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〜青春編〜
三十一話 『略奪?』
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一体どこに向かっているのか分からないが、とにかく走るしかないこの状況に俺の頭の中には「?マーク」しかなかった。
松岡はただひたすら走っている。なので会話が出来るわけもなく、そのまま暫く走った後ようやく止まった。
「松岡……?あのさ、どうしてこんなところまで来たんだよ?」
ここは公園だった。辺りを見渡せばブランコや滑り台など定番のものが並んでいる。
しかし松岡は何も言わずにじっと俺のことを見てくるだけだった。そして何を思ったのか突然俺のことを抱きしめてきたのだ。
「えぇ!?な、ななな、何やってんのお前!?」
動揺しまくりながらもなんとか引き離そうとするが離れようとしなかった。寧ろ更に力を込めてくる始末だ。
てか、こいつ細身なのにどこにこんな力があんだよ!……全然離れてくれない……!
「好き……」
不意に耳元で囁かれた言葉に全身が熱くなった気がした。え………?す、好き……?松岡が……俺を……?
「ま、また裕介の冗談か?流石に二回目は騙されねーぞ?」
そう言うとやっと体を離してくれた。
「冗談なんかじゃない。私は本気だから……」
真剣な表情で俺の目を見てそう言うと松岡。嘘をついているようではなさそうだが、それでも信じられないという気持ちの方が強い。
だって前には裕介から罰ゲームで告白されたと言っていたし、今回も本気とは思えないのは前科があるからだ。
だけどこうして俺を引っ張って連れ出したということは――。
「冗談じゃなくて本当に俺のこと好きなんだとしたら……あの時は何で?どうして?」
疑問をぶつけると少し間を置いて話し始めた。
「あ、あれは宮沢くんの罰ゲームで中村くんに告白しろっていう流れになって……それで仕方なく言っただけで……」
「そ、そうか……いや、でも……俺笹川さんと付き合ってるんだけど……」
「うん、知ってるよ……。だから私も諦めようとしたけどやっぱり無理みたい……」
恋する乙女。そんな表現がぴったり合うくらい切ない顔をしていた。
俺はどうしたらいいのか分からず黙っていると、
「答えは……ゆっくりでもいいから考えてみて。急かすつもりはない。返事待ってます」
そう言って帰る松岡。その背中に何か声を掛けるべきなのか迷ったが結局何も言えず、小さくなっていく後ろ姿を見送った。
「本当に……どういう展開だよこれ……」
ベンチに座って俺は頭を抱えた。
松岡はただひたすら走っている。なので会話が出来るわけもなく、そのまま暫く走った後ようやく止まった。
「松岡……?あのさ、どうしてこんなところまで来たんだよ?」
ここは公園だった。辺りを見渡せばブランコや滑り台など定番のものが並んでいる。
しかし松岡は何も言わずにじっと俺のことを見てくるだけだった。そして何を思ったのか突然俺のことを抱きしめてきたのだ。
「えぇ!?な、ななな、何やってんのお前!?」
動揺しまくりながらもなんとか引き離そうとするが離れようとしなかった。寧ろ更に力を込めてくる始末だ。
てか、こいつ細身なのにどこにこんな力があんだよ!……全然離れてくれない……!
「好き……」
不意に耳元で囁かれた言葉に全身が熱くなった気がした。え………?す、好き……?松岡が……俺を……?
「ま、また裕介の冗談か?流石に二回目は騙されねーぞ?」
そう言うとやっと体を離してくれた。
「冗談なんかじゃない。私は本気だから……」
真剣な表情で俺の目を見てそう言うと松岡。嘘をついているようではなさそうだが、それでも信じられないという気持ちの方が強い。
だって前には裕介から罰ゲームで告白されたと言っていたし、今回も本気とは思えないのは前科があるからだ。
だけどこうして俺を引っ張って連れ出したということは――。
「冗談じゃなくて本当に俺のこと好きなんだとしたら……あの時は何で?どうして?」
疑問をぶつけると少し間を置いて話し始めた。
「あ、あれは宮沢くんの罰ゲームで中村くんに告白しろっていう流れになって……それで仕方なく言っただけで……」
「そ、そうか……いや、でも……俺笹川さんと付き合ってるんだけど……」
「うん、知ってるよ……。だから私も諦めようとしたけどやっぱり無理みたい……」
恋する乙女。そんな表現がぴったり合うくらい切ない顔をしていた。
俺はどうしたらいいのか分からず黙っていると、
「答えは……ゆっくりでもいいから考えてみて。急かすつもりはない。返事待ってます」
そう言って帰る松岡。その背中に何か声を掛けるべきなのか迷ったが結局何も言えず、小さくなっていく後ろ姿を見送った。
「本当に……どういう展開だよこれ……」
ベンチに座って俺は頭を抱えた。
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