)』

神様のボートの上で

shiori
ライト文芸
”私の身体をあなたに託しました。あなたの思うように好きに生きてください” (紹介文)  男子生徒から女生徒に入れ替わった男と、女生徒から猫に入れ替わった二人が中心に繰り広げるちょっと刺激的なサスペンス&ラブロマンス!  (あらすじ)  ごく平凡な男子学生である新島俊貴はとある昼休みに女子生徒とぶつかって身体が入れ替わってしまう  ぶつかった女子生徒、進藤ちづるに入れ替わってしまった新島俊貴は夢にまで見た女性の身体になり替わりつつも、次々と事件に巻き込まれていく  進藤ちづるの親友である”佐伯裕子”  クラス委員長の”山口未明”  クラスメイトであり新聞部に所属する”秋葉士郎”  自分の正体を隠しながら進藤ちづるに成り代わって彼らと慌ただしい日々を過ごしていく新島俊貴は本当の自分の机に進藤ちづるからと思われるメッセージを発見する。    そこには”私の身体をあなたに託しました。どうかあなたの思うように好きに生きてください”と書かれていた ”この入れ替わりは彼女が自発的に行ったこと?” ”だとすればその目的とは一体何なのか?”  多くの謎に頭を悩ませる新島俊貴の元に一匹の猫がやってくる、言葉をしゃべる摩訶不思議な猫、その正体はなんと自分と入れ替わったはずの進藤ちづるだった

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

三度目の庄司

西原衣都
ライト文芸
庄司有希の家族は複雑だ。 小学校に入学する前、両親が離婚した。 中学校に入学する前、両親が再婚した。 両親は別れたりくっついたりしている。同じ相手と再婚したのだ。 名字が大西から庄司に変わるのは二回目だ。 有希が高校三年生時、両親の関係が再びあやしくなってきた。もしかしたら、また大西になって、また庄司になるかもしれない。うんざりした有希はそんな両親に抗議すべく家出を決行した。 健全な家出だ。そこでよく知ってるのに、知らない男の子と一夏を過ごすことになった。有希はその子と話すうち、この境遇をどうでもよくなってしまった。彼も同じ境遇を引き受けた子供だったから。

処理中です...